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┗311.《ポケモン二次創作》もう終わったことだから。もう全部壊すから(121-140/148)
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121 :ベリー
2022/10/08(土) 23:49:18
>>120
ホントダァアーボが名前言ってた()
シュウの執着率は最期の足掻きに限らず本編でも重要なので取り敢えず出してみました(?)
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122 :ベリー
2022/10/11(火) 19:44:12
《少年》
ずっと培養槽の中にいた。生まれた日なんて分からないし、まず僕が生まれた日の定義が曖昧だ。
体ができた時? 意識が持てるようになった時? 別にどうでも良いんだけど。少なくとも僕の体より精神の方が若いのはわかる。
意識が持てるようになった頃にはある程度の知識と自我があった。だからこそ、動けずに居た培養槽は退屈で仕方がなかった。けど、遂に培養槽から出して貰えた。
初めて外に出た。初めて体を動かした。初めて声を出した。初めての自由だ。
でも、そこは地獄で痛くて辛かった。知らない生き物が襲ってきて、知らない人達が襲ってきて、食べ物も不味い。
僕が思ってたより、この世界は絶望で満ちていて、救いはないんだなって。たった生まれて数年なのにそう悟ってしまった。
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123 :ベリー
2022/10/11(火) 19:46:46
窓が無ければ光もない。ただ世の異臭を詰め込んだ広間に仕事人の私達は各々寝転がっていた。
私は先程助けた少年を胸に、壁に寄りかかっている。アーボは個人の部屋を持っており、わざわざここで夜を過ごす理由なんてない。
外は年がら年中曇りのような天気で、夕方になっても光の強さは変わらないため、体内時計が狂いそうだが、就寝時だけ光が消されるため辛うじて朝と夜がわかる。
「怖い……嫌だ……」
そして、私の胸でずっと唸る少年。名前は『フジ』『富士』と書いて『ふじ』と読むのだが漢字という概念がここにあるのか分からないため漢字は伝えなかった。富士は不老長寿、無事って意味があるとソレイユに聞いた事があるため、そう名付けた。
「怖くて、不安で、絶望で……この世界に救いなんてなかったんだ……」
フジって何歳だ? 見た目三歳ぐらいだよね? 悟るの早くない? 十一歳の私でさえこの一年でその境地に行ってないよ。
この世界に救いなんて無い……か。私は今のままでも幸せだとは思う。怪我はするけど、食べ物もあるし、アーボもいるし。
村に住んでた時も幸せだったけれど、ソレイユに肉を潰されたり内蔵引き出されたり、バケモノに頭潰されたりして痛い事もあるから。
ここは酷いとは思うけど慣れればいい環境だ。だからか、最近はピラミッドになるという熱意が冷めてきている。
「ここはさ、臭いし怖いけど慣れればとてもいい場所なんだよ。ご飯あって強くなれば怪我もあまりしない。私はアーボに助けられてるから楽なだけかもだけどね」
私は苦笑いしてフジに微笑んだ。フジは顔をさっきよりも歪ませている。
あれ、なんか反応が悪い。言葉を選び間違えたかもしれない。
「レイはおかしいよ」
「私も最初はここ地獄だと思ったよ」
「違う。ここじゃなくてレイがおかしいの…… ここはおかしい人しか居ないの?」
そう言いながらフジは瞳に大粒の涙を浮かべ始めた。私がおかしい……意味は分からないけど、フジから見たら私はおかしく見えるのだろうか。
どうすればフジを安心させられるのか……
「誰か助けてよ……」
フジは言葉では私への拒否反応が伺えるが、私以外に縋る相手が居ないのかさっきよりも私にしがみついて居る。
その様子が愛おしく昔の情けない私に似ていて何とかしてあげたくて色々な感情が渦巻いていた。
「私が助けてあげる」
私の口は勝手に動いていた。助けるだなんてどうするのか、何をするのか。まずフジはどうして欲しいのかなんて全く分からない。けど、それでも、何とかしてあげたかった。
フジは暗闇の中でもハッキリと見えるうるうるとしたルビーのような目で上目遣いをしてくる。
「ホント?」
「うん。私が救ってあげる。もしこの世に救いが無くても私が救いを作ってあげる」
