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┗311.《ポケモン二次創作》もう終わったことだから。もう全部壊すから(69-88/148)

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69 :げらっち
2022/09/26(月) 17:21:44

10年後はゲラフィあるかな…

最期の足掻き読み始めた。
まさかポケモンでポケモンを殺す話になるとは…
近いうちに読み終わると思う。早ければ明日。

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70 :ベリー
2022/09/26(月) 20:37:06

早ければ明日?!
裏の陰謀の時も思いましたがめっちゃ読むのお早いですね?!
私も速読能力欲しい……

本当にありがとうございます

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71 :ベリー
2022/09/26(月) 20:37:21

 全身が痛い。骨が、筋肉が、肉がミシミシと言っている。床は石のように固い。頭がクラクラするなか徐々に視界が開けていく。
 どうやら洞窟のような場所で入口にはイーブイと2つの影がある。

「ウウゥゥ……」

 イーブイが私を守るように威嚇をしている。イーブイの視線の先には……さっきの巨大なアーボックに、白目が黒く、黄色の瞳をしている男性20代ぐらいの男性が立っていた。
 イーブイが必死に威嚇しているのにも関わらず、2人……1人と1匹? は、華麗にそれをスルーして灰色の空をガラスドーム越しに見ている。

「起きたか」

 男の人が私の方を見る。その瞬間、何かに背筋を舐められたような悪寒が走る。この人を目の前にすると恐怖が止まらないというか、本能的に避けたいと言うか。
 まるでアーボックに睨まれる鳥ポケモンのような気分だった。

「その服装。表出身だろう」

 表……え、何が? 私の村の名前の事かな。というか、うちの村に名前なんてあったっけ?
 それとも地方の名前? ここで自分の無知に後悔する。

「……その百面相を見るに表出身のようだな」

 男は『はぁ〜』とため息を着くと額に手を当てる。百面相って……私そんなに変な顔してたかな? 手を頬に当てて揉んでみると意外と表情筋が固まっていたことに驚く。
 それより今の状況だ。村で化け物に襲われ、家族を殺された挙句この変なところに連れてこられ、女の人やアーボックに殺されかける。病院に行くほどの大怪我も負ったはずなんだけど……
 身体中がミシミシするだけで傷は治っている。
 ここは、一体どこなのだろう? まずはそこからだ。

「ここは、どこなんですか?」
「俺が先だ。名を名乗れ」

 私の質問を遮られ質問をされた。ものすごく不快だったが、相手を見ると何故か恐怖を感じるため反論することが出来なかった。

「……ニア……チャーフル・ジーニア」

 私は必死に恐怖心を隠しながら、なるべく平常心を装い男にそう言った。
 その瞬間。私にまとわりついていた謎の恐怖が解かれ、男は目を見開く。明らかに驚いてる様子だが、どうかしたのだろうか。

「兄弟はいるか」
「……教える必要はあるの?」
「いいから言え」

 私だって危険な場所にいる謎の人物に個人情報を軽々しく話さないぐらいのモラルは持ってる。しかし、相手の圧にすんなりと負けてしまった。

「双子のソレイユと、兄のラモス」
「……母の名は、父の名は!」

 男は慌てたように私の両肩を掴む。思いっきり掴まれて掴まれた部分が痛い……というか、握力が人間のものじゃない。

「ママが……スズランで、パパは、カクタス」
「今どこにいる!」

 どんどん男の目が血走っていき、握力も強くなる。男からあふれでる圧が強くなっていき、今にでも逃げたいがこの力をもっている男とアーボックから逃れられるわけが無い。

「応えろっ!」
「シャック」

 男が怒声をあげると、それを落ち着かせるようにアーボックが男の周りにとぐろを巻く。その様子を見て男は一旦呼吸をとめ深呼吸をする。

「すまない。取り乱した」
「貴方は、私の家族のことを知ってるの?」
「俺の質問に応えろ」

 落ち着いたなら質問が出来ると思い聞いてみたが、冷静な時でも相手の質問を先に答えなければこちらの質問に答えてくれないようだ。
『今どこにいる』
私はその答えに詰まった。答えは分かっている。単純明快である。けど、それを受け入れたくなくて、何も言いたくなくて……
 私はどんな顔だったのだろう。ただ、霞む視界の中男をまっすぐ見て、ただ口を一の字に結んでいた。男は私の表情で何かを察したのか唇を噛んだ。
 唇からは不健康そうな血がボトッと落ちてくる。

「死んだか?」
「ぁ……っ」

 確信をつかれ、私はただ肺に貯めていた空気を吐き出すしか無かった。辺り一面の真っ赤な光景が蘇ってくる。それでも、泣かない、前は見る。だけど、何も……言えない。

「イーブイっ」

 するとイーブイが私を守るように前に出た。いつものジト目で何を考えてるかよく分からない冷たい顔だった。

「『それ以上聞くな』か? それで、答えはもう出てるようなものだぞ」

 男も冷たい顔でイーブイに言った。それでもイーブイはポーカーフェイスを崩さない。
 それより、この男も『ポケモンの意思を読み取れる』の……?

