日記一覧
┗262.備忘録(144-148/152)

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148 :乱-藤-四-郎
09/26(月) 23:25


カワイイって言われるのは好き。
だけど、格好いいとも思われたい。
折角の体だから、愛したいし与えたい。
だけど生まれ持った性分は、愛される事を望んだりもする。
ぜんぶぜんぶぜーんぶ。アレもコレも欲しくなる。
ボクって贅沢なのかな? ワガママなのかな?

刀は、ううん、道具や絵も、声無き物は人の鏡だ。
綺麗だと思って見れば綺麗に見える。
可愛くも、格好良くも、醜くも、素っ気なくも見える。
こうだって思ってみれば、そう見えるものなんだよ。

ボクのこの身を知らない人が、ボクの乱れ刃を見たところで、きっとこんな姿は思い浮かばない。
もしかしたら勇ましい武人を思うかも知れないし、猫や狼や鳥を思うかもしれない。
ボクがこう見えるのは、ボクを知っている人にだけ。

つまり、ボク達は何にでもなれるんだ。
ボク達は、望まれた姿で人と対峙する。
だからかな? 何にでもなれるから、何者でもあるから、全てを欲しくなっちゃうのかも。

一緒が良いけど、一人が良い。求めたいけど、欲されたい。
カワイイって頭を撫でて、格好良いってメロメロになって?
疲れたーってボクに凭れ掛かって、お疲れ様ってボクを懐に抱いて。
思いっきり翻弄されて、目が回るほど振り回して。
愛してると嘯いて、愛されたいと嘆願して。
ぜんぶぜんぶぜーんぶ、全てをボクに頂戴? 良いなあって思った物ぜーんぶ、ボクにくれるよね?
アレも、コレも、ソレも。
全ての目線をボクに集めて。誰一人としてボクを見ないで。

こんなワガママもカワイイでしょ? って。あるじさんは呆れちゃうかな。

……あ。こうして書き連ねてみてやっと分かった。
やっぱり、あげるんじゃなくて欲しいんだ。うーん、まだまだ半人前!


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147 :燭-台-切-光-忠
09/20(火) 01:49


余り褒められた話ではないが、僕は時折、深夜こっそり部屋を抜け出す。
夜歩き禁止、なんて主に言われた事は無いから、任務に支障さえ来さなければ咎められる行いでもないんだろうけどね。

人の体は夜眠るように出来ているから、ということで、この本丸での夜とは即ち眠る時間だ。
そんな時間に、どうしてわざわざ部屋を抜け出すのか、といえば、これがまた、全然色っぽい話でも何でもなくてね。
例えば、そうだな……聞こえて来る風の音が魅力的だった、とか、雨音が美しかった、とか、夜空が見たかった、とか、そんな下らない理由で、僕は夜に繰り出す。

顕現から暫くして、僕は夜を失った。
別に見えなくなった訳じゃない。ただ、夜に強い者達が余りにも見えすぎるから、他の刀に夜を任せる方が能率的になったという、ただそれだけの話だ。
だけど、それ故に。夜の景色は僕にとって、非日常へと変わってしまった。

だからだろうか。夜の世界は、僕の精神を研ぎ澄ませてくれる。
一歩、本丸から出た瞬間、まずその暗さに恐怖を覚える。
僕は生き物ではないのに、本能的な恐怖、としか形容できないものに、心臓を鷲掴みにされたような心地になるんだ。
聞こえて来るのは専ら風の音。それから時折鳴く、夜鷹の愛らしい声くらいだろうか。

見慣れたはずの城下への道さえ、まるで敵の本陣に向かう最中のような緊張感を僕に齎す。
余りにも見え方が違うから、自然と五感が鋭敏になって、周囲の情報を余すことなく拾い始める。
今の季節なら、風には枯れ草の匂いが僅かに乗って来る。こずえの揺れる音に混じって、遠くで獣が茂みを分ける音もする。
歩く度、足音が僅かに反響して、近くに人の形をしたものが居ない事を実感させられる。
ひっそりと静まり返った城下は、月と星の灯りのみに照らされて、まるで違った顔に見える。
時折、夜半に働く者達の気配が伝わって来るから、益々神経がぴりりとする。
気配を感じる度、それが無害なものだと判断する必要が有るからね。

ぐるりと城下を巡って、部屋に戻って来た瞬間、どっと疲れが体を襲う。
緊張の糸がぷつりと途切れるのを感じて、自分がどれだけ気を張り詰めていたのかを知る。
その脱力がまた、何とも言えず心地良くてね。
それでもまだ完全には緩みきらない体を布団に潜り込ませると、恐ろしくよく眠れたりするんだ。
あの感覚は、言葉では何とも説明しがたい。
張り詰めているまま安らぐような……ああ、そうだ、夜営の感覚に近いのかな。
うん、やっぱり僕は、戦場にこそ居場所を見出すらしい。

料理は好きだ。誰かの頭を撫でるのも。優しくするのも、笑って貰うのも、人らしい暖かさを持った交流は気持ちが良い。
だけど、最終的に僕らが在るべきは、生まれたその瞬間から決まっている、のかもね。


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146 :加-州-清-光
09/11(日) 18:03


日々の疲れを癒すのに、可愛い物は重要だ。
って事で、ちょっと小間物屋を覗いてみて目に付いたのは、つまみ細工の簪だった。
簪。俺の後ろ髪でも使えない事は無いよね、自室で使う位だし、と、値段を見て動きが止まる。
職人手製の物とはいえ……いやいや、え、そんなすんの? ほんとに?
固まった俺を見て、買い物に付き合ってくれた堀-川-国-広が言った。

