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┗311.《ポケモン二次創作》もう終わったことだから。もう全部壊すから(109-128/148)

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109 :ベリー
2022/10/08(土) 00:06:01

「あぁぁ……」

 外傷はない。怪我は少ししかしてない。しかし、筋肉を使いすぎて体を少しでも動かすとミキミキという音がする気がして痛い。
 ついさっき、アーボのお仕置コースを受けて来たところである。内容は……あまり言いたくない。

『ジリリリリ』

 すると、ガラスドーム中に電子音のようなチャイムが鳴り響く。これは仕事終了の合図の音で、この音が鳴ると皆休むために屋敷に戻っていく。

「……今日はここまでにするか」

 え、まだお仕置続ける気だったの? 私これで終わりだと思ってたんだけど?!
 そんな抗議兼疑問を出すほどの余裕が無かったためただ不満な顔をするしか無かった。アーボは私の不満顔に気づいても無視してアーボックと屋敷に戻っていく。
 私もイーブイを抱えてアーボの後ろに続いた。

 ◇◇◇

 この屋敷は大きすぎて間取りはまだよく分かってないけれど、よく行くのは屋敷の中にある5つの広間の内の1つである。広間……と言っても一軒家にある広間のような広さではなく、もっと大きい……人が千人ぐらい入る大きな部屋。ステージのような場所があり、私は初日職員さんにそこへ雑に投げられた。
 私達がよく行くのはCという広間。仕事場から最も近い広間で仕事人の間では人気のらしい。基本的に仕事人の間の強さで何となく行く部屋は決まるらしいが、私はアーボの知り合いということでCの広間に居ることができている。

 いつかこの部屋にふさわしい強さを自分で持たなきゃ!

 そう、希望を持ちながら通路を確実に一歩づつ歩いていく。でなければピラミッドにスカウトされることなんて出来ない!
 そう思っているといつの間にかCについていた。

 扉をくぐって中の様子を見る。生臭くカビ臭く……この世の異臭の全てを詰め込んだような匂いが微かにする。この匂いにも慣れてしまった。
 窓も家具も無く、あるのは乱雑に置かれた荷物。荷物と言っても小さな布切れがほとんどをしめている。しかし、他人の布切れを盗むと殺し合いに発展する。布切れたった一枚でだ。言葉にできない酷い環境だが、一年で私は慣れてしまった。

『ドサドサドサッ』

 すると、ステージの方で天井から垂れた布袋が逆さになって、中身の生活必需品や食料が落ちてくる。
 と言っても、生肉や果物含む全ては包装されていないため、たまに落ちてくる布類は血や果汁でベタベタだし、生肉や果物も腐りかけのため不衛生超えて毒物である。
 しかし、そんな物を掴み取るため人々は必死でステージに食いついた。仕事人同士の殺し合いは余程のことがない限り禁止という暗黙の了解があるため、命の危険は無いが、この支給品をつかみ取れないと明日生きていけない。
 というか、人の布切れ一枚を盗むのが余程のことと認識されている事が虚しくて仕方がない。

[返信][編集]

110 :ベリー
2022/10/08(土) 00:06:18

 私はイーブイを安全と思われる場所に置いて、全力疾走で支給品の山へ走った。
 アーボとアーボックはそんな私をみて後ろでくつろいでいる。一人と二匹の分の食料調達も私の役目だ。アーボ曰く『私の特訓』だそうだが、絶対楽したいだけだ!
 そんないつもの不満を心に押さえつけ大きな肉の山を漁る。体感だが、支給品の六十%ぐらいは謎の生肉が占めている。三十%が果物や野菜、十%はその他である。
 だから、ある程度の腐敗が進んでない肉を掴み取りアーボの方に投げる。無事に届けられたかなんて確認しない。アーボなら私が投げたものならどんな下手な投げ方でも受け取れるからだ。
 最近は少しの反抗心に抗えずアーボの顔面に当たるように投げているつもりだが、多分当たったことは無い。

 とりあえず肉は投げ終えたため、後は果物、野菜である。肉だけでも生きてはいけるが、果物や野菜を取らないとお腹が痛くなったり、便秘になったり、頭が働かなり、精神的に潰れるのが早くなってしまうらしい。
 なんか ショクモツセンイ?と、びたみん? が大事らしいがよく分からない。
 野菜は今回根菜が二本見つかっただけで少なかったが、果物はある程度投げられた。その時チラッと見えたが、アーボの顔面に当たりかけたモモンの実は軽々とアーボックに受け止められていた。くそうっ。

 あとは期待はしてないが布類を探してみる。ここまで来ると支給品の山も山でなくなり、床が見え始める。一通り見たが布類はなかった。私は諦めて人の山から抜けてアーボの元へと戻る。
 支給品の山が無くなっても人の山は無くならない。食料の奪い合いや、支給品があった床を舐めて飢えをしのごうとする人の集まりだ。
 私もこのままだといずれああなるのでは無いかと毎回怖くなる。