「……チャーフル」
「なっ、何」
「お前はこれからチャーフルと名乗るな」

 急に意味のわからないことを言われて私はポカンとする。何故チャーフルと名乗っちゃ行けないの? というか、自分の名をそう簡単に捨てられるわけが無いじゃない。

「……説明してやろう。よく聞けチャーフル・ジーニア」

 その時から私は『チャーフル』と呼ばれることは無くなった。

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72 :ベリー
2022/09/26(月) 20:38:44

◇◇◇

 ポケットモンスター。縮めてポケモン。この不思議な生物は地球の海に大地に森に至る所に生息している。
 そして人間。人間は古来よりポケモンと争い、時には共闘し、共存して生きてきた。
 しかし、文明が発達し人々とポケモンたちの繋がりが深くなるにつれ『ソレ』は現れてきた。
『表』と『裏』である。
 
『表』それは人々とポケモンが幸せに時には小競り合いもしながら共存を目指していく明るい場所。
『裏』それは人々とポケモンの幸せを目指していく上で必ず現れてしまうもの。幸せのために表では非合法な事を行い、時には表の安泰のため、壊すこともある。

 一見『裏』は表世界のバランスを保ってるように見えるが、それは1部である。表世界で上手くいかなかった人や人間やポケモンが表世界の禁忌に触れたりすると、裏におとされる。
 裏は表世界の汚い部分を見せないために生まれてしまった様なものだ。

 そして、ここ。不気味な巨大な洋館にガラスドームがある。それは巨大で市1つ分の大きさがある。
 ここの人達はこう呼んでいる『施設』と。ただ毎日ポケモンを殺し、自分の死を待つ場所だ。休むことは許されない。一切の妥協も許されない。自分の命をかけて大量のポケモンをこのガラスドーム内で始末すること。それがこの『施設』に居る『仕事人』の役目。

◇◇◇

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73 :ベリー
2022/09/26(月) 20:39:09

「質問はあるか」

 男の話が一通り終わる。
 現実味がない。表? 裏? 全くそんなの聞いたことがない……ただ、有り得そうな話だとは思った。
 御伽噺も政治の話も殆どが丸く収まる。しかし、その裏では権力争いや小競り合い、きっと暴力もあるんだろう。そう思うのは『ポケモン』という武力が存在するから。現実味は全くないけど。
 そして、『施設』ポケモンを殺す場所。
 これが分からない。何故ポケモンを殺すの? 裏世界の中にある施設だとしたら、表世界では出来ないこと……必要なこと?
 ポケモンを殺すのが何故必要なのだろう。
 あとは『仕事人』多分私も、あの女の人も目の前の男の人も『仕事人』なんだろう。けど、明らかに持ってる力が、おかしかったり様子が普通じゃない。人間……なの?
 ポケモンもそうだ。巨大だったり見境なく人を襲う。
 そして、その裏と施設に私が『チャーフル』と名乗ってはいけないことになんの関係があるのだろう。
 質問したいことだらけだ。けれど……まずは

「あなた、名前は?」
「は?」

 男は驚いたように声を上げた。それでも私はおかしな質問をした覚えはない。

「……俺の話を聞いてたか?」
「聞いてたよ。けど、その前に名前! 私の名前だけ知られてるなんて不公平じゃない!」

 男は眉を八の字にして難しそうな顔をし、考え事をし始めた。その様子は百面相で、先程まで冷徹で得体もしれない人物だったが、人間味を感じることが出来た。

「俺に……俺達仕事人に名前は無い」
「じゃぁ名前つけてあげる」

 私は何も考えずただ脳死でそう言った。明るい声で、口角を上げて。
 この人の名前はどうしよう……と、私はそっちに思考を回し始める。

「……バカか?」
「それ、失礼!」

 男は呆れたような嬉しいような困惑した表情で息を吐くようにそう言った。私は心外だったため頬を膨らませ言った。

「お前は今、死ぬか死なないかの酷い場所に居るんだぞ? そんな楽しそうにしてるとか……本当に俺の話を聞いてたのか?」
「シャラップ! 今いい名前思いつきそうなの!」
「……どこで育て方を間違えたんだ……」

 男はまるで私の親のような発言をした後に『はぁ』とため息をついて額に手を当てる。
 私はさも『貴方の名前を考えてるから邪魔しないで』と言うような発言をしたが、別に名前はもう思いついていた。
 今は、ただ現実を受け入れようと必死である。

 何故こうなった? ここはどこ? 家族はどこ?

 そんな回答が分かりきってる疑問がグルグルと回っている。正直今泣き叫んで誰かに助けを求めたい。けど、それじゃあ示しがつかない。
 ずっと守ってくれて、太陽のように笑顔だったソレイユに。

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74 :ベリー
2022/09/26(月) 20:41:11

「アーボは? 相棒アーボックだし!」
「俺の名前か?」
「うん!」

 私は満面の笑みでそう言ったが、アーボは凄く微妙な顔をしている。
 そりゃあ相棒がアーボックだからという理由でアーボという名前なんて何の捻りもない。そして、当時の私は知らなかったがアーボはアーボックの進化前のポケモンの名前のためそれも踏まえ男はとても複雑な気持ちだっただろう。

