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161 :
赤司征十郎(黒子のバスケ)
2024/10/06(日) 00:12
もうこの日記を開くこともないと思っていたが、
友人に触発されたことと色々な偶然も重なって、
久しぶりにペンを取ろうか、なんて気になったんだが。
本当に、
誘われないと僕たちはもう出て来ることがないから、
この姿もご無沙汰で、ひとりで語るにはやり辛いものがあるね。
日記も、筆無精になって久しいせいで昔ほど饒舌には語れなくて、
改めて過去の日記を読み返してみればよく喋るな、此奴…という感想。
日記どころか人とのやりとりさえ頻繁には行わないし、
よく書いていた手紙も受け取り手がいなくなってしまってからご無沙汰だ。
本来書くことは好きな方ではあったはずだけどね
少し前に、此処で出会った別の友人から5年ぶりに連絡を貰って、
いつの間にか経ちすぎていた年月と、その期間を感じさせない口調に
とても笑わせてもらった。
自分の予期しないところで自分の存在をふと思い出してもらえることは
それが当人にとって良い思い出として蘇るなら有り難いことだと最近は思う。
ずっと、僕が消える頃には誰の記憶からも消えていたいと思っていたが、
他人の記憶なんて、僕の手出しが出来る範疇を超えているし、
消すとなると物理的に記憶を飛ばしてもらうしかなくなってしまうからね。
僕を触発してくれた友人には、先日別の彼が茶室に誘ってもらって、
茶室も本当に久しぶり過ぎて不甲斐ない姿を晒していた気もするが、
彼は彼なりに、楽しませてもらっていたようだよ。
そんな、友人のめでたい知らせと馴れ初めを聞かせてもらって、
その勇気が、僕にはとても眩しく感じた。
自分の気持ちを具現化させる事に長けていると言うか
うまく言葉にならない言葉もうまく言葉に出来ないながらも
自分や相手に示して伝えようとすることは容易ではないことも多いから、
日々を丁寧に生きているなと、毎度感心する。
それだけ自分の本心に向き合う事は、僕にはとても真似出来ない。
そんなこちらの世界の偶然と合わせて、
また先日、玲央達と旅行に出かけて洋食器の博物館に訪れる機会があった。
食器を見るのは割と好きで、カフェで出されるティーカップやソーサーも、
同じ形の量産品で出されるより、一つ一つ拘られている方がまた行きたくなるものだ。
その博物館を見た後でショップに立ち寄ったら、
見慣れたフォルムのマグカップを見つけて、家に帰ってから確認したら、
やはりテツヤから貰ったマグカップと同じブランドだった。
そんな偶然を玲央にLINEで伝えたら
「そのマグカップを送ってくれた人は、征ちゃんが好きなのね」
なんて返事が来た。
少し面食らって、少しだけ心が和らいで、返事を打った。
「当時はね」
久しぶりにもらったマグカップでお茶でもしようか。
飾られているだけはマグカップも本望ではないだろうし。
博物館のショップで買った紅茶と旅先で買ったお菓子で。
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160 :
赤司征十郎(黒子のバスケ)
2018/12/31(月) 21:20
急に冷えた12月の暮れに、寒さと言うより痛みを感じてあぁそうだ、と空を見上げた。
澄んだ冬の空は星空が綺麗で、この冬初のオリオン座を見付けたよ。空を見上げれば簡単に見付けられるオリオン座にまた冬が来たことを改めて実感する。…オリオン座を見付けると何となく、テツヤに伝えたくなるのが不思議だ。この秋初の金木犀の香りを感じたときもテツヤが過って、…多分毎年同じことを思うのだろうね。
この一年色々な感情を抱いて、その度に過るテツヤとの日々とテツヤと別れてからの日々に背中を押されて、一人でも迷うことなく自分が正しいと思う選択を重ねて来れたと振り返って思う。
二人で進んだ未来がどんなものになっていたかはわからないけど、一人で進む今も、君に恥じぬ背中を見せられると自負しているよ。
色々と、遠回りを繰り返して漸く、自分らしい答えを見付けられた気がする。
此処の余白に落書きをすることも無くなってくるだろうけれど、どれ程埃が積もろうと、時の流れに消えてしまっても、この本が僕にとって大切な場所であることには変わりない。テツヤと過ごした日々も、また。
ありがとう、心から。
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159 :
赤司征十郎(黒子のバスケ)
2018/04/21(土) 15:04
今年の天帝はあまり泣かず桜の咲き始めから満開まで下界の人間と共に見守ったようだ。