「安定して食料が取れるようになったな」

 そう言ってアーボは謎の肉塊を食いちぎった。アーボックとイーブイも私が投げた食料を食べ始めている。
 先程までのアーボへの不満が一気に消え、褒められてちょっと嬉しくなってしまった私は、口角の緩みを隠しながら食料を食べ始めた。

「相変わらずレイはちょろい」
「なぁっ! どこが!」

 心外なことを言われ食べるのを一時中断してアーボの方へ視線を向けるが何事も無かったようにアーボは肉を貪っている。
 私も不服ながらも食べ始める。
 不味い……所々カビが生えているのか苦いし、口の中に生臭さがブワッと広がる。
 初日は食べなかったけど食べないと動けないから嘔吐しながら無理やり胃に入れてたっけ。今も不味いけど慣れてしまった。ここの人達はこれが当たり前と思って生活してると考えると……怖い。

◇◇◇
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111 :ベリー
2022/10/08(土) 00:06:50

「イブイ」

 すると、食べ終えたイーブイが私の服を引っ張りステージ方向に視線を向ける。
 そこには図体がデカい男性達が三人、部屋の角を囲むように見つめている。大丈夫かな……もしかしたら何か落ち込む事があったのかも?
 私はそう思って男性達の元へ向かうと、男性達は部屋の角を見つめていたのではなく、少年の腕を引っ張っていた。

「えっ、あっちょ」

 私は反射的に男性の腕を引き剥がして少年の前に立った。

「あ? ガキ……あ、お前アイツの所のガキじゃねぇか!」
「……? アーボのこと?」
「そうそう」

 最初は少しイラついた表情を見せた男性だが、私の顔を見た途端自分の姪に接するような態度を取り始めた。
 私はこの人達のことを知らないけど……多分アーボの知り合いかな。

「どーしたんだ嬢ちゃん。獲物の取り合いなら受け付けねぇぜ」
「ああ、早いもん勝ちなんだ。すまんな」
「そっ、そーじゃなくてっ!」

 私は獲物を取りに来た訳では無い。なんというか、条件反射で出てきてしまったというかなんというか……
 説明ができない。

「仕事人同士の争いは厳禁じゃ……無かったの?」
「あんなぁ嬢ちゃん。俺達の言う仕事人ってのは、ココに来てからある程度生き残ったヤツを指す。けど、コイツは今日入ったばかりのようでな」

 男性が少年の方を指さす。私も自然と少年の方に視線を向けた。少年は三歳程の本当に幼い子だった。黒髪にルビーのような真っ赤な瞳で結構顔は整っている。

「仕事人とは言えないってこと? でも、お兄さん達も昔はこの少年と同じだったんでしょ? そんな子を……」
「あんなぁ、嬢ちゃんよう。ここは弱肉強食だ。弱くてもある程度自衛は出来なきゃなんねー。コイツは明らかに弱いのにこの部屋に迷い込んだ。それが運の尽きだ」
「誰だって間違いは……」

 私の意見は場違いであることは分かる。ここは弱肉強食で情も倫理も道徳も無い。無慈悲で残酷な場所。だけどさ、この少年見てるとココに来る前の私を思い出してしまう。自分勝手だけど、この子を守りたいと思ってしまった。

「甘えたことを言ってるんじゃない」

 すると怒りに近い低音の声が鳴り響いた。男性達の声じゃない。この声は、アーボだ。

「おぉ、久々だなレ……」
「アーボだ。忘れるな」

 男性が何か言いかけたが、その前にアーボが遮るように言葉を重ねた。アーボは私の倍の身長をしている。だから、私の前に仁王立ちして睨みつけられた。

「何やってる。レイ」
「少年が……襲われてたから……」

 あまりにも圧が強すぎて声が萎んでしまう。この場ではいけないことなのかどうかはあまりよく分からない。けれど、反射的に悪いことをしたという意識が頭に染み込んでしまっていた。

「レイ。お前はコイツを助けたとして、守れる力は持ち合わせているのか?」
「もって……」
「ポケモン一匹も殺せないお前が?」
「……」

◇◇◇
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[返信][編集]

112 :ベリー
2022/10/08(土) 00:07:10

 私は何も言えなかった。唇を噛んでただ悔しくアーボを見ることしか出来なかった。守る力は無い。だからといって、ここで少年を見捨てて良いのだろうか? 見捨ててもきっと私にはなんの問題も無い。むしろアーボの圧から逃げることができるし、守る方が労力が要るため明らかに見捨てた方が楽である。
 分かってる。そんなのは分かってる! けど!
 ここで少年を見捨てたらここで私は本物の『バケモノ』になってしまう気がして……

