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340.シャインシックス【小説スレ】
 ┗28-34

28 :ダーク・ナイト
2023/02/11(土) 20:28:53

第二十六話 「閉じ込められた悪→?その1」

そのまま、しんとした雰囲気が流れ続けた。
三人の目の前には、かちかちに凍ったサボルナがいる。
サボルナはちっとも動かない。
それもそのはず。サボルナは倒されたのだ。
だが、今の三人にはサボルナが倒れたことを喜ぶ気力はなかった。
なぜなら、みぞれの一言が胸に突き刺さったからだ。
鋭い矢のようなその突き刺さった言葉は、未だに三人の胸の的から離れてくれない。
的の中心に、言葉の矢は命中しているのだ。
三人は、胸がきりきりと痛むのを感じた。
氷のように固まったジーナと来夢を見て、みぞれは、
(しまった。)
と思った。
みぞれは二人を勇気づけようとして励ました。
「いえ、大丈夫ですよ。助けていただいたとしても、攻撃を観察して今後に生かしていけますよ。」
だが、二人はみぞれの心配をひっくり返すことを言った。
「みぞれ、励まさなくって良いのよ。だって本当だもの。」
「そうですわよ。嘘ではないのだから。むしろ、みぞれさんが教えてくれたことによりまして私も目が覚めましたわ。」
みぞれはその言葉を聞いて胸をなでおろした。
自分がやったことは過ちではないことに気がついたのだ。
そして、「不安」にまみれたみぞれの心は二人の優しい言葉がクッションのようになって、「安心」に变化したのだ。
さっきまでの張り詰めた空気が、一気にバラバラと崩れた。
そして穏やかな空気へと変わった。
「そういえばだけど…サボルナを倒したから…バトルアクセサリーは手に入ったのかしら?」
ジーナは不安そうに胸元を見た。
毒々しい色のビーズバッジが1つついている。
前回、ジェネラル戦で取得したバッジだ。
しゃらん、と鈴のような音色が聞こえた。
どこからの音だろう、とジーナは辺りを見渡した。
ジーナが腰を右に左にねじるたびに、しゃらん、しゃらんと音が鳴る。
すると、来夢が気がついた。
「ジーナさん、腰をご覧くださいませ!」
⇒二十七話へ続きます!

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29 :ダーク・ナイト
2023/02/12(日) 13:47:30

第二十七話 「閉じ込められた悪→?その2」

ジーナは腰を見た。
腰には、小さな小さなスーパーボールほどの大きさの鈴がついていた。
鈴は揺れるたびに、しゃらん、しゃらんと音が鳴る。
心地よい音色に、その場が和やかになった。
だが、その和やかさもジーナによってかき消されてしまった。
「これが…サボルナを倒したときのバトルアクセサリー…」
サボルナの熱気あふれるイメージとは違い、可愛らしい金色の鈴がついていたことに、ジーナは驚いた。
だが、驚きも一瞬で消え去った。
リングの特殊魔法が追加されていなかったからだ。
なんだか嫌な予感がした。
みぞれが声を絞り出した。
この言葉を言うには、かなりの勇気が必要だっただろう。
「…あの、ジェネラルさんと同じように…また復活してしまうのでは…。」
みぞれが発した最後の「は」と、サボルナの復活のタイミングはほぼほぼ同じであった。
めらめらと燃えるエネルギーを背後から感じ取ることができた。
おそるおそる後ろを振り返ると、やはりサボルナが立ち上がっていた。
さっきまで氷がついていたのに、今は氷が溶かされている。
サボルナの熱気が復活したため、氷が溶かされてしまったのだ。
「よおくも俺を倒したなあ?やるじゃないか。だがな、お前たちの実力で倒さないと完全消滅はしないのだ。誰かに倒してもらった場合、俺たちはよみがえる。今回だけは感謝ってことだな。」
ジーナは心の中でつぶやいた。
(サボルナ、教えてるし。まぁ私にとっては好都合だけど。でも…おかしいな。自分たちの実力で倒さないと完全消滅はしないってことは…。)
背後から、聞き覚えのある声がした。
「あぁら!お久しぶりぃ。ジーナ・ケンドウ!」
まさか、と三人は振り向いた。
⇒二十八話へ続きます!

