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┗283.短編小説のコーナー(1-20/207)
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1 :迅
2022/06/13(月) 07:31:35
ども、迅です
本スレッドは、皆様が考案した短編小説を投稿する物となっております。「これを読んで欲しい!でもスレ立てるのもなぁ……」って人は、是非とも活用してください
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2 :やっきー
2022/06/20(月) 16:15:31
ねえ、認めてよ。
ねえ、なんで?
ボクがいくら問いかけても、柵の向こうの奴らは、ボクの声を無視する。
短い手足も、太い首や体も、ボクの個性じゃないか。確かに君たちとは違うかもしれない。でも、だけど、これがボクなんだ。
ねえ、認めてよ。
ねえ、なんで?
答えてよ。ねえ。ねえ! ねえ!!
ボクを柵の中に閉じ込めて、何がしたいの?
ううん、本当はわかってる。彼等が何を望んでいるのか。
ボクと同じように閉じ込められた仲間は、欲だけで動いている彼等に連れていかれてしまった。
嗚呼、ボクの番が来たようだ。彼等の仲間が、|足枷《あしかせ》と首輪を持って、ボクに近付く。
もがいてもがいて。でもそいつは、ボクの動きを無理矢理封じる。
ボクは最後の足掻きで、こう叫んだ。
「出荷しないでええええ! プギイイイイイイ!」
※この物語はフィクションです。
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3 :やっきー
2022/06/20(月) 16:23:38
※カキコにも載せたことがあるものです。
ねえねえ、ぼくたち綺麗でしょ?
ふわふわな衣に鮮やかな赤。きらきらの水によく映える。
ねえねえ、わたしたちかわいいでしょ?
小さなガラスに閉じ込められて、小さくて弱くて。まるでただの鑑賞物。
ねえねえ、ぼくたち綺麗でしょ?
なのに水は汚れてる。酸素をちょうだいご飯をちょうだい。
ねえねえ、わたしたちかわいいでしょ?
なのにどうしてこっち見ないの? あなたが連れてきたんでしょ?
ねえねえ、ぼくたち綺麗でしょ?
君たちとは違う儚い命。もっと大事にしてよ、ねえ。
ねえねえ、わたしたちかわいいでしょ?
動かなくなっても水槽の底に沈んでも。
ねえねえ、ぼくたち綺麗でしょ?
ぼくたちこのあとどうなるの? 箱の外を見たかった。
ねえねえ、わたしたちかわいいでしょ?
ふたりでゆらゆら。ふたりでひらひら。
ねえねえ、ぼく綺麗でしょ?
沢山いたのに一人になった。
ごめんね、君を残してもういくね。
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4 :やっきー
2022/06/20(月) 16:29:56
おれはずっと前から、『奴』の存在を知っていた。
だけど、見ないふりをしていた。だって、見たくないのだから。
そうやって、限界まで、今日まで、『奴』を無視して生きてきた。
そして今日、『奴ら』はおれたちの前に現れた。おれたちの人数分、『奴ら』はいた。
これは罰だ。怠惰の限りを尽くした、おれへの。
『奴』の存在。襲ってくる時間。現れる場所。おれはその全てを知っていたのに、それらを無視した。
なんの準備もしないまま、なんの備えもしないまま。
あるものは勇敢に戦い、あるものは戦いを放棄し。おれも、戦わなければならない。
わかったよ。もう、逃げない。
いや、この感情は、『諦め』に近いだろうか。
なんでもいい。とにかく戦おう。剣よりも強いこの武器を手に取って。
おれは『奴』を睨みつけた。『奴』はピクリとも動かない。ただおれを嘲り笑うかのように、そこにいるだけだ。
おれは『奴』に向かって、武器を突き立てた。やや丸みを帯びたその武器は、『奴』の体を貫通することは無い。
そのまま滑らかに武器を動かす。『奴』は動かない。ただそこにいるだけなのに、おれは押しつぶされそうなプレッシャーを感じる。
小一時間ほど、おれは休むことなく戦った。やがて『奴』は、『奴ら』のボスにより撤退させられた。