私はそう断言した。正直何も考えずに発言したため、言葉に重みは感じられないと思う。けど、フジは感極まったのか体を起こして私の肩に顎を乗せてさっきよりも強い力で抱きしめてくる。
結構力が強い……フジの腕が回ってる私の脇下が結構痛い。
それでも愛おしくて優しくフジの頭を撫でた。
実は私はフジより身長が低い。フジは95cmぐらい。私は90cmぐらいだ。だから先程まで私の胸の中で泣いていたフジは寝転ぶような姿勢だった。しかし、背筋を伸ばして抱きしめられては私の肩にフジの顎が乗るのだ。
ここで注意しておくが私は十一歳だ。十一歳である。なのにフジと同じ身長なのは凄く屈辱である。
◇◇◇
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124 :ベリー
2022/10/11(火) 19:48:36
「ぁぅ……っぐ」
「声抑えてて偉いね」
この広間は他の仕事人も居るためあまり大声は出せない。それを理解できているフジにそう声をかけた。とても三歳程とは思えない精神だ。
「う……うわあああ!」
しかし、その私の声がフジのダムを切ってしまったのか、フジが大声を上げて泣き出した。
「おい。うるせぇぞ!」
「個室じゃねぇんだぞ!」
「殺すわよ?」
すると周りが怒声を私に浴びせ始める。中には殺害予告もあり、仕事人同士の殺し合いは禁止だが日頃の仕事内容から冗談とも受け取れられない。
「わあああ! ごめんなさい!」
私は慌ててフジをあやすがフジも泣き止む様子がない。この環境に放り出された三歳に泣きやめという方が無理があるとは思うが、泣き止んでもらわないと殺されそうだ。アーボ来てえぇ!
その夜私は一睡も出来なかった。
◇◇◇
翌日、私はアーボとフジと共に仕事場に居た。アーボと"アーボック"に睨まれる私達は冷や汗をかきながら起立していた。
「レイ。俺は無意味にコイツを買った訳じゃない」
「コイツじゃない。フジだよ」
私はそう言ってフジの名をアーボに伝えた。アーボは眉をピクッとさせてフジの方を見る。
「名前をつけたのか……どうなっても知らんぞ」
『?』
アーボが呆れたような顔をして目を伏せた。私とフジは首をかしげるが、アーボはその言葉の意味を明かすつもりもないようで話を続けた。
「今日一日、レイ一人でコイツを守れ」
「守る?」
「ああ。コイツに傷一つつけるな」
刺すような鋭い目でアーボは私を見つめた。アーボはそんなにフジの事が気に入ってるのか? いや、多分違う。アーボがよくボヤいているけど自分を守ることより、他人を守る方が数倍難しいらしい。きっとこれも特訓の一環なんだろう。
「……僕、死なない?」
フジが震えながら私の後ろに隠れる。そりゃ自分より背の低い女子に守られるとなれば頼りないのは分かる。
「大丈夫。死にかけたらアーボが助けてくれるよ」
「何言ってるんだレイ。俺が助けるのはレイだけだ」
「……はぇっ?」
私はフジを励ますためにそう言うと、アーボが冷たい声で言い放った。私は変な声と、冷たい汗しか出なかった。
「俺がコイツを買ったのはレイの特訓の為だ。コイツを守るメリットは俺には無い」
フジが私の背中の服を掴む。私もこれは予想外でアーボの目を見つめることしか出来ない。しかし、返ってくるのは私達をゴミクズとしか思っていないような冷たい視線だ。
「コイツの外傷の数だけ処罰のレベルも上がる。せいぜい守って見せろ」
そう言ってアーボは"アーボック"と共に止める間もなくどこかへ行ってしまった。
私が、フジを守る? 傷一つ付けずに……?
ハッキリ言おう。無理である。仕事人全員が表世界へ解放される程無理である。だって、私はアーボに守られないと生きていけないほど弱い。それに、ポケモン一匹すら殺せないのだ。
守るなんて……どうすれば……
「レイ……」
フジが不安そうにこちらを見ている。ああ、この顔のフジに上目遣いしたら表世界では死者が出るだろうな。今私は若干上から見つめられているのだが。
そして、その表情は村にいた頃の私を思い出す。弱々しく怖がりで人すぐ頼る。私はフジを守れるだろうか。救えるのだろうか。
「私が救ってあげる」
私は微笑みながらフジにそう言った。
◇◇◇
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125 :げらっち
2022/10/11(火) 22:47:19
フジ誕生の経緯だ!
/´・ω・` \フッジサーン?
レイ、施設に慣れてしまったのか…
私も障害者施設に勤めて初めの1か月くらいは地獄と思っていたが、慣れると天国になったので、順応の描写はリアルだ。
レイ身長低い!!
