いつもゲームはたいくつだけれど、今日のゲームはいっとうつまらなかった。理由はかんたんだ。彼女がいなかった。今夜は遅くなるんだって話していた。
彼女のいない世界はなんて味気ないなんだろう。色彩が感じられない。
すこしでもふれていたくて、しみついた彼女のにおいをさがす。ベッドにのこったほんのわずかな痕跡なんかじゃ足りない。エダを求めるがあまり、クローゼットからも服をひっぱり出して、部屋をちらかしてしまう。でも、エダはおこるどころか、むしろ愛しくてしかたがないって目で俺を見る。そんなとき、俺は彼女にすべてをゆるされていると感じるんだ。
いつだったか忘れてしまった、本で読んだことを思いだした。ゆるすことは愛らしい。彼女の言葉以外にきょうみはないけど、彼女の愛情はただしいという証明のようで、とてもほこらしく思った。
どこが好きかって聞かれると、すこしだけ困る。だって、俺はエダのすべてが好きだから、あげはじめるときりがない。
一緒にいられないときや、彼女がひとりでいる時間のことを俺は見ることはできないし、彼女のぜんぶを知れているわけじゃないけれど。それでもきっと、これから知るどんな彼女も好きになると思うんだ。俺はずっと、きみと出会ったときから、きみしか見えていないよ、エダ。あの言葉も、きみがくれたパンの味も、忘れたことなんてない。
エダは本当に優しい。ゲームのあと、さそったデートもよろこんでついてきてくれた。彼女とここにきたのは俺の病気をなおすためだから、ゲームには勝たなくちゃならないし、ゲーム中ずっと一緒について回ってはいられない。そういうときのエダはとても真剣な顔をしていて、一緒に脱出するために手段をえらばないところも好きだ。
そんな生活のなかの、ふたりきりですごせる時間はやっぱりすごく大切だ。デートをおえて、エダはたくさん話をしてくれた。あのときの約束をずっと守ってくれている。すごく眠かっただろうに、不安をふっしょくしようと言葉をつくしてくれる。俺が、もっとうまく言葉にできたらいいのに。たどたどしい言葉でも、最後まできいてくれて、頬をつつんで、まっすぐ目を見て「大丈夫」って教えてくれるんだ。そんな彼女を抱きしめて眠れる夜、しあわせを噛みしめている。
ねえ、エダ。俺のお姫様。いつも愛してくれてありがとう。きみの言動すべてから、愛を受けとってるんだ。俺からももっとたくさんの愛をきみに返すから。これからもずっと一緒にいよう。大好きだよ。
一緒の夢をみるために、おやすみなさい。
エダはいつだって俺のことばかりだ。
自分のことをほうってまで、俺の心配をしてくれる。ふせっていても、さみしくさせていないかって気づかってくれるんだ。こんなときくらい、彼女自身を気づかってくれたらいいのにって思うくらい。きみはそういうとき、よく「どうしてこんなに優しいの」って目をうるませるけれど、きみが優しくて、毎日たくさんの愛情をくれるからだよ、エダ。きみが与えてくれる愛を、たった一粒だってとりこぼさずに返したいんだ。もう食べきれないって思ってもらえるくらい。でも、彼女はきっと「どれだけ食べても飽きないわ」って笑ってくれるに違いない。
愛してるよ、エダ。俺のエダ。たったひとりのお姫様。
この日記とはべつに、ふたりでつけている記録で「眠れないときはどうすごすかって」話題があった。もちろん、となりで眠る彼女をずっと見つめているけれど。たとえば、ひとりで彼女を待っている間だったり、どうしても眠りたくない夜だったり、エダの日記や記録をよみ返してみる。それは彼女も同じみたいで、字がじょうずになったってほめてもらった。自分で書いた昔の日記を見てみたら、ミミズのはったような字ってこういうことをいうんだと思った。最近はペンを持つことにもなれたみたいだ。文字を書くことは彼女に習ったから、きっとエダの教えかたがいいんだね。
それに、こうしてきみのことを記録するのはたのしい。これからも、ゆっくり続けていけたらいい。エダがいつかまた読み返したとき、昔も今も、ずっとずっと愛されているんだって、きみのことしか見ていないって実感してもらえたらいい。
