日記一覧
┗89.モトカレはせべ(101-105/115)
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105 :
燭_台_切_光_忠
02/18(木) 20:30
不謹慎だと承知の上だが、僕は、事情があって離れてしまった誰かを探す看板を眺めるのが好きだ。
そこには、切ない文もあれば、鍵の提示すらない簡素な文もある。それを眺めながら――恋仲でも、友人でも、このふたりが共にあった時は、どんな時間が流れていたのかな?と、想像してみる。
看板に書かれた数行で、(勝手にではあるけれど)鮮明に想像できることもあるし、二枚にわたって綴られた文字を読んでも全く想像ができないこともある。別に、どちらに優劣があるわけじゃなく、不思議だなあ、と首を捻るだけなんだが。
そうして、なんとなく行き来するうちに、先まではあった看板が取り下げられていたりすると、探しびとが見つかったのかな、それとも、諦めてしまったのかな。なんて、他所様のことなのに、僕がハラハラしたりしてさ。
僕は、誰かを探したことがない。
探されたことはあるが、ああいう場になにかを書きつけたことはない。
たとえば、僕が長谷部くんを探すとしたら、どんな文で、どんな鍵を添えるかなあ。と、先日、彼本人にそんな話題を振った。
「僕らの鍵になることって、なんだろう?」
#「はあ?」
「どうせならさ、ちょっとしたドラマ性が欲しいよね!君の宛先は『三』から始まる、とかじゃなくて、読む側が少し切なくなるような」
#「…………何だか、悠々としていて、鼻歌が聴こえてきそうな捜索風景だな……?」
勿論、僕は彼と今でも繋がっているので、遊びで看板を立てることはしないけれど、妄想するくらいはいいじゃないか。そもそも、君を捜索するような未来は、僕も想像できないし。だから妄想なんだよ、妄想!
というわけで、僕はここで彼を探してみる。
(本人隣にいるけどね!!!)
>▼▼▼
1: 燭_台_切_光_忠
金木犀の下に、
今でも、僕はいます。
ここからでは、いま君が見ている景色がどんなものかは分からないけれど、まったく手に負えないこの子の狂い咲きはおさまっているだろうか。君が手入れしていた花壇は、今でもあのまま残っているのかな。
じょうろで花たちに水をあげる君の姿が、僕の目にはまだ焼きついている。あの寂しそうな横顔を、いま誰に見せているのか、……聞きたいような、聞きたくは、ないような。
今でも、きっちり五時半に起きているのかい。君が布団から抜け出す時、僕が何度引き留めようとしたか、きっと、この先も君は知らないままなんだろう。行かないでくれ、の一言は、言えずじまいだった。
気を抜くと、このまま朝まで語り続けてしまいそうだ。君に指摘された、僕のこのお喋りな癖は、どうにも抜けてないらしい。あれから、もう随分と眠り続けていたからかな。
さて、そろそろ本題に入ろうか。
(書き損じた痕跡)■年越しの約束を、果たしにきた。鍵は、敢えて挙げるまでもないと思うけれど、……それじゃあ、ひとつだけ。
青い花束を、
もう一度、君にあげたい。
迎えにきたよ。
>▼▼▼
しかし、いざ書くとなったら、僕はあれこれとドラマ性なんて皆無な鍵を挙げるだろうなあ。これでも彼は気づく気はするけど、……な、なんか、あれだね?!こういうのすごい恥ずかしいね?!?!!?
鼻歌混じりの捜索だな?と、長谷部くんには呆れた顔をされたが、探す必要のない相手だと分かっていても、少し胸がぎゅっとなった。
ああ、あの場の子たちは、これよりもつよく、締め付けられるような気持ちで、文を綴っていたのか。当人になってみなければ分からないことが、まだまだ世界にはたくさんある、みたいだ。
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104 :
燭_台_切_光_忠
02/11(木) 00:47
>>101 で、長谷部くんがなんだか可愛いことを綴っていたから、
「長谷部くん。僕の名前を呼んで、答えて貰えないかもしれないことが怖いなら、――今すぐこの腕に飛び込んでおいで。クレバーに抱い、」
って両腕を広げたんだけど、言い終わる前に「はあ?」って顔をして立ち去られたよね。クレバーに抱きたかった、抱きたかった!抱きたかった!イエス!きみを〜!
