スレ一覧
┗1407.telescope
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Dr./レ/イ/シ/オ (H/S/R)
2024/12/17(火) 13:26
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46 :
Dr./レ/イ/シ/オ (H/S/R)
2025/04/30(水) 12:40
今日は講義こそ入っていないものの、第一真理大学内での些細な、けれど直接出向かなければならない幾つかの予定の隙間。よく日の当たるベンチで全身に感じる温度が心地良い。学内の食堂もカフェも学生たちで賑わっているが、次の予定を思えば食事を摂るには時間が足りていない。だから暖かな陽射しの下でタスクの確認ばかりを終えて、やけに寒さが身を苛んだ昨夜のことを思い出している。毛布に包まって震えていたあの男が、今日はあの哀れにも縮まった肩を理性ではなく自然な形で緩めているだろうかと。彼の仕事に余計なことを考えている暇も無いはずだが……これを見たときに、少しでも温もりを思い出せればいい。もし日が落ちるより早くこの書き置きに気が付いたなら、ペットカメラを覗いてみろ。きっと窓辺には、気ままに眠る創造物たちの姿が見られるだろう。
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45 :
Dr./レ/イ/シ/オ (H/S/R)
2025/04/24(木) 22:40
幾つかの本棚を擁するこの書庫で、どこかの頁を発端として話題に昇る議題は気が付く限りいずれも興味深く目を通している。最近見かけたものは試し行為如何、それに愛情の秘訣だとかいうものだ。……が、どちらも僕が語るには分不相応、実態を伴わない言葉は上滑りするばかりだろう。こういう話題は、僕よりもこの日記で「彼」と称されるあの男の方がよっぽど語る理屈を持っているはずだ。
という話を何故今更に記しているのかといえば、この夜に僕は彼に思いを馳せるしかない。学会の伝手で足を運んだ惑星はピアポイント基準によるところの一日で帰還するには些か難しく、まあついでとばかり諸々興味を満たす為の予定を詰め込んだもので、今晩は同行の学者と共にこの星で夜を越すことになる。名目として立てた視察もその他散策も滞りなく済ませた。明日の朝からも少し、別エリアでの行動予定が入っている。カンパニーがこの星と関係を結ぶにあたって無益なものと取り落とした技術について、語る機会はまたいずれ訪れるだろうというのが僕の見立てだ。……つまり、ゆっくりと風呂に浸かる暇が無くとも然程問題を感じない程度には、自適な時間を過ごしている最中というわけだが。
静かな夜に、思考の海は凪いでいる。「彼」からの連絡も途切れた。どうやらいつもとは逆に、僕と代わってあの男が長湯をしているらしい。端末のフォルダには、身を寄せ合って眠る男と創造物3匹の姿、それから僕を一泊の宿の前で出迎えた黒い猫の写真が並んでいる。足元に寄りつく正真正銘猫の毛並みを見て覚えた気持ちを、恋しい、と呼ぶのだろう。それを今この時にも抱えているから、こうしてペンを握っている。
さて、冒頭の話題に戻るとしよう。僕は自分が語る言葉を持つ範囲を飛び越えて何かを記すつもりはないものの、捲った頁に記された思いから思考を触発されるというのは儘あることだ。だから、ここで僕の好きな言葉について綴る。本来なら引用の要件を満たすべきだが、この場所のルールに抵触する可能性を鑑みて軽く触れるのみとする。――広い宇宙、遥か過去のある詩人曰く、だ。人というのは、それぞれが個々人である限り、孤独から逃れることはできない。けれどもしかし、根底には同一のものが流れている。社会に於いてその共通項を知ったとき、つまりは道徳や愛と呼べる感覚を知ったとき、その孤独は永久ではない。
詩情を抜いて要約すればなんとも陳腐な言葉だ。本来ならば、原典に忠実であらんとするならば、詩情を抜き去ることがまず愚鈍極まりない。このあたりの文学は僕の専攻ではなく、ここでは深く語りもしないことで妥協点とする。だがこの結論に辿り着く一つの文章を、僕はなんとなく、漠然とした道標のように抱えている。そんな序文から始まる詩集をよすがにして、ただ一席の不在を埋めるように繰り返し捲っていた夜も、今となっては随分懐かしい。
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44 :アベンチュリン(hsr)