終わったのだ。勝利も敗北もない、ただお互いの意思をぶつけ合うだけの、無駄な戦いは。
おれは歓喜のあまり、腹の底から叫んだ。
「ぃよおおおおっしゃぁぁああああああ!!!!!! テスト終わったあぁぁぁあああああ!!!!!!」
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5 :迅
2022/06/21(火) 20:24:48
短編、書けるかもしれねぇ
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6 :ラピスラズリ
2022/06/28(火) 21:44:39
短編載せたいんだけど、文字数制限とかありますかねこれ。私いつも4000文字行かないか行くかくらいで書くんですけれど。
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7 :げらっち
2022/06/28(火) 21:45:51
わからん~
5レス程度でも短編とは言えるし。
ゲラフィは1レス最大2000文字だから、5レスだと10000文字くらいだ。
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8 :げらっち
2022/06/29(水) 01:21:43
━━━この仕事に、やさしさはいらない。
プロローグ
逢う魔が時。城は今にも攻め落とされそうだった。
王城九代目当主、王城四郎今直(おうじょうしろういますぐ)は、天守にて、忠臣の報告を受けていた。
「殿、これで終りで御座います。敵ながら見事な山彦の術に、してやられましたなぁ。」
忍者隊の頭でもある吉良(きら)という部下は、まるで他人事のようにニヤリと笑った。
主殿も確実に包囲を狭められていた。火矢が射られる、ドカドカという不気味な音。
「終り?我には終りという言葉は存在しない。」
今直は黄金の小刀を手にし、畳の上に胡坐をかいた。
「王城に伝わる家宝、“転生ちゃん”じゃ。これでハラキリした者は、五百年後に再び生を受けるという。二千二十二年になったら、おぬしの子孫が転生したわしを見つけ出し、再び仕えるのじゃ。」
「いいでしょう。」と吉良。「では殿、王城四郎今直様、お別れの時ですな。」
今直は自身の腹に短刀を突き刺した。直後、介錯を受け、彼は絶命した。
500年後。
俺は、吉良生間(きらせいかん)。
たまに自分の年齢をド忘れするアホがいるけど、俺は違う。俺の年齢は簡単に覚えられる。
今は2022年。
俺は22歳の新社会人。
どうだ、覚えやすいだろう。
俺が今日から務めるのは、ここ。寛風園(かんふうえん)という知的障害者入所施設だ。
関東郊外にあって、40余名の障害を持った人たちが暮らしている。
俺は事務所で挨拶をした後、居住スペースに通された。
そこに住むのは重度の知的障害がある人たち、暴れることもあるからだろう、重い鉄扉は厳重に施錠されている。先輩職員がその扉を内側から開けてくれた。
さて第一印象が大事だ。
俺は入室と同時に、その場に居る全員に届くような大きな声を出した。
「今日から支援員として勤めさせていただきます、吉良と申し――」
だが次の瞬間、俺の頭は真っ白になり、言葉が霧散してしまった。視覚と聴覚と嗅覚が同時に刺激され情報過多になった。
想像以上だった。いや、俺は元々何を想像していたのだろう。そんなことも忘れてしまった。
異形の人々が奇声を上げて歩き回り、ソファや床で捻じれ合い、棚の上で寝そべっていた。壁に頭を打ち付ける者もいれば、素っ裸の者もいた。
外の世界とはまるで違う。俺は何か間違った場所に来てしまった。決して来てはいけないところに。一度来たら、後戻りできないところに。
そしておぞましい悪臭が鼻を貫いた。ここはトイレだったのだろうか。違う筈だが。
目の前の床に排泄物が落ちていた。犬の糞ではない、ヒトのウンチ。
俺は退職を意識した。
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9 :げらっち
2022/06/29(水) 01:25:25
俺は職員室に通された。
ここは居住スペースの中で唯一の安全地帯に違いない。職員たちが滞在し、リビングに通ずる大きな窓と、無数の監視カメラで、利用者たちの所在を確認している。
