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┗283.短編小説のコーナー(21-40/207)

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21 :迅
2022/06/30(木) 21:46:27

 下手に難しい試験を受けるより、己の実力を見せつけるに越した事はないからだ。

「……あぁ、もうそんな時期ですか」

 しかし、この少年だけは違った。
 石動竜真は、闘覇際に対して一切の興味を持っていない。
 何故なら、決闘から逃げ出した『恥知らずの騎士』など、スカウトするだけ無駄だからだ。寧ろ、スカウトしたらしたで、その企業にとっては汚点にしかならない。
 それ故に、定期的に来る推薦票に竜真の名前はなかったし、それ関連で職員室に呼ばれた事は一度もない。大一番で情けない姿を晒した男に惹かれた騎士もいる筈がなく、彼は誰からも興味を持たれる事がないまま、実りの無い不毛な一年間を過ごす事になったのだ。
 まぁ、自業自得と言えばそれでお終いなのだが。
 とは言え、「頑張っても意味ないなら、別に頑張らなくても良いじゃん?」と言うのが彼の見解であり、彼が闘覇祭の参加に消極的な理由だ。

「……辛くなったら言えよ?すぐに退学届を出してやるからな」
「うーん、退学する前提で話進めないで貰えます?」
「ん?違うのか?」
「普通に考えて違うと思いますけど!?」

 ───それに、今回はチャンスなんですよ。
 と、竜真はポツリと言う。
 彼が逃げ出したのは、去年の夏の陣での大将戦。当時二年でありながら東軍の総大将を務めた竜真は、メンバーから輝かしい期待と、鉛のような重圧を寄せられていた。
 竜真の敵前逃亡により、東軍はあえなく敗退。それまでは優位に戦況を進めていたものの、彼の失態一つで大きく逆転を許してしまったのだ。その時は、『仕方なかった』と言う事で無罪放免となったが、冬の陣となるとそうも行かない。
 冬の陣は三年にとって最後の闘覇祭であり、彼らの今後を決める分岐点であり、今迄注目されて来なかった者にとっての、最後のチャンスだからだ。
 その時は西軍の中堅として参加したが、不調と八百長が相待って敗北せざるを得ず、結果的に自軍を敗北に導く事となった。
 もちろん弁明しようと試みたが、誰も耳を貸そうとしない。
 それ以降、竜真は晴れて不名誉この上ない『恥知らず』の異名を頂戴し、全校生徒から煙たがられるようになった。
 まるで、彼女と逆の人生を歩むように。

「あいつに謝らなくちゃいけないし、今年こそはマジにやりますよ」

 竜真は絞り出すように、ぎこちない笑みを浮かべて言う。
 彼女の誇りを傷付けてしまった今、彼に出来るのは謝罪だけだ。
 下っ端の使い走りでも構わない。
 彼女に一言謝る事が出来るなら、それでいい。
 それに、二年である彼は今回を含めると四回、闘覇祭に参加出来る。だが、三年の彼女は今回の夏の陣を含めても、あと二回しか無いのだ。
 竜真は壁をもたれかかり、天井を見上げながら続ける。

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22 :黒帽子
2022/07/01(金) 00:00:53

超掌編
「忍者・雲隠十三 盆邪城の巻物」

江戸内海に突如流れ着いた巨大な城があった。その名は盆邪城。
異国のにおいが立ち込める盆邪城、その中には膨大な秘宝が数多く眠っているようだった。
幕府はこの城を怪しく思い、兵を出しては追い払おうとしたのだが、城の守りは堅い。よほど秘密にしたいものが保管されているのだろう。
ここで最終兵器ともいうべき忍者、雲隠十三を呼び、盆邪城への潜入任務を言い渡した。
十三は生きて帰れる保証のない魔城へと足を踏み入れたのであった。

「これが盆邪城、それにしてもけったいな見た目だな。城も門番も。」
門番も某氏を外せば半球上、詰襟の服を着ていた。門番は城に入れる唯一の橋を通せんぼするかのように守っている。堂々と近づくことは死を意味するものである、十三はそう認識し、クナイを門番の首にぶつけた。