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30 :ダーク・ナイト
2023/02/12(日) 13:53:00

第二十八話 「閉じ込められた悪→?その3」

三人の予感は的中した。
そう。後ろに立っていたのは、腕組みをしたジェネラルだった。
復活したサボルナ。勝つのに手こずったジェネラル。
この二人と戦うのだ。
人数的にはこちらの方が多いが、どう考えても今のままでは危ない。
ジェネラルは風香に倒してもらったし、サボルナはすかいに倒してもらった。
今まで戦ってきた二人とも、誰かに倒してもらっているのだ。
ジーナの涙袋に向かって、雨粒のような涙がしたたる。
その涙は、驚きと悔しさがミックスになった涙だった。
だが、泣いても仕方がない。
ジーナは手で涙を拭き、
「望むところよ!」
と二人に向かって叫んだ。
「おお、良い度胸だ。」
「見てやりましょうか、ジーナ・ケンドウ達の実力を。」
ジーナは呆れたが、名前の訂正はしないでおいた。
ジェネラルという人は、記憶力が悪い人なのだ、とわかったからだ。
そして、今は勝負に専念するほうが大切だ。
ジーナはジェネラルの胸部分を狙って攻撃をした。
「サイコアタック!」
「ファイヤーエネルギー!」
大きな紫色の玉はサボルナの攻撃によって消されてしまった。
みぞれは、サボルナのトゲの部分を狙って攻撃をした。
「カチカチコールド!」
サボルナはチルドタイプの技に弱いことが前回わかったため、チルドタイプの技を活躍させようとしたのだ。
すると、ジェネラルが邪魔をした。
「闇闇エネルギー!」
闇のエネルギーにより、サボルナに向けた技がブロックされた。
二人の見事なコンビネーションだ。
闇闇のエネルギー…それは、相手の気力をなくす技だ。
一番活躍するみぞれがココで気力をなくされては困る。
みぞれは回れ右をすると、後ろに向かって走った。
「氷の盾!」
と氷のように鋭い声で言い放った。
すると、みぞれの右手に氷の硬くて冷たい盾が完備された。
闇のエネルギーは盾に当たるとUターンし、元の場所へと戻っていった。
だが、いくら技を出した身だとしても完全に安全とは限らない。ジェネラルはそのことを忘れ、油断していた。
全くみぞれの方を見ていない。
ジーナは
(自分が出した技の行方くらい見なさいよ。)
と心の中で、怒りのマグマを火口に向かわせた。
「でもさあ?サボルナ。あの人達ってこの先行けると思う?」と余裕ぶってサボルナに話しかけている。
跳ね返ってきた闇闇のエネルギーが接近していることも知らずに。
だが、運悪くあと一歩というところでサボルナが重い体を一生懸命に引きずって、跳ね返ってきたエネルギーに体当たりした。
「まあだまだだぞお!」
と、サボルナが緑色の体を赤く染めて叫ぶ姿を見て、ジーナは吹き出しそうになった。
だが、今は正々堂々とした勝負中だ。
勝負中に笑うことはおかしいとジーナ自身も自覚している。
その時。
⇒二十九話へ続きます!

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31 :ダーク・ナイト
2023/02/16(木) 16:36:47

第二十九話 「閉じ込められた悪→?その4」

「マジック・パンチ!」
ジェネラルがごつごつした石のような手を前に突き出した。
手の表面から、菖蒲色と瑠璃色の混ざったトゲトゲの破片が飛び出してきた。
見るからに危険な形をしている。
トゲの先端にでも触れたら出血してしまいそうだ。
ジーナはトゲの鋭い先端を見て、何かを思いついた。
そしてそばに二人を呼び集めると、耳に向かって何かを話した。
「ジーナさん、歯磨いていますか?にんにくの臭いがするのですが。」
「みぞれ!確かに餃子は出して食べたけど、今は重大な作戦会議。関係ないことを話すのはやめて。」
みぞれは注意されてうなだれながらも、耳をジーナに貸した。
来夢が隣でバチバチと電気を作り出していた。
「ジーナさん。わたくし、今すぐにでも攻撃したいですわ。ためた電気を浴びさせてもよろしいですの?」
「…これからやることは電気はいらない。電気はとりあえずジェネラルに感電させておいて。サボルナには効かないだろうから。」
「かしこまりましたわ。ビリビリショット!」
「っぐはぁあ!」
言葉にならない悲鳴をあげ、ジェネラルは黒焦げになっている。せっかくのストレートヘアーも台無しだ。
「マジック・パンチはどこだあ?」
とサボルナが不安気に辺りを見回す。
どう考えても、熱血団員のサボルナに不安は似合わない。
マジック・パンチで生み出されたトゲはいつのまにか消えていた。
来夢の攻撃により、効果がなくなったのだろう。
「今のうちだ!」
作戦会議をし終わった三人は散り散りになった。
ジーナはついでに、自分の立ち位置にいたジェネラルを足で踏んづけておいた。
「ふぃいあ、はへははひ!」
ジェネラルは赤黒い血がとくとくと流れる口で何かを言っている。翻訳→「ジーナ、やめなさい!」
残るはサボルナただ一人。
サボルナは弱点が明らかなので、倒しやすいだろう。
みぞれはそう思っていた。
空はそんな三人の気持ちなど知らずに、真っ青に晴れ渡っていた。
⇒三十話へ続きます!