先程の糞便はというと、職員の1人が片付けに向かった。あの程度なら、いつものことというように。
俺はようやく気を取り直し、自己紹介を済ませた。2人の先輩職員が俺を出迎えた。
「よろしくお願いします。佐水(さみず)と申します……。吉良くん、資格は持ってないんですかね……?この業界でやっていくには、資格が重要ですよ……ゼッタイ。」
中年男性の佐水職員は、小柄で線が細く、なんだか女々しい。喋り方もどこか毒をはらんでいる。オツボネ様みたいなもんだろうか。俺はなよなよした奴が嫌いだが、先輩相手なので一応頭を下げておく。
「まぁた、佐水さんは新人いびりですか?私は川口(かわぐち)です。よろしくねぇ。吉良さん、若いのにこの仕事しようって思うだけで偉いヨ。」
川口職員は大柄で髭もじゃ、眼鏡を掛けていて濃い顔だ。だが発声は明瞭で、動きも機敏。若々しい。
「よろしくお願いします!全くの未経験ですので、色々教えて下さい!」
「すばらしい心がけですね!もちろんですヨ!即戦力です!」と川口職員。佐水職員は「コラコラ……ちがうでしょ。しばらくは見学。」と言い、キャスター付きの椅子に座ってデスクワークを始めた。
川口職員が俺にわざとらしく、ひそひそと話し掛けた。
「大丈夫でしたか?はじめたばかりは吐き気を催す人も多いんです!私も最初は毎日えずいてましたヨ!」
川口職員の話によると、環境に耐えられず、すぐにやめてしまう職員も多くいるらしい。
だが俺はきっぱりと言った。
「俺にはやるべきことがありますから。」
川口職員はうんうんと頷いた。
「すばらしい。じゃあまずは基本的なことから。ここには知的障害のある方々が、44名入所されています。男女は別のスペースで暮らしていて、私たちが受け持つのは男性21名です。障害の程度は割と幅広いです。」
川口職員は窓の向こうを指さし、障害特性について語り出した。
「すごいですヨ。」
動物園というよりは水族館のようだ。ガラスの向こうで、不思議なカタチの魚たちが回遊している。
リビングには大きなソファがあり、そこに5名の入居者が座っていた。皆そこそこ年のようだが、小柄で、胡坐をかいて、共鳴するように、ゆさゆさと体を前後に揺らしている。あれはダウン症。
部屋の中をうろうろと行ったり来たりしている入居者も数名(川口職員曰く、本来はうろうろという表現はふさわしくないとの事)、急に叫んだり、椅子をガタンと倒したり、服を脱いだり、何かを思いついたように走って居室に行ってしまう。あれは自閉症。
何かと覚えることが多い。
「寛風園では、シフト制により24時間体制で入居者さんを見ています。食事介助や入浴介助、夜間見守りが主な業務です。入居者さんたちは自由奔放で楽しいことばかりですヨ。」
川口職員はニコニコと話していたが、目は笑っていなかった。
この人は俺を試すつもりだ。相当の手練れだ。
だが、どうであれ俺の目的は1つだ。
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10 :げらっち
2022/06/29(水) 02:11:48
俺は居住スペースを見て回った。
入居者さんに挨拶巡りをすると見せかけ、目指す場所は決まっていた。
殺風景な廊下を歩き、居室の1つに入ってゆく。「あますが」という表札は剥げかけている。
「失礼します。」
俺はサッと身なりを整えた後、そろりとドアを開けた。
部屋は仄暗かった。壁際を探り、パチンと電気をつける。
限りなく質素な部屋だ。扉の外れた箪笥が1つ、ベッドが1つ。そのベッドの上に、男性がひとり、仰臥していた。
俺にはそれが、赤ん坊のように見えた。
明らかに、通常の赤ん坊より大きい。明らかに、大人の体格と顔つきをしている。
それなのに、その光景は赤ん坊が寝ている様を思い起こさせた。というより、それ以外のことは想起できなかった。
それはつまり、ベッドで仰向けになっているこの男が、赤ん坊以上の知識を、経験値を、存在感を秘めていないということだ。
眼を見開いて、両手を虚空に突き出し、ひらひらと動かしている。まるで空気をこねているみたいに。
俺はすり足でベッドの傍に寄り、片膝をついてかがみ込んだ。
「王城四郎今直様、忠臣の吉良で御座います。お迎えに参りました。」
ときに、俺は現代を生きる忍者だ。