「シャァ」

 するとアーボックが来てアーボに何かを言っていた。アーボックはアーボに向けて発言していたため『意思』は読み取れなかった。

「それも一理あるが、しかしそれではレイが……」

 何かアーボとアーボックが話し始めている。私はこの間に何かしでかしたら問答無用で少年と引き剥がされると思いじっとしていた。しかし、男性も私と同じようにじっと突っ立って居る。

「……お兄さん達は何もしないの?」
「ん? 出来ねぇよ。レ……アーボの目の前で何かやらかしたら溜まったもんじゃないからな」
「そうそう」

 三人の男性はお互い顔を見合わせて頷き合う。意味が分からず私は首を傾げる。この人達もアーボに助けられたのだろうか?
 私が理解してないということを察したのか一人の男が教えてくれる。
 
「アーボはな。この施設で一番強い……と言われてるんだ。実際に戦ったことは無いが一目で分かる」
「仕事人の争いを止めるヤツは大体アーボだしな」
「だからアーボのお気に入りの嬢ちゃんにも軽い気持ちで手出しは出来ないんだ」
「そー……だったんだ……」

 この男の人達は仕事場に居る仕事人よりも理性的で優しく私に教えてくれた。悪いことをしてる人はもっと常識を逸してる態度をすると思ってたけど……
 違う。この人たちにとって、少年を襲うのは悪いことじゃなくて、『普通』の事なんだ。むしろ、この人達からみて常識を逸してるのは……

「すまんお前ら。今回は少年を見逃してくれないか?」
「ん、それはどういう事だ? アーボ」
「俺もこの少年を使う。対価はこれでも問題は無いか?」

 アーボはそう言うとポケットから布タオルを取り出した。それは支給品にたまに混ざってる布切れとかじゃなくて、ちゃんとしたタオル。ちゃんと縫った跡があるタオルだ。

「マジでか! 全然やるよ! あんがとなぁー!」
「おいコラ待てって!」

男達の中の二人はそう言って広間の向こうの方へ行ってしまった。アーボの手にあったタオルも取られており、一応交渉成立ということになる。

「……アーボ。お前はそれでいいのか?」
「必要と思ったまでだ。レイと、そこのヤツ。行くぞ」

 男達の中で残っていた男性がアーボに聞いたが、アーボはそうサラッと答え、私達が食料を食べていた所へと戻った。私は慌てて少年を連れて、男性にお辞儀をしてアーボについて行った。

「おっと、嬢ちゃん!」
「へ?」

すると男性に声をかけられた。アーボの強さを先程教えてくれたため、私にとって悪い用事とかではないと思うけど……

「お前さんも名前があるのか?」
「えっと……レイ! 私はレイだよ! お兄さんは?」
「ここのヤツらに名前なんてねぇよ。じゃあ達者でな!」

 そう自虐のような事を言って、男性は二人の男性の元へと戻って行った。なんで名前を聞いたのだろうか? 礼儀とか? いや、でも仕事人に基本名前は無いんだよね。そんな礼儀とかあるのかな。物珍しさとか? まあいいか。
 私は少し疑問に思いながらも直ぐにその疑問を捨て少年と元居た場所に戻った。

「二代目レイ……なんてな」

 男が微かに。本当に微かにそう呟いた。普通では聞こえないようなか細い、声に出してるか出てないかギリギリの声で。
 しかし、この一年で五感が研ぎ澄まされた私はその声が聞こえていた。だが、特に気にも止めなかった。

[返信][編集]

113 :げらっち
2022/10/08(土) 02:16:36

3代目との出会いだ!

アーボとレイ、結構仲良い!

カビ生えてるの食べられるのか!
アーボはレイの2倍の身長…アーボ2m以上ある?

ドラマの作り方が上手い。
しかし細かい点で疑問がある。奪い合いはご法度なのに奪い合っている点、ポケモンを一匹も殺せないとされるアーボが一番強いとされる点などだ。
それと今に始まった事ではないが、アーボとアーボックという名前が少しいやかなり紛らわしい…アーボはアーボックの進化前だ…
あとは誤字脱字も少々…

そして絵柄好き。殺伐としてる割に可愛らしいw

[返信][編集]

114 :ベリー
2022/10/08(土) 09:45:11

>>113

わあああ!毎度毎度ありがとうございます!嬉し泣きしながら見てます!
自分もそろそろ戦隊学園の感想を書きに行く……予定です。(主人公ちゃんを描いて見たけど中々出せない人)

レイとアーボは達腐っても……ねぇ。(ネタバレ回避)
※仕事人は特殊な訓練(?)を受けています。皆様は決して腐った生肉は食べては行けません。死にます()
ドラマの作り方上手いですか?! あ、ありがとうございます……

奪い合いじゃなくて、ご法度なのは殺し合いですね。布切れ一枚奪うと殺し合いが起きるため、レイ達は人の布を盗むことはありません。
今回少年はアーボが物々交換で平和に収めたためなんの問題もありません。

ポケモンが殺せないのはアーボじゃなくて、レイだ…… もしかして誤字脱字とかで『アーボがポケモンを殺せない』的な文書いてるのかもしれない…… ちょっと見直してきます。

誤字?! 今回誤字は読み込んで修正したから無い……はず。自分未熟なので誤字脱字の所覚えてれば教えて頂けませんでしょうか……すみません。

アーボとアーボック確かに見にくい……
ポケモンの名前の表記だけなにか強調する物をつけてみようと思います!