2025/04/16(水) 11:28
彼が初めて僕の家に泊まりに来たのは寒い冬だった。
……寒がりな僕は未だに寒い寒いと夜が来る度に彼にしがみついているのだけど、そんな僕を置き去りにして周りは冬の景色から春の景色へと移り変わり桜もすっかり葉桜になろうとしている。
それもそのはず、振り返ってみたらその日から今月で5ヶ月。来月で6ヶ月になるのだから。
半年と言う月日はそうだな、長いとも短いとも言えない。ただ愛おしいと思う年月だと思う。
来月の半年記念日を盛大に祝ってくれたら、ホワイトデーを忘れてたのをチャラにしてあげるよ。レイシオ。
ホワイトデーと言えばスパダリは30倍返しが基本だと言うだろう?だから彼に盛大に祝ってほしくて、信用ポイントを振り込んだんだ。……そっくりそのまま振り込み返されたけど。今度の記念日にもこっそり振り込んでやろうかな。まあ、何が言いたいかと言うと
愛してるよ、レイシオ。来月の記念日は忘れないように。
君の見たがっていたひまわりは、ほらすぐそこに。
一つ飛ばしで未来について語るとは、君も君で大概なせっかちだな。それに僕は、その日は君から祝ってもらえるものだと思っていたんだが。生憎だが僕はサプライズなど器用なことはできないし、恋人の望むものを言い当てられるほど人の振る舞いの機微に聡い性質でもない。それでも毎月の恒例になれば記念日には期待もする。君を喜ばせたいと願う、凡人相応の心を持っている。――だから、6月だ。6月なら、考えておく。信用ポイントは不要だ、期日までに君も案を提出するように。その頃には雨の増える時期も近付いているだろう。君が雨を厭うなら、どこか気候の安定した観光惑星へ行くのもいい。ひまわりを見るのは、それよりも後の話だ。
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43 :
Dr./レ/イ/シ/オ (H/S/R)
2025/04/10(木) 23:51
スターピースカンパニーの戦略投資部がカンパニー傘下の食品メーカーからコラボ商品を発表する、という話を事前に聞いていたのは、肖像権含む各種権利関係の窓口を一任している補佐を通して「きのこ」か「たけのこ」に拘りはあるかという確認を受け取っていたためだった。さて、この現状からわかる通り僕は「たけのこ」の熱心な信奉者ではなかったので、僕の写真は十の石心たちと共に流通に乗せられているわけだ。並んで語られるふたつにチョコレート菓子として優劣はなく、つまりはどちらでもいい。以上を僕からの正式な表明とする。
以下、夜桜の日の話をのちほど。
ただ何気なく、カンパニーから「きのこ」の完成品を受け取っておけばよかったと話した夜。それはともかくとして、ギャンブラーとふたり、彼の自宅近くにあるチェーンストアまで足を運んだ。住宅エリアはすっかりと静まり返って、人の気配を感じることもない夜更けだった。
周期的に気候の変化があり、季節によって自然な風景の移り変わりが見られるというのはピアポイントの美点の一つだろう。ちょうど見頃の桜並木が心地の良い夜風に枝を揺らされ、舞い落ちる淡い花弁のひとひらに視線を誘われた。月明かりが照らす下、隣を歩く彼の金髪に桜の花が彩りを添えるものだから、その横顔が何よりも一番この季節を象徴した景色のように思えた。薄闇の中で地面に落ちた花弁は月の光を反射して白く、それは他愛もない会話をしながら少しも歩けば辿り着くチェーンストアの人工的な明かりの白さとは全く別で、砂礫に覆われようと胸の奥を擽るような美しい白だった。きっと、あの男と歩く道程だからこそ目に留めた色彩だ。
前の季節の終わり、花を見に行きたいと言っていた男との約束は果たせたことになるらしい。こんな数分の距離で、と思わなくもないが、その数分で焦れていたのが僕なのだから我ながら呆れてしまう。手を握るだけ、肩を寄せるだけでは足りなかった。足早に帰る玄関先で落とした彼に懐いた花弁は、もうどこにも見当たらない。桜はそのうち新緑の色に染まって、次の季節がやって来る。
のちほど、と言ってなかなか記録を書き起こせずにいた。これは独り言でしかないのだが、鍵の掛かってしまった愛読書の一冊に新たな名前が連名で記されているものだから勝手ながら嬉しく思う。開錠されている間、ふたりの筆で綴られるやり取りを愛情の断片を、一読者として愛読させてもらっていた。長く育まれた縁に少しばかり尊敬の気持ちも抱いて。私立探偵と古書肆の彼らに穏やかな日々があらんことを。
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