11歳女子の平均身長が140くらいだから、異常なほどだ。
つまりアーボは180㎝と推測できる。
なんだかんだいってアーボを頼っているレイ!
それと、絵についても触れる。
>>123のハグがかわいすぎる!!!腕の角度がやや変だが、顔がかわいいので全てOKだ。ソレイユがチャフコンになるのもわかる。
誤字も無くなり、素晴らしい!
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126 :ベリー
2022/10/12(水) 01:51:28
>>125
</^o^\>フッジッサアアアン!(((
慣れって怖いですね……
>>慣れると天国になったので、順応の描写はリアルだ。
うわああああありがとうございます!
レイ共にソレイユも病的に身長が低いです。身長が低いというか成長が遅いです。シュウが15歳と言っても信じられてる点。成長期が遅い点。ここに繋がってきます。ジーニア双子の兄も身長は低かったです。
え? レイナも成長が遅いって? 遅いけど見た目8歳なので、シュウの外見年齢と7歳離れています。ナニガアッタンダロウネェ
近い!アーボの身長は190cmなのですが、まあ90センチの約2倍だし……ということでこう書きました。まあレイ達の2倍ある身長と思っていただければ。
それでも高身長……
>>それと、絵についても触れる。
わー!ありがとうございます!
関節……難しいれす……特に抱き合いは複雑……
関節の違和感なく人のぬるぬるとした動きを描けるげらっちさんはホント凄い……
チャフコンw やっきーさんといいげらっちさんといい造語のセンスが素晴らしすぎる。そのセンスくれ……
誤字なかった!推敲しました!ヤッタ-!
文量が少なかったのもあるだろうけど嬉しいです。
あ、話が変わりますが
今後箱庭とか、マイクラ二次創作とか沢山小説スレが立つと予想されますが、多分げらっちさんは全ての小説スレに感想を書きますよね……
結構重労働だと思うので、疲れた、追いつけないと思ったら無理に自分の感想書かなくて大丈夫です。
あ、感想はめっちゃ嬉しいですし、ウキウキしながら感想待ってて来たら『わあああい!』って跳ね上がってます!嬉しいです!感想が欲しくない訳じゃないです!欲しいです!
けど、それがげらっちさんの負担になって欲しくなくて……
感想は欲しいけど負担になって欲しくねぇから自分大切にしろや!
ってことです。自分の文力が無くてごめんなさい……
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127 :げらっち
2022/10/12(水) 02:05:17
いえいえ。
箱庭は少し先の掲載になるでしょうし、現時点ではベリーさんの小説が一番くらいに面白いので好きで感想書かせてもらってます。
全然負担じゃないどすよ!
ま、全てのゲラフィ小説に感想を書くのが管理人の役目でもあるのだがな!
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128 :ベリー
2022/10/12(水) 02:10:00
>>127
うわああああい!嬉しいどす。
ゲラフィの全ての小説に感想を書くのが役目……すげぇ。意識高ぇ。
きっと人間関係円滑になるでしょうし、書いてる側も嬉しいと思います。実際ここに喜んでる人が居るので。
まあ、つまらん小説があったら感想辞めても誰も文句言わないと思います。
げらっちさんの意識の高さは尊敬致します。私もなるべくゲラフィの小説スレの感想書くようにしようかな……
でもお身体1番です!げらっちさん社会人なんですから!私達学生みたいに病院いったらお金かかるんですから!健康第一!((この時間まで起きてるため説得力無い
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129 :げらっち
2022/10/12(水) 02:11:32
もう不健康だじょ。
戦隊学園の感想を返したら寝る!