わあああい!絵柄褒められた!ヤッタァ!

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115 :げらっち
2022/10/08(土) 15:24:38

読んでくれてありがとう!
戦隊学園の絵見せて…見せて…

あ、殺せないのレイだ…ねぼけてたので間違えたようだ。すまぬ…

誤字は「一歩づつ」だけど、今調べたら、実は「づつ」でもOKらしい(但し現代ではずつがメジャー)。

謎の肉塊…ポ○モンでは

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116 :ベリー
2022/10/08(土) 16:17:34

>>115
なん……だと?!
小3の時に『少しずつ進む』って書いてたら祖母に『ずつちゃう!づつやドアホ!』って言われたからそれからずっと『づつ』使ってた……
あのババア……((((感謝してます育ててくれてありがとう。筑前煮大好き
 
アンマァシ自信ないデスケド……感想書く用(?)のスレに貼ってミマス

謎の肉塊……なんだろうねぇ(^ω^)

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117 :ベリー
2022/10/08(土) 16:49:28

quiz-maker.site

終わ壊クイズ作って見ました……
誰もやらねぇと思ってるので唯の自己満です()

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118 :げらっち
2022/10/08(土) 18:10:40

未カンニングで100点満点(ガチ)


画像(png) 57.0KB
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119 :ベリー
2022/10/08(土) 23:41:36

うわあああ!え?!凄ありがとうございます(嬉しい感情がごちゃごちゃ)

オンバーンとかよく分かりまね?! オンバーンと分かるように細かく描写したつもりですが『オンバーン』という名前は書いてなかったので……
あぁりがとうございます(´;ω;`)

[返信][編集]

120 :げらっち
2022/10/08(土) 23:46:41

>>95にオンバーンと書いてあるぞい
何問か間違えたと思ったが大丈夫だったw
最後の質問チャーフル×4wwww

[返信][編集]

121 :ベリー
2022/10/08(土) 23:49:18

>>120
ホントダァアーボが名前言ってた()
シュウの執着率は最期の足掻きに限らず本編でも重要なので取り敢えず出してみました(?)

[返信][編集]

122 :ベリー
2022/10/11(火) 19:44:12

 《少年》

ずっと培養槽の中にいた。生まれた日なんて分からないし、まず僕が生まれた日の定義が曖昧だ。
 体ができた時? 意識が持てるようになった時? 別にどうでも良いんだけど。少なくとも僕の体より精神の方が若いのはわかる。
 意識が持てるようになった頃にはある程度の知識と自我があった。だからこそ、動けずに居た培養槽は退屈で仕方がなかった。けど、遂に培養槽から出して貰えた。
  初めて外に出た。初めて体を動かした。初めて声を出した。初めての自由だ。
 でも、そこは地獄で痛くて辛かった。知らない生き物が襲ってきて、知らない人達が襲ってきて、食べ物も不味い。
 僕が思ってたより、この世界は絶望で満ちていて、救いはないんだなって。たった生まれて数年なのにそう悟ってしまった。

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123 :ベリー
2022/10/11(火) 19:46:46

 窓が無ければ光もない。ただ世の異臭を詰め込んだ広間に仕事人の私達は各々寝転がっていた。
 私は先程助けた少年を胸に、壁に寄りかかっている。アーボは個人の部屋を持っており、わざわざここで夜を過ごす理由なんてない。
 外は年がら年中曇りのような天気で、夕方になっても光の強さは変わらないため、体内時計が狂いそうだが、就寝時だけ光が消されるため辛うじて朝と夜がわかる。

「怖い……嫌だ……」

 そして、私の胸でずっと唸る少年。名前は『フジ』『富士』と書いて『ふじ』と読むのだが漢字という概念がここにあるのか分からないため漢字は伝えなかった。富士は不老長寿、無事って意味があるとソレイユに聞いた事があるため、そう名付けた。

「怖くて、不安で、絶望で……この世界に救いなんてなかったんだ……」

 フジって何歳だ? 見た目三歳ぐらいだよね? 悟るの早くない? 十一歳の私でさえこの一年でその境地に行ってないよ。
 この世界に救いなんて無い……か。私は今のままでも幸せだとは思う。怪我はするけど、食べ物もあるし、アーボもいるし。
 村に住んでた時も幸せだったけれど、ソレイユに肉を潰されたり内蔵引き出されたり、バケモノに頭潰されたりして痛い事もあるから。
 ここは酷いとは思うけど慣れればいい環境だ。だからか、最近はピラミッドになるという熱意が冷めてきている。