なに?なんで?あれは虚実混合の虚だった?あれ?虚を混ぜるところってそこだったかなあ?って疑問符がたくさん浮かんでる。しょんぼりだよ。
そういえば、落差の激しいページを見た長谷部くんが、
#「このページのお前は、珍しく八頭身だな」
と言っていた。
僕はいつでも八頭身だよ?!なに言ってるのさ?!ミニサイズの二頭身に見えてた?!あっ、でも、それならそれで、君の戦装束のポケットに詰め込まれて、毎日一緒にいられるよね。長谷部くんの恋人、みたいな。
君のためなら、二頭身にもなろう。
ところで、君の戦装束にポケットはあるのかな。なさそうだよね。計画失敗だ!
>▼▼▼
#「少々病んでる奴が好みなんだよなぁ、実は」
と、鶴_丸さんが突然言い出した。
え?あなたの恋人の三_日_月さん、病んでたっけ?なんて考えていたら、
#「おい、光_忠。ちょっと病んでみてくれ」
「相変わらず、無茶ぶり激しいね?!」
僕は頭はおかしいかもしれないけど、病み気質はないんだけどなあ。病んでる……、病んでるってなんだ…?監禁とか?君の瞳には僕だけが映ればいいとか?
「んんっ。ふふ、鶴さんったら。こんなところにいたんだ?あなたは目を離すと、すぐに何処かに行っちゃうからなあ、……首輪をつけて、檻に閉じ込めておかないと」
#「別に構わんが、なあ、そこはWi-Fi……ってやつはあるか?」
「は、はあ?あるわけないでしょ、地下牢だよ?!地下牢!監禁されるんだよ、鶴さんは!」
#「Wi-Fiがないなら断る!狩りができねぇだろうが!」
……ああ、このひと。病んでる子が好きというか、病んでる子でも気にならないだけなんだな……。この人と付き合ったら、病み具合も矯正されそうだ。いいんだか、悪いんだか。というか、病んでるの鶴_丸さんのほうじゃない???
>▼▼▼
好みのタイプと、付き合うタイプは、また別なのかもしれないという話を、先日、一_期くんとしていた。長谷部くんに「こんな話をしたんだよ」と、話している時のこと。
#「お前の好みのタイプは?どんなのなんだ」
「え、頭のいい子かなあ。理知的な子?」
#「(僕を指差す)」
「??」
#「間違えた、こうだ(自分を指差す)」
「指差す咆哮間違えるとかある?!」
#「咆哮」
「方向……!!僕も間違えました……」
#「頭の悪そうな会話だな?!」
で、でもでも、長谷部くんは僕が好きになったんだから、頭がいいはずだよ!たぶん!た、たぶん……。
しかし、結局、僕の言う「頭のいい」は、相手を尊敬できるか否かの話なんだと、自分では思っている。この人からなにか学びたいな、学ばせてもらっているな、と身体全体で思わせてくれるような子は、元の頭の出来がどうあれ、ものすごーく頭がよく見えるから。
けれど、心の底からそんなふうに思える子には、なかなか出会えやしない。ましてや、人付き合いが苦手な僕だ。
だから、面白くて、だから、難しいんだろうな。人と向き合ったり、人に心をひらくことは。
長谷部くん相手でも、未だに、難しいと感じる。
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103 :
燭_台_切_光_忠
02/10(水) 22:44
その気配を察するたび、僕は気づかれないように後ずさりする。
誰でもいいから甘えたい、誰でもいいから聞いて欲しい、誰でもいいからこの寂しさを受け止めて今すぐ今ここで一秒でも早く!そういう、大してよくも知らない誰かの声にならない叫びを、あるいは、耳に馴染んでなにを思うこともなくなった声を聞きながら、じゃあ僕が同じことを叫んだら君は手を差し出してくれるのかな?と、意地悪な問いを投げたくなる。