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130 :げらっち
2022/10/12(水) 02:16:38
と、いうかゲラフィ管理自体好きでやってるので気にしなくて大丈夫だぜ。
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131 :ベリー
2022/10/12(水) 02:23:30
>>129
アラララララ
>>130
あっ、余計な心配だったかも。
管理人さんがいい人だぁ。ここは安泰だァ
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132 :ベリー
2022/10/23(日) 01:01:18
「はっはっ……」
水、水が欲しい。喉が感想していて呼吸する度に血の味がする。実際に血は出て居ないのだが、喉を酷使すると血の味がすることがある。
とまあ、今はそんなことどうでもいいのだ。
「がおくぅんか!」
そのポケモンの叫び声と共に後ろの地面から『ビキビキ』と音がする。私はフジを肩に背負いながら左に大幅ジャンプをして避ける。
その瞬間目の前が真っ赤になった。目の前に……本当に鼻先数ミリに炎の柱が一本現れたのだ。
「うわあぁっ!」
フジが恐怖と驚きで叫ぶ。さっきからずっと叫んでいるが良く喉が枯れないものだと、少し関心という名の現実逃避をしながら、私はもう一度大きく足を踏み出して地面から現れる炎の柱達をかわした。
えっと、『ほのおのちかい』だっけこの技は。ワザを放ったポケモンの方を見る。
筋肉質で人型。黒と赤い毛並みに猫耳が生えていた。炎、あくタイプのガオガエン……というポケモンである。
「グルル……」
ガオガエンの目は血走っていて口周りはヨダレでカピカピになっている。瞬時に分かる、腹を空かした猛獣の様子。捕まったら食われるから、必死で逃げなければならない。しかし私は体力が尽きてきて何時走れなくなるか分からない上、仕事場は時計が無いし、空の様子は時間によって全く変わらないため、時間が分からない。
まだお昼とかだったら今後逃げるための体力も温存しなければならない。けど、このままガオガエンから逃げ続けるのも悪手だある。どこかで撒くか、ガオガエンを気絶させなければならない。
しかし、イーブイも朝から戦闘を行っているため瀕死寸前だ。これでイーブイが瀕死になるとフジとイーブイを抱えて走らなければならない……
どうするか……
「グルル……」
すると後ろから別のポケモンの鳴き声がして反射的に体の方向を変換する。奥から出てきたのは四足歩行で頭が二つあって黒がベースとなった色をしてる……サザンドラに似たポケモン。
えっと、あれだ、ジヘッドだ! ドラゴン、あくタイプ。
ジヘッドも腹を空かせて我を忘れている様子で、ガオガエンなんて眼中になく、私とイーブイの方を見つめている。目が隠れてるから顔の向きで判断しているが。
それよりも、二体のポケモンに目をつけられてしまった。これでは逃げることも瀕死にさせることも出来ない。どうしたら……
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133 :ベリー
2022/10/23(日) 01:02:58
「レイ……うあっ!」
すると私の服を掴んでいたフジが急に服を引っ張った。いや、フジが引っ張ってるんじゃない。『引っ張られてる』んだ!
反射的に私は背中の大骨を抜いて振り返る。そこには片方の頭でフジを掴み、もう片方の頭で……
「レイッ! れっ あああああっ!」
フジの腕を抉るようにくらった。女のような甲高いフジの悲鳴と共に私は頭が真っ白になり大骨でジヘッドの片方の顎を叩いた。
「ジュヘッ!」
ジヘッドはそのまま倒れた。本当は大骨はトドメの時にしか使わない。なぜなら重い代わりに攻撃力が高いから。下手したらポケモンが死ぬから。しかし、今回は何も考えずに使ってしまった
いや、違う。私はポケモンを殺さなければ……
「あああああ……!」
フジは左の上腕が見事ジヘッドに食いちぎられていた。じわじわと見えない血管から血液が流れ、フジの左手は真っ赤である。
そして、痛い様で叫びながら私に助けを乞うような視線で訴えてくる。しかし、私はフジの治療法なんて知らなく……
「イブイッ!」
するとイーブイの鋭い鳴き声が聞こえた。しかし、フジの事しか頭になかった私は反応が遅れてしまった。
「カハッ!」
後ろから強い衝撃を受ける。背中を強くうち、その衝撃の強さに肺も一時的に機能を停止してしまったようで息ができない。ガオガエンの『ddラリアット』である。
それでも私はフジを守ろうと抱えていた。地面に着地しても、きちんとフジは無事で居られるように。
「ぁっ、かっ……くはっ!」
私は地面で転がった後に息ができるように何回も筋肉を動かした。呼吸の筋肉なんてぶっちゃけどこ使ってるか分からないが感覚で必死で呼吸を試みた。でないと死んでしまうから。
幸いにも呼吸はちゃんとできるようになった。しかし、呼吸が再開するタイミングが遅かった。
目の前から猛スピードで私を掴もうとガオガエンの手が伸びてくる。
近すぎてかわせないっ!