「ここはさ、臭いし怖いけど慣れればとてもいい場所なんだよ。ご飯あって強くなれば怪我もあまりしない。私はアーボに助けられてるから楽なだけかもだけどね」

 私は苦笑いしてフジに微笑んだ。フジは顔をさっきよりも歪ませている。
 あれ、なんか反応が悪い。言葉を選び間違えたかもしれない。

「レイはおかしいよ」
「私も最初はここ地獄だと思ったよ」
「違う。ここじゃなくてレイがおかしいの…… ここはおかしい人しか居ないの?」

 そう言いながらフジは瞳に大粒の涙を浮かべ始めた。私がおかしい……意味は分からないけど、フジから見たら私はおかしく見えるのだろうか。
 どうすればフジを安心させられるのか……

「誰か助けてよ……」

 フジは言葉では私への拒否反応が伺えるが、私以外に縋る相手が居ないのかさっきよりも私にしがみついて居る。
 その様子が愛おしく昔の情けない私に似ていて何とかしてあげたくて色々な感情が渦巻いていた。

「私が助けてあげる」

 私の口は勝手に動いていた。助けるだなんてどうするのか、何をするのか。まずフジはどうして欲しいのかなんて全く分からない。けど、それでも、何とかしてあげたかった。
 フジは暗闇の中でもハッキリと見えるうるうるとしたルビーのような目で上目遣いをしてくる。

「ホント?」
「うん。私が救ってあげる。もしこの世に救いが無くても私が救いを作ってあげる」

 私はそう断言した。正直何も考えずに発言したため、言葉に重みは感じられないと思う。けど、フジは感極まったのか体を起こして私の肩に顎を乗せてさっきよりも強い力で抱きしめてくる。
 結構力が強い……フジの腕が回ってる私の脇下が結構痛い。
 それでも愛おしくて優しくフジの頭を撫でた。

 実は私はフジより身長が低い。フジは95cmぐらい。私は90cmぐらいだ。だから先程まで私の胸の中で泣いていたフジは寝転ぶような姿勢だった。しかし、背筋を伸ばして抱きしめられては私の肩にフジの顎が乗るのだ。
 ここで注意しておくが私は十一歳だ。十一歳である。なのにフジと同じ身長なのは凄く屈辱である。

◇◇◇
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124 :ベリー
2022/10/11(火) 19:48:36

「ぁぅ……っぐ」
「声抑えてて偉いね」

 この広間は他の仕事人も居るためあまり大声は出せない。それを理解できているフジにそう声をかけた。とても三歳程とは思えない精神だ。

「う……うわあああ!」

 しかし、その私の声がフジのダムを切ってしまったのか、フジが大声を上げて泣き出した。

「おい。うるせぇぞ!」
「個室じゃねぇんだぞ!」
「殺すわよ?」

 すると周りが怒声を私に浴びせ始める。中には殺害予告もあり、仕事人同士の殺し合いは禁止だが日頃の仕事内容から冗談とも受け取れられない。

「わあああ! ごめんなさい!」

 私は慌ててフジをあやすがフジも泣き止む様子がない。この環境に放り出された三歳に泣きやめという方が無理があるとは思うが、泣き止んでもらわないと殺されそうだ。アーボ来てえぇ!

 その夜私は一睡も出来なかった。

◇◇◇

 翌日、私はアーボとフジと共に仕事場に居た。アーボと"アーボック"に睨まれる私達は冷や汗をかきながら起立していた。

「レイ。俺は無意味にコイツを買った訳じゃない」
「コイツじゃない。フジだよ」

 私はそう言ってフジの名をアーボに伝えた。アーボは眉をピクッとさせてフジの方を見る。

「名前をつけたのか……どうなっても知らんぞ」
『?』

 アーボが呆れたような顔をして目を伏せた。私とフジは首をかしげるが、アーボはその言葉の意味を明かすつもりもないようで話を続けた。

「今日一日、レイ一人でコイツを守れ」
「守る?」
「ああ。コイツに傷一つつけるな」

 刺すような鋭い目でアーボは私を見つめた。アーボはそんなにフジの事が気に入ってるのか? いや、多分違う。アーボがよくボヤいているけど自分を守ることより、他人を守る方が数倍難しいらしい。きっとこれも特訓の一環なんだろう。