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32 :ダーク・ナイト
2023/02/16(木) 17:09:35

第三十話 「閉じ込められた悪→?その5」

太陽が、さんさんと輝いている。
今は冬なので、ちょうど良い暖かさだ。
サボルナはさらに暑苦しいオーラが満載になっている。
(今だけは、太陽に引っ込んでいて欲しい。)
ジーナは心の中で文句を言った。
足元のジェネラルはというと、ちょうど日光が当たるところに倒れているため、干からびてミイラになりそうだ。
(そのままミイラになりなさい。)
ジーナは悪意ある思いを込めて心の中でそうつぶやいた。
ジーナはハッとした。
今は勝負の最中だ。私は何を考えているのだろう。
ジーナは自分で自分を叱った。
気がつくと、作戦が開始されそうになっていた。
「カチカチコールド!」
「電気の盾!」
「サイコアタック!」
三人の声が重なった。
「トリプル・一致団結アタック!」
ジーナの高い声とみぞれの鋭い声と来夢のおっとりとした声。
三人の声が重なると、なんとも言えないメロディーを奏でるのだ。
だが、そのメロディーに聞き惚れている場合ではない。
(サボルナを倒さなければ。)
三人の頭の中にはそのことしかなかった。
ビュオーと冷たい風が吹いた。
サボルナは凍りそうになりながらも、必死に
「むしむしエネルギー!」
と怒鳴り声を上げて溶かしている。
相手はチルドタイプの技が弱点だ。
このまま技を続ければいずれ倒すことができるだろう。
しかし、そのままではみぞれの体力が減っていくばかりだ。
ついにサボルナは我慢ができなくなり、攻撃した。
「ファイヤーアタック!」
いらだちのせいで、いつもよりも攻撃の威力が強くなっている。
来夢は避けきれず、炎の玉に体当りしてしまった。
電気と炎でビリビリぼうぼうと音がしている。
「そのまま燃えて燃えて燃え尽くせえ!」
仲間の危険を感じたみぞれは、来夢に駆け寄った。
「来夢さん……大丈夫ですか……?」
この状況では、大丈夫かと聞かなくても大丈夫ではないということがわかるはずだ。
ジーナはどうすることもできず、立ちすくんでしまった。
⇒三十一話へ続きます!

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33 :ダーク・ナイト
2023/02/16(木) 18:34:53