「レイッ!」
するとフジが私を守るように前に出ようとする。すると反射的に私の体は動いてしまった。
「あっ、ぐぁっ……」
フジを後ろに突き飛ばして私からガオガエンに掴まれに行った。ガオガエンは私の首をしっかり掴んでおり、徐々に握る力を入れる。
喉を掴まれてるのに、内蔵が全て飛び出そうな感覚がして苦しくなっていく。
私は離れるために宙に浮いた足をバタバタさせるが、その両足が何者かによって固定される。
そして
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134 :ベリー
2022/10/23(日) 01:03:38
「ぁぁっ、くあぁぁ……」
両足から激痛が伝わってくる。鉄が、巨大な鋭い鉄が皮を、肉を骨を侵食していく。肉を燃やすかのように。
痛い痛い痛い痛い。
しかし喉が締められてる為声が出ない。やかんのような音しかしない。
今分かった。私が、ここまでポケモンを殺さずとも生きてこれた理由。
それは私が強いからでも特別だからでも無く。ただ、アーボに守られてきたからだ。気づかないうちにアーボが、私を守ってくれたんだ。
それに気づいたところで、私は何も出来ない。力無いただの人間で、凡人で、ただの子供である。
だからこそ同じ仕事人のように、嬉々として、生きがいとして、命を命とも思わない冷酷な態度で、私はポケモンの命を……奪えな……
「きゅぅっ……」
声を出した覚えがないのに喉から自然と出てきた。喉を締められ続けて、足を食われ、身も心も限界だった。
痛い痛い痛い……痛い死ぬ! 嫌だ! 死にたく、殺したくない! でもここで 痛い 殺らなければ 痛い苦しい 私もフジもイーブイも死んでしまって、私が 痛い、喉が苦しい苦しい、息出来ない、死ぬ、痛い……痛い……
死にたくない
その時、私は手から滑り落ちかけていた骨を握り、重く両手で振り上げるのが精一杯だったはずの物を片手で振り上げ……
がんっ
外からでも聞こえる鈍い音を奏でさせた。その骨はガオガエンの脳天に当たっていた。
その瞬間私はガオガエンの手から離され地面に向かって落ちていく。落ちていく。堕ちていく……
「レイッ!」
するとフジの声とともに私は空中でキャッチされ、ガオガエンとジヘッドから離れたところまでジャンプ一つで運ばれる。
幼児のような見た目をしているのに、身体能力は私よりあるのでは無いだろうか。フジは。
なんだ。私はフジを守る必要なんて無かったんじゃないか。あほらしい
「ジヘッ、ガァー!」
「ヒィッ!」
ジヘッドが大口を開けて私たちの元へと走ってくる。
ーあ、殺さなきゃ、殺られるー
無意識に私はまた骨を握りしめていた。そこで気づく。
何やってるの……? 私
殺らなければ殺られる。相手を殺さなければ。そんな思考が頭の大半を占めていた。どうして? そんな疑問が浮かぶ前から答えは出ていた。本能が危険信号を鳴らしてるからである。本能が頭の大半を支配してるからである。
けど、ポケモンは殺したくない。命だもん。生きてるもん。救えるかも……しれないじゃん
それは、ただのワガママで、このポケモン達を救うのはただの夢物語であること。けど、それを完全に認めたら、私が私でなくなってしまう気がする。
他の仕事人みたいな、生気がない生きた屍のような生活を……
「レイ……僕が守るから」
憎いことに私より八つ程年下なのに、私より強く私より背が高いフジがそう言った。
綺麗だ。顔立ちもそうだが瞳が。目の色が、視線が、瞼の開き方が。輝いていて真っ直ぐで、曇りがなくて…… 私のように、いや、ソレイユのようにキラキラと輝いていた。
フジを守っていれば、フジのキラキラさえあれば私がどんだけ黒く霞んでも、『私』が居る気がする。ソレイユが居る気がする。
なら、もう堕ちてもいいやーー
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135 :ベリー
2022/10/23(日) 01:04:25
私は手にある大骨をできるだけ手が届き、体からー番離れている場所に向かって振り下ろした。
軽くなった私はその大骨の重さと勢いで、棒高跳びの要領で勢いよく、ジヘッドに向かって飛んでいた。
ジヘッドが私の方を見ている気がする。焦った様子で、恐怖の顔で、空腹の表情で。辛そうだ、苦しそうだ。だから
『ぐしゃっ』
その聞きなれた音と感触と共に目の前のジヘッド片方の頭に大骨がめり込んだ。生肉を抉りながら、それでも必死に生きようとする相手の意思が読み取れた。