「あべし!」といったかどうか定かではないが門番はそのまま海へと落ちていった。
次の門番が出る前に十三は橋を渡り、盆邪城の中へと入っていった。
次から次へと怪しそうな集団が現れる。面と向かって戦いが長引くと確実に殺されるため、十三は的確に急所を狙う作戦を実行した。一瞬にして積み重なる兵の山。十三は大急ぎで城の上部を目指した。

城の最上階にて主が待ち構えていた。主は鎖で繋がって二本の鉄の棒を規制を上げながら振り回している。
「アチョオオオオオオ!」
迷わず忍者刀で応戦する十三、つばぜり合いがしばらく続いたが壁に追い詰められ、城主が優勢となってしまった。
十三は迷わず股の下を潜り抜けるよう滑り、背後からぶすりと一撃をくらわした。

「そ、そこの巻物だけはくれてやる。これで勝ったと思うなよ」
城主はこう言い残し、息絶えた。

十三は大凧で城を脱出し、江戸城に巻物を献上した。しかしそれは白紙であった。
これは現代でいうトイレットペーパーのようなものであったからだ。

十三は試合に勝ったが勝負に負けてしまったのであった。

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23 :げらっち
2022/07/01(金) 00:09:50

読み終わった
まさに3つのお題を対等に詰めましたという感じ
某氏は帽子?
センガクの時から相変わらずの淡々とした飾らない描写
小説としてどうなの?と思うところこそあれオチは笑ったのですべて許すwww

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24 :げらっち
2022/07/01(金) 00:47:42

>>19-21 読了。
女子からのいじめ、乱交の濡れ衣をかけられるってのはなかなかハードだね。

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25 :迅
2022/07/01(金) 14:37:03

「有終の美……なんて洒落た言葉を使うつもりはないですけど、せめて最後の闘覇祭くらい、アイツには心から楽しんで欲しいじゃないですか」

 竜真はそう言って、玲奈の方を見る。
 その顔に迷いはなく、『何があっても成し遂げる』と言う確固たる決意が宿っていた。

「説得するだけ無駄……って奴だな。良いだろう、そこまで言うならやってみせろ、石動竜真」

 玲奈は小さく微笑み、竜真の肩を叩く。
 その言葉に込められた声色は、かつて『比翼』と呼ばれ畏怖と尊敬を集めた最強の騎士の声ではなく、生徒の背中を押す教師そのものだった。

***

 『雷電女王』こと学園一位の騎士・一ノ瀬彩華《いちのせあやか》は、書類を脇に一人で廊下を歩いていた。

「あの人、『雷電女王』の一ノ瀬会長だよな?」
「あぁ、今日もなんてお美しい……」
「でも怖くねぇ?なんかこう、すげーピリピリしてそうで」

 廊下、大通り、教室と言った学園内を歩く度に、畏怖と尊敬の念に満ちた視線が送られて来る。一年間も浴び続ければ、もはや慣れた物だ。
 ここ最近発行された学園新聞では、彼女の話題で持ち切りだった。その内容は、『大型デパートを占拠したテログループの鎮圧』と言った実戦記事や、『校内での霊装使用規則の改定及び改善』など、多岐に渡る。生徒会室には連日新聞部や外部企業が押し寄せており、その予約の数はなんと、卒業する間近まで埋め尽くされていると言う。
 容姿端麗、才色兼備、文武両道
 史上最年少で『英傑』の称号を得た彩華は、紛れも無い天才騎士であるが、彼女は決してその才能を無闇に振りかざそうとはしない。
 何故なら、彼女は理解しているからだ。
 この力は、悪を挫き弱きを守る為に在る物であり、決して私利私欲のために振るって良い物ではない事を。彼女が放つ抜刀術は、轟く雷鳴の如く悪を斬り断つ。

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26 :迅
2022/07/01(金) 14:59:04

 故に、着いた二つ名を『雷電女王』。
 彼女の才能と、鬼神の如き闘いぶりから、畏怖と尊敬の念を込めて付けられた二つ名。
 彼女は全校生徒から慕われているが、同時に恐れられてもいる。彼女の怒りに触れようものなら、一瞬のうちに切り刻まれると言う、脅し文句が生まれるくらいに。

「あ、あの、会長。荷物、お持ちしますか?」
「お気持ちだけ頂戴します」
「会長、昼の会議ですが……」
「今は多忙ですので、草加さんに向かわせます」
「か、会長!お誕生日……おめでとうございます!」
「後にして頂けますか?今は雑用に割いてる時間はないので」

