日記一覧
┗262.備忘録(134-138/152)

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138 :歌-仙-兼-定
03/20(日) 14:55


書いたはずの内容が消し飛んでいた。
おかしいな。あれは夢だったのだろうか。
思い返せばあまり愉快な話ではなかったから、決して残すなという神の思し召しかな。

昼餉を終えて外に散歩に出たら、目に瑠璃色が飛び込んで来た。
瑠璃唐草と繁縷が一面に咲き誇っていて、春だなと改めて噛み締める。
日差しは暖かいし、空気も柔らかく、吹く風は春の匂いに満ちていた。
ふと暦を確かめてみれば、なるほど、今日は春分らしい。
今と昔とでは少しずつ季節の有様がずれて来ているそうだけれど、いかにも春分らしい日だ、と思う。

中門の開く音がして、江-雪率いる部隊が遠征先から戻って来た、と思ったら、踵を返して遠征に向かった。

「回転数が全てだ。無心で回す為には、資材がいる。もっと、もっとだ」

虚ろな目をした主が譫言のように何か呟いている。
暖かな日差しに微睡む虎が、小さくくしゃみをして身を起こした。
どうやら手入れに入って居た秋-田が、戻って来たらしい。
何度も桶-狭-間に向かっては戻りを繰り返している五-虎-退の元に、虎と秋-田が掛けていく。
ああ、出陣の合図の音が、聞こえる。

「現実逃避はやめて、刀の整理に戻るよ」
――……あと何回、短刀や脇差を溶かして資材に変えれば良いんだろう。
「天-下-五-剣を迎える迄に決まっているだろう?」
――あの主の鍛刀運で? 迎えられると?
「……やらずにする後悔より、やってする後悔だよ」

蜂-須-賀に首根っこを掴まれて、作業に戻る。
ああ、まったく。この春の日に、こんな有様になるなんて。雅じゃない。

「五-虎-退や。桶-狭-間クルーズ、頑張っておいで」

三-日-月殿がそんな事を言って、大層楽しげに笑っていたが、多分クルーズの意味を間違って捉えていのだろうなあ……。

幾ら資材を溜めた所で、一度アクシデントが起きればあっという間に溶けて行く、と。
遠い目をして語っていた主の妹君の言葉が、ふと思い出される。
丁度彼岸なのだ、どうか、顕現するには良い日和と彼の刀が降りて来る事をひたに願おう。


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137 :燭-台-切-光-忠
03/07(月) 02:00


僕は”イイ趣味”をしているので、恋人との日記を残しておく事にしている。
僕が何もしなければ、彼等は存外、燃やしたり捨てたりせずに眠らせておいてくれるんだ。
思い出の品、というような扱いなのかな。何かを惜しんでくれているんだろうね。
そして僕はとても”趣味のイイ”事に、その日記のページをふと捲ってみたりする。
そうすると、たまに……否、結構な割合で、白紙のページが減っている事がある。

別れて後、新たに記される事、と言えば、様々だ。
未練がましい言葉を書き置いたりだとか、元の鞘に収まろうと――ああ、僕は鞘っていうか……いや、そこはどうでも良いな――健気な素振りを見せたりだとか、ただ淡々と思い出を書き残したりだとか。
そういうのを見ると、ああ、懐かしいなあなんて、ちょっと目の奧が痛んだり、当時の事を思いだしてしんみりしたり、何とも言えない気持ちになったりして。
そして、今僕が手を伸ばせば、彼はまた容易くこの腕に落ちてくるのだろうな、なんて事を考えたりする。

だけど、考えるだけだ。行動には移さない。
一度違ってしまった歯車がまた噛み合うなんて事、僕は信じていないからだ。
これはもう、自分が如何に”イイ性格”をしているかの証左みたいなものだと思っているんだけど、僕は一度壊れた仲をどうにか出来た試しがない。
恋人から友人に、なんてなった事もない。友人から恋人になって、そのまま縁が切れてしまった子は何人か居るけどね。ふふ。

先日、ふとまた幾つかの日記を捲った。
二つほど新しい言葉が記されていて、どちらも僕を愛していると宣っていた。
今、彼等に笑顔で手を差し伸べたら、きっと喜んで尻尾を振って飛びついて来るんだろうなあ、と思うと、暗い喜びを感じずには居られない。
思い出の中で理想化された僕の幻影は、彼等にとって酷く心地の良い物なんだろう。
何度も文字を目で追って、噛み締めて、僕は結局、連絡先をそこに挟む事なく日記を閉じる。
もしかして、彼等と再び縁を繋げば、またいつかの様に愛を紡げるのかも知れない。
だけど恐らく、彼等の記憶に有る僕は、最早僕ではないだろうと、そう思う。

だから、ね、僕と楽しく遊んだ君や君。
どうかその思い出の中で、格好良くて優しくて非の打ち所のない、君好みの、君の理想の僕と、戯れていておくれ。
そうして僕を、美しいままそこに留めていて。


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136 :歌-仙-兼-定
03/05(土) 23:22


ここ数日、いっきに春めいてきたように思う。
この体は、何をもって春だと認識しているのだろうか。
例えば、吹く風が花の甘い香りを孕んでいたり、肌に触れる空気が柔らかかったり、或いは日の長さ、日差しの強さ、鳥の声、空の色……数えていけば、きりが無いのかも知れない。
様々な事象が重なって、これは春だ、と認識するのだろうか。
こういうことは、燭-台-切の方が得意だったかな。後で話を聞きに行ってみよう。