「ピィアアアァっ! アアアァっ!」
叫び声……いや、もう笛の音だ。しかし、その音は認識していても、私の頭には入ってこなかった。
ジヘッドのもう片方の頭が私を掴もうと口を開けて迫ってくるが、もう一度棒高跳びのように飛んで距離を開ける。
足を食われている。両足を食われている。歩けない、立てない。とても痛い。
ならば、手を使えばいいだけである。
私は、先程とはまるで違う素早い動きで、両手を使ってジヘッドと距離を詰めた。
あとは、太ももに挟んでる大骨でジヘッドの脳天をかち割る。
ジヘッドは何も言わずに、そのまま倒れた。二体目の頭は太ももで殴ったため一体目のように頭が潰れていない。だから生きてるかもしれない。だから次は腕を使ってしっかりジヘッドの頭を潰した。
あとは、ガオガエンだけだ。
「グガッ……ウオオオン!」
ガオガエンは怖気付いた顔をするが、それでも空腹に耐えられないようで雄叫びの後に四足歩行で私に突進してきた。
ただ突っ込んで来ただけのため、私は特に移動しようともせずただ、シンプルに全力でガオガエンの頭を殴った。
ジヘッドよりも頭は柔く、ガオガエンの頭部は原型が無くなり、そのままガオガエンは倒れた。
砕けた頭蓋骨の破片が顔に散らばり、チクチクする。
「これで……二体……」
私は、そのまま仰向きになって倒れた。空にはガラスドーム越しに見える灰色の空。もう空かどうかも分からない。血の匂いがそこらじゅうに漂って、そこら辺から生物の断末魔が聞こえて、いつもの仕事場だ。
けど、いつもと違う。全部の色が、灰色だ。
「レイっ! レイ!」
フジが私のイーブイを抱えてやってきた。フジの膝の上に頭を乗せられ、貧血で頭がぼーっとしてくる。
足が痛い、関節が痛い。痛い。痛い。
足を食べられたのなら、もしかしたらもう歩けないのかな。歩けないよね。足は回復しないんだもん。
「れいぃ……れい……」
フジが顔をぐちゃぐちゃにして泣いている。フジだって肉を抉られただろうに、何故人の心配ができるのだ。フジは、フジの心配だけしてればいいのよ。
しかし、目の前がぼーっとしてきて何か言おうとしても、何を言いたかったのか忘れてしまう。
そこで、ポケモンの死骸が私の目に入った。
◇◇◇
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136 :ベリー
2022/10/23(日) 01:05:07
「……あぁ。殺したんだ」
今更。本当に今更そう思った。ポケモンを殺した時は必死すぎて感触も罪悪感も何も感じれなかった。しかし、頭が冷えていくと、少しづつ、少しづつそれが理解出来てしまうようになってくる。
ははは……ー年間ずっと葛藤してたのに。ポケモンの命を奪うのはあっという間だ。
全ての努力が、プライドが、私の誇りが消え去った気分だ。しかし、目の前にはフジが居る。目が濁っていない、綺麗なフジが居る。
もう、私は表世界の人間では無い。だから、これからは
「フジを必ず救ってあげる」
それが私の、裏世界でのレイの目的だ。
「さっきから、何言ってるの……レイ……」
意外に辛辣な言葉が帰ってくる。別に大丈夫。返事を求めていたわけじゃないから。でも、少し自分が恥ずかしくも感じてしまった。
「貴方の名前はフジ!不死って意味でフジ!幸せになるんだよ!フジっ!」
私は、元気に笑顔で、そう言った。それを聞いた途端、フジの顔が明るくなり、頬が溶けてきた。喜んでもらえたのなら何よりである。
私はそのまま私の意識は暗闇に堕ちた。
◇◇◇
《アーボ》
ここまでとは思わなかった。
俺は"アーボック"と共にレイの元へ戻ってきていた。レイがフジを守れているか、守れていないかの確率は五分五分だったと思う。レイがフジを守ったということは、ポケモンを殺したこととなり、守れていなかったらポケモンの殺しの重要さを知る事となる。
俺にとってはどちらに転んでもレイの意識改革にできるためどっちでも良かった。
結論を言うと、レイはフジを守れていた。しかし、殺しているポケモンは二匹。頭を確実に潰している。殴って殺しているではなく、確実に殺すために『潰している』
初めて殺した上に、昨日まで表世界の価値観を持っていたはずなのに急に残忍な一面を出してきたため俺は少し戸惑っている。しかし、悪いことでもないため受け入れよう。
午後八時直前。時計がないため感覚だが、長年この施設に居るため大体合っていると思う。
「あっ、えっと……」
