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┗Lily.(121-130/140)
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130 :
日吉若
2014/08/11 23:10
背筋を伸ばすことは憶えていますよ、勿論。
脊髄のひとつひとつを爪先でなぞって笑む俺は、
相変わらず厭な奴です。
黄昏*褪せる*蝉時雨
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129 :
日吉若
2012/08/28 23:24
「 優しくなんかしないで、 」
背中に向けて小さく呟く、都度、非道いオトコに成りたいのだと──ひたすら願う。
夙に浮かぶ白い月、
過ぎ去った星に乞う、鵠。
求めている振りをして、求められたいんだろう。…ちゃんと解っているとも。
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128 :
日吉若
2011/11/10 20:06
貴方と云う人間ひとりが此の世に居た所為で、
世界の誰をも恨む気にも為れない。
厭人癖な情熱家には、季節の移ろいすら頭痛の礎。
( なんて誤算 ! )
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127 :
日吉若
2011/11/06 04:46
ずっと長い頃から野原の状態で、茶色の太い尻尾をした猫が居た場所の話。
(( 永いこと、永いこと。))
或る朝、通学の際に何時も通りに其処を通り掛かったらば、太陽の光をキラリキラリと反射させていた原っぱがひとつ残らず綺麗に刈られ、地面が剥き出しとなっていた。
疎らに地を均す人達。
不思議と何も持っていなくて、身ひとつで、石ころすらも無い場所で。
其の日の学校の帰り、平らだった地面がコンクリートで隙間無く蓋をされて、──…
ひどくさみしくなった人間が在ったことだけじゃ、誰の気持ちを優しくすることも出来ないのだと。
…此の気持ちを、なんて伝えたら良いんだろう。
( 解らないから口を噤む。気が済む迄、何時迄でも。 )
* * *
言えないことなら、何も伝えるべきでは無いのだろう。
事実と真実は限り無く対極なのだから。
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126 :
日吉若
2010/10/05 01:00
嗚呼、虹の花。
*
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125 :
日吉若
2010/09/16 21:31
懲りずに又、俺は徒乙女に恋を識る。
‐‐‐
余所行きの慣れぬスーツに身を包み、薄暗い光を漏らす扉を真ん中から両手で押し開いて中へと入る。カウンターの奥に並べられた大小の酒瓶、店内に流れるレコード音。深夜にも拘わらずそこそこの賑わいを見せる其の空間に、不安を覚えた。アルコールを口にする見知らぬ人達の中に望む人の姿を求めても、得られない。…未だ、辿り着いていないらしい。
相手は、来るだろうか。
自分依りもきっと、此処に来るのは難しいに違いない。先刻降り始めたばかりの霧雨の所為でスーツの上から着込んだ外套に細やかな粒子が纏わり付いている。不安が、其の粒子を震わせるんじゃ無いかと思う程に鼓動を高まらせる。
一目だけ。確か、自分は然う乞うた筈だ。見送りに来てくれ、と。視線を彷徨わせていると、カウンターに腰を据えていたひとつの影が此方を振り返った。やあ、と相手は云う。来たのか、と俺は返す。飽き飽きする程見ていたであろう其の貌が笑みを象るのを感じながら、相手の足下に鞄を見附けて、狼狽える。厭な予感に、息が詰まる。
さあ、行こうか。就寝前の挨拶をするみたいに、林檎の色は赤だと告げるみたいに、当たり前のように然う云う姿に反応出来ずに居ると、寝転んだ三日月型の口唇が開いた。
――…だって、俺のこと好きでしょ?
