日記一覧
┗89.モトカレはせべ(111-115/115)

||次|1-|||
115 :へ_し_切_長_谷_部
07/11(火) 11:14

光_忠がばびゅーんとしていたので、俺も倣うことにした。
そういえば俺はものを捨てられないタチだという話をいつか光_忠がしていたが、正確に言えば捨てられないのは想いなのだと思っている。
手書きの手紙。メモ用紙。花束。割れた茶碗。亀の落書き。履き古した靴。いらないと言われた旅行のパンフレット。

途中で終わった日記帳。

どれもこれも捨てられないのはそれそのものに金銭的価値があるからではなく、そこに自分が触れた想いがあるからだ。俺が引っかかるのはいつもそこだ。他人からどう見えようが、いかに無価値だろうが、俺にとってそれが触れた瞬間に何かを思い起こすものなのであれば、しつこく手元に置いておく。そうすることでどうともならないが、俺は折に触れてそれを手に取って、単に眺めたりする。美しくもないし、ひからびて埃にまみれたそれらを。
それが俺の世界だ。他人から見れば価値がないからこそ、俺だけが認めうる俺だけのもの。俺は俺のこういう感覚をよしてしている。

この日記帳はその中でも気に入りのもの、なのかもしれない。
光_忠が楽しそうに綴っているし、俺もこの日記帳を読むと、筆不精せずもっと書いても良かったのにな、と思う。
それにしても、今読み返しても俺は相変わらず言葉足らずの傾向があり、光_忠の言葉はきれいだ。どんなに気持ち悪いシモネタを放っていても、それは変わらない。

最早誰も読んでいないだろうこの帳面が再び開かれて、新しい日々を少しだけ綴るのも悪くはない。
うん。悪くないな。

[削除][編集]

114 :燭_台_切_光_忠
07/11(火) 04:12

長谷部くんが、もうすっかり埃をかぶった帳面を引っ張り出してきたのは昨夜のこと。


#「n年ぶりn回目に、おまえの文章を読み返していたんだが……」


前振りもないどころか、心の準備もないまま見せられた、この帳面のなかの僕は、自分で言うのもなんだけど、日記を綴ることを心から楽しんでいるように思えた。いや、『思えた』じゃなくて、本当に心の底から楽しんでいた。時が経っていても、自分のことなんだから、よく分かる。


いつの間にか、一年が過ぎ、二年が過ぎ、何年経ったのかわからないくらい、時間が経ってしまった。僕と長谷部くんは、あの頃と同じように──とまでは言わないけれど、そこまで大きな変化もなく、今でもつかず離れずの距離にいる。
日記を書いていなかった空白の期間に、僕にも、長谷部くんにも、所謂特定の相手ができたり、できたと思えば別れたり、また別の誰かを好きになったり、ならなかったり、報われたり、報われなかったり、人並み程度には色々なことがあった。


結局、僕は、この帳面に向かって筆を執っていた時と変わらないまま、宙ぶらりんな毎日を送っている。もう、ここに並ぶ色とりどりの帳面たちも、新たな頁が足されることはないんだろう。
時間の経過というのは、良くも悪くもそういうものだ。形あるものも、ないものも、いつか終わりを迎える。決まっている運命からは、逃れられない。
果たして、今でもここに足を運んでいる子はいるんだろうか。


いつかまた、どこか違う場所で、僕が筆を執る機会もあるかもしれない。いや、ないかもしれないけど。もしも、奇跡的に見かけることがあれば、その時は、気兼ねなく声を掛けてくれたら嬉しいな。


#「やーーーい!おまえの股間、大_太_刀カッコワライー!!!!!!!!」


とか。
ごめんなさい、嘘!!!!
傷ついて僕の股間の大_太_刀カッコワライが使いものにならなくなっちゃうから、もしも見かけてもやさしくナンパして、あわよくば君の【伊達男コード】に、僕の【伊達男コード】を【伊達男コード】【伊達男コード】させて欲しいな。えへ。


ちなみに、n年ぶりn回ぶりに、この帳面を読んだ長谷部くんの感想を最後に載せておきます。


#「シモネタの語彙が豊富すぎて、気持ち悪い」


僕も同じこと考えてた!
どっこにも〜居場所がない日々でぇ〜
探し続けていたっ、こんなひとを〜〜♪


僕は、元気です。

#俺も元気にすき焼きだ。

すき焼きもいいんだけど、今夜は──
す_き_家にしない?
長谷部くん、好きだよ!ぎゅーっ!ドンッ!(妖艶暗黒微笑で壁ドン)

#本当はしゃぶしゃぶのほうがいい。

[削除][編集]