目の前には両足がちぎられたレイと、疲れ果ててぐったりとしているイーブイ、それを守っていたフジが居た。
この出来事で一つの誤算があった。フジが予想以上に強い事だ。今考えれば、三歳ほどの幼い見た目で、一人で大きな怪我なく一日生き残ったのだ。今のレイよりも強いことは明らかであったのに、フジの弱々しい性格で完全に見誤っていた。
レイがポケモンを殺せるようになったらフジは処理しようと思ったが、これは今後もレイの特訓に役立てられそうである。
「アーボック。イーブイを頼む」
そう言うとアーボックは音を立てずにイーブイに近づき、抱えた。俺はレイを抱えフジの方を見た。
「何してる。行くぞ」
「え? 助けるのはレイだけって……」
「気が変わった。嫌だったら見殺しにしてやるが」
「い、行く!」
そう言ってフジはテトテトと着いてきた。これからは二人の面倒を見るのか…… 俺は体が重くなる感覚がするが、不思議と悪い気はしなかった。
「ねぇ……レイは、大丈夫なの? 足が……」
「唾つけときゃ明日には治る」
俺は特に気にせずそう言った。フジはにわかに信じられないという顔をしているが、また何か言ってきたら睨みつけて黙らせるので特に問題は無い。
ガラスドーム越しの空は、相も変わらず気持ちの悪い灰色だった。
第一章 フジ 終
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137 :げらっち
2022/10/23(日) 02:19:56
読んだ!感想は制作言及スレに書くってわかってるのだが、1つだけ…
イラストが俺ため専用部屋に貼られてるぞ!ポケモン二次創作専用部屋もあるのでご活用を!
[
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138 :ベリー
2022/10/23(日) 02:34:28
>>137
わあああ!本当だ折角作ってくださってたのにすみません間違えちゃいました!
次からはちゃんとわけさせていただきます……!
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139 :ベリー
2022/10/30(日) 23:14:39
第二章 スイ
「イーブイ! そのまま喉掻っ切って!」
周りに響くように叫ぶと、それに答えるようにイーブイが小柄な体型を生かし、風のように走っていく。
イーブイのしっぽが鋼のように輝き、弱ったリングマの喉に当たる。リングマの断末魔、噴水のように飛び散る不健康そうなドロドロとした血。
それを浴びながら疲れた私は膝に手をついていた。
私は足がある。歩ける。走れる。半年程前、私は両足を失った。本来は足や腕などが無くなると手術等をしないかぎり治らないはずなのだが……三週間で私の両足は生えた。くっつけたのでは無い。生えたのである。その過程はかなりグロかったが、それよりも足が生えることに私は驚きを隠せなかった。
もしかしたら、腕は生えるものだったのかもしれない。私が誤認してたのかも。
「はぁ、はぁ……」
「レイ! 大丈夫?」
荒い呼吸をしていると一緒に行動していたフジが駆け寄ってくる。フジは息一つも乱れておらず、確実に私よりも強いことが分かる。
何故私より強い? 男だから? 施設にいるから? 嫌、才能なのだろう。そう思わないと一年間アーボの助けがあったとはいえ生き抜いてきた私のプライドが折れそうになる。
「うん……大丈夫!」
『ジリジリジリジリ』
私の言葉と共に仕事終了の合図が鳴った。私とフジは走って屋敷に向かうが、いつも仕事終了間際にやってくるアーボが居ない。
「ねぇフジ。最近アーボ居ないよね」
「うん。死んじゃった?」
私が何気なく口にするとフジは恐ろしいことを口にする。しかし、フジは表情一つ変えずに世間話のように言ったため余計私は鳥肌がたった。
「そんな訳ないよ……あのアーボだよ?」
「って言って、いつも色んな人死んでるから」
私はアーボが死んだなんて信じられなくて、同意を求めるように、縋るように言うが、それをバッサリとフジは切り捨てる。しかし、フジ本人に悪気は無さそうだった。
するといつの間にか私達は広間に来ていた。広間にも、いつも私達が寝てる場所にもアーボは居ない。
私は口を一の字に結んで、イーブイをフジに渡す。そして、いつものように食料を取りに行った。
今回も腐った肉しかないけれど、食べれると思うため肉をフジの方向へ投げ飛ばす。アーボが居ないと分かっていても、アーボ達の分の肉も掴み取ってしまう。
