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┗1407.telescope(36-40/49)
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40 :
Dr./レ/イ/シ/オ (H/S/R)
2025/03/31(月) 02:00
たびたび怪我をして帰るギャンブラーの、その傷が大して深いものでないことは処置の程度を見ても理解できる。ただそれでも、こちらに視線を向ける彼のその顔に痛々しさを覚えてしまうのは仕方が無いだろう。目の前のひとつひとつの傷口に、共感をしてはいられない。けれど恋人の笑顔が痛みに引き攣る瞬間を他人事に見ていられるほど、薄情な男でいられるはずもない。傷の慰めに、今は僕の腕に眠るただ一人に向けた個人的な、くだらない思いをここに残しておく。
※惚気
猫に似て甘える仕草に心揺らされるとき、ときどき彼を猫のようにする想像が頭によぎって居た堪れない心地になる。猫、とは、あの男が自宅に同居する三匹の天才による創造物のことだ。外見的特徴からお菓子と呼ばれることも多い創造物のうち、特にそれに近いフォルムをしたものが、僕よりも先にあの男と寝食を共にしていた猫たちだ。共に暮らす存在としては一般的とは言えない生命体だが、幸い僕にも多少の心得はあった。多数の創造物を抱える研究室では研究員のデスクから食事やお菓子の類を盗み出す個体も存在し、その体はジャンクフードやケーキも問題無く消化する。研究室を我が物顔で駆け回る「ヘルタ」管理創造物に比べれば彼の同居するお菓子たちは、家主の持ち帰ったフライドチキンを食卓に全員が揃うまで――出来立てのそれが冷えきって、人間が先にめそめそと拗ね始めるほどの時間――『待て』ができる程度には、躾が行き届いた利口な猫だ。
いつか家主が留守にしているうちに、猫たちにホットケーキを焼いてやったことがあった。そのときの三匹がいつになくはしゃいでいたものだから、ホットケーキを見ると跳ねるお菓子を思い出してしまう。だからあの男が孔雀の装いをやめて猫の振る舞いをするなら、僕は彼を膝に抱き上げてやりたくなる。ミルククリームでもバニラアイスでも、ストロベリーソースでも苺そのものでも、切り分けたホットケーキの一口に甘いトッピングをたっぷりと乗せて口元まで運んでやりたくなる。唇を汚すのなら、勿論僕が拭き取ろう。何枚だって重ねていいし、好きなだけのバリエーションを用意したい。あたたかなベッドで迎える休日の朝が恋しい。[23:43] 遅くなってしまった帰宅を眠気眼で出迎えた彼が「もう少し遅かったら猫たちの動画を送ってあげようと思ったのに」などと言うものだから、急ぐ帰路に募った愚かな杞憂は塵も残さずに消えた。抱擁の柔らかな拘束から逃れた創造物たちがやれやれとばかりの様子で各々身を落ち着けている姿を横目に、眠りに落ちた男をただ見守るだけの夜だ。軽く頁を捲りながらも、視線は揺れるお菓子の尾に引き寄せられる。傷の痛みだろうか、僅かな身動ぎと眉を顰める寝顔の観察に集中を向けてしまう。幾度か目を通した本の活字を追うよりも、それらの方がよっぽど僕の現状に必要なものだった。創造物たちの研究室で用いられる共感覚ビーコンを僕たちは接種していない。その黒い尾の先が眠る同居人の輪郭を撫でる意味を、頁を捲る手が止まるたび胸元に前足が押し付けられる意味を、推測することしかできはしない。けれどそれの全てが的外れでもないだろう。意思疎通可能な言葉を交わさずとも、天才の生み出したこの小さな命たちは、時折どうにも僕らのことをよく理解しているように振る舞うのだから。
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39 :
Dr./レ/イ/シ/オ (H/S/R)
2025/03/19(水) 01:28
あの男の呟く「さみしい」の一言で全ての優先順位を狂わせてしまう人間になってしまったものだから、相変わらず愚かしくも彼へと向ける感情に振り回されている。腕の中で眠るギャンブラーの、ポーカーフェイスを捨て去った寝顔を、ただ眺めていられるだけで僕は充分に幸せだと言ってやりたい。実際のところはそれよりももう少し、餓えている。
約10日。同じ部屋に帰宅し、同じベッドに眠っているくせに、僕と彼とがすれ違いを続けている日数だ。意識して数えてみればそう長い期間でもないように思えるが、それこそ蜂蜜に浸されるような日々を送っていた心身が渇いて軋みだすには充分だった。夜の静けさに身を委ねるだけの時間が無いのなら、朝の微睡みに彼を求めた。互いの隙間を求め合って触れた。僕の帰宅する頃に彼は、眠っているはずだった。ほんの少し触れるだけに口付けた瞼が持ち上がるから、眠気を纏った腕が引き寄せるから、僕はかろうじて室内着に着替えただけの身体でベッドに潜り込んで、素肌を暴こうとする手を許して、彼に少しでも穏やかな眠りがあるようにその身体を抱いた。持ち帰ってきた作業も、今日は短縮してこなすはずだったルーティンも、あの男のたった一言によって後回しになるのだから自分自身に呆れるばかりだ。けれどそうしなければ、どんな汚れよりも厄介な後悔が頭にへばりつくことを僕は知っている。
もしも彼が些細な口付けに目を開けた理由が、待っていたからなら、……そうであればいいと根拠も無しに考えてしまうほどに、今は隠れたあの瞳の色が恋しい。温もりに満たされたまま、愛おしい恋人と、彼への感謝を抱いて眠る。愛されていてくれて、ありがとう。
君の愛で満たされている筈のこの心がたった10日のすれ違いで軋むのは何故なんだろう、君は変わらず愛を注いでくれてるのに体調不良に甘えて起きれない自分自身が情けないよ。
