日記一覧
┗494.犬に関する覚書。(11-15/106)

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15 :へ_し_切_長_谷_部
09/19(土) 17:31


遠征から帰還。
道中の店にて色付き始めた紅葉の形をした練り切りを購入。あれが帰ったら共に食べるとしよう。

紅葉といえば、鬼女の名でもある。詳しく調べたわけではないから詳細は知らんが、美しい女であったらしい。同じく美しい女の姿をした悪女として有名なのは、玉藻前だろう。どちらもその美しさを以って人を狂わせ、道を誤らせる。古今東西、人は美しい者に弱いという事なのかもしれん。
まあ、俺が好んで傍に置く犬も、とても美しい。あの美しい刀を人の姿としているのだから、美しくて当然なんだが。人を魅了する、という意味では、あれも紅葉や玉藻前に負けてはいないな。



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そういえば、この帳面は飽きるかあれに見付かった時に圧し斬るつもりだったんだが…帳面を開いた直後にはあれに見付かっていたようで、知らん振りをしているあれから言われるまでは書く、つもりだった。まあ、あれが言い出す前に俺が告げた…と言うべきか。とにかく、俺もあれも互いの帳面の存在を知っている、という状況を認識して現在に至る。
つまりもう圧し斬るなり焼き捨てるなりしてもいいわけだが、……さて、どうするかな。特に不都合があるわけでもなし、そろそろ圧し斬って焚き火にでも放り込むか。

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14 :へ_し_切_長_谷_部
09/17(木) 22:42


噛み付く、という行為に、一体どんな意味が籠められているのか。好んで自身がする行為だと言うのに、その意味は明白ではない。噛み付く。柔肌に人の身にある硬質な凶器を突き立て、ともすれば刀の頃を思い出すような鉄の味がする液体を奪い取る。その液体にはあれの生命が、神気が、詰まっているというのに。
じゃれる獣、というのが一番近いのかもしれん。獣というのは、玩具を与えると噛んで遊ぶものらしい。感触を楽しんでいるのか何なのかは知らんが、俺のその衝動はそれに近いのかもしれん。しかし、俺はあれを玩具と見なした事はない。噛み付いた際のあれの反応を好んではいるが、玩具などと失礼な見方をした事はない。あれは美しい刀だ。とても美しく、力強く、優しい、その名に恥じぬ素晴らしい刀だ。……もしかしたら、あれの美しさを傷付けて、汚してしまいたいという欲求が、俺の中にあるのかもしれんな。

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13 :へ_し_切_長_谷_部
09/16(水) 21:24


理想、……理想?理想とはなんだったか…辞書を引いてみる。最も素晴らしい状態、最も望ましい姿、望み通りの完璧な状態。…………おい、冗談だろう。お前の理想はどうなっているんだ。
とりあえず、お前の好きにしていい。帳面に記すも文で話すも、お前が望む通りに。俺はどちらでも構わん。

夏の暑さも薄れ、忍び寄る冬の気配を肌で感じる。元より低い体温が益々低くなるような、心の臓まで冷えるような、白い冬がじわじわと庭の端を染めていく。
一緒に炬燵に入りたい、と言ったあれは、何を思ってそう言ったんだろうか。気の利いた会話一つ出来ん俺と炬燵に入り、何を望むんだろうか。温もりではないんだろう。それならば炬燵でも俺でも、どちらか一つで事足りる。俺の体温は低いが、寄り添えば暖かいといったのはあれだ。ならば何を望むのか。ただ約束をしたいわけではないだろう。あれの言葉の大半を構成する好意が、何かを欲している可能性はある。それが分からん俺は、あれの望み通りに振る舞えはしない。それでも構わんと言うのがあれだろうと解釈しているが、さて、真相はいかに。

愛とは、なんなんだろう。

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12 :へ_し_切_長_谷_部
09/15(火) 20:41


主命を賜った。ぱんぷきんぱい、だ。主がぱんぷきんぱいを食べたいと仰った。よって作る料理はぱんぷきんぱいとする。他に作りたいものがあるなら聞くが、ぱんぷきんぱいも必ず作るように。
……ところで、ぱんぷきんぱいとはなんだ。半濁音が多くて、間の抜けた印象だが。どんな料理だか想像がつかん。後で調べておくとしよう。

あれの帳面に目を通していても、やはり俺は性格の良い刀ではないなという感想に行き着く。俺も趣味が悪い自覚はあるが、あれも十分趣味が悪い。たまに、美しい瞳に映る俺は虚構のものなんじゃないかと、失礼極まりない事を思う。まあ、俺の趣味の悪さを理解しているのだから、恐らくそれはないだろうとも思うが。
犬、だと書かれていた。俺の姿を取っても、犬な可能性がある、と。見てみたい。どうだ、俺の我が儘を叶える気はないか。



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ぱんぷきんぱい。ぱんぷきん、とはかぼちゃ、南瓜と書く野菜。ぱい、は、ぱい生地という菓子の生地に果実などを包むなどして焼いた、西洋菓子。つまり、南瓜を使った焼き菓子が、ぱんぷきんぱい。
ふむ、…あれが作るのなら、きっと主のお口に合うものが作れるだろう。

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11 :へ_し_切_長_谷_部
09/14(月) 20:38


あれから直接強請られたため、指輪を用意してぷろぽーずとやらをする事に決定した。
当然だが、指輪には様々な形があるらしい。宝石と呼ばれる類の金銭価値のある石がついたものから、同じく金銭価値のある貴金属を使った質素なもの。なるほど、指輪とはかくも値の張るものらしい。

俺はあまり好かれる類の刀ではない。無愛想だし、気遣いも足りんし、鈍感で気紛れだ。恐らく、物好きにもこの帳面を開き中身を覗いた連中の九割は、こんな奴を恋い慕うのはやめた方がいいんじゃないかと心中であれに同情の念を寄せるだろうと思う。主は心優しいお方だから、そんな事はないと仰って下さるが。
あれは俺を優しいと言う。俺にはその理由が分からん。一つ一つ掌に落とされるまろい恋情をこの身の血肉とすべく噛み砕く事も出来ず、零れ落ちていく甘い色をした一片が地へ舞い落ちるのをただただ眺める事しか出来ん男だ。噛み砕き、嚥下し、そうして初めて俺の感情と出来るのに、掌を埋め尽くす感情の欠片を見下ろしてこれはなんだろうと思うような男だ。これを優しいと評するなら、主やあれなど優しさの権化だろう。
俺がいい、とあれは言う。散々柔い心を傷付けられ、美しい肉体に無体を強いられ、それでも、と言う。そうまでして俺を求める理由が分からん。

可愛らしい犬の姿をした飴を見付けた。飴細工というものは、作る工程を見るのが面白い。あれに買っていこう。

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