「んな直球な……」
「いい名前でしょ!」
「全く」

 私もそう思う。
 仕方ないじゃん! 正直名前なんてどうでも良くて気持ちを整理する時間が欲しかっただけだし!
といっても、私が考えた名前だということは間違いないため、それに不満を言われるとこちらもあまり良い気分では無いため、不機嫌な顔をして頬を膨らませてやった。

「……ふふっ。分かった。俺は今日からアーボだ」

 唐突にアーボが素直になる。急な態度の変わりように私は驚きつつも、嬉しかったため素直に笑顔になる。

「次は俺の番だ、お前はこれから『レイ』と名乗れ」
「……レイ? 霊、莉、令、黎……?」
「カタカナのレイだ」
「由来! 由来教えてよ!」

 私は名ずけられたことが嬉しくアーボの肩を掴んでピョンピョンとはね始める。アーボは喜ばれると思ってなかったのか驚くと同時に、何故か悲しそうな顔もする。

「さぁ、なんだったんだろうな……」
「へ?」
「由来は分からない……が、意志を受け継いで欲しいって意味はある」

 んー、イマイチよく分からない。意志を受け継ぐ?  『レイ』の二文字にそんな意味あったっけ? 花の名前かな? アローラ地方にレイって花の首飾りあった気がする。けど意味までは……
 うーん……

「気に食わないか?」
「えっ、ううん! 全然! ありがとうっアーボ!」

 まあ、私も適当に名前付けちゃったし文句なんて言えるはずもないし、素直に嬉しい! 
 私はアーボの両手を掴んでブンブンと振り始めた。アーボはさっきから微笑んだり困ったりと表情豊かになってきているため特に何も警戒せずに接していた。

「それで改めてレイ。話を戻すが、質問はあるか?」

 あぁ、そうだった色々質問があるんだった。
 アーボと少し打ち解けられたことが嬉しくてそんなのすっかり忘れちゃってたや。
 私は改めて考える。考えれば考えるほど質問が浮かび、それと共に胸が苦しくなる。

◇◇◇
挿絵cdn.wikiwiki.jp

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75 :ベリー
2022/09/26(月) 20:41:45

「何で私はチャーフルって名乗ったらダメなの?」
「……それは……」

 するとアーボの言葉が詰まった。最初の質問で詰まるなんて一体どんな質問が来ることを予想していたのだろう。

「ここにいる仕事人は施設から出たことがない奴しか居ない。外の世界……特に表世界からわざわざ連れてこられるということは余程の理由がある可能性が高い。それと共にレイの本名が色んな奴に知られ、身元もバレてる可能性がある……から」

 余程の理由……『生物兵器』と関係があるのだろうか。私達ジーニア家がどれほど危険かは分からないが場合によっては名が知れ渡ってるかもしれない。
 確かに偽名? は必要だろうし、なんか裏の世界っぽい。

「……アーボって私を気遣ってくれてたの?」
「でなければまずお前の命を救わないだろう……」

 私は意外という顔でアーボに言うと、呆れたように『当たり前だ』という態度でアーボは頬杖をついて言った。
 そこで新たな疑問が生まれる。

「なんで私を助けたの?」
「……もっと質問することがあるだろ」

 そりゃあ『何故ポケモンを殺すの?』とか『これからどうすればいいの?』とか具体的な質問から抽象的な質問まであるけど、私は今アーボに興味津々だ。

「あるけど! 後で答えてくれるでしょう?」
「さっき会ったばかりだろう。殺されるとか思わないのか」
「名前まで付けてくれたのに殺されるとは思いません!」
「もっと危機感を……あぁ、表世界から来たばかりだったな」

 またアーボは呆れたように頭を抑えるが、なんかそれが楽しそうでアーボックも主人の反応を楽しんでるように見える。
 イーブイはつまらなさそうに私の横に座っている。

「何故レイを助けた……か。まあ物珍しさだな」
「物珍しさ?」
「さっきも言ったように表世界から施設に来る者は少ないし、訳ありの場合が多い。興味本位で助けたまでだ。」
「その興味本位の人物に名付けられるとは思ってなかったでしょ〜」
「……色々と、予想外だったな」

 私はからかうように言うと、アーボは苦笑いをして肩を竦めた。私はしてやったりと笑顔を浮かべる。
 かと言って今の状況を忘れた訳では無い。次は真面目な質問をしよう。
 そう思いながら、表情を変えずに私は質問をした。

「なんで、ポケモンを殺すの?」
「それが俺らの仕事だ」
「答えになってなーい!」

 アーボは模範解答のように答えた。しかし全く答えになってないため頬を膨らませた。
 アーボは最初に出会った時の冷徹な顔になっていて、これ以上答える気は無いということが分かった。
 私は仕方なくその答えを飲み込んだ。

「じゃあ、私はこれからどうすればいいの……?」

 最後の質問だ。かなり抽象的な質問であることは分かっている。ただ、どうしても聞きたかった。誰かに答えを欲しかった。
 アーボは私の抽象的な質問に何か文句を言う様子もなく私を数秒見つめた。

「レイは、これからどうしたい?」
「どっ、どうって……」

 急に言われてもよく分からない。
 旅に出るはずだったのに急にここに連れてこられて混乱状態なのだ。
 また、旅に出たい? 別に旅にそんなに執着してた訳じゃない。外の世界を見れることに喜んでいただけで……