 次々とやって来る生徒達に対応しながら、彩華は生徒会室の扉を開ける。
 そして机の上に書類を置くと───

「あぁ〜ん!疲れたぁ〜!」

 溜まっていた本音を盛大にぶちまけた。

「もうやだぁ〜!生真面目生徒会長やだぁ〜!彩華、コーヒーじゃなくてタピオカ飲みたい〜!」

 机に突っ伏し、言いたい事を叫ぶだけ叫ぶ。
 キャラ崩壊も良いところである。

「……そんなに疲れるなら、素で行けば良いのに」

 漫画を読みながら彼女を慰めるのは、副会長である木美月蓮《きみづきれん》。情報収集を得意としており、自ら前線に立つ事は少ないが、裏方作業で彼以上に頼りになる者はいない。

「そうですよ!アヤセンパイは可愛いんだし、きっとモテますよ!」

 トレーニング機材をガシャガシャ鳴らしながら励ますのは、会計を務める柳瀬清丸《やなせきよまる》。こんな名前だが立派な女子であり、二年生にして学園三位の実力者だ。
 二人の言いたい事も分からなくはないが、彩華は自身が『雷電女王』として周囲から畏敬の念を集める事で、蓬莱学園の平和は保たれていると考えている。その考え自体は間違っておらず、事実彼女が生徒会長となってからはある一例だけを除き、蓬莱学園の生徒による一般人への暴力沙汰や、生徒間での大規模な喧嘩の数は見る見る内に激減した。
 それも全て、彼女が『雷電女王』として粛清に回っていたからだ。
 情け容赦の一切を無くし、冷酷に振る舞わなければならない。
 『一ノ瀬彩華』は全校生徒から慕われる生徒会長であり、『雷電女王』は、学園内の人間から畏怖される存在でなければならない。
 この身一つで学園内の平和が約束されるなら、それは生徒会長として本望と言うもの。

「私が恐がられてるから、この学園は平和なんだよ?それなら───」
「それは違いますよ、彩華さん。あなたの身体一つで、この学園の平和が保たれている訳ではありません」

 彩華の口から出かけた言葉は、背後からの声でかき消される。
 その声の主は、つば広帽子を被ったお嬢様然とした装いの少女・桐生院佳奈子《きりゅういんかなこ》。生徒会書記を務め、彩華に次ぐ学園二位の騎士。
 時には『特務騎士』として、彩華と共に犯罪者の鎮圧に出る事もある。
 彼女とは小さい頃からの付き合いで、一人で全てを背負い始めようとした彩華の良き理解者だ。

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27 :迅
2022/07/01(金) 21:26:46

 佳奈子は彩華の背後から手を回し、優しく抱きしめる。

「この学園が平和なのは、生徒達の協力があってこそです。貴方一人の責任でもなければ、貴方だけの使命でも無いのです」

 そして、まるで子供を諭す母親のように彼女は告げる。
 しかし、彩華の方から帰って来たのは、歯切れの悪い返事だった。

「分かってる、分かってるよ……。でも、私がちゃんとやらなきゃ、アイツはいつまで経っても認めてくれないんだもん……」

 彼女は、自身の思いを打ち明けるように言う。
 彼は、常に彩華の事を第一に考えてくれていた。同時に不治の病に侵されていた幼少期の彼女は、彼を必然と頼らざるを得なかったのだ。
 だが、今は違う。
 不治の病に見事打ち勝ち、剣の腕を鍛え、13歳になる頃には、本気の大人に勝てる程に成長した。
 それなのに───

「それなのに!なんでアイツはあんな醜態を晒した訳!?」

 先程の落ち込みようはどこに行ったのか、彩華は頭をぐしゃぐしゃと掻きむしる。それ程までに、あの決着のつき方に対して、彩華は納得していなかった。
 当たり前───と言えば当たり前だろう。
 相手の試合放棄による勝利など、偽りの勝利でしか無い。

「しかも、あろう事かアイツは!まるで何事もなかったかのように平然と接して来たんだよ!?」

 彩華の怒りに呼応するように、蒼白い稲妻が彼女の身体から迸る。
 行き場のない怒りが充満し始める中、平静を取り戻した彩華は小さくため息をつくと、意中の男性への想いを絞り出すように呟いた。

