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91.マリルイ学園CGR
 ┗928,931,933,937,947,956,958,964,966

928 :迅
2020/10/12(月) 22:50:23

4〜5レス無駄遣いしちゃうかもだけど許してくれ

────────────────────────

 架空に響き渡る1発の銃声。目の前で倒れる上司。
 そして、血溜まりの上に倒れる彼女をどこか哀しげな瞳で見下ろし、銃口から煙を上げる玩具のような拳銃を右手に提げた悪の幹部。

『くっそォォォォォ!』

 視界に焼き付けられた悲劇は、必死に忘れようと瞳を閉じても、瞼の裏に映し出される。

「(あの日から……もう5年か……)」

 あの日、私は全てを失った。



《ーCommunity Girls Ranger:REー》



ー2026年:東京都千代田区ー

「ヴハハハハハ!なんだなんだァ!?ちったァ楽しませてくれると思ったんだがァ、この程度でへばられちゃァ拍子抜けもいいとこだぜ!」

 半身が機械と化した筋骨隆々の大男は、豪快な笑い声を上げながら頭部から流血した警官の頭を掴み上げ、乱雑に外へ投げ捨てる。
 たかが喧嘩慣れした程度の一般人に遅れを取るほど、彼ら警察官は決して弱くはない。
 ただ、目の前の大男が強過ぎたのだ。

「そんな……署長が……!」
「おいおい、一体どうしたァ?まさかたァ言わねェが……お偉いさんがやられたからブルっちまったとはァ言わねェよなァ……?」

 怯える警官達を一瞥し、大男は背中に背負った鞘から長大な三日月刀・ショーテルを抜き放ち、近くにいた女性に切先を突きつける。

「いやぁぁぁ!」
「騒ぐんじゃァねェ!俺が知りてェのはただ一つ……ルルとか言う小娘の居場所のみよ!」
「ふざけんな!そんなガキ知る訳ねェだろうが!」

 大男は甲高い悲鳴をあげる女性を脅し、女性の彼氏と思しき男性が二人の間に割って入る。

「つーか、アンタは一体誰なんだ!?」

 男性は声を荒げ、大男に問いかける。すると彼は口角を上げ、唐突に自己紹介を始めた。

「特別サービスだ。名乗ってやる。俺の名は迅、メンズスターの幹部にして───「私の抹殺を依頼された……そうでしょ?」
「誰だ!?」

 すると、突然どこからか凛とした声が響き渡り、慌てて立ち上がった大男・迅は周囲を見渡す。

「(なんだったんだ……今のは……?)」

 ───ただの幻聴か。そう気を取り直した次の瞬間、迅の巨体は大きく吹き飛んだ。

「どぉわぁぁあぁぁあああああ!?」

 近くの木々を薙ぎ倒しながら吹き飛ぶが、器用に身を翻して着地。地面を引き摺りながら停止する。
 衆人環視の視線が集まる中、彼は血を流す頭部を左手で押さえながら立ち上がる。

「(警察の拳銃程度じゃァ俺の身体は吹き飛ばせねェ……つまり、さっきのヤケに重い一撃は《キズナパワー》による攻撃……)まさか……テメェ自ら来てくれるとはなァ……!」
「ピーピー騒ぐな、弱く見えるわよ?」

 ゆっくり立ち上がる迅を心の底から軽蔑するように、右目に眼帯を付けた少女は握り拳の親指を立て、その指先を地面に突きつけた。

「さァ、地獄を楽しみな」

[返信][編集]

931 :迅
2020/10/13(火) 20:04:49

「死なない程度に……殺してあげる」

 巨漢の男・迅にそう告げた少女は、憤怒と憎悪が複雑に入り混じった瞳で彼を睥睨する。
 しかし、相手は腐ってもメンズスター幹部。少女の気迫程度で怖気付く様子はなく、逆にクツクツと静かに笑いを漏らしていた。