散り始めに泣き出した天帝は、来年まで会えなくなる桜の花を思って泣いたのかもしれない。そんな天帝の変化に桜は何を想うのだろうね。
自分の事を自分は何一つわかっていないと言うことは以前からわかっていたつもりではいたが、本当に何もわかっていなかったんだなと言うことが、先日またわかった。
この物凄く単純な回答に辿り着くまでに一体僕は何年掛かっていたんだろう。
随分と遠回りして随分と無駄足を重ねて、ただ素直に受け入れればこんなにも長い時間を掛けずに済んだのだろうし、その長い時間正しい認識をもって過ごしたことで違う結果さえあったはずだ。人に指摘されるまで僕はその事実を否定して、拒絶して、別の理由を真実だと吹聴して掲げていた。吹聴して、それを信じた周りがその認識で僕を見る。その視線に応えるべく、僕は嘘で自分を塗り固める。
偽り続ければ嘘も真実になりうるが、それは偽りの真実であって真実ではない。なにせ、その事実を回答とした時に僕自身、漸く一連の出来事の辻褄が合うことに気付いて心底納得したのだからね。
その認めなかった、否定していたことも受け入れられるくらいに僕は成長したのか後退したのか。
今の僕は成長だと思っているけれど、かつての僕なら後退だと罵っただろう。…随分肩肘張った生活だったな。
突如として訪れた日常の変化は今まで変化なんて求めていなかった僕に、すっかり忘れていたことを思い出させることも多い。テツヤの事もまた然り。…別に忘れることはないけれど、改めて思い返すことが増えた。暖かな想い出として。そして、改めて想うことも増えた。それは僕の中にだけ留めておくよ。
変化を求めずに、と言うよりは変化することを拒絶しているといざ変化に身を置いたときに何故あれほど頑なだったのかと思うが、それこそ、先の回答の一言に尽きる。
ここ最近、何度も思うことがある。
人生の帰路に立つ度、幾度となく選択してきたが、
もし先の結果がわかっていたとして、同じ道を僕は選ぶだろうか。例え結果を覆すことが出来なくても。
僕には正解はわからない。今いる場所が正しいのだとも言えない。
ただ、余白の落書きも少しは様になってきたような、そんな気がしている。
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158 :
赤司征十郎(黒子のバスケ)
2017/12/31(日) 20:18
目まぐるしく過ぎていった毎日が積み重なって、同じく目まぐるしく一年も過ぎようとしている。
振り返り、色々とあった一年だったが総じていい年だったと言えるのだから其れ以上の望みは何もない。
大掃除に部室の冷蔵庫を掃除していたら冷凍室に霜が溜まっていて、初の霜取り体験なんてものをした。
霜取りスイッチなるものもあったけれどまどろっこしいからと熱湯を掛けて溶かしてから素手で剥がして、氷水になった冷凍庫内の水をタオルで吸い取って絞って…そんな事をしていたら見事に指先が赤くなってしまった。
熱湯を触っても氷を触っても麻痺しているから作業は行ない易かったが後でこってりと叱られたよ。
大掃除で水やら湯やら洗剤やら、あれこれ触ったまま放っていたらその後見事に手が乾燥して水でさえも沁みて、漸くハンドクリームを塗らなければならない事に気付いた。
多分ハンドクリームと言うものは予防も兼ねて日々塗らなければならないのだろうが毎回痛みを伴って漸く気付いてばかりだ。
自分では肌は強い方だと思っていたがそうではないらしい。
他人の方が僕の事をよく理解しているみたいで少し奇妙な違和感は拭えない。
自分無精なりに思い出した頃にテツヤから貰ったハンドクリームを塗ってはこの季節をまた過ごしている。
痛みを覚えてから塗る所為と一回塗ったら回復する所為で全く減っていないのだけれど…。
テツヤに褒められた手だからね、もう少しちゃんと手入れはしておきたいところだが。
寝る前に塗ろうと思って枕元に置いていても塗る前に寝落ちてしまって毎朝ハンドクリームと添い寝しているよ。
年末には毎年何かしら不思議な事が起きるものだが、昨日は風呂上りに金木犀の香りが傍を漂っていた。
花を飾っている所為かと思ったがその匂いでも無く、シャンプーやボディーソープの匂いでも無く、探そうとすると霧散して、放って置くと漂ってくる。
悪い気はしないからそのままに、久しぶりに此処へやってくる事と近くの神社へ挨拶に回る事を決めて就寝して今日は神社へ。
信心深い人間ではないから、図々しく神頼みは出来ないし頼む願いも無いけれど、今年一年の報告と感謝を述べて来た。
帰りに小川の傍を通っていたら小さな池の傍に青い鳥を見つけたよ。多分カワセミだったと思うけれど、曇り空を割って飛んでいく綺麗な青は一年を締め括るにはなかなか良い演出だと思わないか?