「……僕、死なない?」

 フジが震えながら私の後ろに隠れる。そりゃ自分より背の低い女子に守られるとなれば頼りないのは分かる。

「大丈夫。死にかけたらアーボが助けてくれるよ」
「何言ってるんだレイ。俺が助けるのはレイだけだ」
「……はぇっ?」

 私はフジを励ますためにそう言うと、アーボが冷たい声で言い放った。私は変な声と、冷たい汗しか出なかった。

「俺がコイツを買ったのはレイの特訓の為だ。コイツを守るメリットは俺には無い」

 フジが私の背中の服を掴む。私もこれは予想外でアーボの目を見つめることしか出来ない。しかし、返ってくるのは私達をゴミクズとしか思っていないような冷たい視線だ。

「コイツの外傷の数だけ処罰のレベルも上がる。せいぜい守って見せろ」

 そう言ってアーボは"アーボック"と共に止める間もなくどこかへ行ってしまった。
 私が、フジを守る? 傷一つ付けずに……?
 ハッキリ言おう。無理である。仕事人全員が表世界へ解放される程無理である。だって、私はアーボに守られないと生きていけないほど弱い。それに、ポケモン一匹すら殺せないのだ。
 守るなんて……どうすれば……

「レイ……」

 フジが不安そうにこちらを見ている。ああ、この顔のフジに上目遣いしたら表世界では死者が出るだろうな。今私は若干上から見つめられているのだが。
 そして、その表情は村にいた頃の私を思い出す。弱々しく怖がりで人すぐ頼る。私はフジを守れるだろうか。救えるのだろうか。

「私が救ってあげる」

 私は微笑みながらフジにそう言った。

◇◇◇
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125 :げらっち
2022/10/11(火) 22:47:19

フジ誕生の経緯だ!
/´・ω・` \フッジサーン?

レイ、施設に慣れてしまったのか…
私も障害者施設に勤めて初めの1か月くらいは地獄と思っていたが、慣れると天国になったので、順応の描写はリアルだ。

レイ身長低い!!
11歳女子の平均身長が140くらいだから、異常なほどだ。
つまりアーボは180㎝と推測できる。

なんだかんだいってアーボを頼っているレイ!

それと、絵についても触れる。
>>123のハグがかわいすぎる!!!腕の角度がやや変だが、顔がかわいいので全てOKだ。ソレイユがチャフコンになるのもわかる。

誤字も無くなり、素晴らしい!

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126 :ベリー
2022/10/12(水) 01:51:28

>>125
</^o^\>フッジッサアアアン!(((

慣れって怖いですね……
>>慣れると天国になったので、順応の描写はリアルだ。
うわああああありがとうございます!

レイ共にソレイユも病的に身長が低いです。身長が低いというか成長が遅いです。シュウが15歳と言っても信じられてる点。成長期が遅い点。ここに繋がってきます。ジーニア双子の兄も身長は低かったです。
え? レイナも成長が遅いって? 遅いけど見た目8歳なので、シュウの外見年齢と7歳離れています。ナニガアッタンダロウネェ

近い!アーボの身長は190cmなのですが、まあ90センチの約2倍だし……ということでこう書きました。まあレイ達の2倍ある身長と思っていただければ。
それでも高身長……

>>それと、絵についても触れる。
わー!ありがとうございます!
関節……難しいれす……特に抱き合いは複雑……
関節の違和感なく人のぬるぬるとした動きを描けるげらっちさんはホント凄い……
チャフコンw やっきーさんといいげらっちさんといい造語のセンスが素晴らしすぎる。そのセンスくれ……

誤字なかった!推敲しました!ヤッタ-!
文量が少なかったのもあるだろうけど嬉しいです。

あ、話が変わりますが
今後箱庭とか、マイクラ二次創作とか沢山小説スレが立つと予想されますが、多分げらっちさんは全ての小説スレに感想を書きますよね……
結構重労働だと思うので、疲れた、追いつけないと思ったら無理に自分の感想書かなくて大丈夫です。 
あ、感想はめっちゃ嬉しいですし、ウキウキしながら感想待ってて来たら『わあああい!』って跳ね上がってます!嬉しいです!感想が欲しくない訳じゃないです!欲しいです!
けど、それがげらっちさんの負担になって欲しくなくて……
感想は欲しいけど負担になって欲しくねぇから自分大切にしろや!
ってことです。自分の文力が無くてごめんなさい……

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127 :げらっち
2022/10/12(水) 02:05:17

いえいえ。
箱庭は少し先の掲載になるでしょうし、現時点ではベリーさんの小説が一番くらいに面白いので好きで感想書かせてもらってます。
全然負担じゃないどすよ!
ま、全てのゲラフィ小説に感想を書くのが管理人の役目でもあるのだがな!

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128 :ベリー
2022/10/12(水) 02:10:00

>>127
うわああああい!嬉しいどす。
ゲラフィの全ての小説に感想を書くのが役目……すげぇ。意識高ぇ。
きっと人間関係円滑になるでしょうし、書いてる側も嬉しいと思います。実際ここに喜んでる人が居るので。
まあ、つまらん小説があったら感想辞めても誰も文句言わないと思います。
げらっちさんの意識の高さは尊敬致します。私もなるべくゲラフィの小説スレの感想書くようにしようかな……
でもお身体1番です!げらっちさん社会人なんですから!私達学生みたいに病院いったらお金かかるんですから!健康第一!((この時間まで起きてるため説得力無い

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[管理事務所]
WHOCARES.JP
113 :げらっち
2022/10/08(土) 02:16:36

3代目との出会いだ!

