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193.『戦隊学園』制作スタジオ
 ┗154-163

154 :第5話 1
2021/06/24(木) 21:16:57

戦隊学園の夜は静かだ。

唯一活動している忍術クラスは、夜の闇に忍んで殆ど物音を立てない。
旅館のような学生寮はひっそりと静寂に包まれている。

だが、私たちの部屋だけは違った。
夜になってもスマホから大音量で音楽を流していた。隣の部屋からクレームが来ようが知ったこっちゃないと無視を決め込んだ。

私は2段ベッドの上段に寝っ転がって天井を見上げていた。下段から『おジャ魔女登場 ドッカ~ン!』とメロディが聴こえる。
「何この曲?」
「40年前のアニソン!」
「ふぅん。」
私は起き上がって下段を覗き込む。
「あ!見たな。」
楓はT字で足の毛を剃っていた。
「あたし濃くて困ってるんだぁ。七海ちゃんはどう処理してる?」
「私は白くって目立たないからそのままにしてるよ。」
「うわ!うらやまだなぁ。」

すると突然、ピンポンパンポーンと言う音が鳴った。
「音楽止めて!」
「えっ」
楓は急いでスマホの音量を落とした。滅多に使われることの無い館内一斉放送だ。緊急事態だろうか。

『女子寮南棟に男子生徒が侵入した模様。戸締りに注意し、何かあれば寮長に内線を入れろ。繰り返す、女子寮南棟に男子生徒が侵入した模様・・・。』

「南棟、この建物だ!」
「ふむ。」
私はベッドから飛び降りた。
「ヘンタイかな?七海ちゃん?」楓は何故だか少し嬉しそうにしていた。
「とにかく鍵が掛かってるか確認しよう。」
私と楓はごちゃごちゃした部屋の狭い隙間を抜けて扉に向かう。

サムターン(内側から鍵を掛ける取っ手)は縦になっていた。

「不用心だよ楓。」
「はい?七海ちゃんがジュース買いに出たのが最後じゃん!」
「あ、そうだった。ごめん。」
そう言えばじゃんけんに負けて私が外の自販機に買い出しに行ったのだった。その時に両手が塞がっていて閉め忘れたに違いない。

私は扉に近付いて鍵を閉めようとする。すると外から足音がした。こちらに向かってくる。男の荒い息遣いが聞こえる。

「楓、もうそこまで来ているみたいだよ。」
「えっ!?」
こうなれば迎え撃つしかない。
「私が“キララ”決めるから、相手が怯んだところに、楓が椅子を振り下ろして。」
「お、おっけい!」

私はタクトを扉に向けた。
ハァハァと言う息遣い、ドアノブが回り、扉が開く――

「キララ!」
星屑が不審者を襲った。
「わぁ!何すんねん!」
「え。」今の関西弁は。だが止める暇もなく楓は座椅子を振り下ろしてしまった。
「うぎゃあ!!」

公一は殴り倒された。

[返信][編集]

155 :2
2021/06/27(日) 01:11:13

「痛い~!死んでまう~!!」
「ごめんって!ほら冷やしたげるから!」
公一の額には漫画のようなでかいたんこぶが出来ていた。楓は私物であるカブトムシ柄のタオルを濡らして患部に当てた。
「ン?なんやこのタオル、くっさいで。」
「臭くなんて無いよ!」

そう言うと楓は部屋にある巨大な水槽にタオルをひたした。

「待たんかい!水槽の水で濡らしてたんかい!ふざけんなや楓!なんやねんこのえっらいごっつい水槽は!」

楓はよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに目を輝かせてレスポンスする。
「カエルの王様と鉄のハインリヒ!ハインリッヒは女の子なんだけど王様のことが大好きでね・・・!」