昨日の僕は狸寝入り、君が帰ってくるまで待っていた。おかげで狂っていた生活リズムも正された、かな。ちゃんと朝に目が覚めたから。
今日もこの調子で起きてられたらまた夜更かしできる日も来るだろう、待っていてね。僕のレイシオ。
ところで叫びを変えたの君は気付いているんだろうか。
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38 :
Dr./レ/イ/シ/オ (H/S/R)
2025/03/07(金) 01:58
※愚鈍
僕のことをどうにも侮っているらしいあの恋人がいずれ読むだろうという前提で書く。手紙ではないが、不特定多数に向けた文章でもない。
スターピースカンパニーの労働環境が大変劣悪であることは身を以って知っている。僕などよりもよっぽど組織の内側に籍を置くギャンブラーの仕事ぶりは、あの男の言葉を借りて「社畜」だ。こんな関係に踏み込むよりもずっと以前から、わかりきったことだろう。
――話が変わるようだが、自分の身体に発熱の症状が出た最後は数年前のことで、それもいつぶりかと言えば正確には思い出せない幼少期以来の出来事だった。あの時はベッドに潜ってもどこに居ても、目を閉じていても開けていても、カンパニーからの招待が届いた日の夢を見た。自宅の壁紙に、踏み締める廊下に、遥か宇宙で燃えゆく星のかけらを見た。耳には補佐が選別を引き受けていたはずの取材依頼を聞いて、凡人の自覚さえも正気と共に失っていた。高熱に魘されるということを自分の身に知った瞬間だった。けれど今はきっと違う悪夢を見るのだとどうにも直感して、発熱の兆しには恐ろしさがある。深く眠り、やり過ごしたと知った朝は少しの安堵さえもした。
メッセージアプリのトークルームには「社畜」らしく帰宅の遅くなる夜に送られてくるチャットと、静かな休憩室を背景にしたビデオ通話のテキストログが残っている。それが僕は嫌いではないのだと、伝わっているのだろうか。ほんの数コールを惜しんで繋いだ通話に見せられたくだらない泣き真似が、テキスト変換には残らないことを悔やむ気持ちは? 知らないだろうな。あの男が、知る必要はないことだった。
いつになく弱った恋人の口から出てきた言葉に、僕は腹を立てているわけでも悲しんでいるわけでもない。ただ、何も感じていないわけでも、ない。その感情の輪郭を探る思考の道筋を乱すように眉間に押し当てられた唇で、愛おしさに塗り替えられてしまったとしても。僕は彼から注がれる愛情に一切の不安を感じていないし、今日の言葉の全部が全部、彼の正気の本心であるとも思っていない。けれどその心のどこかに誤謬の根が張っているのであれば、僕はそれを抜き取るための術を探そう。まずは君が本調子を取り戻すまでを寄り添っていたい。今この時に、僕に出来る限りのことをさせてくれ。
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37 :
Dr./レ/イ/シ/オ (H/S/R)
2025/03/02(日) 03:11
健気にも叫びたくなったと簡潔な言葉をひっそり残した彼が愛おしく、僕も今この時の率直な気持ちをここに書き記しておくことにする。
※惚気
妙に湧き出てやまない欲望の源泉を塞ぐ術は見つからないまま、ぼんやりと腕の中で微睡んでいた男は瞼を下ろしてしまった。不思議にもこうなると欲望の行き先は変わって、触れたいよりも彼の穏やかな眠りを願うばかりだ。気の抜けた寝息に耳を傾けながら、その無防備な身体に寄り添って眠りたい。そんな欲に煽られた胸の奥のあたたかさをもう少し噛み締めるために、おやすみを言うまではまだ時間がかかるだろう。……だとかを書いていたら、瞼は持ち上がって眠たげなあの瞳が僕だけを捕らえるからたまらない。唇へのキスは君の目が覚めているときに贈らせてくれ。僕の何もかもを許そうとするあの男だからこそ、意識の外までを踏み荒らしたくはない。どうか良い夢を。
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36 :
Dr./レ/イ/シ/オ (H/S/R)
2025/02/28(金) 00:41
一旦確保のみ。
ねえねえ、いつ書くの?
[02:20] ページごと書き換えるはずが、消せなくなってしまったな……。この下に書いておこう。
彼との関係性が増えた初めの頃、当然のようにこのまま季節を越えるのだと思っていた。カンパニーの主導による幾つかの厄介な案件や、或いは引鉄の感触が指に残る最悪の出会いから、今や僕たちは随分と遠くまで来たものだ。それらがカレンダーの奥に埋もれていくように、当たり前に身を寄せ合う寒い冬の先があるのだと。それはあの男が口にする「永遠」なんかじゃなく、与えられる愛に対する驕りですらなく、日々と生活が人間に齎す変化からすっかりと目を背けた愚かな考えだった。――そんなことを思うこの日だったというのに、差し出された手紙は眩い。文香と同じ香りを纏った彼自身のように。
直接語りはしたがこのノートにも記しておく。違う季節の景色は遠いが、けれどそれでも、僕は君と夏の空が見たい。小さな花が身を寄せ合って、一つの大きな花弁を太陽へと広げるさまを共に見よう。背丈よりも高い花の頭に熱い日差しを遮られて、柔らかな金色は僕の目の前にだけ揺れて、未だ尚鼻につく香水と混ざる君の香りを知りたい。寝入り際のくだらない空想だ。それでもひとつ、思い描いてみるくらいはいいだろう。未知が先人の教えによって解き明かされていく過程にただ心躍らせていた少年時代、見上げた薄黄色の眩さと土の匂いを覚えている。もしかすると今だって、見上げられるのかもしれない。
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