日記一覧
┗262.備忘録(148-152/152)
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152 :
鶯-丸
03/05(日) 22:00
不変の物などないさ。
今この瞬間と、さあ、たった今の俺と。
手に付いた墨、目で見た情報、手指の筋肉……は、こんな事では流石に断絶しないか?
人の体の弱さ、というのには、二年以上経っても慣れないものだ。
それでも変わらぬ物があるとすれば。
それは、強く思い、強く願い、強く祈った心に宿るんだろうな。
俺が今こうしてここに在るのは、多分そういう物が凝ったからだ。
こればかりは、どうでも良いとは言えないな。
なんでもいいし、どうでもいい。
世の中の大凡全ては由無し事で、淀みに浮かぶうたかたも同じ。
流れゆく川はいずれ大海に注ぎ、輪廻を繰り返す。
それでも、命は大事にした方が良い。
何故って、川下りは楽しいからだ。
楽しい時は、一時でも長く続けと、誰だってそう願うだろう?
その瞬間を切り取って固めて、では駄目なんだ。
川下りの楽しさというのは、流れてこそだから。
景色が移り変わり、風が頬を撫で、水音が鼓膜を揺らす。
切り取ったんじゃあ、それが得られない。
だから、止めたりしてはいけない。
なあに、大丈夫さ。大概の事は、なんとなく上手く転がっていくものなんだ。
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151 :
加-州-清-光
02/24(金) 00:14
さみしい。
そう口に出したら、思いの外しっくり来てわらっちゃった。
寂寞、寂寥、寂若無人、他諸々。
この「寂」という字は、屋根の下で人の声が細く小さくなった様云々……なんてのは、歌-仙のお得意分野だから、置いておくとしても。
一人ぼっちは寂しいって事を、知ってる刀はきっと多い。
蔵の中、自分以外みんな大人しくって話し相手にもならない、とか。
ぽつねんと床の間に飾られて、掛け軸は書き上がったばっかりで、とか。
他の連中は討ち入りに連れて行って貰っているのに、自分は寂しくお留守番、とかさ。
屋根の下、自分の声だけが、か細く響く空間を想像してみる。
さみしい、こいしい、つらい、くるしい、だれか。
そう呟いても、壁にぶつかって落ちるだけで、外に漏れる事もない。
それって結構にしんどい事だってのは、俺みたいな若造にも想像は付くよね。
もし、そんな空間に、一つ手が差し伸べられて。
話を聞いてあげるよ、一緒にお茶を飲もう、君を使ってあげよう、なんて甘言が囁かれたら。
その手を握って、引き摺り込んで、俺を可愛がって、俺だけ愛して、なんて。
そりゃあもう我が儘三昧になりそうな予感がする。
装備したら外せません、呪いのアイテムです、一生愛してあげてください、なーんてね。
それって俺の美学に反する。だって全然可愛くないもん。
さみしい、が呪いになる前に。
おいしいものを食べに行って、誰とも知らぬ誰かの話を聞きに行こう。
茶器が良いかな。掛け軸でも良い。ああ、嫁入り道具の連中でも良いな、綺麗だし。
そうしてさみしいを蹴散らして、力強い声で笑っていたい。
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150 :
宗-三-左-文-字
01/03(火) 03:06
「寂しがり屋なんだねぇ」
新年の祝宴で、ふいにそう言われた。
寂しがり。僕が? 一体何を思ってそんな事。
「ぼくもそうだから、分かるんだよ」
――好い加減なことを。
「まあ、まあ。騙されたと思って、どうだい、一つ。縛られてみない?」
――謹んでお断り申し上げます。
漸く自由に羽ばたく事を許されたのに、今更、何を好き好んで縛られる事があるのか。
貴方の様な変態嗜好では無いんですよと眉を吊り上げるのに、彼は一向に引かない。
うっすらと透けて見える縄を服の上からなぞって、更に言葉を続けてきた。
「飛び回るのは、安心出来る巣を探してるからだろう? ぼくたちは刀だ。主人を求め、所有される事を願う。自由な刀はそのまま錆びて朽ちるだけ。ご主人様に愛されている、その証拠が安心になるんだ」
「この縄は、自ら結ったものだけど。これを握る事でぼくの全てはご主人様のものになる。ぼくは自由にしていても不自由で、だから寂しくないんだ。本当は、ご主人様手ずから縛って欲しいんだけど」
「ご主人様に縛られ、愛でられ、執着される。一体それの、何が不満なんだい? それこそ至上の喜びだろうに」
――僕の主人はただ一人。歴史の荒波に呑まれて死にました。それで結構ですか。
「貞淑な刀だ。可哀想なくらいだよ」
――貴方、こんなしつこいタチでしたっけ?