そう聞くと大方のアホは、俺が手裏剣や刀で戦うヒーローじゃないかと勘違いする。
でもそんなんじゃない。
忍者は戦士ではない。分身したり、水の上を走ったり、壁をすり抜けたりするのは架空の忍者だ。
忍者ってのは、スパイだ。何処かに潜入し、情報を収集するのが主な役目だ。潜伏期間は何十年にも上ることがある。まあ俺は、大学生活中にいくつか仕事を請け負っただけだから、最大でも6か月の潜伏経験しか無いんだけどな。あの時は、引っ越し業者のアルバイトとして潜伏して、目当ての家の間取りを調べるのに半年掛かった。地味で、静的で、報われない稼業だ。最も必要な資質は我慢強いことだ。特定の記事が切り抜かれた新聞のように、情報の一部を隠し、小出しにし、駆け引きする。体術はその補佐をするために研鑽すべきものにすぎない。
新社会人となった俺に、華々しく会社に勤める朝など来るわけがない。そんなものは俺の人生にはなから存在しない。
俺には使命がある。俺のタマシイが雨になって、偶然吉良家の遺伝子の大河に降り注ぎ、合流した時から、逃れることのできなくなった使命が。
王城四郎今直は、500年前に自害した。転生すべく。
もう一度天下を取るつもりだったのだろう。だが誤算があった。この世は合戦が消え、暴力よりもインテリジェンスの支配する、ガチガチの資本主義世界となっている。
そして第二の誤算。
転生先は選べなかった。
彼は「最重度認定」の知的障害者として生まれ変わった。
それでも俺の使命が消えるわけではない。
俺は吉良家の伝承に従い、忍者として育てられ、転生先を示す痕跡を辿り、遠い先祖がしたように、主の元に馳せ参じた。
そんな説明をしようが、レスポンスは得られない。
俺はベッドにそっと手を置いた。
これまでに見て回った入居者さんたちも、知能が低く、言葉を喋れないケースが多かった。俺が挨拶をしても、アーとかウーとか、そういう声しか返さない人も大勢いた。
それでも、何らかの反応は示してくれたものだ。
「あますがさぁ~ん」
俺は、ドキリとして振り向いた。
軽いノックがあり、ドアが開かれた。川口職員がそこに居た。
「あれま、吉良さん。勉強熱心ですね!でも最初からあますがさんの対応をするのはちょっと大変ですヨ!もっと手頃な方から接してみるべきです!あますがさん、服薬のお時間ですよ。」
川口職員は、ベッドに近付きかがみ込むと、「ヨイショ」と言ってあますがさんの体を起こした。
このあますがさんからは、生命の痕跡は見えても、意識の吐息は感じられなかった。果たしてその肉体の中にかつての大名のタマシイが息づいているのか、俺にはわからない。だがそれが再び目を覚ますことを信じ、仕えるしかない。何年の辛抱になろうか。1年か、5年か、10年か、20年か、いつまで尽くしても、その成果は得られないかもしれない。
忍者とは報われない、因果な商売だ。それでも任務を、ひたすら忠実に繰ってゆく。
それが忍者としての俺の使命だ。
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11 :げらっち
2022/06/29(水) 02:33:50
以上、げらっちによる>>>184.243の三題噺でした。
私の勤務経験を脚色してみました。
実は『魔王と呼ばれた天才魔法師ミナ』のプロットを意識しています。
カンフーの要素が薄すぎる?気にするな!(最初はカンフーを扱う敵忍者を出す予定だったが、それだと長くなりすぎるので削った)
〆切の目安は6月中だったが他の参加者たちは
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12 :黒帽子
2022/06/29(水) 07:32:56
今日明日で書く
🍊でも明日中に出す
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13 :げらっち
2022/06/29(水) 14:58:45
>>12
偉いぞ!
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14 :迅
2022/06/30(木) 18:10:02
来た来た来たァ!インスピレーションが湧いて来たァァァァァッ!!今週末には出せるかも知れねぇ!