要するにこのゴージャスな水槽には雌雄のカエルと淡水魚、井守が棲んでいるわけだ。
公一はばつの悪そうな顔で楓を見ている。たんこぶの痛みは消えてしまったのだろうか。

「楓はオトメチックだからね。」
私と公一は顔を見合わせる。

「それで、不審者の真似事をしていたのはどういう用件?」

公一は涙目になって答えた。
「不審者ちゃうで!た、助けてほしくて・・・」

「kezuriで連絡くれればよかったのに。」
「そんな暇ないねん!俺、命を狙われとるんや!匿って!」
次の瞬間、部屋の扉がドンドンと叩かれた。「いるんだろう!!出て来い江原公一!!」

[返信][編集]

156 :3
2021/06/27(日) 01:17:37

「早く開けろ!こちらにはマスターキーがある!応答しないのなら無理矢理開けるがそれでもいいか!!」

「喚かないでよ。ちゃんと開けるから。」
私はカチリと鍵を解除した。

廊下には5人の男子生徒が立って居た。

「こんばんは。夜中にうるさいんだけど。」
「どの口が言うか!夜半まで騒音を流していた事実は知れているぞ!14件の苦情が、我がソウサクジャーに届いている!これは寮則違反となる!」
「ソウサクジャー?」
「風紀戦隊ソウサクジャー、校則違反を取り締まる戦隊だよ。」楓が耳打ちした。

「ふぅん。あなたの声の方がうるさいよ。」
「何ィ!!!」

「シャラップ。」
大声で威張り散らす小男を、茶髪のマッシュルームカットがなだめた。

「我々が来たのはそんな理由ではありません。ソウサクブラウン・風紀委員長です。ボクの茶色は、学園一美しい。」

「美しい?なら見せてよ。」
「残念ながら、ボクは犯人逮捕の瞬間にしか変身しない主義なんですよ。」
委員長はあからさまな作り笑いを浮かべると、ずかずかと私と楓の部屋に押し入った。

「ちょっと。仮にも女子の部屋に、断りも無しに入り込んでいいと思うの?」
「令状は取ってあります。」
委員長は白い手袋をはめた手で四つ折りの紙を取り出す。パッと開いたその紙は、戦隊の歴史の授業のレジュメと大差ないように思えた。

「江原公一が此処にいるはずだ。隈なく捜せ!」

委員長の指示のもと4人の男が部屋に押し入る。狭い部屋に5人もの男が入り、非常に窮屈に見えた。
男たちは棚を開けたり、椅子のクッションを外したり、ベッドのシーツを引き剥がしたりとかなり横暴な振る舞いをする。

「勝手に開けないで!」と楓。
「やめてくれない?ここに公一は居ないから。」
「そんな筈はありませんね。彼がこの寮内に逃げ込んだのはわかっていますし、匿うならこの部屋しかありませんから。」
委員長は今度は作り笑いではなく、嗜虐的な笑みを浮かべた。

「奴の犯した校則違反は重大です。見つけ次第、退学とする――」

「やめて、酷いことしないでよ!!」
楓の叫び声。
男の1人が水槽をガンガンと叩いていた。
「何だこの悪趣味な水槽は!寮へのペットの持ち込みは禁止されているはずだが!」

「大概にして!!」

私は怒鳴った。
「公一は居ないってわかったよね!?間違いを謝罪して出て行ってよ!」
委員長は茶色の眉をひそめる。男の1人が彼に「確かに、何処にも居ませんね」と報告した。

「ちっ、」
委員長は二本指を振り撤収の合図とする。男たちはぞろぞろと部屋を出て行く。
「ごめんなさいも無し!?」
ソウサクジャーは私を無視し扉をバタンと閉めた。


「――OK。」

「し、心臓止まりそうやった!!」
水槽の浮き草の下から公一が顔を出した。見事な狐隠(きつねがくれ)の術であった。

[返信][編集]