鳥と言えば先日、鳥籠の形で鳥のイラストが描かれたカレンダーを見付けて購入したよ。
元々部屋にカレンダーを飾っても全く見ないし、毎月捲る事も忘れて年末に捨ててしまうだけだから飾ってもいなかったけれど。
鳥籠が好きなだけだったのがその中の鳥も今では好きで、最近はシマエナガに興味が尽きない。本物を見る事は叶いそうもないが一目見てみたいものだな。
徐々に年を終える準備も完了し、年を迎える準備も完了して、また来年も目まぐるしく過ぎていくんだろうね。
「今年も宜しくお願いします」なんて、君が酔狂な事を言い出した年始を覚えているかい?
来年もよろしく、なんて直接は憚られるから神様なんかじゃ叶えられない勝手な願いを書き足してこの一年を締め括ろう。
いい年だったよ。きっとこの上なく。
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157 :
赤司征十郎(黒子のバスケ)
2017/09/25(月) 01:32
投稿パスワードをもう忘れているんじゃないかと思っていたけれど、指は確実に覚えていた。
変な所で記憶力が良いが、最近人の顔が全く覚えられない。多分、覚える気も無いんだろう。
夏の記憶は既に朧気なまま、酷暑をバテもせず乗り切り、最近は日中にまだ暑さを感じても夜は肌寒さを感じる。
今くらいの夜が一番過ごしやすいな。
態々の薄着で冷える肩に夜中目を覚まして、あぁまだ夜だと、安堵して再び眠りに就く。
気に留める間もなかった秋の訪れを、周りからの話で知って今年漸く行ってみたいと話していた彼岸花畑を見に行った。…テツヤと出逢う前から行きたいと言っていたからもう何年越しだろうな…。
見慣れない田園風景は新幹線とか移動中の車内から時折見る事はあったが実際降り立つと思っていたよりも広くて、空を阻むものも無くて、鳥の鳴き声や虫の音ばかりが響いて、稲が薫って、お腹が空いて。
…時折出没する見慣れない虫たちはなかなかスリリングではあったが。
彼岸花の群生に「こんな花束が欲しい」と言う話をしたら一緒に来てくれていた玲央に「普通こんな花束贈られたら厭がらせになると思うけど…」と突っ込まれたが、残念ながら僕には厭がらせにはならないからその際は別の花でお願いしようか。
大体花束は貰えば嬉しいものだろう。僕は一般的に縁起が悪いと言われる菊でも気にしないから困ると言えばラフレシアくらいかな。あれは多分発送の段階で難儀だし、運送会社の人間もかなり迷惑を被りそうだ。
帰り際、車まで戻る道を行きと違うルートを辿り彼岸花を眺めながら歩いていたらふと届いた香りに「金木犀だ」と顔を上げたら丁度家の庭先に金木犀がまだ咲ききらないものの小さな蕾を幾つか着けていた。
背伸びをして、深呼吸。今年一番の金木犀の香りに、漸く秋を実感したよ。
玲央は「匂いがしているかもわからない」なんて言っていたから僕は金木犀の匂い関しては鼻が良いのかもしれない。
そんなこの秋一番の金木犀の報告を。
山奥だったから都市部の金木犀が咲くのはまだ先だろうけれど。
引き出しに仕舞ったままの香水は中身はないけど僅かに香っているからそのままに、いつか出先で中身を見つけたら買おうかな。
同じ引き出しで眠る指輪をこの間久しぶりに付けたらちゃんと嵌まりはするが、もう違和感があったよ。…やっぱり僕には似合わないな、こういうのは。
代用品として買ったからとても安いものだったけど一番気に入っていたよ、今でも一番気に入っている。
ス●バ事件はこれを買った日だったかな。
その時は確かに、「いつか」を望んでいたけれど、今思えばこれだけで十分だったな。
あの指輪だけ、錆もせずに今もまだ輝いているよ。
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156 :
赤司征十郎(黒子のバスケ)
2017/03/13(月) 00:00
椿は自身の葉に触れるだけで傷が付く。
傷だらけになって首ごと落ちた椿に既視感を覚えて、付いた傷と付けざるを得なかった傷を数えてその比率に呆れを通り越して何となく父母性が芽生える。