アーボとレイ、結構仲良い!

カビ生えてるの食べられるのか!
アーボはレイの2倍の身長…アーボ2m以上ある?

ドラマの作り方が上手い。
しかし細かい点で疑問がある。奪い合いはご法度なのに奪い合っている点、ポケモンを一匹も殺せないとされるアーボが一番強いとされる点などだ。
それと今に始まった事ではないが、アーボとアーボックという名前が少しいやかなり紛らわしい…アーボはアーボックの進化前だ…
あとは誤字脱字も少々…

そして絵柄好き。殺伐としてる割に可愛らしいw

115 :げらっち
2022/10/08(土) 15:24:38

読んでくれてありがとう!
戦隊学園の絵見せて…見せて…

あ、殺せないのレイだ…ねぼけてたので間違えたようだ。すまぬ…

誤字は「一歩づつ」だけど、今調べたら、実は「づつ」でもOKらしい(但し現代ではずつがメジャー)。

謎の肉塊…ポ○モンでは

120 :げらっち
2022/10/08(土) 23:46:41

>>95にオンバーンと書いてあるぞい
何問か間違えたと思ったが大丈夫だったw
最後の質問チャーフル×4wwww

123 :ベリー
2022/10/11(火) 19:46:46

 窓が無ければ光もない。ただ世の異臭を詰め込んだ広間に仕事人の私達は各々寝転がっていた。
 私は先程助けた少年を胸に、壁に寄りかかっている。アーボは個人の部屋を持っており、わざわざここで夜を過ごす理由なんてない。
 外は年がら年中曇りのような天気で、夕方になっても光の強さは変わらないため、体内時計が狂いそうだが、就寝時だけ光が消されるため辛うじて朝と夜がわかる。

「怖い……嫌だ……」

 そして、私の胸でずっと唸る少年。名前は『フジ』『富士』と書いて『ふじ』と読むのだが漢字という概念がここにあるのか分からないため漢字は伝えなかった。富士は不老長寿、無事って意味があるとソレイユに聞いた事があるため、そう名付けた。

「怖くて、不安で、絶望で……この世界に救いなんてなかったんだ……」

 フジって何歳だ? 見た目三歳ぐらいだよね? 悟るの早くない? 十一歳の私でさえこの一年でその境地に行ってないよ。
 この世界に救いなんて無い……か。私は今のままでも幸せだとは思う。怪我はするけど、食べ物もあるし、アーボもいるし。
 村に住んでた時も幸せだったけれど、ソレイユに肉を潰されたり内蔵引き出されたり、バケモノに頭潰されたりして痛い事もあるから。
 ここは酷いとは思うけど慣れればいい環境だ。だからか、最近はピラミッドになるという熱意が冷めてきている。

「ここはさ、臭いし怖いけど慣れればとてもいい場所なんだよ。ご飯あって強くなれば怪我もあまりしない。私はアーボに助けられてるから楽なだけかもだけどね」

 私は苦笑いしてフジに微笑んだ。フジは顔をさっきよりも歪ませている。
 あれ、なんか反応が悪い。言葉を選び間違えたかもしれない。

「レイはおかしいよ」
「私も最初はここ地獄だと思ったよ」
「違う。ここじゃなくてレイがおかしいの…… ここはおかしい人しか居ないの?」

 そう言いながらフジは瞳に大粒の涙を浮かべ始めた。私がおかしい……意味は分からないけど、フジから見たら私はおかしく見えるのだろうか。
 どうすればフジを安心させられるのか……

「誰か助けてよ……」

 フジは言葉では私への拒否反応が伺えるが、私以外に縋る相手が居ないのかさっきよりも私にしがみついて居る。
 その様子が愛おしく昔の情けない私に似ていて何とかしてあげたくて色々な感情が渦巻いていた。

「私が助けてあげる」

 私の口は勝手に動いていた。助けるだなんてどうするのか、何をするのか。まずフジはどうして欲しいのかなんて全く分からない。けど、それでも、何とかしてあげたかった。
 フジは暗闇の中でもハッキリと見えるうるうるとしたルビーのような目で上目遣いをしてくる。

「ホント?」
「うん。私が救ってあげる。もしこの世に救いが無くても私が救いを作ってあげる」

 私はそう断言した。正直何も考えずに発言したため、言葉に重みは感じられないと思う。けど、フジは感極まったのか体を起こして私の肩に顎を乗せてさっきよりも強い力で抱きしめてくる。
 結構力が強い……フジの腕が回ってる私の脇下が結構痛い。
 それでも愛おしくて優しくフジの頭を撫でた。

 実は私はフジより身長が低い。フジは95cmぐらい。私は90cmぐらいだ。だから先程まで私の胸の中で泣いていたフジは寝転ぶような姿勢だった。しかし、背筋を伸ばして抱きしめられては私の肩にフジの顎が乗るのだ。
 ここで注意しておくが私は十一歳だ。十一歳である。なのにフジと同じ身長なのは凄く屈辱である。

◇◇◇
挿絵 cdn.wikiwiki.jp

125 :げらっち
2022/10/11(火) 22:47:19

フジ誕生の経緯だ!
/´・ω・` \フッジサーン?