「なにか可笑しい事でも?」
「クハハ……!可笑しいとも。何だ?仲間の敵討ちってか?良いねェ、そう言う絵空事をぬかす馬鹿野郎ほど躾甲斐があるってもんよォ!」

 瞬間、身体を低く屈めた迅は、まるで弾丸のような速度で走り出した。その威力、速度共にダンプトラックに引けを取らないだろう。
 直に受ければ死ぬ。今思えば、CGRにいた時はこの手の攻撃は避けてばかりだった。
 だが、今の彼女は避ける必要はない。───否、そもそもこの程度の攻撃なら、回避に移る動作すら今の彼女にとっては無用の長物だ。

「死に晒せやァァァァァ!」
「……」

 迫り来る砲弾もかくやのタックル、直に受ければもちろん即死。しかし、少女は揺らめく水面のように構え、真正面から受け止めた。
 刹那、戦車砲の如き轟音が大気を震わせ、両者の衝突は大地を砕き土煙が舞い上がる。

「うわぁぁぁぁぁぁ!?」
「きゃぁぁぁぁあ!」

警官を含む市民達は───ただ悲鳴を上げ、その場にうずくまる事しか出来なかった。

「お、おい!煙が晴れてくぞ!」
「ま、まさか……!?」
「いやぁ……!」
「!オイ、あれを見ろ!」

 衆人環視が集中するは、土煙の向こう側。

「何で……何で俺が、地面に倒れてんだ!?」
「自分がぶっ倒れてる事が……そんな驚く事?」

 少女の身体には傷一つ付いてなく、仰向けになって地面に倒れる迅は逆に無数の傷を負っていた。迅は眼を白黒させ、ある予想が脳裏をよぎる。

 「(受け流された……!?俺の攻撃が!?)」

 なんの苦もなく、まるで暴漢をあしらうように真正面から受け止められ、その刹那に満たない一瞬の間に無数の打撃を全身に叩き込まれたのだ。彼はフラつきながら立ち上がり、両手に持ったショーテルで一閃。彼女の首を刎ねようと薙ぎ払うが───

「何で当たらねェ!?」

 渾身のラッシュも、警官をまとめて薙ぎ払った拳打も、全て流れるような動きで捌かれる。
 迅の攻撃は次第に単調になり始め、一撃、また一撃と受け流されてはカウンターを叩き込まれる。しかし、少女の激流の如し猛攻は止まらない!

「(攻撃が速くなってやがる……!)」

 焦り故か攻撃に粗が出始める迅と対照的に、少女の技はスピードとキレが更に上がっていく。

「メンズスターだかギャングスターだか忘れたけど、楽にしてやるから安心して逝け!」

 少女は叫び、連打の速度を更にあげる。
 彼女の流星群の如き連打は、両腕を交差させ防御に徹する迅の肘や膝の関節部を始め弱点という弱点を的確に抉り、彼の巨体を地に押し倒した。

[返信][編集]

933 :迅
2020/10/14(水) 22:10:54

「それで?本当に君があの大男を?」
「だーかーらー、さっきから何度も何度も言ってるでしょうが。私は被害者なんですってば」
「いや……過剰防衛ってのがあってだね……」

 大男───迅との交戦から数分後、応援要請を受けた警視庁本部の警官が到着。当の迅はノックアウトしていた為、当事者の一人である少女は彼の代わりに取調べを受けている真っ最中だった。

「君、保護者は?」
「いないです」
「即答……」

 ルルの乱雑な答えに、質問の悉くを雑に返された男性警官は顔を手で覆い、ため息を漏らす。
 二人が戦った千代田区公園前はまるで戦争後のような惨状になっており、所々大きなクレーターがぶち空いていたのは言うまでもないだろう。
 警官はため息と共にメモ帳とペンを取り出すと、眠たそうにあくびをする彼女に問いかける。

「とにかく、君の名前と住所……あとは通ってる学校名とかも教えてくれるかな?」
「チッ……言いますけど、変な事には使わないでくださいね?名前はルルです。院丁第二高等学校普通科2年、もぎたてフレッシュ16歳です。あ、後バイクの免許も持ってるんで一応見せときます」

