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┗Aについて。(132-141/141)

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141 :跡部景吾
2012/07/30 01:28

雑音から個性を探すが、惹かれる声は多くねえ。

お前は強烈だった。
初めて見た時の余所行きの顔も、既に「その他大勢」ではなかった。
真一文字に結ばれた唇が、何よりも印象的だったと思う。
媚びが一切ない代わりに、野良猫が向けてくるような僅かな警戒がある。
踏み込み方を間違えれば、足跡さえ残さず一目散に逃げ出しちまいそうな。
恐らくは、女がダイエットフードを買うような気持ちで、騙されてみたいと思った。

雑音を聴く機会が随分と減った。
代わりにお前が隣にいる。

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140 :跡部景吾
2012/05/20 05:48

明け方の、身動ぐ気配を愛しいと感じたのは、多分お前が初めてだった。
多分。そう、多分だ。
テメエ自身の感覚にすら確証が持てねえほど、人の記憶ってヤツは曖昧で嘘をつく。
思い出は不自然に装飾され、生々しい記憶ほど改竄されていく。
寝化粧を施す女のように胡散臭く。

だが、それでも分かる。
経験を経た今だからこそ分かる。
決して変わらねえ事は、確かにあるんだと。

二年前、大人びたと感じた輪郭は、ここにきて妙に幼い。
信頼する為に膨大な時間が必要な人間もいるのだと眉尻を垂れたお前は、四年前より繊細に見えた。
日吉、お前のフィルターも、今はもう青臭い熱情に曇っちゃいねえ筈だ。
お前のその目に、俺はどう映ってる?

色々あったよな。
それでもこの四年間、お前は俺の目を逸らさなかった。

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139 :跡部景吾
2010/06/14 22:32

日吉、お前は本当に泣き虫だな。

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138 :跡部景吾
2010/06/04 22:32

四時間目の特別教室は窓際の席が割り与えられて、丁度そこからグラウンドが見えた。
日吉のクラスだ。…いや、日吉がいたから本人のクラスだと解っただけなんだが。
探そうと思ってジロジロ見てたわけじゃねえのに、あの人数から偶然日吉を見付けた俺の視力は変態的と言えるな。

…ちなみに、俺がこの偶然を経験するのは二度目だ。
前回も季節は春。俺は蛙の腹を割きながら、斜め上の世界からアイツの頭を見下ろしていた。
当時、短距離走で活躍していたアイツが、今はサッカーボールを追って走っている。
転べ、と呪いをかけてみたが、見事にバックパスを決める日吉は相も変わらず表情が薄い。
本当に生意気な野郎だな。昔も今も。

一昨年の5月。
恋人という肩書きに慣れずにいた俺は、2年F組(確かF組だった筈)な日吉の横顔を見て、ひたすらにリアリティがないと感じた。
二人きりの時とも部活の時とも違うアイツの様子は新鮮で、どこか奇妙ですらあった。

だが、今はそう感じない。
重ねた時間の中で幾度となく知った余所行きなアイツの声、表情、その全てを孕んだ存在を恋人として認識している。
当然の話だが、俺達は確かに、恐ろしく具体的に変化しているらしい。
日吉の影響で俺の語彙は変化し、俺の言葉に日吉はあまり動揺しなくなった。
ガキの頃の笑い方を思い出した後、溺れずに済むキスの仕方を二人で覚えた。
それから、

…チャイムに思考のすべてを遮断される。
窓側を振り返るが、日吉の頭は生徒の山に紛れ込み、どこにいるかもう分からない。
鳴り終えたチャイムの残響を聞きながら、永遠とはイコールで終焉なのだと不意に考える。
フラスコとピペットを棚に片付けた後、もう一度だけそこから校庭を見下ろしたが、やはり日吉はもうどこにもいなかった。

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137 :跡部景吾
2010/06/03 13:24

幸福を感じる瞬間が昔よりも確実に増えた。
触れれば触れた分だけ、そこの感度が上がるように、繰り返される日常を愛しく思う。
つまりは、愛しい、と思う感性の感度が上がっている。
こう表現するのは無粋だろうか。