レイ、施設に慣れてしまったのか…
私も障害者施設に勤めて初めの1か月くらいは地獄と思っていたが、慣れると天国になったので、順応の描写はリアルだ。

レイ身長低い!!
11歳女子の平均身長が140くらいだから、異常なほどだ。
つまりアーボは180㎝と推測できる。

なんだかんだいってアーボを頼っているレイ!

それと、絵についても触れる。
>>123のハグがかわいすぎる!!!腕の角度がやや変だが、顔がかわいいので全てOKだ。ソレイユがチャフコンになるのもわかる。

誤字も無くなり、素晴らしい!

127 :げらっち
2022/10/12(水) 02:05:17

いえいえ。
箱庭は少し先の掲載になるでしょうし、現時点ではベリーさんの小説が一番くらいに面白いので好きで感想書かせてもらってます。
全然負担じゃないどすよ!
ま、全てのゲラフィ小説に感想を書くのが管理人の役目でもあるのだがな!

95 :ベリー
2022/09/30(金) 00:45:38

《アーボ》

『何故、肩入れする。女に』

 俺こと、アーボは施設初日のレイを鍛えるために、レイが自力で上がれない程深い穴にぶち込んでそれを見守っている。
 するとアーボックからそう"意思"が伝わってきた。

「俺には、子供が居たんだよ。お前と会った2年前よりもっと前のことだ」

 血の匂いがする。しかも新鮮で健康そうな、美味しそうな血だ。レイが居る落とし穴の中から。そこへ腹を好かせたポケモンが大小関わらず穴へ入っていく。

『わからない』
「似てるんだよ。俺の子と……まぁ、まさかな」

 今や自分の子供の顔もぼやけるほど忘れてしまっている。昔のことを、幸せだった頃を。昔の記憶でハッキリ覚えて居るのは、施設でも眩しい笑みを浮かべていた彼女だけだった。

「別に……誰も恨んじゃいないさ」

 誰に言ったのだろう。自分か、アーボックか、それともレイか。誰でもいい、ただ口からポロッと零れた。

『しかし。やりすぎ』
「そうか? 身体強化には丁度いいだろう」

 レイを深い深い穴の中に入れる。レイは表世界から来たばかりのため臭くなく、血の匂いも鉄の匂いがプンプンしていて食欲をそそる。
 そのため、初めは小さなポケモンが穴に落ち、レイがそのポケモンを殺す。すると、そのポケモンの血と、レイの怪我の血で少しづつ強いポケモンがおびき出される。
 そういう仕組みでレイの特訓をしている。勿論死にかけたら助けるし、耐えられた時間によってレイのレベルが分かる。

「うあああぁぁぁ!」

 喉を潰したような、幼い子供の鳴き声が穴から聞こえる。そんな声量を出せるならまだまだ追い込めるな。そう思い、ポケットから少しカビの生えた乾燥させたオレンの実をかじった。

『女。死なないのか?』
「死なない」

 俺は確信してそう言った。先ほどオンバーンというポケモンに襲われていたところを助けたが、その時の傷がもう癒えていた。ただの人間とは到底思えない。これほどでは死なないだろう。

「ヒィァッ……」

 微かにヤカンがお湯をわかせた音がする。あぁ、流石にまずいな。そう思い俺は穴の中に堕ちた。

 ◇◇◇

冷たい。冷たい。暑い寒い暑い寒い。
 クソ野郎クソ野郎クソ野郎クソ野郎クソ野郎クソ野郎クソ野郎クソ野郎おぉっ!

「うがあたあぁぁぁぁっっっ!!」

 大津波のようなどす黒い思いが体の中全身を襲う。目の前になだらかに静かに流れる川。そして、季節外れの雪がシンシンと降ってくる。俺の心とは真反対に、静かに穏やかになだらかに。
 降れよ……もっと雪よ降れッ! 降って降って村を、街を、地方を、世界全てを埋めつくして、全生物を窒息させるほど降り積もれ! 暖をとって幸せに笑ってる家族も、赤ん坊も、少年少女もっ! 俺のように絶望に呑まれている哀れな人々さえも全て苦しんで死ねっ! 全部全部消えてしまえっ!

「あああああぁぁぁぁ!!」

─その日、カロス地方のフロストケイブでは歴史で類も見ない大雪が降り、川が荒れ、フウジョタウンは大打撃を受けた。
 一人の少年によって。一人の憎悪に包まれた精神のバケモノによって─

 第二章 世界の由 終