 少女……ルルは舌打ちをした後、カンペを読み上げるように棒読みで自己紹介を行い、制服の胸ポケットの中から学生証とバイクの免許証を提示。
 メモを書き終え「一条だ」と名乗ったイケメン警官は、虚空を見上げてはポツリと呟いた。

「……話変わるけど、最近見なくなったよね」
「……何がですか」
「ほら、CGR……だったかな。ローカルVみたいなコスプレした人達の集団でね、娘が憧れていた時期があったんだ」

 「もっとも、今となっては看護師を目指してるんだけどね」と、苦笑いを浮かべる一条警視。
 どうやら。CGRは一部の人達からすると『突然どこからか現れるコスプレ集団』と思われていたらしい。まぁ、それに関しては否定しないが。

「それじゃ、僕は報告書書かなくちゃならないから本部に戻るけど、何かあったらここに連絡してね」

 彼はルルに自身の名刺を手渡すと、ビシッと敬礼してパトカーに乗り込んで発車させる。
 一方、ルルは一条警視にはどことなく既視感があり、その記憶の根拠を探り出そうと脳みそをフル回転させていたが、なぜか思い出せずにいた。

「(私は、あの人と会った事がある……?)」

 中学校最後の夏、憎き悪友の取り巻き達にいじめられていたあの日、彼女を助けてくれた警官。

「(……いや、まさかね)」

 彼女は一縷の可能性を振り払い、マフラーを風になびかせながら千代田区公園前を後にした。

[返信][編集]

937 :迅
2020/10/15(木) 13:05:43

─警視庁本部─

「CGRか……」
「どうしたんすか?警視」
「ん?あぁ、少し気になる事があってな」
「あの子の事っすか?」

 「概ね合ってる」と一条警視はコーヒーを飲み、机の上に置かれた数枚の資料を眺める。
 最近話題になっている『連続爆破事件』、『メンズスター』なる謎のテロリスト集団、そしてメンズスターの幹部と交戦したとされる女子高生。最近見なくなったCGRについて、何か知ってるのだろうか。

「取り敢えず、俺は警視総監に報告書を提出して来るから、後で飯に行こう。僕が奢るよ」
「マジっすか!?ありがとうございます警視!」

 部下の警官は「よっしゃぁぁぁぁあ!」とガッツポーズし、嬉しそうに執務室を出て行った。

「(あの子は、もしかしたら───)」

 一方、執務室に一人残った一条警視は、赤いランドセルを背負った少女の写真と、赤いマフラーを靡かせる女子高生の写真を眺めていた。

***

「一条警視ねぇ……あの人警視だったんだ」

 一条警視の名刺を見ながら、ルルは意外そうに呟く。警察の階級にはそこまで詳しくないが、警視とはかなりの上の立場である事は分かる。だが、派遣するなら近場の警察署からで十分なはずだ。

「(警察……しかも警視庁のお偉いさんが来るって事は、メンズスターについて何か───)」
「ルル……?」
「ッ!」

 刹那、後ろから声をかけられる。聞き慣れた優しい声色、ルルは声の方に振り向くと───そこには、いつも自分を励ましてくれた彼女がいた。
 
「木村さん……」
「ルルちゃん……大きくなったね……」

 木村と呼ばれた女性は優しく微笑み、喫茶店を指さす。お茶でもしようと言いたいのだろうか。
 2人は、喫茶店の中に入っていった───

「……」
「……」

 のは良いのだが、あまりの気まずさに思わず目を逸らすルル。電話での交流はそれなりにしていたのだが、直接会うのは実に5年ぶりだった。
 それは当の木村にも言えた事らしく、彼女もおずおずとしていたが、やがてゆっくりと口を開いた。

「その……背、伸びたね」
「まぁ、今165ありますし……」
「そっか……もう、昔みたいに『キーさん』って呼んではくれないんだね……」
「そりゃあ、私だって高校生ですし。それに、木村さんも変わりましたよね……色々と」