些細な話だ。
こうして生徒会の窓から校庭を見下ろす時は、それをキャンバスにして日吉の背中を風景の中に描いてみたりする。
些細な、本当に些細な記憶の欠片が、視線の先に相手を作り上げていく。
大抵の場合、記憶の中にいる相手は、俺を抱き締めるでもなく甘い言葉を囁くでもない。
季節に焼き付いたフィルムとして、ただそこに在るだけだ。
だが、それが他愛も無い思い出だとしても、思い出にも至らない日常の記憶だったとしても。
俺にはどうしようもなく愛しく感じられる。

突き詰めれば、俺はきっと日吉が存在しているだけでいいんだろう。
こんな病的な思考も、繰り返すなら普遍的な日常で、俺の脳味噌はその生活に染まりきっている。
笑っちまう程に危ういな。本当に困ったモンだ。
そんな事を考えながら、コーヒーカップに浅く残るそれを一気に飲み干す。
…昼休みはもう終わりか。


日吉。
俺はこんなにも幸せで、悩む事と言えば、お前をどうしたらこれ以上幸せに出来るかっつうような事ぐらいなんだよ。

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136 :跡部景吾
2010/06/01 22:36

六月から古武術の稽古が忙しくなると話していた日吉は、案の定帰りが遅い。
部活後、部室を出る時に『お疲れ様です』と愛想のない挨拶を聞いたきりだ。
他人の目をした横顔を見て相手とのセックスを連想した俺の思考回路は、本当に救いようがない。
毎度の事ながら、余所行きな態度ほどそそられるモンはねえな。
俺に組み敷かれる日吉を、部員はきっと誰一人として知らない。それが堪らなくいい。


『アンタは忘れてるでしょうが、今日は遅くなるんで勝手に飯を食っといてください』

メールが届いたのはマンションの玄関で靴を脱いでる最中だった。

「お前も忘れてるだろうが、今日はセックスするからな」
『何なんですか、突然。日本語が崩壊してるんですけど』
「帰りが遅いんだろ?だったら風呂はいらねえな。制服姿でベッドまで来い」
『…あれこれと人の予定を勝手に決められても困るんですが』
「嫌なのか?」


返事はなかった。21時の今になっても、専用の着信音はリビングに鳴り響かない。
…後1時間もすれば帰ってくるだろうか。当時聞いていた帰宅予定時間は確か22時だった筈だ。

外の匂いを身に纏ったまま、何なんですかあのメール、とでも言うだろうか。
俺のいない数時間の間に、何度かその内容を思い出す事があっただろうか。
きっと日吉はこのマンションではなく、実家でシャワーを浴びてから帰ってくる。
疲れているんで、などと言う癖に、抱き締めれば洗い髪の匂いがするだろう。
それを思うと欲情する。…本当に救いようがない。

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135 :跡部景吾
2010/05/30 20:14

あの夜も雨が降っていた。
澄ました顔のお前が、それ故の猛攻なのかと目を細めた事を覚えている。
その唇を俺のすべてで買うと言い出した俺に、お前は呆れて肩を竦めた。
いや、きっと、呆れた振りをしていた。
雨音が過ちの理由になりそうで、あの日は何故か思考より早く唇が動いていた。
あの時のお前はもう、俺の沸点を知っていたに違いない。
我ながらキザな台詞だと冗談めかすと、お前もそれに同意して溜め息を吐いた。
ああ本当にアンタは安い男だなと。


人の欲望なんざ本当に際限ないモンだ。
三年目の俺は、お前のすべてを俺で買いたい。

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134 :跡部景吾
2010/05/18 02:21

久々に実家で過ごしている。

名も知らぬ使用人の挨拶を背に受けながら階段を上ると、最後の段を踏んだ先に見覚えのない油絵の風景画が飾ってあった。
両親の前で優等生を気取った後、自室の扉を開ける。
生活感のない風景。棚に並んだ本の匂いだけが僅かに鼻腔を擽る。
確かに、確かに時間は流れているのだと感じた。