春に近付いて来ると、街の色や万屋の品揃えも変わる。
明るく淡い色を身に付けた女人の姿など見ると、やはり春の訪れを実感する。
それから万屋の店先に並ぶ菓子も、抹茶や苺、桜なんかを前面に押し出してくるようになると、ああ、春だなあと、思うわけだ。

四季の中でいっとう好きなのは秋だけれど、春も嫌いではない。
ただ、春は少々厄介だ。木の芽時には気が狂う、なんて言うけれど、正にその通りで。
三寒四温の様相を呈する気候に体が狂うのか、様々に環境の変わり易い季節だから心が狂うのか。
理由は分からないけれど、春になるとどうも気持ちが不安定になる。
こればかりは幾ら自分で手綱を取ろうとしても限りが有るから参るよ。
暖かい緑茶でも飲んで、静かに微睡んで居るのが一番良いのだろうけれど、そういう訳にもいかないしね。
頭がぼんやりとして、奥の方が少し痛む。寝ろ、という事かな。言葉も上手く纏まらない。
春が来たのだという事を書き残したいという目標は達成したし、今日は終わりにしよう。


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135 :加-州-清-光
02/29(月) 23:24


どうしよう、長-谷-部のページ滅茶苦茶破きたい。
深夜に書いたラブレターとポエムは燃やせって主も言ってただろ!
ある程度暈かす理性は生きてたみたいだけど、でもそれはどうなの! どうなの!

何時からだったかは忘れたけど、この体は夜になると理性がぐっでぐでになるらしい。
副交感神経? とか言う奴がメインになって、なんかリラックスしちゃうんだってさ。
寝る為の準備、みたいなものかなー?
だから、普段理性ががっつり止めてくれてるようなものが、夜にはポンポン零れ落ちる、らしい。
ついでに夜になると、脳内物質みたいなのも色々変わるみたい。
細かい事は覚えてないけど、ざっくり言うと、幸せな気持ちになれる物質が減って、気持ちが落ち込んでくるんだってさ。
だから、夜に寂しいとか辛いとかしんどいとか思ったら良いから寝ろ、って主は良く言ってた。
実際、ぐすぐす言いながら寝て起きると、ピンピンしてんだよね。この体って不思議だ。

あーもう。恥ずかしさの余り何書こうとしてたか忘れちゃったじゃん。
読んでる側が恥ずかしいよ。どうしてくれんの、もー。

そういえば、そろそろ庭の梅が満開になる季節だ。
甘い甘い梅の匂い、今の時期になると、あー梅だ、って直ぐに分かるのに、後々になると思い出せなくなっちゃうんだよなー。何でだろ。
梅は花の兄、なんだっけ? もうすぐそこまで春は来てるんだね。

今年の春はいつ来るんだろう。
もう来ているのかも知れないけど、やっぱり春と言ったら桜だよね。
観桜の宴、楽しみだな。


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134 :へ-し-切-長-谷-部
02/29(月) 02:58


人の身も心も兎角ままならない。
寝なくてはいけないと分かっているのだが。
分かって、いるんだがなあ。

答えが分からないと、不安になる。
己の行動の正否を、出来る限り正確に与えて貰いたい、と思う。
一足す一を三と言ったら、それは二だよと教えて欲しい。
三になる事も有るかも知れない、などと、笑って有耶無耶にしないで欲しい。
一では無く壱と書いた方が望ましいなら、そのように指摘して欲しい。
一でも間違いでは無いからと、そのまま受け入れないで欲しい。

俺は何時だって、正解を探している。
教わったらその通り、従順に振る舞ってみせるのに。
最も求められる形で尽くして、一番使い勝手の良い刀になってみせるのに。
人は大概、そういった事を決して口に出してはくれない。

だから俺は、様子を覗う。
茶を飲む口元を、表情を、呼気を観察して、温度や味の善し悪しをはかる。
どの菓子の減りが早かった、どの食事の時に表情を和らげていらした、どうお答えした時に、喜んで下さった。
五感を研ぎ澄ませて、一瞬も見逃さぬように、必死に拾い集めて、自分の行動の指針にしていく。

けれど。
何をしても、温和ににこにこと笑われているばかりだと、どうして良いのか分からない。
一番になりたいのに、どうしたらなれるのかが分からない。
同じ場所でただぐるぐると回っている駄犬にでもなった気持ちだ。
どう工夫を凝らしても、返ってくるものが変わらない。
そもそも、俺では駄目なのかも知れない。もっと、根本的な所で。

「はあ、まあ、努力は結構ですけどね。ありのままの君を好いてくれる人をこそ、大事にするべきなんじゃないですか」
――ありのまま、など。
「じゃあ何ですか、君は僕と居る時でも僕好みに気を払っていると? 他の刀……例えば、日-本-号相手でも?」
――非常に不本意だが、最低限は。
「難儀な事ですねえ……僕なんか微塵も気を払っていないのに」

それはお前が愛され続けた刀だからだろう、とは、流石に言えなかったが。
ありのまま、と言われても、ありのままの自分を、とうに見失ってしまったよ、俺は。

>くるしいこいをした。


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