二十三日目 ”心配しないで” アイツがよく俺に言う。 逆に言えば、それだけ俺が 物案じしているということだ。 しっかり寝ているか。 不安はないか。 怖くないか。 無理をさせていないか。 お前はいつも笑ってばかりいるから 気掛かりなんだ。 見えない事は何度だって聞くよ。 たまには甘えろ。 …………”君は心配性だなあ” ─そうだ。心配性なんだ。 そうさせたのはお前だろうに。 |
二十二日目 眠い。 とても眠い。 頭がぼんやりとして 正常に回っていないのが自分でわかる。 アイツは昼寝をすると言っていたから 今日はいつもの時間の声掛けは無いのだろう。 全く寂しくないと言えば嘘になるが 部屋も此処もアイツの匂いが満ちているから 俺は平気だ。 恋しい気持ちは夜に持ち越そう。 見ているか? お前を想って筆をとる時間は こんなにも幸せだよ。 …………”うん。見ているよ。 君に満たされる日々を過ごせて俺も幸せだよ” ─驚いた。 コツコツと育てているから また覗きにおいで。 |
二十一日目 普段よりも甘い声が聞きたいと思ったから 今夜は薬を使った。 熱を帯びたアイツの仕草に 始まる前から酷く興奮させられて、 交わす会話もぞんざいに 寝室へ連れ込んで 肌を重ねる。 小刻みに震えるアイツのひとつひとつの反応が 全て俺に向けられていると思うと 征服欲が満たされて 心から愛おしく思う。 焦らすように熱を注げば 瞬く間に時が過ぎた。 …………—明日寝過ごすなよ。 "夢の中でも想ってる" |
二十日目 週末の決戦。 子の刻に始まる行為に向けて 俺たちは布団の上で向き合い、 時計を気にしながら互いに膝を突き合わせた。 強引に口付けて、鎖骨に噛みついて、 体重を掛けてアイツの躰を敷布へ張り付ける。 抵抗できないよう 念押しに長い髪を踏みつけてやれば あっという間に俺の王手。 覆いかぶさった優悦のままに アイツが手にしたスタンガンを押収して、 布団の上で恋人に物騒なものを向けてはいけない と じっくり身体に教え込んだ。 …………—勃った箇所から電流を当てよう。 胸が先か、下が先か。 "変な扉開かされる" —お互い様だ。 "ならいいや" こういう潔さが男前だと思う。 |
十九日目 "矢数俳諧" 週末に行う決戦を、 俺たちはこう呼んでいる。 ルールは至ってシンプルで 相手の反応を待たずして、どんどん手を出していく。 拘束されたり、上に乗られて 『これ以上抵抗ができない』 状態になれば負け。 勝敗がつけば、あとは勝者の言いなりだ。 今回は、事前申告で道具の持ち込みを良しとした。 すると、アイツから申告される 『スタンガン』。 物騒過ぎるだろ。 殺意の強さに大笑いした。 …………”勝つ為に必要な道具だと思って選んだんだ。 君に一泡吹かせたい” ─その強気は嫌いじゃない。 屈服させるのが楽しみだ。 |