 木村の容姿は、5年前に比べ少し痩せたように見える。表情もどこと無く落ち着いており、5年前のように快活な彼女はいないのだと思い知らされる。

「それでね、ルルちゃん。よく聞いて───」

【■■■■■■■■■■■■】

彼女のか細い声色は、蝉の鳴き声にかき消されていった。

[返信][編集]

947 :迅
2020/10/15(木) 22:07:12

 「クソッ!クソッ!クソがァッ!なァぜいつまで経ってもォ!アイツは戻ってこんのだァ!」

 場所は変わり、富士山上空に浮かぶ円盤の内部。怒り心頭のメンズスター日本支部首領・ゲラッチはコンソールパネルを力一杯に殴りつける。(そして彼の言う『アイツ』とは、ルルと交戦して敗北し、警察に身柄を確保された迅の事だ)
 髪をバリバリと掻き、腹いせと言わんばかりに近くにいたキノコ(?)の怪人を蹴り飛ばすが、怒りが収まらない彼は怒号を撒き散らす。

「大体!CGRは壊滅したんじゃなかったのか!?あの日私は雪華を殺し!その後、5年に渡り刺客を送り続けたと言うのに!」
「落ち着けよ。話によると、迅の野郎をブチのめしたのは年端もいかねェ小娘だそうじゃねェか?」

 「アンタはどう思う?」と、ゲラッチとは対照的に、冷静を保つ幹部・クロボー師は問いかける。

「奴はここぞと言う時によく負けるが、戦闘面に関しちゃメンズスター随一の実力者だぜ?そんなアイツが遅れを取るほどの相手ってなりゃァ……」
「CGRだ……!」
「は?」
「CGRはまだ壊滅などしていない!」

 ゲラッチはコンソールパネルを弄り出し、人工衛星を通してある女子高生の写真を画面に映し出す。

「私の最大の失態はァ、貴様が生きている事を見逃していた事だ……!猫野瑠々ゥゥゥゥゥ!」

 そして、彼は大気はおろかメンズスター日本支部全体が震える程の怒号を、大音量で叫んだ。

***

「CGRの生き残りは……私と玲子ちゃんと琴ちゃん、そしてルルちゃんの3人だけなの」
「は……?」

 木村から告げられた言葉はルルの横っ面を殴り飛ばし、彼女は唖然とした表情で木村を見つめる。

「その、嘘……ですよね……?」

 ルルの顔色はみるみる蒼白になり、彼女は唇を震わせながら恐る恐る木村に問いかける。5年振りの再会とは言え、会って早々いきなりそんな事を言われても、理解出来るわけがない。
 嘘であって欲しかった、タチは悪いが冗談であって欲しかった。───しかし、現実は残酷だ。木村は俯き、振り絞るような声色で打ち明ける。

「実は貴方以外のCGRのメンバーは一度、貴方がいなくなった後に私の家に集まったの。……でも、本当は集まるべきじゃ無かった……!」

 彼女曰く集まったは良いものの、肝心の別荘にはメンズスターの刺客が潜んでいたらしく、そこで襲撃を受けた彼女達は散り散りになったと言う。

「お願いルルちゃん……貴方の力を貸して……!」

 木村は弱々しく頭を下げる。
 しかし、ルルの表情は絶望に塗りつぶされていた。

[返信][編集]

956 :迅
2020/10/18(日) 12:15:06

「お願い、もう一度……力を貸して」

 風が木の枝を揺らし、木漏れ日が差し込むカフェのテラス席にて、深々と頭を下げる木村。
 しかし、彼女の目の前に座る少女はまるで醜い物を見る様な目で、彼女を睨み付ける。

「なに……都合の良い事言ってるんですか……?」
「……」
「貴方達はあの時!私を止めようとしなかった!止めて欲しかったのに……『私には仲間がいる』って実感させて欲しかったのに!なのに今更になって『力を貸して欲しい』?ふざけないで!」