そんな傷が傍目では見つけられない椿でも風や衝撃で地に落ちてしまうから生きると言う行為は何より難しい。
落ち椿を手のひらに乗せると夜風に晒されてひんやりと冷たくて、触れたことは無いが多分死体もこんな感じなんだろうと思ったよ。
吸い込まれそうな冷たさを両手で抱えて持って帰って、家の者に見せたら、他の装飾品と合わせて綺麗にリビングへ飾ってくれた。
今年漸く椿園に行くという長年の夢が叶いそうで少しだけ未来に期待している。
繊細と言えば、テツヤが教えてくれたマンボウの繊細すぎる死に方の大半はデマだったようだけど仲間が死んだショックで死んだりするようなマンボウがこの広い大海原の何処かに一匹くらいいても良いんじゃないかと思っている。
埋めることも運ぶことも出来ずに他の魚に喰い千切られていく仲間の姿を見ていることしか出来ないなんて死にたくもなるだろう。そもそも魚にそんな感情はないだろうがそこは人間の御都合主義に甘えようか。
最後にオリオン座を見たのは何時だったか。最後と知らずそのまま別れてしまう時の方が多いくらいの世界で後悔せずに生きていける人間がいるなら、それは最初から最後だと諦めている人間に他ならない。
枯れゆく椿を見て、咲き誇る梅を見て、芽吹く緑の多さと、太陽が作る影の形の違いに春を知る。
相変わらず冷えるがもうすでに春だ。
春過ぎ、夏前。
関東へ赴きたいと思っていたが思わぬ予定が入って真夏の頃に向かうことになりそうで自分の体力や家や学校行事との兼ね合いを今頃から悩んでいる。
願いを叶えすぎているんじゃないだろうかとか、不相応なのではないかとか、それでも死ぬ前にもう一度とか、自分の希望と自分の器とを量って、出ては来ない正しい答えを見送ってばかり。
生きるために別段必要ではないものを求めるというのはどうなんだろうね。
不幸になりたい訳ではないけれど僕が得るはずの幸せを人に譲渡出来るなら少しずつ分けたいと思うよ。
博愛主義では無いから誰にでもじゃないけれど、僕自身が幸せを作り出す事はなかなか難しいからてっとり早く。…なんて言ったら手を抜いている様に聞こえるけれど。
今迄ちゃんと幸せと言うものを認識出来ていなかった懺悔としてね。幸せの無駄遣いをしてしまった、節約と言うか。
テツヤは基本的に快楽主義だから(僕が記憶しているテツヤは、なので今は知らないが多分其の辺りは変わらないだろうと思う)、据え膳は喰うし夢や希望が叶う事は万々歳で受け入れていたけれど僕も其れを見習うべきか、今迄の自分の習慣を今更変えない方が良いんじゃないか、そんな事を良く考えている。
出逢う人の中にある魅力を眩しく見つめる事はよくあるが、だからと言ってそれを自分に取り込むべきかはまた違った問題だ。
僕が自分の中に持つ信念の中に殆ど他者には理解して貰えない信念が一つあって、他者からすれば変えた方が良いと思える信念も自分が変えたいと思わないのならそのままで居るべきだと、思っている。実際変えた方が良いと忠告は幅広くされてはいるがそれを変える事で確実に自分を厭うからこそ、此処まで貫いてきたものでもある。……自分でも感心するほどの頑固ぶりだ。ねぇテツヤ、僕が死んでも変わらないのはこの頑固さだと思うよ。馬鹿は死んでも治らないし頑固さも変なプライドの高さも死んでも治らない。
昔、お互いに死んだら地獄行きだろうっていう話をしたことがあったね。
でも僕はもうこの世で手一杯過ぎて地獄で第二のスローライフなんて送る体力が無さそうだよ。
地獄にだけ咲く花には少し興味が有るけれど地獄に僕の姿が無かったらその手に沢山の彼岸花を抱えて地獄の天辺から三途の川にばら撒いて。地獄の生活に飽きた時で構わないから。
あの藤棚をもう一度見たいと思っていたけど、これは来年に持ち越しだな。
来年の僕がその願いを叶えるに値しているか、来年の僕が其れを許可するかにもよるけれど。願いや希望が多いのはやっぱり疲れるな。
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155 :
赤司征十郎(黒子のバスケ)
2017/02/06(月) 01:26