聞かなくても答えは分かるから、聞かない。僕は、そんなことを思う日もこないだろう、と自分で分かってもいるから、聞かない。ばかだなあ生きづらいなあ、と笑う声は、聞かないふり。
しかし、そうやって叫んでいる子と話すことが、僕はそんなに嫌いじゃない。たまになら、という前提があるが。
今なにを考えているのか、一目見ただけで分かる子というのは、それなりに安心する。僕はこの子と違い激情を上手く隠せているな、というくだらない優越感と、僕の一言でこの子は泣いたり怒ったり喜んだり暴れ出したりするんだろうな、という相手の心臓を握っている錯覚。汚すぎるふたつのものに挟まれた僕は、唐突に自己嫌悪に苛まれ、僕よりこの子のほうがよほど真っ当だ、と頭を垂れて恭しく傅く。
主従逆転の危機は、どこにでもある。またすぐに、僕が主になる機会もあるだろう。
むき出しの、生の感情をぶつけられると、まったく関わりのない僕の心までがくがくと揺さぶられる時がある。きらい!すき!きらい!すき!きらい!おまえなんかだいきらいだ!いますぐだいてくれ!あいしてる!繰り返される言葉の羅列は、排泄器官に無理やりねじ込まれた性器みたいで、技巧もなにもない腰使いが止むまで、僕はカエルみたいに鳴き続けている。
スポイルされた感情を「吐き捨てる」と言う子がよくいるけれど「誰かに吐き捨てたかっただけなんだ」と儚げに微笑まれたところで「おまえは公衆便所だな」と言われてるようにしか聞こえないよ。出来る限りきちんと受け止めてあげたい、と、僕は思っていたのに。この裏切られたような心地は、君に「吐き捨てて」いい?
雑に扱われてぞくぞくするのは、僕が誰かを雑に扱っても「君だってそうじゃないか」と、いつでも責められるように、なのかもしれない。望む予防線が張れて、うれしくて、下着のなかで折り目正しくしていた僕のものは、いつの間にか半勃ちになる。
そうやって、雑に扱われたことの証として、心にぐっさりと差し込まれた刃は、止血の役割も果たしているんじゃないだろうか。無理に抜いてしまえば、その拍子にぱきっと折れて、そのまま、僕は出血多量で死んでしまうんだろう。
仕方ないから、痛いけど、このままでいい。
僕がここに立っている感覚なんて、風ひとつで吹き飛んでしまうぐらい、ちっぽけで頼りなくて、だから、ねえ、と、僕に安心感をもたらす不安定さをねだっても、決して頷いてくれない君は綺麗だ。
「そんなものはよくない」
だってさ。
怒ったり、悲しんだり、して欲しかった。
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102 :
燭_台_切_光_忠
02/10(水) 04:02
水曜日の午後。乱くんが細い両腕に収まりきらないほど抱えてきた手紙は、すべて僕宛てだったらしい。
僕が遠征に行っているうちに、
僕が刀を振るっている最中に、
僕が布団に包まっている時に、
いつの間にか届いていた手紙たちを畳へと雑にばら撒いて「暇だったら、ボクの髪をくるくるして?」と、乱くんは言った。
時々強請られる「くるくる」は、彼の髪を、彼の持ち物であるカールアイロンで挟んで、彼の髪を、彼の持ち物であるカールアイロンで挟んで、彼の髪を、彼の持ち物であるのに僕の部屋に年中置き去りにされているカールアイロンで挟んで、できあがる。