「……外に出たい。表世界に戻りたい」

 その時は何も繕えなくてただ、胸から、喉から肺から濁流のように込み上げてきた全てを吐き出すようにその一言を発した。
 アーボは一の字に口を結ぶと、難しい顔で私を見つめた。
 数秒……数分? それぐらいかかった時に、アーボが口を開いた。

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76 :ベリー
2022/09/26(月) 20:42:07

「そうか。ただ、ここから出るには道のりは長いぞ」
「その道のりっていうのは?」
「ここから出る方法は二つ。一つは脱走だが、まあ出来ないと思え。二つは外の世界……といっても裏だが、とある組織にスカウトを受けること」
「スカウトって!」
「"ピラミッド"という組織だ。まずはそこが目標だな」
「その後は?」
「人生かけてでもピラミッドにスカウトされるか怪しいんだ。その後のことより、まずはピラミッドにスカウトされることを考えろ」

 私は具体的な道のり説明に希望を持ち、嬉しくて楽しみで少し怖いけどその場でワクワクと腕を振り始めた。
 その様子を見てアーボの顔が徐々に曇っていくが、気の所為だろう。私はそう思って無意識に考えないようにした。

「ピラミッドからスカウトを受けるには? どうすればいいの!」
「ピラミッドに目をつけられるぐらい強くなることだな」
「強く……?」

 ポケモンバトルの事だろうか。いや、ポケモンを殺すのが仕事なのだからポケモンバトルだろう。
 ……ポケモンバトルでポケモンを殺さなきゃいけないのかな。

「ポケモンと、レイ自身が強くなることだ」

 なんか、ポケモントレーナーっぽい! 心身強くなってポケモンとの絆を深めるとか? なんかワクワクしてきた!
 と、私は呑気なことを考えていた。

「じゃあ沢山ポケモンバトルを……」
「あぁ。まずはレイ。お前の筋力を鍛えて、イーブイも鍛えなければな。ピラミッドにスカウトされるためには沢山ポケモンを殺せ」
「……っえ?」

 私はアーボの言葉に違和感を覚えた。やはりポケモンは殺さなければいけないようでそれは……断固拒否したいが今はそこではなく、私の筋力を鍛える? なんか、それって……

「私も直接ポケモンを殺すみたいな言い方だけど……」
「ん? 当たり前だろう」

 アーボはわざとらしくもなく、ただ自然に当たり前というように私に言った。
 え、私が……直接ポケモンを殺すって、え、え?
 衝撃が強すぎて何も言えずにただ表情が固まった。

「まあ、第一段階はポケモンを大量に殺すこと。それと同時に仕事人の間で有名な強者も倒すと尚いいかもしれない。お前は表出身だからな。俺が鍛えてやっても……」
「私、ポケモンなんて殺せない!」

 私はアーボのは話を遮ってそう叫んだ。『ポケモンなんて殺せない』それは、私が殺せないという意味、イーブイがという意味二つ一緒の意味で言った。
 その瞬間。アーボの目が鋭くなり溢れ出る圧が非常に大きくなった。

「なら、死ぬか?」
「なんっ……え?」
「ここは弱肉強食だ。意思のない者、弱き者は無慈悲にも死ぬ。今日のようにな。俺も意思のない奴に構うつもりはない」

 アーボが私に構わなくなる……多分、それは私とイーブイの死を意味してるんじゃないかな。
 だって、今日もアーボが居なかったら私は死んでた。

「選択肢は二つだ。殺して生きるか、殺さずに死ぬか」
「そんなの、選べな……」
「今すぐ選べ。選べなかったら、今ここで俺がお前を殺す」

 さっきの態度が一変して、アーボが私に殺人宣言をしてきた。
 さっきまであんなに仲良かったのに、なんで殺すの? なんでそんな選択肢を選ばなければならないの? なんで……
 ただ、選ばなければ本当にここで死ぬ事と、本当にこの二つの選択肢しかないことは、アーボの態度から分かった。
 でも選べない。ポケモンなんて殺したくないし、かと言って死にたくもない。

 迷っていると少しづつアーボックが近づいてくる。獲物を狩るような目で……

 怖い怖い怖い。『誰か助けて』

 恐怖が濁流のように襲ってくる。けど、助けられるのはもう嫌だ……というか、誰も助けてくれる人なんて居なかった。
 イーブイを守りたい。嫌、私しか守る人が居ない。

 腹をくくれチャーフル・ジーニア……いや、レイ。
 このままソレイユの所に行くのは嫌だ。沢山、生きてた頃の話をしたいんだ。ママにもパパにもお兄ちゃんにも。

 目の前には大きく口を開いたアーボックが居る。まだ選択の時間はあるようで、アーボックはゆっくりと私を口に入れようとする。

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77 :ベリー
2022/09/26(月) 20:42:36

「……きる。生きる。生きる!」

 私はアーボックの喉に向かってそう叫んだ。笑ってる暇も楽観視してる余裕もなかった。
 ただ、必死にそう言った。するとアーボックはピタリととまり、シュルシュルとしなやかにアーボの後ろに移動した。