 少女・ルルは怒号を上げ、テーブルを強く叩きながら立ち上がる。そして、彼女は木村の胸ぐらを掴み上げ、自嘲気味に歪な笑みを浮かべた。

「私、この5年間で気付いたんですよ……私が最後の、七つ目のキャスストーンだって事に!」
「!!!」

 刹那、木村の身体がビクッと震える。
 そこで彼女は確信した。
 ───ああ、やはりそう言う事か。【お前らは、私がキャスストーンだと言う事実を知っておきながら、自分で気づくまで黙っていたのか】。

「私は貴方含むCGRのみんなを恨みましたよ。だって……私にだけ教えてくれないんだもん」
「ちがっ……!」
「何が違うんですか?貴方達は私だけ知らなかったのをいい事に、笑ってたんでしょ!?バカにしないでよ!」

 申し訳なさそうに目線を逸らす木村を押し倒し、ルルは修羅の形相で睨み付ける。

「私は……仲間なんて信じない」

 そして彼女は、吐き棄てるように呟いた。

──────

 一方、別のカフェでは襲撃の後に合流した玲子と琴の2人が、ルルの説得に行った木村を待っていた。

「キーさん……大丈夫やろか……」

 5年経った今でも、あの日の出来事が瞼の裏に蘇る。
 焼け落ちる木村の別荘、まるで陽炎の様に炎の中で揺らめく巨大な影、抵抗する事さえ許されない程に理不尽で圧倒的な暴力による蹂躙。
 あの日、ただ逃げる事しか出来なかった玲子は、己の無力さを誰よりも嘆き、怨み、悔やんだ。

「ウチにもっと力があれば……!」
「それは違うでしょ」

 琴は口から血を流す程に歯を食いしばる玲子にピシャリと告げ、彼女の手を優しくそっと握る。

「私もキーも、アイツには全く歯が立たなかった。全部貴方が悪いんじゃない、私達の責任でもある」
「でも……!」
「あの子(ルル)が戻って来さえすれば、こっち側の戦力は増強される。もっとも、戻って来るかどうかは全てキーの説得にかかってるけどね」
「!じゃあ───」
「きゃぁぁぁぁあ!!!」
「「!?」」

 刹那、市街地に甲高い悲鳴が響き渡り、数秒後に爆発音。慌ててカフェから飛び出した2人の目の前には、両手にグレネードランチャーを持ったガスマスクの男が人混みの中央に佇んでいた。

[返信][編集]

958 :迅
2020/10/19(月) 20:40:15

 琴はキズナフォンを右手に構え、両腕をダラリと下げるガスマスクの男を見て舌打ちする。

「まさかアイツが来るなんてね……!!」
「なんや、琴の知り合いなんか?」
「少しね」

 琴に続き、遅れて左手に薄緑色のキズナフォンを構える玲子。そして2人はキズナフォンを持った手を前に突き出し、変身の合言葉を叫ぶ!

「「コミュニティアプリ、起動!」」

 刹那、玲子の足元に草花が生い茂り、琴の背後から紫色のドロドロしたオーラが迸る。そして2つは2人の身体を包み込み、緑と紫のスーツを纏った姿へと変える。
 対するガスマスクの男は、その一連の光景をただぼんやりと眺めているだけだった。

「草の猛者!ガールズグリーン!」
「病み上がりの武者、ガールズバイオレット」
「「キズナ戦隊!コミュニティガールズレンジャー!」」

 2人は名乗りと共に決めポーズをキメ、背後で謎の巨大な爆発が起きると共に名乗る。

「メンズスター突撃部隊隊長・ボーンクラッシャー」

 ガスマスクの男はボソボソした声で名乗り、すかさず4回、グレネードランチャーの引き金を引く。ガオンッ!と獣の咆哮もかくやの轟音と共に、ランチャーの砲口から放たれるは大質量の榴弾。
 ランチャーから打ち出された計8発の榴弾は、CGRの2人をチリも残さず粉砕する────

