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┗Lily.(111-120/140)

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120 :日吉若
2010/01/01 23:56

愛染めの硝子を高く高く放り上げて暗闇に穴を空ける。
裂けた割れ目からは世界の外側を照らす光が射し込んで、星がひとつ生まれるだろうから、…そうすれば天体航法図だって欺けるだろうか。


嗚呼、其れとも。
此のアストロラマに組み込まれた君の、君の悴んだ手を掴んで駆け出してみたら目の前がキラキラ、輝いたりするんじゃないかって。

フィルムが震える、熱を帯びる、天球図が砕ける。
天球図の欠片を掌中で愛染めして色彩を変えたなら、運命よ、今度はあの扉を撃ち抜き君を光射す世界の外側へと連れ去ろう!

(まるで星が弾けたみたい!)



‐‐‐
Happy new year.

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119 :日吉若
2009/12/31 23:50

小さな頃から、母が着物を縫う姿を眺めているのが好きだった。
形を成さない唯の布が、段々と形を整えて往く姿は美しく、彼方へ此方へと動く白い手の甲が光を反射するのは視ていて心地良い。
布を縫うのが好きだと云う母は、今年は朱い長襦袢に黒の着物を完成させて、手渡してくれた。
黒い生地に陰翳で浮かび上がる鳳凰の羽根をなぞる。

母は祖母から着物の縫い方を教わったと、少し照れたように唇の端を緩めた。
祖母と母の手の動き、は、良く似ていると思いながらふたり糸を操る仲睦まじい姿を横目に炬燵の卓上に顎を乗せた。
(喩え暦が変わったって、何かが変わる訳じゃなし。)

来年も、如何か、…──

‐‐‐

今だからの、懺悔。
今年こそはと集会と云うか、ちょっとした集まりに一回でも顔を出してみようと決めていたのに、結局顔を出すこと等出来なかった。
行ってみるかなあと幾度か思いながら、次こそは次こそはと先延ばしにしてしまって果たせず終い。
でも今年、人と余り交流が無いのは君にとっても未だ視ぬ誰かにとっても勿体無いことだと口にしてくれる奴が居た。

俺が何時か慾しがった、"そういうひと"は近くに居たのだなあと漸く実感、出来て。


沢山の優しさを感じた一年でした。
誰かにとっての悪人は、必ずしも他人にとっての悪人には成り得ない。
詰まりは、そういうこと。

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118 :日吉若
2009/12/24 04:06

# 「「Let's Go!」」 #

愛で刺し殺されたい,幾度も振り落とされる凶器に身を委ねて、揺れる鳥籠で熱を知るの。
生まれたての成虫みたいに、自分を守っていた殻に口づけたい慾求。
神経に、細胞に、如何したいかを組み込んで。
達する瞬間、背中の真ん中に熱いのを突き立ててあげるから、…胸元に粘着質な薔薇を頂戴。

星に、雲に、僕らは焦がれそして夜毎 夢 に 責められる。

* * *

さあ、朝陽が昇る前にサンタクロースに手紙を書かせに出掛けよう。
鼻歌混じりのキャロルを虹色に彩って、次に空に月が浮かぶ頃には君に一等星を届ける為に。
ところで、一等星の恋物語なんて、君は御存知?

* * *

…――友達なんかじゃ居られない、って言え。
そうしたら、きっと、今宵ふたりきりの奇跡だって起きるのに。
(宝箱に掛けられた錆びた錠だって、狂暴性を以て壊して見せて。魔法と云う名のもとに!)

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117 :日吉若
2009/12/21 05:19

女々しい、とはオトコに向けて使用する言葉であり、まるで見抜かれたように然う口にされてしまうと恥ずかしくて目蓋を伏せることしか出来ない。
右の親指の爪に浮かぶ気泡を見つめては呼吸の仕方を忘れた人魚みたいに下唇を咬んで、嗚呼何て自分は不純物なんだと、思考の海に沈む。


だが待て、然し。

繊細な少年期の心の変化を、尊ぶ必要は無いとでも?


