日記一覧
┗70.滅紫の黎明(6-10/40)

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10 :鶴/丸/国/永
05/18(月) 03:08


久方振りに衣服に気に入りの香を焚き染めようと、宝物の様にそっと仕舞っておいた箱を取り出す。きっと似合うと遥か昔に彼奴に贈られた、甘い梔子の香りだ。これを焚く度に彼奴の顔を、声を、体温を思い出す。いやはや、歳を取ると感傷に浸りやすくなっていけないな。

火を灯して暫く揺らすと、煙に変わる。幸いまだ湿気て火が着かなくなっていたわけではないようで。細くたなびく甘い煙が天井まで昇っては、蜃気楼の様にゆらゆらと揺らめく。甘ったるすぎるその香りに酔う様に、未だに夢に見るんだ。こんな風に煙の中に彼奴の似姿を探して生きている俺を笑うかい?馬鹿のやる事だと笑い飛ばしてくれれば、俺も心置き無くこの香りの中に記憶を置いて行けたさ。だが生憎記憶力だけは一丁前でね、どうにも忘れさせてはくれんらしい。

指先に着いた残り香に辟易した様に眉を寄せ、最後の一本に火を灯す。これが燃え尽きたら、夢物語も終わりだ。


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9 :へ/し/切/長/谷/部
05/17(日) 01:37


突然ではあるが、改めてこの場で謝辞を述べたい。纏めてすまない。

よもや誰かの書棚に俺の日記とも呼べない様な代物が並ぶ日が来るとはな。相当な物好き…いや、素直に言わせてもらうと、整然と並んだその書棚に俺の一冊を入れてもらえたこと、また手に取って読んでもらえたこと…感無量だ。敢えて宛名を書くことはしないが、これを見て思い当たる節がある奴皆に宛てていると思ってくれ。

俺もいつもひっそりと読ませてもらっている。いつまでもその健やかな日々と共に、幸多からんことを。


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8 :燭/台/切/光/忠
05/17(日) 01:04


__だと君が囁く。心地好いその声を聞きながら目を瞑って、泥の底へと沈んでみる。手足を動かして掻き分けてみても、重い泥が身体に積もるばかりで。遂に息が出来なくなった肺は耐えきれずに軋んで、潰れていく。君が伸ばした手は僕の身体には届かず、声も段々遠くなっていく。必死にこちらに向けられる手が朧気な視界の中に見えるけれど、もう掴む力も残っていない。自業自得…これじゃ格好もつかないよ。でもね…君が僕にかけるその言葉は呪いで、僕の首を絞めることをどうか覚えていて欲しい。 僕を此処に沈めたのは、君だ。


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7 :へ/し/切/長/谷/部
05/15(金) 02:06


辺りを幾らばかりか照らす星の領分を根刮ぎ奪う様に橙に染め上げ、夜空を切り裂けばまるで真昼かと錯覚する程に明るい空が眼前に広がった。 かつて清いそれを与え、後に人々を救うことになる主を作ったのは遠い昔の話。語り継がれ、受け継がれ、今宵の鬼灯色の空は命の灯火、始まりの色。 雅、とはこういう事を言うのだろうか?


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6 :へ/し/切/長/谷/部
05/14(木) 01:25


手折った花を彼奴に手向けた。茎をぽきりと折ってしまえば、風の前に揺らめいていた命の灯火がそっと辺りを照らすのを止め、再び足元は闇に包まれた。あんなに我先にと太陽に向かって伸びていた青々とした茎や葉も、世界の色を映す様に咲いていた花も、命を摘まれれば、醜く枯れる末路を選ぶ他ないんだろう。色付いていた筈の花弁からは鮮やかさが失せ、生まれ故郷の土にその身を横たえ、息絶えている。その花の色は、もう思い出せない。 左様ならば、忘れてしまおう。


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