「つまみ細工、結構簡単だよ? 自分で作ってみたら?」

そう言って渡されたのは、木工ボンドと縮緬。

……ボンドで止めてんの。マジか。

どうやら、縫うやり方と接着するやり方が有るらしい。
縫うより接着する方が初心者向けって事で、こっちをすすめてくれたみたいだ。
昔はどーだったんだろうね?
糊よりは縫って作ってそうな印象だけど、生憎間近で見た事ないからなー。

とりあえず、堀-川-国-広に貸して貰った指南書に沿って、布を切ってみる。
幾つもの正方形の布っきれが花になるんだから、手芸ってすごい。
切って、折って、貼って。重ねて、折って、貼って、返して……。
30分程度で出来る、と書いて有ったにもかかわらず、何とかそれらしい形になったのは、一時間以上経った後だった。
その上、花弁は不揃いで不格好、練習したものだからと自分で使うのなら充分だけど、売り物には到底出来ない代物だ。
成る程そりゃあ高くつくわ……って、すげー納得。

人間の体の構造は、基本的には一緒だ。
頭があって首が有って、胴が有って四肢が有る。生えてる指の数も、十ずつを上回る事は殆どない。
だからさ、勘違いしちゃうことがちょこちょこ有るんだよね。
俺に出来るから出来るはず、あいつに出来るから出来るはず。
だって同じ体で、同じ機能を有しているんだから。
それに、上手い人は本当にちゃちゃっとやっちゃうからね。料理も、細工も、武道も、色んな事を。
簡単に見えちゃったりするんだよ、これがまた。

でも、それってとんでもねー勘違いでさ。
小間物一つ作るにしたって、沢山の練習を重ねて指先に感覚を教え込んで、それで漸く作れる様になる。
だから職人の作品ってのは、そういう今までの鍛練の時間も込みのお値段って訳だ。
そう考えると寧ろ、適性どころか安いと思える位の値段だった気がする。

今回の事は良い勉強になった。
けど、結構楽しかったから、やっぱり買うんじゃなくて、自分好みの物が作れるようになるまで頑張ってみよっかな。


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145 :歌-仙-兼-定
09/05(月) 00:00


長月。

……長月!?

瞬く間に夏が枯れてしまった。時の流れの速さには驚かされるばかりだ。
ここ最近で何か有ったかと言えば、特に何も無い。
ああ、強いていうならば、珍しく主が激昂した事があったくらいかな。

主は基本的に温厚だ。怒るのが面倒臭い、とも言っていた。
そんな主が、先日珍しく声を荒げ怒りを露わにした。

「俺の刀達を、よくも」

新たな戦場から帰還した彼が吐き捨てた言葉を聞いて、迎え入れた誰もが驚きに目を瞠った。
重傷者を手入れ部屋に運び入れるのを見守りながら、彼は唇を噛み締め、拳を震わせていた。
よくも、よくもと、彼は一人呟いていた。目に灯るあれは、憎しみだ。

主は、僕達を信頼している。僕達とであれば、ありとあらゆる局面に立ち向かえると確信している。
だから彼の怒りは、本来で有れば僕達に向くべきだ。彼の信頼に応え損ねた、力無き僕達に。
聞けば、どうやら彼は戦場でも珍しく暴言を吐いたらしい。

「何処を狙ってる。遊んでいるのか?」

ご尤も、だ。
けれど、戦事は分からないから、僕達の方が詳しいから、と日頃全てを預けてくれている彼にしては、随分と珍しい言いようだった。
燭-台-切もその様子には随分と驚いたらしい。

「彼がああも怒るの、いつぶりだっけ?」
――あの霧の……否、あの時もここまでではなかったな。
「随分と腹に据えかねたらしいね……。まあ、実は僕も同感なんだけど」
――と、いうと?
「ここまでコケにされて、黙っていられる訳がないだろう? 彼が怒ってくれたのは、実の所、嬉しかったりもしたんだ」
――共感、という奴だね。
「ああ、そうだね。共感されるとこの体は喜ぶ。彼があれ程怒ったのは、僕達の怒りがそれほどまでだったからかも知れないな」

なるほど。怒るにも種類が有るらしい。
我等が主のお怒りは、どうも優しさに分類される物なのかも知れなかった。

連日、かの戦場への出陣は繰り返されている。
悔しい顔をして帰って来る事も、ざまあみろと笑顔で戻って来る事も有る。
ただ、一つだけ確かなのは、彼は確かに僕達を労り、今も変わらず信頼してくれている、という事だ。


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144 :燭-台-切-光-忠
06/21(火) 00:45


引き際って大事だよね。
全ての戦において死力を尽くし、敵を殲滅せしめる事だけが、正義ではない。
誰かが折れれば士気の低下は免れないし、新たな刀の練度を上げ直すのだって手間も時間も掛かる。
長期的に見て、今をどうするか。それを判断するのって、実は結構に難しい。

引き際の決断は、日常にも実に多く溢れている。
掃除は今日どこまでするか、何時まで整理整頓に費やすか、報告書は何処まで書こうか。
その一つ一つ、ここまでなら、これさえしておけば、と判断を下し、行動し、僕達は日々を暮らしている。

まあ、つまり。
僕は今、完全に引き際を間違えた訳だ。
さて、どうしたものか。と考えているこの時間も無為なものになるだろう。
うーん、格好付かないな。
一度決断を誤ると、大体ズルズルと色んなものがずれ込んで、無様な結果になるんだよねえ。

とりあえず。これ以上悩むのはやめにしよう。
後悔なら、後で好きなだけすれば良い。


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