>> ( 青 春 ノ イ ロ ー ゼ 。)

呆れる程晴れた空に似合わぬ寒気の下でツンと鼻を衝く刺激物の根源を親指の爪に塗られた。銀髪の級友に良く似た雰囲気を併せ持つ彼の姉が、無邪気な悪戯心を以て透明なマニキュアの筆を俺の指に走らせたまでは良かったけれども、手練れな筈の手元が狂い親指の爪には大小様々な大きさの気泡が出来る事と相成った。直ぐに拭い取ろうとする彼女に断りを入れ、他依りも艶々とした爪を眺める。目蓋を閉じて、暗闇に浮かぶ気泡を思い浮かべてから帰る、と、唐突に告げた時のふたりの顔は酷く呆気に取られたものだったが今は其れすら如何でも良いと思った。…――刹那を閉じ込めた甘美さに、思考回路が持って往かれそう等と、如何して理解してくれただろう。

‐‐‐
自分は巷で云う所の"女々しいオトコ"だと思う。
頭の中は不健全な癖して我ながら訳の分からない所が潔癖だし、好みのタイプを訊かれて咄嗟に口を衝いて出た返答が「毎月恋文を書いてくれるひと」だった時には恥死ぬと思った(常の無感動な表情の恩恵か、揶揄の引き合いにされる回数は少ない。助かった)。居ねぇよそんな奴。
だけど乙女趣味と心の微細な動きと言うのは又違う、とも思う。
慕うからこそ肌を重ねたら息が出来無くなると思うのは、近過ぎる距離では美観を保て無くなるのは、いけないことなのか。

だが待て、然し。

女々しいって言葉はだからこそ、オトコにしか使わない物なのだ。
…嗚呼、何を言っても言い訳がましい!





* * *

好かれることに何時まで経っても慣れない俺には、貴方の姿勢には結局上手く触れることが出来ない儘でした。貴方と逢っていた頃は、身体の中身がぐちゃぐちゃで、ハートに大鋸屑を詰め込むだけで精一杯だったんです。今は、少し気持ちも落ち着いてこうして細やかながらに祝辞を贈る気になった訳ですが、矢張り自分が放った宣言を簡単に撤回する訳にはいかない気がして、此の場を使うことにしました。如何ぞ、…如何ぞ倖せに御成りなさい。
貴方の言葉や、行動は其れに接する人の気持ちを動かせるのだから。

一冊の日記の末期を迎えた貴方へ。
沢山の、好意を、有難う御座いました。
…今更名を呼ぶような、無粋な真似は致しますまい。

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116 :日吉若
2009/10/23 21:55

>> 何時もより余計に捏造御注意、
  芥川先輩の御兄様の御話。
---


何時も依り高い位置から、
何時もとは違う角度で。
ちょっとだけ星に近い場所に足跡を残して 進 め !


〔 Honeycomb 散歩*掴め*飛べない鳥 〕

芥川先輩の尊兄は細くて身長が中々に高い人だ。兄貴に俺の分の身長ごっそり持って往かれちまったんだよなァ、と笑う先輩の表情や物怖じしない態度は良く似ていると思いながら、俺は通り一遍に頷き更に思いを巡らせる。きっと、金色の髪も其の人の影響なのだろう。
過去数回先輩の家に訪ねたことが有った所為か、すっかりと知り合いにカテゴリーされたらしい自分に機会を重ねる度に尊兄は人懐こく話し掛けて来るようになった。幾らか歳が離れている物の、全くと言って良い程気にしないさまは流石の芥川家と云う他無い。先輩の家から帰宅しようとした時に、一緒に途中迄と声を掛ける無邪気さに抗えず家路を辿るも矢張り話題は部活の人達の事へと移る。今は誰と組んでンの、と訊くから向日先輩とダブルスの訓練中、と答えたら気の抜けたような声を上げた。それから一言、なら飛ぶ練習しなくて良いの、と告げるが否やアスファルトに突き刺さられた長く続く低いフェンスを指した。