「プロテクトツリー!」

 しかし、そこはCGR。玲子は地面に拳を打ち付けると、巨大なもみの木が地面から生え伸び、降り注ぐ榴弾の驟雨から2人を守る壁となる。

「どうや!」
「ほう……」

 ボーンクラッシャーは両太腿のホルスターにグレネードランチャーを納め、腰裏に装備した鞘の中から大振りな2本のナイフを抜き放つ。

「遠距離戦は不利と判断、近接先頭に移行」

 彼は機械的な声色で告げ、獲物を定めた狩猟豹(チーター)の如く身を低く屈めた次の瞬間、玲子と琴が反応出来ない速度で跳躍した。

「「!?」」

 そして彼は2人の背後に着地。玲子も遅れて反応するが、遅過ぎる。

「早───!」
「亡べ」

 ボーンクラッシャーは玲子の喉元にナイフを突き出し、彼女は逃れられぬ『死』を覚悟した───

しかし

「!!!」

 突如現れた夥しい数の炎の槍がボーンクラッシャーの身体を貫き、数メートル程横にぶっ飛ばす。
 しかし彼とて簡単にやられず、吹き飛ばされる途中器用に受け身を取り、転がりながら起き上がる。
 そして折れたナイフを投げ棄て、代わりに両太腿のホルスターからグレネードランチャーを取り出した彼は、炎の槍が現れた方向を睨み付ける。

「ホンマか……!?」
「やったんだね、キー……」
「貴様は……!」

 ボーンクラッシャーと琴、そして玲子の視線の先には、燃え上がる焔を背にしたルルが立っていた。

[返信][編集]

964 :迅
2020/10/21(水) 17:32:13

「貴様が……ルル……」
「そうだけど……私の仲間が世話になったようで」

 瞬間、ボーンクラッシャーの背後から赤黒いオーラが滲み出し、ルルの焔も負けじと燃え上がる。
 相対するは『正義』と『征義』、ボーンクラッシャーはグレネードランチャーを構え、ほぼ同時に両手を水平に上げ、無数の炎の剣を生み出すルル。
 彼女はボーンクラッシャーに無数の焔剣の切先を差し向け、睥睨すると目の前の破壊者に告げる。

「死なない程度に……殺してあげる」
「やってみろ」

 刹那、交差する『業火』と『爆炎』。
 ボーンクラッシャーは連続でグレネードランチャーの引き金を引き、雨霰の如く砲口から撃ち出された榴弾の嵐が、走り出すルルの眼前に迫り来る。
 対する彼女は炎の剣を巧みに操り榴弾の悉くを斬り落とし、ボーンクラッシャーとの距離を詰める。両者の距離は約数十センチ。お互いの拳が届く距離に入り、ボーンクラッシャーは予備のナイフを鞘から抜き、ルルは炎を纏った拳に力を込める。

「はぁぁあっ!」
「シャァァァッ!」

 炎を纏ったルルの拳はボーンクラッシャーのナイフとぶつかり合い、その衝撃で周囲が連鎖爆発を引き起こす。2人の戦いについて行けず、玲子は焦りを隠さない口調で冷や汗を流す琴に問いかける。

「琴!ウチらはどないすればええねん!」
「解らない……!次元が違い過ぎる……!」
「2人とも!遅れてすみません!」

 玲子と琴は2人の戦闘に圧倒されていると、遅れて駆けつけた木村が2人の下に駆け寄る。頼れるリーダーの到着に、玲子はマスク越しに笑みを浮かべた。

「キーさん!」
「無事だったんだね……ルルは今、アイツと戦ってるよ」
「私達も加勢します!先に行ってて下さい!」
「おうよ!」
「任せといて……!」

 彼女の声に頷き、スーツによって強化された身体能力を駆使し、2人はルルの下へ走り出す。
 そしてその後ろで、呼吸を整えるべく小さく深呼吸した木村はキズナフォンを構えた両手を前に突き出し、2人と同じ変身コードを叫んだ。