支給品が無くなった後はゆっくりとフジ達がいる方へ歩いてく。すると、進行方向にあのお兄さん達が居た。
あのお兄さんーーフジを食べようとしてたお兄さんだ。
「おぉ! 嬢ちゃん久しぶりだな!」
「お兄さん達! 久しぶりって……話してはないけど顔は合わしてるじゃん」
お兄さんが声をかけてくれるため、私は苦笑いしながら言った。毎晩同じ部屋で寝ているため、話す機会はなくても顔はよく見合っている。
それよりも……
「お兄さん達三人じゃなかった? あと一人は?」
「あぁ、死んだぞ?」
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140 :ベリー
2022/10/30(日) 23:14:50
私はそこで固まった。失礼なことを聞いてしまったとは思ったけど、仲間の死がこんなにもあっさりと片付けられてることに驚いていた。
「え、死んだ……え?」
「最近だな。例の白い化け物に食われたんだ」
「白……食われた?! 例の?!」
私はお兄さんの話内容についていけなかったため内容を繰り返すことしか出来なかった。お兄さん達は強いよ。だってフジを追い詰めてたんだもん。私よりは絶対強い。
なのに、食べられた? 化け物って、ポケモンだよね……
「なんだ嬢ちゃん。あの噂知らねぇのか」
「知らない!」
噂なんてこの施設に来てから一度も聞いた事がないし、仕事人で話す人はアーボとフジ、目の前のお兄さん達しか居ないんだもの。
「全身真っ白の化け物の話だ。裸の女だったり、人型のポケモンだったり、人間でもポケモンでも無かったり、色んな話があるんだが、俺達を襲ったのは氷技を放つポケモンだった」
「ポケモン……名前は?」
「分かんねぇ。とにかく、嬢ちゃんじゃ敵わねぇから会ったら逃げるんだぞ?」
お兄さんはガハハと笑って言った。確かに私は弱いけれど、バカにされているようでいい気分じゃなかった。
「私だって……」
「死 に た き ゃ 戦 え」
反論する前に、お兄さんに言われた。重みがある、私の心臓を貫くような言葉。私はそこで何も言えずに口をパクパクさせていた。
お兄さん達はそのまま去っていってしまった。
「……レイ?」
「わっ! あっ、フジ……」
後ろから肩を叩かれ、名前を呼ばれる。声の主は純粋無垢な顔をしているフジであった。可愛らしい顔だが毎回私が上を向いてるので結構複雑である。
「ねぇ、フジ。白の化け物って知ってる?」
「えっと……知らない……ごめん」
フジは申し訳なさそうな顔をして謝る。私は謝られるとは思っていなかったため慌てるが、声をかけるより行動で落ち着かせた方が良いと思い、フジの肩に手をのせる。
「大丈夫だよ。私もさっき知ったの。最近白色のポケモンか人間か分からない化け物が出てるんだって。お兄さん達の一人が殺された」
「あの人が……? ねぇ、アーボって……」
フジが顔を真っ青にし、両手を胸に当てた。
最近アーボを見かけない。そして、お兄さん達の一人が殺されている。アーボが無事か断言できなくなってきた。
「明日の仕事、私アーボを探すよ。フジは一人で大丈夫? って、大丈夫だよね」
フジは私よりも強い。口に出して認めたくは無いけれど、フジもアーボも内心では分かってる筈だ。
私は苦笑いしてフジに言った。
「い……嫌だっ! 僕も行く!」
「わっ、えっ、フジ!」
フジは両目に涙をためて私の胸に飛び込んできた。力が強いので立てるように本気で踏ん張らなければならなかった。フジの顔を覗くと、アーボの話をした時のような少し冷たいフジとは思えない弱々しい顔をしていた。
「大丈夫だよ。フジは強いし……」
「僕はレイの足元にも及ばないんだよ……行かないで……」
フジが震え始めた。
もしかして、フジは私がフジより弱いことに気づいていない……? ここで言うべきなのだろうか。フジは私よりも強いと。
ううん。私より強いとフジが知ったら、私が守られる側になっちゃう。だから、ここは伏せておこう。
それに、いつかフジよりも強くなれば良い。
「分かった。一緒に行こう」
私が言うと、フジがコクンと頷いた。
これだけ素直だと私が居なくなった時が心配だ。悪い人に騙されたり、弱い者いじめされたりしないかな? いや、その時はきっとアーボがいるはずだ。大丈夫。
その晩はいつものように床で二人と一匹で雑魚寝をした。
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