いつもと同じように、彼の髪を、彼の持ち物であるカールアイロンで挟んで「くるくる」を作ってあげている途中、すごい量だね、と、手持ち無沙汰なので言ってみましたという調子で乱くんが手紙を指差す。
僕は、彼の指が手紙の束を向いているにも関わらず「なんのこと?」とできるだけ自然に首を傾ぐ。よし、うまくできた。「もーっ、手紙のこと!」と望んでいた通りの言葉が返ってきたことに安心して、ようやく「ああ」と白々しく明るく頷いた。
この手紙を出した子たちは、僕のどこがよくて、どこに惹かれて、どこに価値を見出して、筆を執ってくれたんだろう。見覚えのある名前もあれば、まったく覚えのない筆跡もある。流行りの色の便箋は、束のなかに五つもあった。
手紙の束は、別に僕に安心感を連れてきやしない。だからといって、不安も運んでこない。返事を出せば、またいつの間にか返事がくる。届かない手紙に息苦しくなることもあれば、こうして束と化したそれを見ると今すぐ破り捨てたくもなる。
時折、平衡感覚がおかしくなる。
僕は真っ平らな地面に立っていて、そこには石ひとつすら落ちていないのに、あ、と声に出す間もなく逆さまの視界が現れる。それはすぐに反転して、僕は転げ落ちているのだと知る。いつも、後から知る。
今日の平らな下り坂は、そう距離はなかったらしく、乱くんのちいさな悲鳴で僕は無事帰還した。
見ると、肉付きの薄い彼の首にカールアイロンが当たった痕がある。あついよお、もお、と不満と怯え混じりの声に興奮しないだけ、まだ僕にも分別はあるみたいだ。いや、逆にないのかもしれない。興奮するべきところか、ここは。
ごめんね、気をつけるよ、と謝ってから、後で氷で冷やさないとね、とも付け足す。自分でも驚くほど慈愛に満ちた声だった。
さて。「くるくる」ができあがるまで、僕の恋人の話でもしようか。
僕の恋人はさ、とても理不尽で、恐ろしいんだ。
ある時は「なんとなく腹が立つんだよね」なんて馬鹿げた理由で、お腹いっぱいの僕のうえに跨って、腹を、胸を、腕を。僕を構成する部品が飛んでいって、そのまま、永遠に見つからなくなっちゃうんじゃないかというぐらい、殴り続ける。
またある時は「今日は君の顔を見たくなかった」という大義名分にもならない大義名分のもとに、旋毛から襟足まで加減もなしに掴まれる。たらいに貯めた水のなかに顔を押しつけられて、僕は静かに溺死寸前までの時間を数えだす。がぼがぼもがきながら、冷静に、確実に。いち、に。いつも記憶はひゃくよんびょうでとぎれて、
すべての理不尽が終わった後に見る、鏡に映る僕の恋人は、自分が大好きで、大好きで、仕方がないと言いたげな顔をしている。僕はどうしてこんな子が好きなんだろう、と、あれ、これは何百年前から思っていたんだっけ。
平衡感覚を失いかけている時、僕は、もうずっと見てきた鏡のなかの恋人に会いたくて、会って、妄想のなかでみたいにボロ雑巾のように扱われたくて、僕は君がきらいだよと告げたくて告げられたくて、けれど、それは叶わないから、もう煮立ってしまった味噌汁の鍋の前で、そっと息を止めるしかできない。視界がぼやけて、
ちいさな悲鳴が、また聞こえた。
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101 :
へ_し_切_長_谷_部
02/08(月) 18:31
101回目のナントカカントカッ!!
また!あげてる!
あげちゃ駄目って何度も以下略!僕は折れましぇん!