訳の分からない命令であるにも関わらず、猫宜しくフェンスの上の細長い路(成らぬ路、)に足跡を点々と残し、且つ危なげな身体を差し出された尊兄の左手で支えた。掌の大きさを比べるようにくっつけて、五指を合間合間に挟んだ形。何時もは上に在る表情が俺を見上げていて、馴れない温度を伝える指が確りと自分の右手を掴まえている。何だか風船にでも成った気分ですと伝えたらば、今日は練習で良いぜと返された。
阿呆なことをしているなと自覚しながら、それでも、浮かび上がって破裂して仕舞うのが厭で手を振り払えなかった。


…――フェンスの途切れ目はもうすぐ、

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115 :日吉若
2009/10/20 01:44

誰も彼もが貴方は御父様似ねぇ、と口を揃えて云う。
少しだけ厚みの持つ下唇や、色素の薄い髪色。
だけど、本当に灯の当たらない部分は、案外真白い肌をしているのだけどなあと俺は都度密かに思い、

そして憂う。


〔 Honeycomb 昇華*雨*空蝉 〕


我が家には愛玩動物、為るものが居ない。
唯一、細やかに庭に組み込まれた濃い翠の池を優雅に揺蕩う鯉が数匹居るけども、白い皮膚に赤い斑点のあの仔や真っ朱なあの仔や漆黒の皮膚の尾鰭の端だけが心無しか金色に光を反射する彼等の姿なんてとても愛玩動物の名は似合わない。宛ら、其処に巣くう主のようだ。
少うし昔には、番のハムスターを飼っていた。俺が未だ今より幼かった頃、ペットショップの表に置かれていた檻にぎゅうぎゅう詰めに為った其の姿をあんまり凝視していたものだから、母が隣にしゃがみ込んで一緒に中を覗いて、家に連れて帰る仔を二匹選ばせてくれた。そして其の夜各々に名前を附けて、世話はちゃんとするようにと母と指切りげんまんをした。初めて抱こうとしたら思い切り咬まれて大層痛かったのも覚えている。彼等も俺も、幼かったから加減を知らなかったんだ。
二匹で団子みたく真ん丸く為って喧嘩ばかりしているのを心配したものだけれど、過ごした数年は思い返すと今でも心が、きゅう、と痛む。

必ず訪れる永久成る別れの日。
──…あの日は、青灰の空に小雨振りしきる不思議な天気だった。
庭の隅の金木犀の影に二匹を埋めて、初めて味わう感覚に今より少し幼い俺は傘も差さずに茫然と佇んでいた。


何時の間に庭に降り立ったか、離れた所に父が居た。
雨に濃く変色した髪と、湿った睫毛の重さの分だけ伏せた目蓋で俯き微かに振り向いた俺の姿を視た彼は、…──小雨の子守歌に紛れて母の名を呟いた。



其れ以来、父は俺が愛玩動物を欲するのを良しとしない。

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114 :日吉若
2009/10/04 03:21

天使が遠くでラッパを吹く、其の時は、


(to you!)

# あの人の、彼を見詰める眸は棘の視線。
此の時期は何処も彼処も浮附いていて、落ち着かない。
「同じような毎日を」なんて歌詞にも定められてしまっているような自分達は、だからこそ誕生日だなんて云うものに過剰に反応してしまう。
だけどまあ、言ってしまえばこんなのは例年通りで、何も可笑しい話じゃない。――…可笑しいのは、相も変わらず充実した箱詰めの、つまり部室やコートで交わされる刺々しい視線の遣り取りで。
普段は周囲を忘れることなど無いくせに、其の瞬間ばかりは対戦相手も何もかも忘却した表情で互いの身体を射抜くのだ。
感附いた瞬間は本当に偶然で、部室の中で彼が放った一言に対してあの人が無言で差し向けた視線が、あんまりにも意識を反映したのが偶々視界に入ってきたのが初めだったと思う。
知らない方が良かったな、と、思いながら気附いてしまったらもう気に為って仕方無い。
部活終了後、去年には無かった筈の視線の鋭さ飛び交う中で。
盛り上げられる内輪の誕生会、もしかして自分等は無粋なんじゃなかろうかとの思考が顔を覗かせていながら、唯々気附いていない振りを決め込んだ。
前にも後にも進めない、そんな状況下なのだろうけども。