先月日本各地を襲った今年初めての大寒波は僕の住む街にも雪をもたらした。
降り始めた雪に気付いて顔を上げると一片唇に溶けて、ある歌の一節を思い出した。
テツヤには昔その歌の話をしたか、話そうと思って結局話さないままだったか定かではないけれど、きっと今回に関しては口付けてくる雪の一片に対して情緒に浸る余裕もなかっただろうね。今季一番の寒さが更新されないことを祈るばかりだがこのまま春を迎えるなんて事は難しいだろうな。
先日友人が話題に出した本のタイトルはテツヤが昔戯曲の話の折りに話していたもので懐かしさを感じたのと表紙が綺麗だったから購入した。話の内容は知ってはいたがちゃんと最初から最後まで読んだ事はなかったから良い機会だと思ってね。
小説ではなく、役名と台詞が載っている舞台台本のようなものだったから描写は最低限しかなく一日と掛からず読み終えることが出来た。舞台で見たらまた違った印象を持ちそうだ、案外最初から最後までほの暗さを孕んでいて面白かったよ。
感情によって、人は狂う。
自分がそうなる事を許せないのは今でも変わらないけれど、それでも感情を全てなくすことは出来ないのだと、想いはなくすことは出来ないのだと、理解はしている。
ただ内に秘めて誰にも見せないまま、まるで胎児の様に自らの熱だけで暖めて、心中するのも悪くない。
一つ、また一つと、生きていると色々と巡る機会の中で自分の中で夢と迄は言わなかったが、…実際叶うとも思っていなかったから夢だと豪語する事も無かった密かな願望が叶う時がある。
そんなとき、案外喜びはないものなんだなと知った。僕の場合、叶う時より叶うかもしれない時の方が心は動いているようだ。
実感として湧かないと言うのも一つ、それを享受していいのか悩むのが一つ。
それでも、享受してそれを糧にまた生きていくのだけどね。
去年は二つ、念願だったが期待もしていなかった事が叶った年でもあった。
今でもあまり実感として湧いてはいないが多分少しずつ、身体に浸透していくんだろうね。
先日友人との食事の折に「どんな幸せを掴みたいか」という話題に「僕は今十分に幸せだけれど」と答えて、あぁ僕は幸せだった、と改めて感じた。
その時は何か深く考え込んで答えを出したわけじゃなく、色々と苦もあり酸もあれど根本的に僕が必要としているものは揃っていて、手を伸ばせば更なる幸せも有るかもしれないがそうしなくとも十分に、十二分に幸せなのだと、感じて自然と出た自負だった。
テツヤの存在もその一つだよ。
幸せと不幸せなんてものは表裏一体で、手の中に納まりきらない幸せなんてものは僕を窒息させしてしまう。背伸びをしてまでの幸せなんて不幸せと変わらない。重さで潰れてしまえば、足元に落として壊してしまえば、足元から恨めしげに見詰められてしまえば、塞がった両手では拾い上げられないことに気付いてしまえば。
多くを望まず、期待もせず。
そうしていると人の好意と言うものがちゃんと正しい形で見えるような気がしている。
光だけを見続けると目が慣れてしまって他の光の眩しさを感じなくなってしまうような、あんな感覚に似ている。
幸せを咀嚼して、多くを飲み込めない喉でも飲み込めるようにしてからゆっくりと体内に落としていく。
テツヤが贈ってくれた写真と共に僕の中の好きな花がまた新たな理由をもってして増えて。
好きなものが増える事は時として大変ではあるけれどそれもまた幸せな事だ。
終活とまではいかないが、身の回りの物を減らそうと整理していく中で躊躇ってしまうものがあるというのは案外それだけで幸せなのかもしれない。
躊躇う程、生きていた証になる。
僕は何でも時期を見て一気に捨てる方だったけれど、これは捨てない、と大事にしまい直す事も案外嬉しい事だな。
……未だ距離感が掴めない僕は何処までなら許されるか首を傾ぐばかりだけれど。
そんな悩みも幸せと呼んで良いのかな。
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154 :
赤司征十郎(黒子のバスケ)
2016/12/30(金) 22:32