「二言は無いな?」
「……無い」

 アーボは冷徹な表情で私を見下げる。私も、負けじとアーボを睨み返す。
 まるで昔、パパに叱られていた時のようで全身の水分が凍りそうだった。

「分かった。俺が鍛えてやる」

 すると、一瞬でアーボの表情は溶けて微笑んだ。
 温度差が激しかったため私はどういう感情をしたらいいか分からず呆気に取られた。

「ぁ……え」
「それとも、自分一人でポケモンを殺すか?」

 アーボは意地悪な表情でそう言った。それがソレイユとそっくりで胸が張り裂けそうになる。

「むっ、無理!」
「なら決まりだな。行くぞ」

 アーボはそう言って洞窟の外へと歩き出した。私も、急いでイーブイを抱えて走り出した。
 これから、私はどうなるのだろう。生か、死か。外に出れるのだろうか。

─当時の私にはそれしか予測できる可能性はなかったけれど、今思えば他にも起こりうる可能性が高い選択肢は沢山あった。
 けど、もう終わったことだから─

 チャーフル・ジーニア改め、レイは灰色の空の元、アーボという名の男性を必死で追いかけた。

◇◇◇
挿絵cdn.wikiwiki.jp

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78 :げらっち
2022/09/26(月) 21:45:06

おおお久しぶりに更新が!!
でも今回の終わ壊は最期の足掻きを読了してから読むことにしようかな…
>>70 私が読むの早いのはおヒマだからだ…
ベリーさんこそ書くのがすごい早くてうらやましい。
しかも同時に挿絵まで描いてるとは!
絵柄かなり好きです。全チームの絵見ました!みんなかわいい。

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79 :ベリー
2022/09/27(火) 00:04:57

>>78
旅行中にちびちび書いてましたあああ!
あ、了解ですその間に読み切れないほど更新してやろu((そんな時間は無い
というかいつも読んでくださってありがとうございます……毎回言ってるなこれ
 
>>私が読むの早……
書くのが早い……かは分かりませんが、大体更新してる時は暇な時が多いです。
ゲラペディア更新してるのもめちゃくちゃ暇だからです( ・∇・)
終わ壊の挿絵は書き終わった後に描いてますがゲラペディアのイラストは殆ど小説アプリの設定欄で使ってる画像を引っ張ってるだけナンデス

そう言っていただいて嬉しいです。
全チーム見てくださったんですか!めちゃくちゃ構図に悪戦苦闘しましたぁぁあああ
実はヒュウチームのイラストには伏線g(((

最期の足掻きを読む際なのですが、一応本編で説明してるつもりですが訳分からん単語出てきたらゲラペディア見たら大体分かると思います!

もう、本当にコメントもして下さってありがとうございます(´;ω;`)

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80 :ベリー
2022/09/27(火) 00:56:22

なんか、落書きしてたらかけちゃったのでだします

cdn.wikiwiki.jp

このイラストにはチャーフルとソレイユが描かれています!
AがどちらでBがどちらか
見分けられる人は居るのでしょうか!!

まずこれを見てる人は居るのでしょうか!(泣)

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81 :げらっち
2022/09/27(火) 08:47:43

Aがチャーフル、Bがソレイユ!
カキコにいるベリーファンをここに引っ張ってこよう

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82 :げらっち
2022/09/27(火) 17:13:19

『最期の足掻き』読破ああああっ!

めちゃくちゃ面白くてスラスラ読んでしまった。
裏の陰謀以上にシリアスで楽しめました。
主人公4人の視点が移り変わる裏の陰謀と違い、主人公が基本シュウで固定されているため読みやすかったです。
施設の事情や主要キャラの過去が詳しく描かれていたのにも引き込まれました。

厳選されたポケモンを処理する施設というのは、ゲームの裏の面を描くと同時に、ペットショップ等で余った動物が大量に処分されていることへの風刺にも取れる。
他にも人間とポケモンを合わせたキメラの開発、彼らがポケモンの力を解放するロリースなど、ここまでやるかという程ポケモンのブラックさを出していて、面白い。
3柱や脱走時の6人などもキャラが立っている…

多くの人物が2代目レイ(チャーフル)に惹かれ、彼女に対する愛が行動の動機になっている点で、バカセカの日向のようなポジションになっているのも興味深い。


やや違和感のあった点は…
1代目レイではなく、初代レイという表現のほうが無難では?
リーダー/ドク/トゥエルブスの性格が裏の陰謀と最期の足掻きでだいぶ違い、同一人物に思えない。
双子が作中では5歳、wikiでは8歳程度とあるが、精神年齢的にもう少し上(幼くとも12歳以上)に見える。
くらいかな!

あとは、誤字が豊作!やはり、少し見直したほうが良いだろう。主人公の名前にさえ誤字が…(シュウ→シュツ)
そういえば、ヒユウとヒュウ、どっち?

まあ誤字の多さや表現の誤用こそあれ、プロットや舞台、キャラクター面ではかなり面白い作品だと思う。金賞受賞作というだけある。
一番盛り上がるであろう脱走開始の手前で連載中断しているのが残念…
続きの脱出シーンも見たい。

本当に面白かったのでこの壮大なシリーズに今後も期待します!

