十三日目 ”君の他所見の可能性を疑う道もあるのか" 俺たちはぬるま湯に浸かったように 互いを信頼しきっている。 こうして文字に残せるくらいに はっきりと。確信している。 俺はそれが堪らなく心地よく、嬉しい。 どうしても疑心暗鬼が生まれやすいこの世界で 伝えた言葉を真っ直ぐに受け止めてもらえることが どれ程恵まれているだろう。 大切に想っている と毎日伝え合えることが どれ程幸福なんだろう。 お前の隣はいつも心地がいいから つまらない裏切りを思い付く暇もないんだ。 来年も、再来年も、 きっとずっと同じことを思っているんだろう。 …………"いつも満たされてばかりだ。 俺は貰った分の半分も返せているのだろうか" —馬鹿だなあ。 俺はこんなにも満たされているのに。 |
十二日目 ふたりで文字遊びをするとアイツは それは見事な文を作る。 練られた世界観に疾走が広がって、 読んだ俺は思わず、おおっと声を出す。 そして何度も見惚れる。 俺ひとりだけが読むのが勿体ないなあと常々思うが、 独り占めできる悦が立ち込んで、 瞬く間に心躍る時間と変わる。 俺の相手をしながらも 途方もない分量の文字を書くアイツは きちんと寝ているだろうか。 アイツにとって俺は 弱音が吐ける存在だろうか。 ……………… |
十一日目 今夜のアイツはとても眠そうに見えた。 普段より遅い時間に 声を掛けてしまったからかもしれない。 ふにゃふにゃした顔で俺の髪に鼻を埋める姿が 堪らなく愛おしい。 知っているか? 会いたくて、会いたくて、 俺は急いで帰って来たんだ。 大切に想っているぞと どれだけ言ったら伝わるだろう。 …………”俺も会いたかったよ ひたすら甘やかしたい気分なんだ” 甘やかされた。 お前の隣は心地いいなあ。 |
十日目 俺たちの朝はスタンプの応酬から始まる。 律儀なアイツは俺を起こさないように密やかに。 一方の俺は こんな朝早くからも想っているぞと知らしめるべく。 どちらの思惑を叶えるにしても 寝る前の会話を思い起こしては、ひたすら連打。 からきし生産性のないこの時間が 俺は案外好きだ。 …………”おはよう…スタンプありがとう” ─おはよう。朝の口付けは酷く甘い。 |
九日目 添い寝をすると目が覚める。 お預けを喰らった反動なのか、 まるきり心持ちを変えられてしまったのか、 全くもって分からない。 触れ合うと落ち着かない。 今までどうしてきたんだろう。 昨日までの自分が思い出せない。 仕草のひとつひとつに色を感じればもう 目を瞑るどころではなくなって、 もっと触れたい衝動に心が揺らぐ。 これが若気の至りというものか。 ひと月も経てばこの欲も収まるのだろうか。 俺って存外にみっともないなあ。 いつかこのページを見返して 浮足立った俺自身を恥じる日が来るんだろう。 …………”ノリの良さ凄い好き。” ─俺もだ。腹を抱えて笑ったよ。 |