「どうだったかな」
席を立てば、それ以上彼は追って来なかった。
取り敢えず適当に顔なじみの傍に腰を下ろして次々杯を干していると、流石に見咎められて、酒を取り上げられてしまった。
――のみたい気分なんですけどね。
「別嬪さんには俺も飲んで欲しいんだけどね。ちょっとインターバル。な?」
――はあ。
全く、伊達の刀は目が敏くていけない。
気遣わしげに笑いかけてくる短刀に宥められながら食べる肴が、これまた美味しいのが腹が立つ。
「どうせならさ」
――なんです?
「物憂げな美人も結構だけど、からっと笑ってる方が幸せそうでいいなーって思うよ、俺」
――まったく、よく舌の回ることで。
「自分の幸せを追って、悪い事って無いと思うぜ」
――考えて置きますよ。僕はこれで、結構幸せなつもりなんですけどね。
そう。
幸せなはずだ。
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149 :
御-手-杵
12/11(日) 21:29
雪が降ると、むかーし一緒に居た奴を思い出す。
名前は……なんだったかなあ。刀だったよ。誰かの腰にぶら下がってた。
そいつは、雪を見た事が無かった。
だから俺の逸話を聞いて、いつか雪景色を見せて欲しい、と言っていた。
見せてやれなかったけどなあ。俺は突くしか出来ないから。そんな力は無いんだって。
今日だって、本丸は快晴だ。
ただ、俺は雪を見た事が有ったから、代わりに語って聞かせてやったっけ。
雪ってのは白いんだ、とか、ぜーんぶ覆い尽くしちゃうんだぞ、とか。
雪で人形を作る人間の話、積もった雪に人間が苦労する話。
生憎当時は、冷たさみたいなのは今ほど分かんなかったんだけどさ。話せる事は全部話した。
あんまりにも期待に満ちあふれた様子で聞いてくるんだ。話してやりたくなるだろ。
そいつは、本丸に居ない。
だから余計、雪が降るとふと思い出すのかも知れないなあ。
あいつに見せてやりたいと。人の肌で触れる雪とはこんな物なんだぞって、教えてやりたいと。
そんなどーしようもない事を、ふっと思っちまうのも、この身故の事なのかねえ。
脇差に強請られて作った雪だるまと雪兎、あいつが居たら、きっと目を輝かせて喜ぶ。
名も忘れたあいつが、元気でやってると良いなあと思う。
どっか遠くで、雪を見られていれば良い、と。
本当は、俺が見せてやれれば良いんだろうけど。ま、色々、な。
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148 :
乱-藤-四-郎
09/26(月) 23:25
カワイイって言われるのは好き。
だけど、格好いいとも思われたい。
折角の体だから、愛したいし与えたい。
だけど生まれ持った性分は、愛される事を望んだりもする。
ぜんぶぜんぶぜーんぶ。アレもコレも欲しくなる。
ボクって贅沢なのかな? ワガママなのかな?
刀は、ううん、道具や絵も、声無き物は人の鏡だ。
綺麗だと思って見れば綺麗に見える。
可愛くも、格好良くも、醜くも、素っ気なくも見える。
こうだって思ってみれば、そう見えるものなんだよ。
ボクのこの身を知らない人が、ボクの乱れ刃を見たところで、きっとこんな姿は思い浮かばない。
もしかしたら勇ましい武人を思うかも知れないし、猫や狼や鳥を思うかもしれない。
ボクがこう見えるのは、ボクを知っている人にだけ。
つまり、ボク達は何にでもなれるんだ。
ボク達は、望まれた姿で人と対峙する。
だからかな? 何にでもなれるから、何者でもあるから、全てを欲しくなっちゃうのかも。
一緒が良いけど、一人が良い。求めたいけど、欲されたい。
カワイイって頭を撫でて、格好良いってメロメロになって?
疲れたーってボクに凭れ掛かって、お疲れ様ってボクを懐に抱いて。
思いっきり翻弄されて、目が回るほど振り回して。
愛してると嘯いて、愛されたいと嘆願して。
ぜんぶぜんぶぜーんぶ、全てをボクに頂戴? 良いなあって思った物ぜーんぶ、ボクにくれるよね?
アレも、コレも、ソレも。
全ての目線をボクに集めて。誰一人としてボクを見ないで。
こんなワガママもカワイイでしょ? って。あるじさんは呆れちゃうかな。
……あ。こうして書き連ねてみてやっと分かった。
やっぱり、あげるんじゃなくて欲しいんだ。うーん、まだまだ半人前!
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