(何処で間違えたのか、)違う、と一言否定出来ずにいた数秒で敗れていたし、恥ずかしさと喩えようの無い恐ろしさで一歩、後退った。…気付けば店を飛び出し、走り出していた。逃げ出していた。路地の景色が後ろへ後ろへと逃げて行く。やがて息が出来なくなって、ショッピングモール街で立ち止まる。
何時の間にか雨は強くなっている。外套は重くなり、視界は髪に邪魔された。水溜まりには街灯が歪んで映っていた。空、を、仰ぐ。大嫌いな灰色の空。夜空は、黒い空でなければいけないのに。
自覚なんて無い程に、俺は焦がれていたのか。
俺は再び走り出す。
薄暗い光を漏らす扉を真ん中から両手で押し開き、中に飛び込む。笑いながら待ち構えていた彼奴の、開かれた腕の中へと勢い任せに身を添え、抱き寄せながら口づけを交わした。首の裏側に廻した腕が濡れそぼっていて、さぞかし冷たいだろうと思う俺が口にしたのは、何処か遠くに一緒に、だなんて云うつまらない科白だった。
追い掛けても来ないような、酷いオトコ。アンタの持つ伴侶だとか、家族だとかの背徳ごと、全部、
* * *
カーテンの隙間から差し込む朝日に意識が浮上した。
心臓の鼓動だけが、夢を引き継いでいる。
今まで意識したこと等無い。人気のあるひとだけれど、誓って(とは云え、誓う対象が見当たらないが)そんな目で視たことは無い。
なのに、徒乙女。
君は彼の姿で現れて、此の想いだけを残して沈黙してしまうのか。
もう一度、あの科白を言わせたい。
〔 Honeycomb 夢*似*梔子 〕
にしても、不倫の末に駆け落ちとはね。
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124 :
日吉若
2010/05/10 13:21
時折貴方のことを思い出して、
少しだけ泣いた後のような、
心地の好い疲労感に包まれている。
其れに気付いたのは、極最近だった。
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123 :
日吉若
2010/02/03 20:47
橙色の電燈の下、
睫毛に附着した牡丹雪が溶けてぼやけた視界の向こう側で、
大きな蝙蝠の羽根の腕の中 小さく寄り添う後ろ姿を唯々見送るのです。
* * *
日が暮れた頃綺麗な牡丹雪が降って、遠征先から帰るのに些か苦労をした。専用のバスが有るから荷物の持ち運びは少ないにしても、進みが遅いと部長は苛立つし其れを周りは囃し立てるしでまあ姦しい。
それでも無事に自校にまで戻って暗闇の中で雪を少し投げ附けて(そして投げ附けられて、)徒歩で家へと歩いた。面倒だからと傘を差さずに進んで行って、家と学校の中間地点まで辿り着いた所で、祖父と擦れ違った。
と言っても車道を挟んでのことだったから、祖父は俺に気付くことも無く、骨張った背を真っ直ぐに伸ばして歩いていた。…――御父様にそっくりね、と母に揶揄われたあの後姿。貌に微塵も出さないけれど余り寒さに強くない筈なのに、何処に行くのだろうと後姿を眺めていたら信号二つ分遠く離れたバス停で立ち止まる。出掛けるのか、と、思った矢先に遣って来たバスに又見慣れた姿を見た。
後程聞いた話では、傘を持たずに友人との集まりに出掛けた祖母を迎えに行っていたらしい。
祖父は敢えて古びた真っ黒な傘をひとつしか持って行かなかったのかと、答えが返って来ることを期待せずに呟いてみた。
すると祖母は俺に耳打ちして密やかに、
# "だってあの人、偶々通り掛っただけだと言ったのよ。"
そう言って、笑った。
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122 :
日吉若
2010/01/13 00:49
庭に面した廊下に鎮座。
背を反らし、弓なりに撓らせ前屈みに空を仰ぐ。
降り落ちた雨粒が着物の襟の隙間を縫って項に触れて、背を腰に向かって撫でて往く。嗚呼、まるで愛撫。
――初雪の、壱番最初の粒子が鼻の頭にキスをしたら初恋が叶う。
…そんな恋の呪いを、近頃不意に思い出すことがある。
(誰が言っていたのだったか、今はもう思い出せないけれど。)
雪を視たんだ。
相変わらず綺麗で、其処には溶けることを知らない思い出が詰まっていた。
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121 :
日吉若
2010/01/11 04:54
着色料の色した朱い舌を廻しながら、背後から人の肩に手を置いて、好きだったんでしょうと耳元で囁く彼の声に息が止まった。
好きだった、と云うのは正確には正しくない。
実際には気持ちが少し落ち着いてしまっただけで、溶けて失くなった訳ではないのだ。
だけどそんな事は如何でも良く、止めた呼吸を戻すまでに大分時間が掛かったのは、
茨の道と云うか、何を如何図っても人に何か言えない事を知られていたと云う後ろめたさからだったと思う。
>> 好きだったことを後ろめたく感じさせる、其の非道さを一瞬で解して背中をふるりと、震わせた。
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