天使のラッパの音が世界に響き渡る其の時は、
きっと、あの人は彼の元へと走るのだ。
〔数センチの距離でも近く、君の傍に!〕

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113 :日吉若
2009/09/22 10:34

 :
 :
 *

貴方が居なくなる時は、それこそ全部喰べてしまおう。
そうして俺の体の一部になるのを見届けて、後は全部綺麗に忘れてあげる。
俺の細胞の一部に為ったっていう事実だけが残って、記憶も何もかも、他は全て綺麗に失くなるなんて素敵でしょう。

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112 :日吉若
2009/09/20 07:39

手に入らないものばかりが欲しい。
そしてきっと、何時までも見付からない。
# 如何して、って。
――…ずっと捜していたいからさ。
(嗚呼、漸く答えを手に入れた。)


*パ ト ロ ン
金色の硬貨、細く朱いリボン、贈り物。
物腰は酷く優しく穏やかに。現実との乖離。贈り物と云う名の下に少しずつの侵食が絶対条件で、正体は執着心の権化。綺麗にラッピングされたものは身に附けるものが多く、服、香水は勿論髪を梳く櫛一つや血肉と成る食事の内容やタイミングに至る迄自分色への身体の塗り替えを怠らない。又、囲う相手に新たに名を附ける権利を持つ。

*キ メ ラ
散歩用の鎖、顔を隠すベール、飴と鞭。
丈夫で凶暴につき『触るな危険』。盲目的。躾の中での愛撫で懐かせる必要性が有るも混ざり合った性質の所為で矢鱈と手間の掛かること。本音と顔を隠す繊細なレースで編んだベール越しに視線を投じ、視覚だけで無く嗅覚等の感覚に我が身を刷り込ませて育てる。先ずはマテとハウスから躾を行い、新しい名を附け所有するべき生き物。

*情 夫
恋歌、灯籠、白檀の香道。
交わす言葉は密やかに、慈しみの仕草を持つ。太陽の輝きよりも夜に浮かぶ蝋燭の灯を好み、互いの関係を口外しない。何処迄も優しいがキメラと違いハウスは基本不可。電話よりも手紙を好み芸術に深く通じ土産物にも其の色を強く見せることが有るが、幅は広く飽くまで偏りが少ない。名前を附けることは稀で、二人称で呼び合うことが多い。

飽くまでも短く纏めてみたらこんな感じだろうかと、羅列してみた。実は未だ記載していない区分も在るけれど、其れはさて置き。
中学生がそんなもの欲しがるかと言われて、多分未だぴたりと当て嵌る形容が無いだけかもしれないと答えた。

だって言葉は何時でも不親切だ。
---

こうして述べている間にも欲しいものは変化する。
情夫、なんかは特に。何か違う。
それにしても、何て難儀なのか。

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111 :日吉若
2009/09/16 01:36

星が、死んだ。


パァンと弾けて星が死んだ。死んだのか、と、呟いてみたら後から実感が追い付いてきて目にしたことの無い其れを想って思考回路が憂いを帯びた。
星にも寿命があるなんて、何だか不思議に思う。
考えてみればそんなのは当たり前で、自分はこんなにも傲慢だったかと、恥ずかしく為って顔を両手で覆った。

星が死ぬ瞬間はまるで羽根を広げた蝶々のように輝いていたそうだ。
居なくなる瞬間が美しいと称賛されるなんて、きっと彼等は看取られていることなんざ気が付いてすらいないのに。
どうやら傲慢さは人類の特徴らしい。
世界が亡くなる瞬間は、星が死ぬ時と同じだと思う。
きっと全部が光に輝いて、直ぐ目の前に在る物も視えなく成る。そういう意味では毎日と同じだ。俺達は日々消えている。
…赤紫に輝く蝶を、両の掌で作り出した暗闇の中に視た。



そして遠くで天使がラッパを吹くんだ。

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