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15 :げらっち
2022/06/30(木) 18:18:41
黒帽子の三題噺が楽しみだ。
やっきーへの感想をこっちにも書いとこう。
>>2
3行目でオチが読めてしまった…
やっきーが作者ということ、ボクという一人称(ポーク?)もヒントになってるのかな。
いつものファンタジーとは違ったシニカルなギャグ短編(というかSS SSSくらい)
色んな作風が書けていいなー。
通話では迅がこの豚の声真似をして大盛り上がりでした。豚(cv:迅)
>>3
こちらはかつて、ねむねむに依頼されて書いた詩だという。
豚と同じ動物目線の悲哀を感じる一作だが、こちらはギャグ色が弱め。
いつも何にも考えてなさそ~な金魚だが、何か考えてるのかな?と考えさせられる作品でした。
>>4
豚の時と構成は似ているが、今回はオチが読めなかった!
読み返すと色々わかって面白い。
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16 :ラピスラズリ
2022/06/30(木) 19:14:59
小指、贈り物、止まるっていう三題噺?お題で書いたときのやつ見つけたからよかったらみんなにも書いてほし〜てなってる。
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17 :ラピスラズリ
2022/06/30(木) 19:15:53
「小指」「贈り物」「止まる」より
☆.。.:*・°☆.。.:*
あいしてる、なんて言葉だけでは不安だったのです。
わたくしのあまりにも低い自己肯定感が邪魔をするのですから。今のように楽しく談笑していたって、貴方の心がわたくしではない他の何者かに向けられているのではないか、と怖くなります。
だから、いっそのこと、と。別れ話を切り出したのでした。
貴方の表情は固まり、時間が止まるようにも錯覚しましたが、わたくしが次の言葉を紡ぎます。
「愛を証明してください」
わたくしの故郷には、古い習わしがあります。真実の愛を誓うとき、想い人にとある贈り物をするのです。
彼もそれを知っていましたが、きっとそんな古びた文化に従う気はないのでしょう。こんなに怯えた顔をしていますもの。
つまりは、その程度のことなのでしょう。わたくしはひと粒涙を溢して、部屋を出ていこうとしました。でも、掠れた声に引き止められます。
彼は微笑んでいました。そうして、台所から持ってきた包丁を右手にしっかりと握っています。笑顔のまま、彼は床に置いた左手に、包丁をゆっくり近づけます。狙ったのは小指でした。
古い習わしとは、真実の愛を証明するとき、想い人に体の一部を差し出すというものでした。
ああ、わたくし達の愛は本物のようです。
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18 :げらっち
2022/06/30(木) 20:08:04
私もそのお題を見て(ラピスのを読むより前に)やんでれ系の指詰めを想像しちゃったんだよねえ…
「小指」「贈り物」とくれば割と同じ場所に着地するかも。
思いついたら書いてみーる。
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19 :迅
2022/06/30(木) 21:14:21
あの日、俺は逃げ出した。
大事な決闘から、誇り高き騎士から。土下座をして無様に情けを乞い、当時の相手だった幼馴染との絶対的な実力の差を前に絶望し、みっともなく逃げ出した。
彼女は、正々堂々とした勝負を望んでいた。
剣の実力で俺を打ち負かし、自分こそが最強であると、自分はもう守られる存在ではない事を証明してみせると、彼女は試合が始まる前に俺に告げた。
……それなのに、肝心の俺はこのザマだ。
あの時の彼女の軽蔑に満ちた瞳は、今も脳裏に刻み込まれている。
彼女の瞳に映っていた感情は、怒りでも、憎しみでもない。
彼女は、失望していたのだ。
自分の憧れだった人間の、情けない姿に対して。
「私はもう、貴方を好敵手《友》とは思いません」
それが、最後の会話だった。
それ以来、彼女と俺とで大きな差が生まれ始めた。
彼女は生徒会長にまで上り詰め、『雷電女王』と言う異名と、学園一位の座を手に入れた。対する俺は留年し、あの情けない戦いぶりから、『恥知らずの騎士』の異名を手に入れた。
そこからは、簡単だ。
