二十八日目 "もしかして日記弄ったかい? 今し方まであった言葉が消えていてビックリしたよ" 休日の朝だというのに、ひと騒動起きて アイツが酷くかわいかったから ここに記録しよう。 開閉式の仕組みを知らなかった恋人へ。 練習場所を作ったから気の済むまでクリックするように。 ……練習1……よくできました。 ……練習2……開閉タグの中の開閉もあるから覚えておけ。 ……押す……よろしい。次。……練習3……よし。全て見られたか?愛しているよ。 …………賢くて、たまに抜けているお前が大好きだ。 |
二十七日目 枕元に置かれたプレゼント。 対になるものが欲しいと俺が強請って、 互いにマフラーを贈り合うことにした。 アイツには肌触りの良い動物性のものを。 色はオフホワイトにした。 何かにつけて俺の髪に白い花を飾りたがるが、 白が似合うのは寧ろアイツの方だと思う。 ふにゃふにゃ笑う顔も 俺の我儘を包み込んでくれる暖かみも 声も、仕草も、指先も、唇も 全て愛おしく思うよ。 スパイ活動に長けた恋人へ。うんとキザな言葉を残そう。 |
二十六日目 寝室をリフォームすることにした。 "眠気を気にせず、愛し合えるように" と。 アイツが言い出したんだ。 かわいいだろう? せっかくだし家具を揃えようか。 俺はソファが欲しい。 フォルムの丸いサイドランプも。 今度一緒に買い物に行こう。 …………"何度も沢山注がれたい" この破壊力。寝るのに心底苦労した。 |
二十五日目 膝枕をされながら アイツが纏めた雑誌記事を読んだ。 やわらかな腿の隙間に顔を埋めたいけれど 顔も見たいし、 キスもしたくて 欲張って、寝返りを繰り返す羽目になる。 アイツとだらしなく過ごす時間が 堪らなく心地いい。 …………雑誌記事が読めば読む程に面白い。 記号にも意味があるのか。練られているなあ。 …………お前に髪を撫でられるのが好きだけど 伝えると禿げる程に掻き撫でるだろうから 此処にそっと。 |
二十四日目 手作りのスープを相伴した。 目隠しで一口ずつ飲み進めていく感覚が まどろっこしくて愉しい。 途中、俺の匙が止まると がんばれ、がんばれ、と アイツが口元まで運んでくれて うれしさに つい、脇目をしてしまう。 飲み干した後の清涼感と、 コクの深さ、 素材を生かした丁寧な仕上がりに 何をやっても見事だなあと溜息が溢れた。 うまかったよ。 ご馳走様。 …………—何をやってもかわいく見える。 眼科に行くべきは俺だろうか。 "治さなくて良いよ" —そうか。好きだよ。 |