113 :燭_台_切_光_忠
08/30(火) 15:25

深夜、珍しく長谷部くんが僕の部屋を訪ねてきた。彼は「今、いいか」と、障子越しに声を掛けてきた後、僕が「どうしたの?」と、戸を開けるまで、廊下に立ったままでいた。人はそう簡単には変わらないと言うけど、刀もやはりそうらしい。こういう律儀なところは、昔から変わっていない。
彼の部隊でちょっとしたいざこざがあったこと、最近食べて美味しかったもの、僕らがまだ付き合っていた時のこと、近頃あった腹立たしいこと、……結局、僕らはいろいろなことを話し過ぎて、気がついたらもう陽がのぼる時間になっていた。任務までは、あと二時間。徹夜するよりはマシだろうし、少しだけ寝ておくか……。

「今から部屋に戻って、寝支度をし直すのも面倒だろう。たまには一緒に寝る?あっ、やましいことはしないよ!何なら、この枕を!間に挟んでもいいし!」

僕の提案は意外なほどあっさりと受け入れられ、僕らは、団子三個分と同じ値段の枕を互いの間に挟み、布団に横たわった。「もう寝た?」「いや、まだだ」なんてありがちなやり取りを三度繰り返してから、彼のほうに寝返りを打つ。すぐ近くにある洗いざらしの髪から、知らない石鹸の匂いがした。
今、彼の隣にいる子の趣味なのだろうか。生々しい花びらの香りだった。僕と付き合っていた時は、僕がいくら勧めようとそんな匂いのものは使わなかったのになあ。芳香剤を食ってるようで落ち着かないから嫌だ、とか言ってたのに。だからって、何が言いたいわけでもないけれど。ただ、変わったんだな、と、あるがままの事実を受け止めるだけ。

変わらないものもあれば、こうやって変わるものもある。でも、変わってしまったとしても、長谷部くんは長谷部くんだ。時間の流れを改めて再確認して、僕は、久しぶりに彼と同じ布団で眠った。僕らを隔てる枕は、朝になっても、やはりそのままの位置で大人しくしていた。


長谷部くんは、いつだって僕が望むものをくれるわけじゃない。そもそも、僕は彼になにかを望んでいるのかな。良い意味で、なにも望むことがないんじゃないかと思う。
君は、君自身のことを「自分本位だ」と言っていたけど、果たしてそうだろうか。


一緒に眠った次の日。
僕らは、ふたりで畑当番を任された。
君は、万屋で一目惚れして買った、新しいジョウロを手にして、なにやらそわそわしている。物欲の薄い君が一目惚れするなんて、まったく、珍しいこともあるもんだ。そこまで惚れ込んだジョウロだ、早く使いたくて仕方なかったんだろうね。日照りが続いた畑は、ジョウロのデビュー戦にはお誂え向きの乾き具合で、長谷部くんは「待ってました」とばかりに、たっぷりと水を撒いていく。その横顔を、こっそり盗み見てみた。……うん。僕が一度好きになった、美しい顔のままだなあ。


長谷部くんは、土が本当に水を欲しがっている時に、ちゃんと水をあげられる子だ。間違っても、大雨の後に「新しく買ったジョウロを早く使いたいから」なんて理由で、水を撒いたりはしない。土の奥深くまで張った根のことまで、しっかり考えられる子だ。水がなければ野菜も花も育たないけど、水をあげすぎたら腐って枯れてしまう。そのことを、君は知っている。そんなものは当たり前の知識だ、と、恐らく君は言うんだろうが。当たり前だけど、当たり前じゃないんだって。……水をあげることだけが愛情じゃないんだと、近頃、漸く覚えたんだ。
僕は、見えない根の部分まで考えられる彼のそんなところが、人として、刀として、元彼として、友人として、いまでも好きだ。

君は、自分本位じゃないよ。
だって、距離感や関係の名前が変わっても、いまでも僕を大事にしてくれているじゃないか。

[削除][編集]

112 :へ_し_切_長_谷_部
08/28(日) 15:25

「たまには日記をつけよう」
#「絶対書かないよ!君、絶対忘れるよ!」



~数週間後~



「日記をつけ忘れていた」
#「ほらね!!!わかってたもん!!!長谷部くん、絶対書かないって思ってたもん!!!ふええ」



と光_忠が泣いていた。


俺は主命には従うが、どうもこういうところが駄目なところらしい。光_忠が泣くと、俺はなんとか宥めようと頭をずっと撫でる。こういう時にだらだらと言い訳をしたりしてしまうと逆効果だ。俺は学習する刀だ。I am クレバー。
#(さすが長谷部くん、よく分かっている……)