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83 :げらっち
2022/09/27(火) 17:22:18

まとめ
 チャーフル/ソレイユの父母が脱走【1回目の脱走】
→母は殺され、父(アーボ)とチャーフル(2代目レイ)は施設に連れ戻される>>34
→レイ、カリスマになる
→レイ、アーボ、スイ、ドク、ダミ、フジ脱走【2回目の脱走】
→レイ、アーボ、スイ、ダミ死亡 ドク、フジは連れ戻され拷問を受ける
→ドクはリーダー、フジは3代目レイとなる
→ソレイユ(シュウ)が施設に入れられる
→シュウ、双子、リゼ、ダミ(のロボット)ら脱走を企図【3回目の脱走】

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84 :げらっち
2022/09/27(火) 17:29:40

あとは、wikiにある
――トロッコ問題というのは難しい。
「どちらも悪くない。しかし勝敗をしいて決めるとしたら、切り捨てることに慣れていたレイナの勝利ではなかろうか。しかし、アカネ先生はただの被害者である」
という表現がなかなかに好き。

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85 :げらっち
2022/09/27(火) 19:58:15

>>71-77も読破。
最期の足掻きを読んだ後なのでよくわかる!!
レイとアーボの出会いのシーンだったのか!!
レイが明るくて、たしかにカリスマっぽそう。

人間も直接ポケモンと戦うんだよねー…
それも、キメラだからできる事(ネタバレ)。

[返信][編集]

86 :ベリー
2022/09/27(火) 20:31:55

うわあああげらっち様からたくさんのレスが!

>>81
正解です! 見分け方は前髪とかまつ毛の量です!逆に言うとそれ以外の違いはありません!(((

私のファンですか? ハハッ、見てくださる方はいますが直接コンタクトを取ったことがある人は数人にも満たさないし殆ど浮上されてません(死んだ目)

>>82
うえおおえお?! 本当に一日で読破しちゃった……すげぇ。

沢山褒めてもらった!やったぁ!え、やった……
あ、めちゃくちゃ嬉しいです(感情が爆発すると語彙が消失する人)

でも内容ブラックすぎて『あーこれポケモン二次創作じゃねぇなw』って思いながら書いてます……

あ、確かに初代の方がしっくりくる……今まで考えてすらなかったです。語彙力……
これから表記変えようと思います。

あー、もうドクさんは色んな顔と名前持ってますからね。
一人称が僕の素のドク、施設を取り締まる顔のリーダー(基本この顔)、ピラミッドで安定の位置に着くためのトゥエルブス、ストレス溜まった時には殺害衝動(初登場)
計4つも顔がありますね。で、人間なんですよ。お前キャラ濃いな()
殺害衝動はもう、不幸慣れしちゃった仕事人の宿命なんでね()

あー双子は途中で年齢変えたんですよね
5歳から8歳に。精神年齢はあの環境に居たら達観してそうだなぁと思いながら書いてますね。
元々表世界の設定が『10歳になると成人』なので裏の陰謀世界の人々は精神年齢が実年齢より高めに設定されています。

因みに最近まで時系列をまとめられてなかったのでどこかしらの時系列に矛盾点もあるとおもいまぁす!(修正します)

誤字は……もう、直さなければ、修正しなければ……
推敲が本当に雑なんですよね自分。そんな大変な作業じゃないので意識します。

ヒュウは、本名が陽佑(ヒユウ)で、あだ名がヒュウです。

最期の足掻きは完結させますよ、絶対!
今年中に……今年中に完結できるかな……
本当は7月頃に完結予定だったのにめっちゃ長引いてて『あーぁあーあー』となってます(謎)
3月には最期の足掻き完結記念でMV作ってて、『完結したらYouTube公開しよう!』って思ってるのに全然完結しなくてフォルダの奥の奥にMVが押し込まれてます()

>>83
うわああぁ!まとめて下さってありがとうございます!
こう見たらなんか複雑だな……
私以外の方から私の創作キャラの名前が出てくると……感動で泣きそうです……ありがとうございます

>>84
なんか本編では『アカネ先生悪!』って感じで書いちゃって……本当は悪の配分はレイナ7割アカネ先生3割にしたかったんですけど、カシワ達が勝手にいい雰囲気にしてしまったんですよね。だからアカネ先生の擁護の一つとして書きました。
因みにアカネ先生の『アカネ』は昔自分が幼稚園の時に職場体験で先生をしてくれた女子中学生の名前です(((え?

>>85
わあああ!読んでくださってありがとうございますありがとうございます!
二代目はあれだ、所謂人たらし的なやつですね。本人も聖人性格ですし。
なんで二代目の双子のシュウはあんなひん曲がって育ったんだよ……

キメラだからできることですよね二代目はキメラの子だけど関係ないや。
え? リーダー? ダミ? あの人たち人間卒業してるだろ()

ちょっと自創作のことで熱くなってしまったかも知れません……いつも読んでくださってありがとうございます……(言葉にできない感謝)

[返信][編集]

87 :げらっち
2022/09/27(火) 21:38:00

見分けられたぜ!