思えばこの二年間、日が空く事もなく当然のように日吉と暮らしている。
時々こうしてマンションを空けると、その生活に違和感すら覚える程だ。
ここで生活していた事をぼんやりと思い出す。
アイツの欠けた夜を、読書で、あるいはラケットを振る事で潰していたわけか。
俺はその日常を、この部屋の扉の内側に置き去りにしちまってたんだな。
それを思うと何故だか笑えた。
それから日吉の事を何度も考えた。

思い返すと、日記を手紙代わりにする習慣を忘れ始めたのは、この家を出たばかりの頃だった気がする。
不完全ながらも時間の拘束から逃れて、喉奥に詰まる言葉をペンに託す必要がなくなったからか。
握ったそれの感触が、今この瞬間も記憶を蘇らせてくる。
…なんだかな。たかが一日二日留守にするだけで、伝えられねえ言葉を残そうとする俺も随分なモンだ。
あの頃と変わらず、俺はお前に焦がれている。

『飽きる飽きないの存在じゃない』

今も当時の台詞は有効だぜ、日吉。



確かに一人で過ごす夜は快適だ。
何もかもが物足りない程にな。

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133 :跡部景吾
2010/05/08 00:50

雨がBGMのベッドで。フェンス越しに見た制服姿。コーヒーではなくカフェオレを選んだ時。
部誌に記入される名前の筆跡。意味のない嘘にいちいち引っ掛かること。伸びた前髪。
生徒会室でのキス。小説の上に置かれた眼鏡。廊下でシャワーの音を聞く時。風邪で僅かに掠れた声。

お前が傍にいる時は、言葉や表情を透かした先に。いない時は、季節や風景に。
通り雨のように些細な出来事の中に、過去のお前を見ている。

この話をすると昔の方が良かったんじゃないのかと、お前は睨んでくるが。
冗談なのか、本気で俺を試してるのか。どっちなんだか知らねえし、別にどっちでもいいけどよ。
その顔も、否定した後の顔も、俺からしてみりゃ最高に可愛いなと思うぐらいで。
疑うなら証明してやる。足りないなら時間で示してもいい。それでも納得出来ないなら、過去を忘れる努力でもしようか?
……最後のそれは無理だろうとお前から突っ込まれそうだな。まあ当たってるが。


傍にいろよ。昔も今も、それ以外何も望んじゃいねえ。
僅かに大人びたお前の輪郭を、俺は何より愛しく思ってる。
今日も好きだぜ、日吉。きっと明日も、明後日も。

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132 :跡部景吾
2010/03/01 00:30

日吉は昨日今日と古武術の試合だったらしい。
帰って来た時の妙に険しい表情を見て、負けたか、と声を掛けた俺は恋人として終わってるような気がした。
それに気付いたのは、アイツが無言で俺を睨んだ後だったが。
その頭を乱暴に撫で回すと、うるさい、と呟いた後、ばつが悪そうに視線を逸らした。
まだ何も言ってねえだろ、日吉。

だが実際は、残念だった試合結果よりも、古武術関係のお偉方や、その家族やらの接客が相当に疲れたらしい。
父親が師範ってだけで結構な猫被りが必要だったと、結構な間、日吉はぼやいていた。
そういやコイツ、対人関係に弱かったんだなと、極めて他人事のように思う。
疲れた面倒だったと心底ダルそうに語る日吉の顔を見ると、安堵にも似た愛しさが込み上げてきた。
毒を帯びた言葉の端々に、何の遠慮もない事が分かる。

『アンタ、なに笑ってるんですか』

お前が俺の恋人だからだよ。





†  †  †  †

っつう日記を書いてる最中、ウナギな告知に気付いてビビッた。
生きている内に一度は話してみたい相手現在首位の相手だったんで、対人戦向きの人間を派遣。
人生二度目の集会は予想通りに溺れたが、ツラを拝んでその声が聞けただけで満足した。
質の良い音楽を聞いたような気分だ。

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