かつては、最も高い実績を収めた騎士に与えられる称号である、『英傑』の筆頭候補にまで上り詰めた誇り高き少年の姿は、見る影も無くなった。
他の生徒達から送られるのは羨望の眼差しではなく、侮蔑の視線。
クラスの低い騎士からは、日頃の鬱憤を晴らすためのサンドバッグにされ、上級生との模擬試合では、彼らの引き立て役として必要以上にボコボコにされた。もちろん、止める者は現れない。尤も、その理由も『助けたら標的にされる』恐怖で助ける事が出来ないのではない訳だが。
それだけならまだ良いのだが、女子は力で敵わないと理解している分、更に陰湿な事をする。
私物を捨てたりと言った、ちょっとした悪戯ならまだしも、部屋の中で乱交に及ばれた際は、マジに退学寸前まで追い込まれた。
あの時は、現在の理事長と一部の教師が弁明してくれなければ、今頃は学園を追い出されていたどころか、豚箱の中にぶち込まれていた事だろう。
その代わりと言う訳か、不審な行動や暴行に走った瞬間、即退学という理不尽極まりない条件を突きつけられた。
もちろん抗議しようとしたが、彼らの期待を裏切った報いと考えれば、納得出来ないことも無かった。
他にも色々あるが、現理事長のおかげで何とか生きて行けている。
そして、あの日から約一年。
彼の人生を運命づけた祭典が、再び始まる季節となった。
短編読み切り
─恥知らずの刺客騎士《ステイヤー》─
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20 :迅
2022/06/30(木) 21:15:59
『恥知らずの騎士』こと石動竜真《いするぎりゅうま》は、理事長室に向かって一人で歩を進めていた。
周囲から刺すような視線が飛んで来るが、喉元過ぎれば熱さを忘れると言うように、一年も過ぎればその視線の数々も、もはやステージ中央に立つアイドルを照らすスポットライトにしかならない。と言うか、これから起こる事を考えると、その程度で一喜一憂するわけにも行かないのだ。
「おい、『恥知らず』が来たぞ」
「アイツ、どのツラ下げてここに来てんだよ?」
「マジ退学してくんねーかな〜、居られるだけで士気が下がるわ」
聞こえないフリをしているのを良い事に、生徒達は口々に彼の悪口を言い続ける。
廊下の真ん中を歩くだけで注目を集める人物となると、学園長か生徒会長か、落ちこぼれのどれかだろう。尤も、その視線も立場によって全く違う意味を成すのだが。
羨望、尊敬、侮蔑
───人の目は、口以上に物を語る。
どれだけ良い顔を繕っても、洞察力に長けた者であれば、声のトーンや眼の動きから言葉の真意を見抜くことは、そう難しい事でもない。
周囲の視線や小言を気にせず、竜真は理事長室の扉をノックして入る。
中には、恩人である現理事長・上條玲奈《かみじようれな》が待っていた。
「来たか、『恥知らずの騎士』」
「……聞き慣れた汚名でも、恩人に言われると流石に響くんですよねぇ」
玲奈の一言にも顔色を変えず、竜真は苦笑いを浮かべる。
それでも反論しないのは、玲奈は竜真がマトモに暮らせるようにしてくれた大恩人だからだ。強姦冤罪で捕まりそうになった時も、退学ではなく留年が受理されたのも、彼女の影響が大きい。
そう言う事もあり、竜真は彼女に対して頭が上がらないのだ。
その為、定期的に理事長室に呼ばれる羽目になったのだが。
「最近はどうだ?」
「相変わらず、いじめられっ子やってますよ」
「まぁ、そんなところだろうな。……ところで、そろそろ『闘覇祭』が始まる訳だが、お前は参加するのか?」
扉を閉めると、唐突に玲奈の質問が飛んで来る。
『闘覇祭』。
それは、4500名いる全校生徒が、『東軍』と『西軍』に分かれ戦う、蓬莱学園最大規模の一大イベントだ。この祭典は毎年4回、三日かけて開催され、今月開催されるのは、前期の締め括りである『夏の陣』に当たる。
そして、卒業間際の2月頃には、一年間の総決算である『冬の陣』が開催される。
この祭典には、一般人や現場で活躍しているプロの騎士が来ると言う事もあり、普段は怠けている学生も、その日ばかりは本気で闘いに臨んでいる。素晴らしい実績を残したり、両軍を率いる『総大将』や幹部を務めれば、現役騎士や大手企業直属のスカウトが来る事だってある。
その点を踏まえると、闘覇祭が開催される期間中は、彼ら若しくは彼女らにとって、まさに運命の一週間と言って良いだろう。
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2 :やっきー
2022/06/20(月) 16:15:31
ねえ、認めてよ。
ねえ、なんで?