157 :4
2021/06/27(日) 01:22:19

「あなたの犯した校則違反って何なの?」

「クション!俺は何もしてへんで。」
公一は腰にタオルを巻き、水槽の水でずぶ濡れになった体を拭いていた。
「ぬ、濡れ衣なんや。クション!!」

「どういうこと?」

「俺、忍術クラスの集金係しとんねん。みんなから預かったお金を金庫に入れとったんや。そんでさ、今夜そのお金を先生に渡すために、金庫開けたら――」

「全部、消えとったんや。」


沈黙。

少しして楓が口を開く。
「いくら?」
「いくらって・・・忍器代やから結構高いで。1人1万で、30万くらい。」
「さ、30万かぁ・・・」

30万と言えば結構な大金だ。

「お、俺は取ってないんやで!ほんまに!!」
「本当に?」
「ほんまやほんま!ふざけんなや!!」

「静かに、男の声がするとバレるよ。」
消えたクラスの金――
「他の人が盗ったとは考えられる?お金は、何かに入れておいたの?金庫に他の物は入ってた?鍵は?」

「茶封筒に入れとった。他にはナンも入れてへん。鍵もちゃんと掛けといたし、鍵は俺しか持ってへんはずや。」
公一は畳んだズボンのポケットから小さい銀の鍵を取り出した。
「先生に言うたら、あいつが“俺がくすねた”って言い出して・・・逃げて来たんや。俺はほんまにナンもせえへんのに!」


再び沈黙。

「何か言うてよ!ど、どないしよ!?こんな理由で退学になりたないねん!!」
「現場を見れば何かわかるかもしれない。教室に行ってみよう。」
「え!?そんなん自殺行為や!外にはソウサクジャーの連中がうじゃうじゃおるんやで!」

忍術クラスのあるC校舎までは割と離れている。

「忍者は夜の闇に隠れて行動するものでしょ・・・?」

[返信][編集]

158 :5
2021/06/27(日) 01:27:54

1時を過ぎた戦隊学園。敷地内の森から虫の音が聞こえている。
私たちは――つまり、私と私に引っ付いている公一は――校庭脇の道を歩いていく。
「なぁ、見つかったらどないしよ・・・」
「ビクビクしないで。この暗さじゃ顔は見えないし、こそこそしてたら余計目立つから。」

よく見ると闇の中にぽつりぽつりと生徒の影があった。寮を抜け出しているのは私たちだけでは無いようだ。
それはカップルの姿であった。
校庭脇のベンチに座って手をつないだり、接吻したり、おおっぴらにいちゃついている男女もある。

「きっしょいな。何でわざわざ外でやるんやろ。頭わいてるんちゃう?」
「男子寮は女子禁制、女子寮は男子禁制。校舎は見回りがあるから、外でやるしかないんでしょ。」
「成程な。」

ふと思った。
公一はさっきから、私をちらちらと見て来るではないか。
いつもは制服でピチッと決めているためラフな私服が気になったようだ。ボーダーのトップスに水色のカーディガン、スキニー。
「これだと目立つかな?」
「べ、別に。」
公一は目をそらしたふうに見せかけて私の胸元をちらっと見た。
「助平。」
「そっそんなんしてへんで!」

電灯がシルエットを照らし出している。私はぴょんとステップを踏んだ。
「妖精さんみたいやな。」
「え?」

私は、公一のほうを振り向いて。
「そんなの言われたの、はじめてだ。」

なんだかちょっと嬉しい。

「お化けとか、カイブツって言われたことはあるけど。そういえばあなたも最初、お化けって言ったよね。」
「それはごめんって!言わない約束や!」

立ち止まる。人目はほとんどない。

「襲うなら今だよ。キスくらいできるよね。」

公一は口を真一文字に結んで私の目をじっと見ていた。数秒が経過。
「やめとこ。返り討ちにされたないねん。」
「お利口だね。」
私は手をひらひらさせてちょっと相手をたぶらかしてみる。自分、こういうキャラじゃなかったはずなのに。

C校舎が見えてきた。すると突然後ろから肩を掴まれ茂みに押し倒された。
「わぁ!後ろから攻めるとは意外と――」
「静かに!」

道の向こうからぞろぞろと集団が歩いて来る。

「見つけられないとは言っておりません。時間と人手があれば確実に仕留められます。寮内に居ることはわかっているのですから、しらみつぶしにやればいいだけの話だ。」
「クラスの威信に懸けて、必ず捕まえなさい。」