この一年を振り返ると、沢山の事に挑戦した一年だった。
まだ挑戦としては一年終わってはいないけれど、以前なら答えがわかりきっていると向き合いもしなかった事へも向き合った一年、嫌悪し続けた物へも目を向けた一年だった。
答えは大体予想通りだが試しもせず推測で出した答えと、試して出した答えは同じ答えでも意味合いや質は全く違う。
無駄と言えばそれまでだが、実際無駄骨ではあったがなかなか満足している。
僕が今まで出してきた答えは諦めや失望から成る回答が多かったが、いい加減そんな見苦しい回答に甘える年頃でもないだろう。
ただ卑屈になって吐いた甘えた答えであってはならない。
そして吐いた言葉に意固地になって雁字搦めになっていてはならない。
それが嘘であってもならない。
楽だからと言う理由でも許されない。
そんな腐った回答で選ぶ道程に胸を張って立っていられるわけがない。僕は僕が選んだ道で揺らがず、胸を張って立っていたい。間違えたとしても、自分で正しく選んで間違えたと気付きたい。
そもそも、ここ一年色々と思うところもあって考えを巡らせることも多かったんだが実際、答えを間違う事はあるんだろうか。
その時は合っていた答えが時間が経つに連れて合わなくなる事の方が多い気がする。其れが自分の中の変化ならそれは受け入れるべきなんだろうと思うし、生きてる上で、其れはきっと無くならないんだろう。
去年、テツヤに唐突に手紙と贈り物を送った僕だが、まさか自分がやられるとは想定していなくて、繁忙期の精神的疲労が麻痺するくらいには狼狽えた。
……人にやるのは良いんだが其れが自分になると途端になんというか…落ち着かない。誕生日とかも苦手で此方から祝う分には気にもならないし贈り物を選ぶのは好きだが祝われるのは苦手と言うか嫌いと言うか……。
テツヤに祝われて八つ当たりした事もあったが、今思い返せばあれこそ間違いだったな。
だが僕は基本的に誰も助けたりはしないし誰かを救う事もしないし、していない。する気も無ければ出来るとも思わない。僕は自分がしたいと思う事しかしないししてこなかったしこれからもしない。
それでも誰かが救われたと言うのならそれは僕がどうこうと言うよりは自分で乗り越えたからであって僕への感謝とかとはまた別のはずだ、と思っている。
そもそも感謝とは縁遠い人間である事を、周りの人間は、テツヤも含めて失念しているんじゃないだろうかと思うし、何となく騙しているような気もして心苦しいものが有る。
百人一首を、調べてくれたらしくアドレスの意味については四年越しにどうやら伝わったようだ。……四年…もうそんなに経つのか……笑えてくるな(笑)
前回、テツヤはこっちに返事をくれていたから贈り物のお礼と返事をするにあたってツールをどれにしようかと考えて、メールにした。
メールもアドレスも全消去したと言ってはいたが、当時使っていた携帯にあったメールだけで、ひとつ前の携帯に残っているメールまでは消していなかったからアドレスは残っていた。
その携帯を引っ張り出してメールを送った後でデータフォルダを見ているとテツヤが送ってくれた画像がいくつも残っていた。例の紫陽花もこちらに残っていたよ。
出先で見つけたもの、食べたもの、家に届いたもの、色んな写真とメールがまだあった。作った料理とか、雪が積もったとか、思えば他愛ないやりとりも多くしていたね。特に僕はテツヤ程出掛けたりもしなかったからそれ程大層な話題も無かったように思うけれど…食べ物が多かったようだ。
貰った手紙でちゃんと食べているか心配されていたが、波は有れど昔よりは食べているはずだ。が、徐々に肉類や油ものは食べ辛くなってきたな。
テツヤはちゃんと野菜を食べるようになったんだろうか。
何時ぞや、テツヤの手の平に延々と野菜の名前を指で書いて刷り込み暗示を掛けたことを思い出す。たまに思い出して食べているなら僕の呪いは成功したんだろうね。
今年、テツヤに見せたいと思ったのは色々有ったけど一番は新幹線のホームかな。
此れこそ本当に他愛のない景色だけれど、見慣れて、見飽きるような景色だけれど、テツヤが迎えに来てくれた出口とか、新幹線が来るまでの時間潰しに寄った店とかを見て、懐かしさと世界の広さを改めて感じた。