そういやドクは素の人間でしたねえ…ドラゴンボールのヤムチャ(人間)のようなポジションか?

レイナやヒュウたちも10歳に見えない笑
+3~5歳くらいの年齢に思えますね。
でもこれはアニポケのサトシが10歳に見えないのと同じ現象か…ポケモンの世界は成長が早いんだ!

裏の陰謀シリーズにハマったので、ドンドン話したいですぅ。

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88 :ベリー
2022/09/28(水) 16:34:40

>>87
うわああぁぁい! 嬉しいです

ーーー
cdn.wikiwiki.jp

たまに描いてる落書き漫画です。(読む際は下スワイプ)
シスコン変態でヤベェやつ認定のソレイユと二代目とレイナと成功作の話です。
勿論ifです。

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70 :ベリー
2022/09/26(月) 20:37:06

早ければ明日?!
裏の陰謀の時も思いましたがめっちゃ読むのお早いですね?!
私も速読能力欲しい……

本当にありがとうございます

78 :げらっち
2022/09/26(月) 21:45:06

おおお久しぶりに更新が!!
でも今回の終わ壊は最期の足掻きを読了してから読むことにしようかな…
>>70 私が読むの早いのはおヒマだからだ…
ベリーさんこそ書くのがすごい早くてうらやましい。
しかも同時に挿絵まで描いてるとは!
絵柄かなり好きです。全チームの絵見ました!みんなかわいい。

81 :げらっち
2022/09/27(火) 08:47:43

Aがチャーフル、Bがソレイユ!
カキコにいるベリーファンをここに引っ張ってこよう

82 :げらっち
2022/09/27(火) 17:13:19

『最期の足掻き』読破ああああっ!

めちゃくちゃ面白くてスラスラ読んでしまった。
裏の陰謀以上にシリアスで楽しめました。
主人公4人の視点が移り変わる裏の陰謀と違い、主人公が基本シュウで固定されているため読みやすかったです。
施設の事情や主要キャラの過去が詳しく描かれていたのにも引き込まれました。

厳選されたポケモンを処理する施設というのは、ゲームの裏の面を描くと同時に、ペットショップ等で余った動物が大量に処分されていることへの風刺にも取れる。
他にも人間とポケモンを合わせたキメラの開発、彼らがポケモンの力を解放するロリースなど、ここまでやるかという程ポケモンのブラックさを出していて、面白い。
3柱や脱走時の6人などもキャラが立っている…

多くの人物が2代目レイ(チャーフル)に惹かれ、彼女に対する愛が行動の動機になっている点で、バカセカの日向のようなポジションになっているのも興味深い。


やや違和感のあった点は…
1代目レイではなく、初代レイという表現のほうが無難では?
リーダー/ドク/トゥエルブスの性格が裏の陰謀と最期の足掻きでだいぶ違い、同一人物に思えない。
双子が作中では5歳、wikiでは8歳程度とあるが、精神年齢的にもう少し上(幼くとも12歳以上)に見える。
くらいかな!

あとは、誤字が豊作!やはり、少し見直したほうが良いだろう。主人公の名前にさえ誤字が…(シュウ→シュツ)
そういえば、ヒユウとヒュウ、どっち?

まあ誤字の多さや表現の誤用こそあれ、プロットや舞台、キャラクター面ではかなり面白い作品だと思う。金賞受賞作というだけある。
一番盛り上がるであろう脱走開始の手前で連載中断しているのが残念…
続きの脱出シーンも見たい。

本当に面白かったのでこの壮大なシリーズに今後も期待します!

83 :げらっち
2022/09/27(火) 17:22:18

まとめ
 チャーフル/ソレイユの父母が脱走【1回目の脱走】
→母は殺され、父(アーボ)とチャーフル(2代目レイ)は施設に連れ戻される>>34
→レイ、カリスマになる
→レイ、アーボ、スイ、ドク、ダミ、フジ脱走【2回目の脱走】
→レイ、アーボ、スイ、ダミ死亡 ドク、フジは連れ戻され拷問を受ける
→ドクはリーダー、フジは3代目レイとなる
→ソレイユ(シュウ)が施設に入れられる
→シュウ、双子、リゼ、ダミ(のロボット)ら脱走を企図【3回目の脱走】

84 :げらっち
2022/09/27(火) 17:29:40

あとは、wikiにある
――トロッコ問題というのは難しい。
「どちらも悪くない。しかし勝敗をしいて決めるとしたら、切り捨てることに慣れていたレイナの勝利ではなかろうか。しかし、アカネ先生はただの被害者である」
という表現がなかなかに好き。

85 :げらっち
2022/09/27(火) 19:58:15

>>71-77も読破。
最期の足掻きを読んだ後なのでよくわかる!!
レイとアーボの出会いのシーンだったのか!!
レイが明るくて、たしかにカリスマっぽそう。

人間も直接ポケモンと戦うんだよねー…
それも、キメラだからできる事(ネタバレ)。

87 :げらっち
2022/09/27(火) 21:38:00

見分けられたぜ!

そういやドクは素の人間でしたねえ…ドラゴンボールのヤムチャ(人間)のようなポジションか?

