八日目 "今夜から週末までは別々の部屋で寝よう" やられた。 カウンターパンチを喰らうとはこのことだ。 寝ている間に窓へと蹴ったのは確かに俺だ。 しかし寝室を分けられる程のことか? 犯した罪に対して、刑罰があまりに不釣り合いだろう。 謝罪の言葉よりも寧ろ、 お前はそれでいいのかと問いたくなる。 そもそも今日はこうして日記を書くほどに 手暇が多かったんだ。 お前のことを考えて筆をしたためていたのに。 あーあ、胸が苦しい。 …………この上なく甘い機嫌取りを受けて 心が溶けていくのが自分でも分かる。 ”また明日。 君に巡り逢えた幸運に感謝してるよ。” ─俺の方こそ。いつもありがとう。 |
七日目 大いに笑った一日だった。 互いの好みを語り合ってた筈なのに いつしかマウントの取り合いになって どっちが上だのどうだのと甚く丁寧に語るアイツの 熱の入れ処が可笑しくてかわいい。 眠る前の名残惜しさに甘い空気が流れたけれど ひとたび息をしたら爛々と攻め気を見せるお前は悪魔か。 …………"まだ一週間しか経ってないんだね。 もっと長く一緒にいるような錯覚起こしてた。" "もしかして前世の恋人だった?" ─きっとそうだ。ようやく会えた。 |
六日目 俺たちの行く末について語るアイツは甚く真面目だ。 よいアイディアが浮かぶと たちまち溢れる笑顔がなんともかわいい。 黙りこくるのは熱心な調べ物をしている証だろう。 その喉に噛みついてやりたくて堪らない。 好意が通ったとろける心地が どんどんと支配欲に染まる。 笑った顔も、泣いた顔も 全部俺のものだ。 …………掛けられた肉布団の大きさに際限の無い愛情を感じた。 ” 惚れ直した?” ─ああ。毎日惚れ直してる。 |
五日目 アイツの傍に居るようになって、初めての休日。 普段と違う時間の流れについ悪戯心が疼いた。 一度腹を決めれば、もうあとは衝動だ。 独り善がりで構わなかった。 これで嫌われるなら仕方がないとは思ったが、 俺のことを好きというまで酷くしてやるつもりもあった。 求めて、受け容れられて、昂って、血に染めて、 酷く心が満たされていった。 あまりに強い幸福感が湧き立つと、 何処か他人事のように感じるのだなあと不思議に思う。 …………済ませてしまえば 睦言もそぞろに猫や絵姿芸の披露大会。 賑やかな初夜が愉しい。 甘く騒がしいこの空気が堪らなく好きだなあ。 |
四日目 昨夜の熱が冷めなくて つい距離を取った話し方になった。 文字の書き方が相思相愛だと知ったから 今夜はそれでいい。 アイツを寝付かせて、自問自答した。 いつから俺はこんなに謙虚になったんだろう。 |