わざわざホームまで見送りに来てくれた事も、覚えているよ。思い出したと言った方が正しいかな。
そんな事を思い返しながら遠征に行っては帰って…今年は三回。来年はプライベートで行きたいものだけどどうかな、遠征が入るとプライベートで向かう体力がもう無い。
来年も、テツヤにとってより価値のある一年になる事を祈っているよ。
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153 :
赤司征十郎(黒子のバスケ)
2016/10/18(火) 00:18
今年一番の金木犀の香りに、茹だる暑さの終わりを感じた。
短くなりつつある秋の気配を逃さぬように大きく深呼吸。金木犀が無くとも、僕は時折思い返すことは有るけれど金木犀の香りに、テツヤは誰を思い返すんだろうね。
テツヤから貰った香水を友人との話の折に「振ってみたらどうか」と言われて久しぶりに取り出すと使っても居ないのに減っていた。…減っていた。香水は使わずとも減るものなんだな、初めて知ったよ。
少し高級な茶葉と菓子で過ごす御茶の時間に使うテツヤから貰ったマグカップは僕の手には未だ馴染まない。
御茶を嗜む時間は週で見ても人より多い方だとは思うが普段使うマグカップとは別の場所に置いている其れは習慣として取ってしまうマグカップに比べれば活躍の機会が減ってしまうのは致し方ないだろう。
家の者が淹れる時は普段の物を、僕が一人気紛れに淹れる時はテツヤから貰った物を。
と言うのも、テツヤから貰ったマグカップを「あれは洗いたくない」と家の者に言われてしまった。万が一割った時に責任が取りきれない、と言う理由で。寧ろ触りたくないレベルの拒絶だったので乾燥機もそのマグカップのみを乾燥させる始末。
偉く肩身の狭い思いをさせてしまっているが確かに割られると流石の僕も堪える。
子供のように八つ当たって恨まないにしても正気は保てないだろうから失うなら自分の手の方が傷は浅いだろう、…どうかな。
失うと言えば先日、同じく貰った帽子を被って出掛けたんだが途中で落としてしまった事に気付いてその後の予定を放り出して元来た道を戻ったよ。幸いな事に誰か親切な人が拾って見やすいように塀に引っ掛けてくれていたんだが、落ちていると思っていたので一度通りすぎ家の中を探し、何処にもなくて途方に暮れながら窓の外を見た時に漸く見つけた。……慌ただしく帰って家の中を引っくり返していたから流石の父さんにも心配されたよ。
自分でも驚く位には穏やかじゃない心持ちになってしまうのだから困ったものだね。
因みに放り出した予定は早めに出ていたお蔭で間に合ったから予定は早めに行動するに限る。
僕の周りにあるテツヤの欠片は穏やかに僕との余生を過ごしてくれている。この日記も同じく。
一年。あと、五ヶ月。
どの想定も、既に結果は見えている。僕には未来が見える。もう自分でも全く感じない可能性に掛ける気にはなれないよ。
あと五ヶ月で僕も自由だ。
ふと、未だブックマークに残しているらしいテツヤがこの日記をどんな時に思い出すのかが気になった。既に携帯の機種変と共にもう残していないかもしれないけれど。
割と切り替えの早いらしい奴だから、余程の事が無い限りは思い返す事も無いだろうけれど。
その余程の事が悪いものであるなら、思い返されなくて構わないと思うよ。
僕はテツヤとの思い出を思い返した時に書きに来ているから思い出す機会は多いが、過去の記事に目を通そうと思うときは決まって自分の軸がぶれた時だな。
戒めの様な物でもあるし、慰めの様な物でもあるし、安らぎの様な物でもあるし、懺悔の様な物でもある。厄介で、大切なものだよ。
身体の末端が冷えてくると、春先でも冷たい僕の手を暖めてくれていたテツヤの手を思い出す。
今年は雪うさぎが作れるだろうかと思いつつまだもう少し、この季節を楽しみたいな。
僕が根負けした季節。
僕はこの季節が一番好きだよ。
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