委員長と、担任・和歌崎率いる忍術クラスのメンバー30余名が、大股で校舎から寮の方へと歩いて行った。

「やったね公一!これで校舎はもぬけの殻だ。」
「逃げたと見せかけ侵入する、逃止(とうし)の術やな。」

[返信][編集]

159 :6
2021/06/27(日) 01:32:54

がらんとしたC校舎・忍術クラス。畳の敷き詰められた部屋。
前に体験授業に来た時は蝋燭で照らされていたが、今は照明をつけたので明るい。

「金庫どこ?」
「隣や。」
ふすまを開けて隣室に入る。すると畳がパカっと開き、私は足を突っ込んだ。
「わあ!」
「七海!」
公一が服のすそを掴んで私を支えた。穴底には、先の尖った竹が上を向いて並べられていた。落ちていたら串刺しになっていただろう。

「忍者屋敷やで。ちっとは気ぃつけえや!」
「ふぅん、やるじゃん。」

私は四角い穴を跳び越える。
床の間に、大きな木の箱が設置されていた。和風な金庫だ。

「鍵貸して。」
公一が銀の鍵を投げてよこす。私はそれを鍵穴に刺し、ガチっと回す。
扉が開いた。

「空っぽだね。」

空っぽ。
目で見える“手がかり”のようなものは何もない。
「待てよ。」
私は金庫のあちこちをペタペタと触り、次に顔を突っ込んでみる。
「何しとんねん!」
じっと目を細め、金庫の中の暗闇を、見つめた。


「茶色い。」


「――え?」
「微かに、茶色い。茶色が此処に来た。今じゃないけど、確かにここに訪れた。カラーの足跡が残っている。」

「茶色・・・委員長や!茶色は美しいとかけったいなこと言うとった!」
「そう・あだっ!!」
私は顔を上げようとして金庫の天井に思い切り頭頂部をぶつけた。
「あほか!」
「いたた・・・けどこれでわかったね。」
「でも鍵は?」
「鍵・・・マスターキーがあるって言ってた。ソウサクジャーなら全部の鍵を持っててもおかしくない!」
「それや!!」

私と公一は手を取り合って喜んだ。

「――でもそれだと証拠不十分やな。」
「うん。私も彼の変身した姿を見たわけでは無いからね。変身したカラーを見れば確信に変わるんだけど。」
「でもあいつは犯人を逮捕するまで変身しない言うてたで。」

[返信][編集]

160 :7
2021/06/27(日) 01:35:43

「あなたが変身するよう頼みに行けばいいでしょ。」
「無理や!その場でフルボッコにされてお縄やもん!嫌や!!」
「いくじなし。」

公一はじろりと私を睨んだ。

「何やて?もう一度言ってみぃ。」

「何度でも言ってあげるよ、意気地無。そもそも自分の問題でしょ。自分で片を付けなくてどうするの?」

「うっさいな!!」
公一は私に掴みかかった。私は咄嗟に男の急所にキックをお見舞いする。
「ぎゃああああ!!!」
痛い一撃だ。
「何すんねん!!コドモできなくなるやろがぁああ!!!!」
「知ったことか。」

私はガクセイ証を取り出す。ほぼ同時に公一もガクセイ証を取り出していた。

「変身!!」

私は白、公一は緑の戦士となる。

「息ピッタリだね。」
「女だからって容赦はせえへんで!」
「いいよ。本気でやろうよ、2人きりなんだし。」
「上等や。」

公一は壁をドンと叩く。絡繰り扉がくるりと反転し、中にはびっしりと暗器が収納されていた。
「苦無(くない)や喰らえ!」
黒いナイフのような暗器が私の足下の畳にドスッと刺さった。
「もういっちょ!」
公一は2本目の苦無を手に歩を詰め、私の顔面目掛けてシュっと刃先を突き出した。私は咄嗟に足元の苦無を引き抜いて切り結ぶ。チンと言う金属のぶつかる音。腕力では相手が勝り、私は押し負けそうになるが。

「ボウライド!」

私は火球となり突進した。
公一はそれを全身で受け止めるも踏ん張りが効かない。私は壁を突き破って相手の体を屋外に放り出した。
「嘘やろ!反則やん!」
「本気でやるっつった!」