「コミュニティアプリ、起動!」

 彼女の叫び声と共に、薄桃色の突風が木村の身体を包み込む。そして突風はピンク色のスーツを形成し、木村は玲子や琴と同じ姿に変身した。

「風の賢者、ガールズピンク……!」

 変身を終えた彼女は名乗り、渦巻く風の中から一対の双剣を取り出す。

「待っててね……ルル。今、行きますから……!」

 そして、彼女は風を操作して創り出した竜巻の上に乗り、聳え立つ爆炎の柱に向かって飛び立った。

[返信][編集]

966 :迅
2020/10/23(金) 18:18:21

「オァアッ!!」
「ッ……!」

 一方、ボーンクラッシャーの猛攻はスピードを増し始め、ルルは徐々に押され始めていた。
 彼は全身から赤黒いオーラを迸らせ、近づけばナイフと拳打、そして怯んで距離を取ろうとすればグレネードランチャーを無闇矢鱈にブッ放す。
 一見すればただ暴れ回っているだけのようにも見えるが、実はこれが恐ろしく効果的なのだ。

「ガハッ!」

 速過ぎる、動きについて行けない。
 しかしボーンクラッシャーの止まる事を知らず、嵐の如き猛攻はルルの華奢な肉体を捉え始めた。

「バッシャ"ァァァ"ァ"ァッ"!!!」

 彼は理性を失った獣のような咆哮を上げ、体勢を立て直す暇すら与えない怒涛の猛攻を繰り返す。
 形勢は一気に逆転し、ルルは猛撃の合間合間を縫って回避する事しか出来ず、反撃に移ろうにも下手に手を打てばその瞬間にジ・エンド。

「(何か打開出来る手段は……!)」
「ルルー!!」

 すると、どこからか自分の名を呼ぶ声。
 目の前にはナイフを振りかぶるボーンクラッシャー、そして次の瞬間、地面から生えた蔓がボーンクラッシャーを絡め取った。
 ルルは蔓の出所に目を向けると、地面に拳を打ちつけた玲子はニッと勝気な笑みを浮かべた。

「バインドヴァイン!」
「玲子!」
「私もいるよぉ……!」

 玲子と入れ替わるように現れた琴はルルの前に立ち、蔓を引き千切ったボーンクラッシャーの一撃を日本刀で防ぐが、重さに苦悶の声を漏らす。

「琴さん……!」
「ルルちゃん!これを!」
「!?」

 少し遅れて登場した木村から四角い物体を投げ渡されたルルは、己が身体の内側に眠る燻っていたエレメントが再び燃え始めた様な感覚を得る。

「これは……!?」
「ルルちゃん!変身を!」
「頼むでルル!」
「これ以上抑えられそうにないからね……!」
「───!」

 どくん、どくんと、心の臓が鼓動を鳴らし、それに呼応するように金色のキズナフォンは光を放つ。

「猫野"瑠"々ゥ"ゥ"ゥゥゥゥ"ゥ"ゥ"ゥゥ"!!!」
「コミュニティアプリ……」

 木村達の防衛線を退け、修羅の形相でルルの頭上に飛び上がるボーンクラッシャー。対する彼女はキズナフォンを持った右手を天に掲げ、キズナの合言葉を叫んだ。

「起動!!!」

 刹那、飛び掛かるボーンクラッシャーを軽々と吹き飛ばし、煌々と真紅の炎が燃え上がる。
 炎はやがて彼女の体を包み込み、炎と同じ真紅のスーツを形成する。

「ガールズレッド・レクイエム!」

 彼女は真紅の炎を纏い、『信頼出来る仲間』と共に、眼前の悪鬼羅刹と対峙する。

「さぁ……行きましょう!」
「「「応ッ!」」」
「クフフ……クハハハハハハハ!」

 煌めく炎と淀んだ炎、表裏一体にして相反する2つの炎は衝突し、世界を純白に染め上げた。

[返信][編集]



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