第三十一話 「閉じ込められた悪→?その6」

仲間が危険だ。
そのことはわかっているのに、どうしてか動くことができない。
全身がしばりつけられているように。
実際はしばりつけられていないのだが。
起こすべき行動は、もちろん一択のみだ。
なぜココで立ち止まっているのか。
なにせ、今まで戦ってきて、仲間が攻撃に当たったことはあるかないかもわからないくらいの数なのだ。
だが、これからを考えていくと立ち止まっている場合ではない。
その強い思いが、体をしばりつけていた心の縄をほどいた。
「来夢!」
ジーナはかすれ声で喉が痛くなるくらい叫んだ。
来夢は炎にまみれながらも、ゆっくりとジーナの声のする方へと顔を向けた。
「ジーナさん……感謝ですわ……」
「なに言ってるの、その状況で! 私は……本気で、助けに来たの……。助けてほしいなら助けてって……言って! お願いだから……!」
来夢は炎と涙が混じった瞳を頑張ってにこっと上げた。
「感謝……ですわ……。お言葉に……甘えまして……助けてくださ……いな。」
とぎれとぎれでも必死に言葉を伝える来夢を見て、ジーナは心が痛んだ。
こんなときに自分が変わってあげられたら、どんなに良いだろう。
そう思うがすぐに来夢を救出した。
「念力!」
ジーナの得意な念力で来夢を立ち上がらせた。
だが、炎は消えてくれない。
任せた、という合図でみぞれにウィンクをした。
(ジーナさん、任せて下さい!)
という気持ちをたっぷりと込めて、みぞれはウィンクを返した。
ジーナがひそかに
(みぞれのウィンクって気持ち悪い。)
と思ったことは内緒にしておこう。
それはさておき、みぞれは眉同士がくっつきそうなくらいな顔になり、全身の力を振り絞った。
「カチカチコールド!」
サボルナは先程と同様、
「むしむしエネルギー!」
と攻撃から身を守っている。
(今だ!)
サボルナがみぞれに気を取られているスキに、ジーナは
「クリア!」
と唱えた。
クリアというのは透明という意味だ。
その名の通り、あっという間にジーナは消え去った。
透明になったのだ。
サボルナもジーナが姿を消していることに気がついたらしい。
「どこだあああああああああ!」
サボルナはやみくもになにもない空気に向かって攻撃している。
やるだけ無駄だ。
ジーナはサボルナの背中に回り込んだ。
「サイコアタック!」
どおおおんと大きな音がして、地面がグラグラッと揺れた。
そして、紫色の大きな玉とともに、サボルナはどこかへ飛んでいった。
みぞれがジーナに駆け寄った。
「ジーナさん! やりましたね! あなたはにんにくの臭いがするだけの念力少女としか思っていませんでしたが、こんなに仲間思いだったとは!」
一言余計だ、と言ってやりたかったが、黙っておいた。
なぜなら、敵をたったの二人でやっつけたのだから。
来夢はみぞれに
「コールドウィンター!」
と言われ、ひんやりと冷やされていた。
冬にこの姿を見ている側は寒いが、来夢自身はとても気持ちよさそうに眠っている。
「来夢が起きたら報告してあげよう。きっと飛び上がって喜ぶと思う。」
「相変わらずですね、ジーナさん。本当は嬉しいのに。」
「みぞれ……黙って?」
「そーですかぁ。私、シャインシックス抜けようかなぁ。」
「え! 嘘! やめて!」
「冗談ですよ。」
「冗談はやめて?」
ジーナとみぞれのこのやりとりを、太陽は平然と見守っているのであった。
⇒三十二話へ続きます!

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34 :ダーク・ナイト
2023/02/16(木) 21:38:15

第三十二話 「閉じ込められた悪〜完結〜」

「あ……見て!」
ジーナはリングを指さして小さく叫んだ。
新たな色が追加されているからだ。
燃えるようなオレンジ色がついていた。
三人の腰部分には、鈴がついていた。
オレンジ色は、ヒートタイプの技だった。
ジーナは、「炎獄の玉」
燃える炎の玉で相手を焼き付けることができる。
みぞれは、「むしむしエネルギー」
相手からの技をエネルギーで溶かすことができる。
だが、チルドタイプの技のみに効く。
来夢は寝そべっていてよく見えなかったが、細い指には
「ファイヤーアタック」が追加されていた。
炎で相手を飛ばすことができる技だ。
二人は満足気にリングと鈴を撫で回した。
「これも私達が頑張ったおかげ。」
とジーナが誇らしげにつぶやくと、
「ご褒美、ですわね。」
という声がした。
この語尾は……。
嬉しさを隠しきれなく、ジーナとみぞれは来夢に抱きついた。
「来夢!」
「起きたのですね! 心配したのですよ!」
「私は大丈夫ですわよ。……あらっ。リングに追加の特殊魔法がついていらっしゃいますわ。わたくし戦っていないのに。」
「来夢は身をボロボロにして戦ったのよ!」
三人は涙ぐんでそれぞれ抱きしめあった。
「……あ。」
「どうしたの、みぞれ?」
「やっぱり……ジーナさん、にんにく臭い。」
「今は良い!」
三人の笑い声は、空まで響いていった。
⇒三十三話へ続きます!

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