レイナやヒュウたちも10歳に見えない笑
+3~5歳くらいの年齢に思えますね。
でもこれはアニポケのサトシが10歳に見えないのと同じ現象か…ポケモンの世界は成長が早いんだ!

裏の陰謀シリーズにハマったので、ドンドン話したいですぅ。

34 :ベリー
2022/09/16(金) 20:33:52

「え?」

「あぁぁぁ!」

 目の前にはその攻撃を全て食らったチャーフルの無惨な姿があった。片腕は無くて、顔は半分抉れていて脳みそが丸見えである。チャーフルの胸元には無傷なイーブイが居て
 チャーフルが傷ついた。チャーフルが死んだ。俺を庇って、俺以外に殺された。俺以外に……俺以外に

「ア”ア”ア”ア”ア”!!!」

 俺はただ、絶望で、負の感情に沈んでいき喉を絞り出してその感情を必死で外に出そうとした。

『い き て』

 チャーフルが半分もうない口をパクパクさせていた。チャーフルの顔は謎に穏やかな表情で、母さんそっくりだった。
 チャーフルがいない世界で生きる? ありえない。世界なんて、滅びてしまえばいい。

『絶望』

 それしか見えなくて、少しづつ視界は黒く染っていき……

『ジャブンッ』

 足のつかないような深い激流に飲まれ流されて言った。ぐるぐると体が回り空気を吸うタイミングが分からない。

 あー、チャーフルが死んだなら……俺も……


《チャーフル》

「あぁぁぁ!」

 痛い、もう痛すぎて神経がマヒしたのか、それとも叫び疲れたのか声が出ない。
 放り投げたソレイユは、絶望した顔で、大粒の涙をこぼしてこちらを見ている。まるで鏡でも見ているかの様だ……
 というか、あれ? なんか視界が狭いし、頭が……働かない…… 言葉、言葉を出したいけど言葉が何かもすら分からない。目の前の人は、誰? 私?

 それでも、大切な人だということは、分かった。何故か伝えたいことの伝え方も分かっていた。

『生きて』

 口を、何故か空気でスースーした口内を柔らかく動かした。それで満足だった。もう何も分からなかったから、何も……
 私は、自然と笑みがこぼれて、そこで、意識を失った。

 ◇◇◇

「No.9802も、バケモノの一体も死亡した……あと二体か……クソッ。これじゃあ依頼人が激怒して私の立場が……」

 男は燃えている家に戻り、数がもう数体しかいないバケモノを侍らせ兄の前に立っていた。
 そして男はタブレットを見て歪んだ顔で唇を噛んだ。その様子を見て心配そうにルカリオが男の背に手を当てる。

「残念ながら、あの川は家の父が死にかけた川だ。ソレイユが無事でいるわけが無い。そういう俺も、もう時期死ぬ」

 兄は串刺しにされながらも何かを悟ったような、勝ち誇ったような顔で男にそう言った。

「何故だ……」
「簡単な事だ。技を使いすぎた。俺はバケモノであってもポケモンじゃない。もう俺の肉体が耐えられないんだ」
「全滅……クソッ!」

 男が強く片足で地面を踏んだ。ぬかるんだ土は『バシャン!』と音を立てて男のズボンにへばりつく。この世の終わりのような顔をした男は顔を覆った。

「この依頼は……俺の命がかかった物だった……のにっ」
「そこで……だ。俺と協力しないかい?」

 兄はもう時期死ぬなんて思えない朗らかな表情で男に問いかけた。

「屍にはもう用はない」
「失敬な。俺まだ死んでねーし」

 兄はチャーフルのように頬をプクッと膨らませると、フッと笑いおもむろに話し始めた。

「まだ、ジーニア家に生きている人物が居る」
「ッ!!」
「勿論、俺らの血を引き継いでいる」
「……どいつだ。どこにいる。吐け」
「そこに、いんじゃん」

 兄は男の後ろの方に視線を向ける。そこには研究用にとブルーシートの上に置かれたチャーフルが居た。

「何、ふざけたことを言ってるんだ。死者蘇生でもすると?」
「違うって生きてるつったろ」

 男はからかわれてると思ったのかイラついた声で兄に攻撃するように言った。それでも動じない兄は呆れたように返事をした。

「見ろって、その脳みそ、まだ微かに動いてるだろ」

 兄が言うと男はチャーフルに近づき、半分もない脳みそをまじまじと見た。それは、まだ蛆虫のようにニュルニュルと動いていて、肉が出来ては消えていき、出来ては消えていきと人とは思えないような出来事が起こっている。

「まさか……なんで……」
「そりゃ、俺達はお前らで言う『化け物』だからね」
「コイツを……コイツを連れて帰えれば!」
「それでもチャーフルも時期に死ぬ」

 微かな希望を掴んだ男の表情が晴れるが、兄の言葉に一気に底へと落とされる。しかし、この状況で生きてる方がおかしいため悔しそうに男舌を噛んだ。

「……」
「まだ話は終わってない。協力しようって言ったじゃないか」
「……なんだ」

 男はチャーフルを見ながら、下を向いて絶望に満ちた声で言った。それを嘲笑うように兄はこういったのだ。



「  俺の─────」


     第一章 私の分岐点 終