ボクがいくら問いかけても、柵の向こうの奴らは、ボクの声を無視する。
短い手足も、太い首や体も、ボクの個性じゃないか。確かに君たちとは違うかもしれない。でも、だけど、これがボクなんだ。
ねえ、認めてよ。
ねえ、なんで?
答えてよ。ねえ。ねえ! ねえ!!
ボクを柵の中に閉じ込めて、何がしたいの?
ううん、本当はわかってる。彼等が何を望んでいるのか。
ボクと同じように閉じ込められた仲間は、欲だけで動いている彼等に連れていかれてしまった。
嗚呼、ボクの番が来たようだ。彼等の仲間が、|足枷《あしかせ》と首輪を持って、ボクに近付く。
もがいてもがいて。でもそいつは、ボクの動きを無理矢理封じる。
ボクは最後の足掻きで、こう叫んだ。
「出荷しないでええええ! プギイイイイイイ!」
※この物語はフィクションです。
3 :やっきー
2022/06/20(月) 16:23:38
※カキコにも載せたことがあるものです。
ねえねえ、ぼくたち綺麗でしょ?
ふわふわな衣に鮮やかな赤。きらきらの水によく映える。
ねえねえ、わたしたちかわいいでしょ?
小さなガラスに閉じ込められて、小さくて弱くて。まるでただの鑑賞物。
ねえねえ、ぼくたち綺麗でしょ?
なのに水は汚れてる。酸素をちょうだいご飯をちょうだい。
ねえねえ、わたしたちかわいいでしょ?
なのにどうしてこっち見ないの? あなたが連れてきたんでしょ?
ねえねえ、ぼくたち綺麗でしょ?
君たちとは違う儚い命。もっと大事にしてよ、ねえ。
ねえねえ、わたしたちかわいいでしょ?
動かなくなっても水槽の底に沈んでも。
ねえねえ、ぼくたち綺麗でしょ?
ぼくたちこのあとどうなるの? 箱の外を見たかった。
ねえねえ、わたしたちかわいいでしょ?
ふたりでゆらゆら。ふたりでひらひら。
ねえねえ、ぼく綺麗でしょ?
沢山いたのに一人になった。
ごめんね、君を残してもういくね。
4 :やっきー
2022/06/20(月) 16:29:56
おれはずっと前から、『奴』の存在を知っていた。
だけど、見ないふりをしていた。だって、見たくないのだから。
そうやって、限界まで、今日まで、『奴』を無視して生きてきた。
そして今日、『奴ら』はおれたちの前に現れた。おれたちの人数分、『奴ら』はいた。
これは罰だ。怠惰の限りを尽くした、おれへの。
『奴』の存在。襲ってくる時間。現れる場所。おれはその全てを知っていたのに、それらを無視した。
なんの準備もしないまま、なんの備えもしないまま。
あるものは勇敢に戦い、あるものは戦いを放棄し。おれも、戦わなければならない。
わかったよ。もう、逃げない。
いや、この感情は、『諦め』に近いだろうか。
なんでもいい。とにかく戦おう。剣よりも強いこの武器を手に取って。
おれは『奴』を睨みつけた。『奴』はピクリとも動かない。ただおれを嘲り笑うかのように、そこにいるだけだ。
おれは『奴』に向かって、武器を突き立てた。やや丸みを帯びたその武器は、『奴』の体を貫通することは無い。
そのまま滑らかに武器を動かす。『奴』は動かない。ただそこにいるだけなのに、おれは押しつぶされそうなプレッシャーを感じる。
小一時間ほど、おれは休むことなく戦った。やがて『奴』は、『奴ら』のボスにより撤退させられた。
終わったのだ。勝利も敗北もない、ただお互いの意思をぶつけ合うだけの、無駄な戦いは。
おれは歓喜のあまり、腹の底から叫んだ。
「ぃよおおおおっしゃぁぁああああああ!!!!!! テスト終わったあぁぁぁあああああ!!!!!!」
12 :黒帽子
2022/06/29(水) 07:32:56
今日明日で書く
🍊でも明日中に出す