2人まとめて夜の校庭に落っこちた。


「何をしている。」
変身は解け、私は満身創痍の公一の毛髪を掴んで立たせようとしていた。そこに来たのは、委員長だった。
「!・・・これはこれは、誰も居ない筈の校舎から明かりが漏れていると思って来てみたら、江原公一。こんなところに居たのですね。」

「そ。」
私は公一を蹴飛ばして、委員長の前に転がした。
「本当は助けてやろうと思ったんだけど、こいつ弱虫でムカつくから、あなたに突き出すことにした。煮るなり焼くなり、好きにして。」
委員長はにんまりと笑った。
「小豆沢七海、君の蔵匿罪は見逃してあげましょう。気に入った。」
「だったらどうしたって言うの?」
「口の減らない女だ。」

公一はまるで叩き潰され瀕死になった虫けらの様にのたうっている。


「あなたを横領の罪で、逮捕します――」


委員長はガクセイ証を取り出し唱えた。
「変身。」
彼の体がカラーに包まれる。
独特の茶色だった。彼の自負する通り美しく優雅な色だ。金庫に残っていたカラーと、全く同じであった。


「はい、あなたの負け。」
「何――?」
私と公一は委員長の首筋に同時に苦無を突き付けた。

[返信][編集]

161 :8
2021/06/27(日) 01:43:51

「どういうことだ――?」
委員長は私たちが突然意気投合したことに驚いている様だった。

「あなたのカラーは金庫に残っていた茶色と全く同じ。お金を盗んで公一に罪をなすりつけようとしたんでしょ?」
「俺と七海はケンカしたフリしてお前を油断させたんや。敵に寝返ったと見せかけ味方に戻る、山彦(やまびこ)の術や。」
「そ、ヤッホーってね。」

「くっ・・・。」
委員長は黙り込んだ。それは罪を認めたようなものだった。
公一は委員長の胸ぐらをつかんで苦無を振り上げる。
「何で金を盗んだんや?」
「戦-1のptsを、1つ10万で買うつもりだった・・・」
「呆れた。規律を取り締まる人たちが何をやっているの?」

「だが・・・まだボクの負けではありませんよ。」
委員長は学園中に響くような大音声で叫んだ。

「江原公一がいたぞ!!助けてくれ!!やつはボクを殺そうとしている!!!」

その声を聞きつけ、校庭のあちこちからソウサクジャーのメンバー、そして忍術クラスの生徒たちが集まって来た。
この状況を見た彼らの目には、犯人である公一が追い詰められて、委員長に襲い掛かっているように見えただろう。

「おのれ江原公一、忍術クラスの恥さらしめ。神妙にしろ!」
生徒たちは一斉に変身を決めた。
カラーは忍び装束の様になって彼らを包んだ。忍者の集団が私たちを取り囲む。

委員長はクククと笑った。
「あなたたちは、退学となるのです。」
「どうかな?楓!」

「あいよー!」
楓・佐奈・豚之助が走って来た。
「呼ぶのが遅いよ!待ちくたびれちゃった!」
「七海さん!頼まれてた物、作って来たからね!」
「やっと活躍できるブヒ~!」

「よっしゃ!全員でこいつらボコボコにしたろうぜ!」
公一は委員長を突き倒した。
「くそ・・・全員共犯で退学にしてやる。こっちは30、そっちは5、勝ち目はありませんよ・・・!」
「どうかな?じゃあやってみようよ。」

私たち5人はガクセイ証を取り出した。
「変身!」

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162 :9
2021/06/27(日) 02:17:05

「公一くん、これ。」
佐奈が花柄のアタッシュケースを差し出す。まるでおままごとセットでも入っているかのような可愛らしいケースだが。
「なんやねんこれ。」
「ほ、ほら、頼まれてたじゃん!うちの開発したやつ!」
ケースをパカッと開くと、中には黒光りする武器がびっしりと詰め込まれていた。