なんて、かわいいひとなんだろう。毎日おもっているよ。
つたえても、つたえても、愛したりないときってどうしたらいいんだろう。
ゲームに引きはがされていても、遠くでウインクを送ってくれるエダからは目に見えるくらいハートが飛んできているような気がして、それだけでしあわせになる。手をふれば今度はそれが投げキッスに変わったりして、毎日たくさんの愛情をくれるんだ。
どれだけ注いでも受けとってくれるからだってエダは言うけれど、彼女が俺に与えてくれるすべては、それがどんな感情やかたちだって愛情だとわかる。受け取らないなんてありえないよ。
俺は彼女に世界でいちばん大切にされてるって言えるし、彼女のことは世界でいちばん大切だ。彼女を愛してるのは俺で、俺を愛してくれているのは彼女だ。なんのうたがいや、いつわりもない。
これだけ自信をもっていられるのは、エダのおかげなんだ。今日もきみが大好きだよ。
これだけの愛情やしあわせを、どうしたらきみに返せるだろう。
俺のお姫様には、世界でいちばん大切にされている女の子なんだって思っていてもらいたいし、ずっと、ずっとしあわせでいてほしい。
ゲームの傷で熱がでたとき、エダはなにも悪くないのに「気づけなくてごめんなさい」なんて言う。自覚して、彼女に伝えなくちゃいけなかった。それができなかったのは俺だったのに。やさしく抱きしめられて、ベッドであまやかされて、俺よりもすこしだけ冷たくなった手のひらはただただ心地よくて。俺のために泣いてくれる彼女は、なんてやさしいひとなんだろう。こんな恋人に愛されて、いたみもくるしみも消えさって、俺のせかいはすっかりしあわせで満たされてしまう。
いっそ、あのままどろどろにとけてしまって、彼女とひとつになれたらよかったのに。
あれは俺だけに見せる顔だ。
普段はりんとしていて頼られることの多い彼女の、俺にしかみせないところ。それがあんまりにかわいいから残しておきたいけど、誰にも知られたくなくて、こまる。
エダの言葉がみえなくなるのがいやで書き足していたけど、今月もきみをいとおしく思っているって残しておきたいから、あたらしいページを使うことにする。
彼女の好きなところをあげるときりがない。それはきっと、彼女の言動のすべてに愛情を感じられるからなんだとおもう。
たとえば、俺はエダに約束をやぶられたことは一度もないとおもってるけれど、じゃまが入ってなかなか部屋に戻ってこれないときなんて、エダはとても落ちこんで、すごくもうしわけなさそうにするんだ。まるで死に別れてしまう恋人どうしみたいに。その表情すらもきれいで、彼女のなみだは宝石なんだと確信する。いや、宝石よりもっとずっとかちのある、俺だけのたからもの。いとおしくて、いとおしくて、ぜんぶ食べてしまいたくなる。
エダ、俺は、きみの言葉や教えてくれる考えかたが好きだよ。それはずっと変わらないし、これからもきみを愛しているんだって確信を持っていえる。どこにも行かない。ずっと、ずっときみといっしょだ。毎日だって、そう言う。
はじめて彼女とであったときを思いだす。それだけで幸せな気分になれるから、やっぱりエダはすごい。きみにもらったパンはとてもおいしかった。エダはいつだって、俺にたくさんのものをあたえてくれる。食事も、治療も、愛情も。俺にはきみしかいない。エダにあたえられるものだけで、いい。他にはなにもいらない。
今日もエダはかわいい。いままでも、これからも、俺にとっては世界でいちばんかわいいんだ。でも、エダは俺のものだから、彼女のかわいいところを知っているのは俺だけでいい。
俺はきっと、きみがいてくれるから、この世界で息ができるんだと思う。ひどい頭痛にさいなまれる夜も、彼女の声とやさしい手のひらにつつまれていれば、なにもこわくはない。
出会ったころから変わらない、きみのそういうところ、すごく好きなんだ。俺の帰るところはここなんだと強く思う。たくさん愛をくれてありがとう。これからも、きみのことが大好きだよ。