光_忠は最近、熱心にお料理番組を見ている。テレビで。今晩のおかずから手の込んだお菓子まで、食い入るように画面を見つめては「おいしそう」「これなら作れるかな」「材料がないな…買ってこなきゃ」「うーん、これはイマイチ。みんな好きじゃないかも」などとぶつぶつひとりごとを言っている。
俺はそれを隣で見ていて、時折口を挟む。9割がた、「それは食べたい」と。
光_忠はいつも何かしらメモをするための帳面を持っていて、それはすぐに一冊使い終えてしまうようだが、多分そのレシピもいくつも書き込まれているんだろう。時々、
#「どうしよう、あのメモどこにやったかなあ…この帳面でもないな、これも違う…」
と部屋の中をうろうろして探しまわっているのを見かける。光_忠は大抵、料理なんかは器用にこなすし、大事なものはきちんと手入れが出来る場所に仕舞っておく几帳面さは持ち合わせているが、たまに粗雑なところもある。
俺は必要最低限のモノしか持たないし、光_忠のように何かメモ書きをする癖もないので、探しものをする光_忠を横で見ていたりする。
もちろん、俺が光_忠の持ち物の場所を把握しているわけもないので、助言もできない。ヤツも俺が何の役にも立たないことを知っているので、何も聞いてこない。

駄目夫と妻のような関係だな、と思うこともある。
むしろ下手なことをすると「いいから座っててよ!」と怒られかねない。

俺は自分本位な刀だという自覚がある。
光_忠のためにできることだとか、役割だとか、光_忠が俺のそばにいることで得られるメリットだとか、そんなことを完全に度外視して、いいからいてくれなどと、随分勝手を言ってきた気がする。
それを気にしない図太さも持ちあわせていて、繊細に物事を考える光_忠に、そんな俺がどう見えるのかは…まあ想像に難くないだろう。

それでも、メモが見つからないと一人で困り果てていた光_忠が、時折俺の私室にちょっと顔だけ覗かせて「長谷部くん、」と呼びかけてくる時、俺は自分でも驚くほど察しがよく、手招きすることができる。
ヤツは子供のようにぱっと顔を輝かせて、「あのね、」と続ける。

役立っているな、と思うのはせいぜい、そんな時くらいだろうか。
それが全てではないし、光_忠に他にそんな「あのね」の先ができたとしても、全く構わないとは思うが、益体もなく文句を垂れたり、悲しいと泣いたり、たまに、あのね、うれしかったんだよと話す光_忠の顔は、スキヤキに似ている。




そうだ。
今夜は、ピザが食いたい。

#今夜はすきやき風ピザだね!いいとこ取りだよ!

[削除][編集]

111 :燭_台_切_光_忠
06/09(木) 20:01

#「なあ、光_忠。ヒトが求めているのは、耳触りのいい言葉を言ってくれたり、自分に踏み込んできてくれる奴、なんだろうか」
「え。なに、急に?」

まあ、そりゃあそうだろう。
僕だって、耳触りのいい言葉を並べられれば、それなりに気分はよくなるし、黙っていても恋文を届けてくれる子なんて、大抵の子が欲しがるはずだ。
みんな必要とされていたいし、みんな愛されていたいに決まってる。しあわせになりたくて当然だ。
けれど、……いや、だからこそ、一片の澱みもなく、打算的にならずに、うつくしい愛だけで向き合える関係なんて、たぶん、存在しないと思う。


打算とは、損得勘定で行動することらしい。じゃあ、なにからが損で、なにからが得になるんだ?自分に都合がよければ、得?自分の意に沿わなければ、損?……哲学的な話になってきてしまう。

僕は、人並みに誰かを好きになったり、恋をしたり、愛を囁いたりする。冷血漢ではない。
だけど、たまに。ふとした瞬間に、僕は、相手のことが好きなのか、相手をことを好きな自分が好きなのか、分からなくなることがある。どちらも正しくて、どちらも間違いなのかもしれない。

自分以外の誰かを通してでしか、僕は、僕に触れられない。
それが酷く虚しいと思うこともあれば、その距離感がいい防御壁になっていると思うことも。この世で一番近くて、一番遠い存在は、自分なんだろう。


ちなみに、長谷部くんを通して触れる僕は、……生意気すぎるのに、うまく言葉を話せない子どもみたいな手触りをしている。一日中、砂場で遊んでいたのか、髪を撫でると微かにジャリジャリ、と音がする。片手には錆びたスコップを持っていて、僕が「帰ろうか」と手を差し出しても、無言で首を横に振る。まだ帰らない、と。いやだ、と。
彼は背後を振り返る。その視線の先には、粗末な砂場。そこには、砂で作られた城らしきものが、ぽつん、と夕暮れのなかで鎮座している。

「ひとりで作ったのかい?」
彼は、無言で頷く。
「お友だちとは遊ばなかったの?」
また頷く。
「……僕と、遊ぶ?」
ぱあっと、彼の目が輝いた。

しかし、僕は彼とは遊んでやれないのだ。
僕は僕で、彼だから、僕は、僕の代わりに、さみしさで壊れそうな彼と遊んでくれるだろう長谷部くんを、あのとき選んだ。打算的だ。損得勘定だ。自分本位だ。


けど、それだけじゃなかったよ。

[削除][編集]

||次|1-|||

[戻る][設定][Admin]
WHOCARES.JP