「サンキュー佐奈!早速使わせてもらうで!」

公一はそのうちの1つ、マシンガンのようなものを取り出す。
「クナイ・ガン!!」
引き金を引くと銃口から苦無が射出された。
「ぐああ!」
「いっでぇ!」
忍者たちは鋭い一撃を受け倒れる。肩や脚に苦無が突き刺さっていた。
「まだまだや!」
引き金を引き続ける。しかしカスカスという手ごたえの無い音が出る。
「何や?もう弾切れか?」
「ごめん・・・それ、3発しか撃てないから。まだ試作品の段階だし・・・」

「怯むな!」
忍者たちは寸鉄を手に忍び寄ってくる。

「ならこっちや!」
公一はマシンガンを投げ捨て、次の武器を取り出す。まるで大きなメジャーのような武器だ。
「マジック鉤縄!」
ボタンを押すと鉤縄がマジックハンドのように飛び出し、忍者たちはあっという間にぐるぐる巻きにされた。

「ブヒブヒ。」
豚之助が佐奈の肩を叩いた。
「脂ぎった手で触んないでくれる?けがらわしい。」
「佐奈ちゃん、僕のブヒ、じゃなくて武器は?」
「あんたの武器は無いから。相撲取りは体一つで戦う物でしょ?」
「ブ、ブピー!」

豚之助は猪の様に忍者の集団に突進する。
「電車道!!」


私はソウサクブラウン・風紀委員長と対峙していた。
「あなたの推理は魅力的だ。だが証拠がありませんよ!証拠が無ければボクを告発することもできまい。」
「残念だけど。」
私はスマホを取り出す。
「あなたとの会話は全てkezuriで録音してあるから。これで楓たちを呼んだわけだし、全部文章に変換されて残ってるよ。」

委員長の表情はマスクに覆い隠され読み取れない。
だがハァハァと言う荒い息遣いは、彼が窮地に追い込まれていることを物語っていた。

「ボクが負けることなどアリエナイ!!」

次の瞬間私は地面に突っ伏していた。
「うがっ!」両手両足が重い金属で自由を奪われている。敵は手錠で瞬時に私を拘束したのだ。

「あなたには黙秘する権利があります。」

敵は私の頭を掴むと、地面に擦り付けた。
「やめ――!」
「どうですか?屈辱的でしょう。ではこうしましょうか!あなたは江原公一と共謀して私を脅し、犯人に仕立て上げようとした、この事件の真犯人。これがボクに逆らった罰だ!」

「なァ。」
「ン?」
委員長は、声を掛けられ振り向く。

[返信][編集]

163 :10
2021/06/27(日) 02:17:53

「地獄に落ちろや!!」

公一は忍び刀で委員長を打った。
「ぎゃあ!」
「永字八法!!」
滅多打ちにする。
「不意打ちとは卑怯――」
「卑怯は忍者の常套手段や!それに人に罪をなすりつけるお前の方が卑怯やないんか!?それに七海に手ぇ出す奴はな、」
顔に首に胴に手に足に刀を打ち付けボコボコにする。

「この俺が許さへんで!!」

委員長は変身を解かれ倒れる。全身が痣だらけになっていた。
「いだいよぉ!」
「本当は殺してやりたかったんやけどな。そもそもは手前の問題や。金さえ返せばええことにするわ。二度とすんなや、したら殺す。」
委員長は縮こまって何度も首を縦に振っていた。


「公一・・・!」
「うりゃ!」
公一は次の一刀で私を拘束していた枷を両断した。

「どうしたの?人が変わったみたいに。」

「え――あ、ああ!」
この瞬間公一は我に返ったようだった。
「わああ怖かった!!何やってんやろ俺、わけわかんないねん。夢中になって――」

「私のために熱くなってくれたんだ。ありがと。」

公一はえへんと咳払いすると突然私に覆いかぶさって。
「え?」
「本当わけわかんないねん!でも今しかできひん気するから今しとくわ!」

公一は私にキスをした。

私はちょっと、ドキッとしてしまったのだけれど。

「マスク越しにすんなバカ!」


つづく

[返信][編集]



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