>TTT
昔々の話、俺は相手に従順でいることが美徳であると信じてやまなかった。元主が好いたのはそんなモノではなかったというのに、今考えても不思議でならない。
俺が主命に従いたいと思うのは、その名残なのかもな。
「長谷部はどこに行きたい?」
そう俺に問いかける声は優しく気遣いに満ちていた。旅行の話だった。
どこでもいい。
俺はそう答えた。なぜなら、それが最良の答えだと思っていたからだ。相手の意思を尊重し、相手の言うことに逆らわず、相手の思うままの都合の良い存在でいること。
それこそが、究極の存在ではないか。
思えば俺は今も昔も、間違えてばかりいる。
結局声の主は俺に対して冷たく怒りをぶつけた。
なぜ考えてくれないんだ。行きたくないのなら、別に行かなくたっていいんだぞ。
俺はきょとんとして幾度か瞬いた。相手に何を言われたのか理解できなかった。だが、相手が酷く俺に落胆し、怒りを覚えているのだということだけはよく伝わった。
やがて、俺が自らの意思を示したり、何かを考えたりすることが酷く苦手だっただけなのだ、ということに気づくのは、もっと先の話だ。
当座、俺はうんうんと頭を捻り、謝罪をして、五_条を歩きたい、と伝えた。相手の溜飲はそれで下りたらしい。
従っていたい、というのは意思に入らないらしい。
いつだったか、光_忠にものをやりたいと思った。行きたいところもたくさんあった。
意思は何から生まれてくるものだろう、と思う。
やはり欲望だろうか。
光_忠も、俺にあれがしたいこれがしたいと、何かと言ってくる。
封を開けていない手紙を拾い上げて、なぜ読まない?返さないのか?と問いかけた。
#「手紙を持ってみると、中身までわかってしまうようなんだよ」
光_忠は不思議なことを言った。俺には、簡易な和紙が折りたたまれただけの手紙を見てみても、どんな人物がどんな想いでそれを綴ったのか、さっぱりわかりはしない。
そういえば、俺が初めて光_忠に渡した手紙も、こんな粗雑さだった。
お前はアレは読んだじゃないか、何の気なしに言ってしまった。
#「うん、……あんなの君くらいなものだ」
こういう時の光_忠は、俺のことを見ていない。無理に振り向かせようとも思わない。部屋に日差しは入って来ず、暗かった。灯りを入れなければならない。
何も言わずに席を立った。
今、奴の名を呼んでも、答えて貰えないのが、柄にも無く怖かった。
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101 :
へ_し_切_長_谷_部
02/08(月) 18:31
101回目のナントカカントカッ!!
また!あげてる!
あげちゃ駄目って何度も以下略!僕は折れましぇん!
>TTT
昔々の話、俺は相手に従順でいることが美徳であると信じてやまなかった。元主が好いたのはそんなモノではなかったというのに、今考えても不思議でならない。
俺が主命に従いたいと思うのは、その名残なのかもな。
「長谷部はどこに行きたい?」
そう俺に問いかける声は優しく気遣いに満ちていた。旅行の話だった。
どこでもいい。
俺はそう答えた。なぜなら、それが最良の答えだと思っていたからだ。相手の意思を尊重し、相手の言うことに逆らわず、相手の思うままの都合の良い存在でいること。
それこそが、究極の存在ではないか。
思えば俺は今も昔も、間違えてばかりいる。
結局声の主は俺に対して冷たく怒りをぶつけた。
なぜ考えてくれないんだ。行きたくないのなら、別に行かなくたっていいんだぞ。
俺はきょとんとして幾度か瞬いた。相手に何を言われたのか理解できなかった。だが、相手が酷く俺に落胆し、怒りを覚えているのだということだけはよく伝わった。
やがて、俺が自らの意思を示したり、何かを考えたりすることが酷く苦手だっただけなのだ、ということに気づくのは、もっと先の話だ。
当座、俺はうんうんと頭を捻り、謝罪をして、五_条を歩きたい、と伝えた。相手の溜飲はそれで下りたらしい。
従っていたい、というのは意思に入らないらしい。
いつだったか、光_忠にものをやりたいと思った。行きたいところもたくさんあった。
意思は何から生まれてくるものだろう、と思う。
やはり欲望だろうか。
光_忠も、俺にあれがしたいこれがしたいと、何かと言ってくる。
封を開けていない手紙を拾い上げて、なぜ読まない?返さないのか?と問いかけた。
#「手紙を持ってみると、中身までわかってしまうようなんだよ」
光_忠は不思議なことを言った。俺には、簡易な和紙が折りたたまれただけの手紙を見てみても、どんな人物がどんな想いでそれを綴ったのか、さっぱりわかりはしない。
そういえば、俺が初めて光_忠に渡した手紙も、こんな粗雑さだった。
お前はアレは読んだじゃないか、何の気なしに言ってしまった。
#「うん、……あんなの君くらいなものだ」
こういう時の光_忠は、俺のことを見ていない。無理に振り向かせようとも思わない。部屋に日差しは入って来ず、暗かった。灯りを入れなければならない。
何も言わずに席を立った。
今、奴の名を呼んでも、答えて貰えないのが、柄にも無く怖かった。