「……私は、アイツが逃げた理由を知りたい」

 ───そして、本当の意味での決着をつけたい。
 目尻から蒼い雷光を靡かせながら、彩華は続ける。『恥知らず』と呼ばれた幼馴染・石動竜真が、自分の前から逃げ出した真相を知り、それを理解した上で、完膚なきまでに叩き潰す。
 それが、今の自分が出来る最大限の恩返しなのだから。

「私が闘覇祭に参加出来るのも、今回を含めてあと二回……最後くらい、アイツにも華持たせてやりたいじゃん?有終の美……なんて言うつもりは無いけどさ」

 先程までの迷走ぶりが嘘のように、彩華は凛とした表情で言う。
 その為にも、今月開催される『夏の陣』では、西軍総大将を務める『一ノ瀬彩華』として、蓬莱学園一位の座に君臨する学園最強の騎士・『雷電女王』として、もう一度自分に挑んで来るであろう『恥知らずの騎士』と、全力を以って対峙しなければならない。
 きっと───いや、あの男は絶対に東軍総大将の座に返り咲き、私を待ち構えるだろう。
 そうなった暁には、彼は数多の人間を味方につけている筈だ。
 彼女は椅子から立ち上がると、今最も信頼に足るメンバーの顔を見渡し、彼らに伝える。

「私は、石動竜真に完膚なきまでに完璧な勝利を収めたい。だから───」

 私に、力を貸して下さい。

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28 :迅
2022/07/01(金) 21:29:22

恥知らずの刺客騎士《ステイヤー》
これ以上投稿すると10レス超えるんで、今回はここまでにします。一人で使う訳じゃないし、流石にね
本当は、竜真が逃げ出した理由や、彩華の竜真に対する本音も描きたいところだけど……まぁそこはボチボチ書いていこうじゃねーかって事で

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29 :げらっち
2022/07/02(土) 14:29:50

>>25-27 読了。
年に四回行われる闘覇祭の設定と、キャラ崩した時の一ノ瀬彩華のギャップが面白かった。

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30 :げらっち
2022/07/02(土) 14:31:09

>>8
王城四郎今直様の由来は「往生しろ、今すぐさま」

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31 :げらっち
2022/07/17(日) 22:50:01

ゲームレンジャー
 The Story After Game Over《ゲームオーバーの後の物語》


 0ー1


 2022年。
 とある、夜。

 世界をゲーム化せんとす悪の結社『GWC』。いつも昼間の無差別爆撃などロシア軍のような戦争の伊呂波の伊も理解していないような攻撃ばかりしてくるが、夜間の奇襲攻撃なども充分に考えられる。
 ゲームレンジャーの千博・翔・涼・信穏・怜奈の5人は、夜間パトロールを開始した。1人1人、それぞれのルートを辿っていく。
 5人はただの平凡な高校生であった。戦士に選ばれた理由は、彼らが部類の「ゲーム好き」だったからだと、ゲームレンジャー創始者・機田学は言った。

「冗談じゃない。」

 千博はそうぼやいた。低い声は夜の街にすぅっと吸い込まれて消えた。
 千博はゲームが好きだった。その点に異論は無いし、誰にも負けたくない。驚異の身体能力と人間離れしたアクションで、フィールドを縦横無尽に駆け回る。リアルの戦争さながらに、銃を持って敵兵を撃ち殺す。はたまた、ポップな世界で愛らしいマスコットと共に、頭をひねってパズルを解き明かす。危険なレースでデッドヒートする。自分だけの村でのんびり暮らす。学校では手に入らないような、刺激的な恋愛をする。全て画面の中で行われていることだ。リアリティがあれど、それは視覚と聴覚のみの世界だ。五感のうちの2つだけではないか。嗅覚も味覚も、触覚も痛覚も、伴わない世界。もしくは、未来のゲームではそれらも味わえるのだろうか。ともかく、今はそうではない。

 千博は腕につけている小型ゲーム機、『ゲームチェンジャー』を睨みつけた。

「ふざけやがって。」

 今すぐ地面に叩き付けて、踏み潰して壊してやろうか。俺にはそれができるんだ。だが千博はそうしなかった。仮にも、これは重要な変身アイテムだ。自分がゲームの主人公の様なヒーローになって戦う。ゲームが現実と成る。はじめ俺は、それを楽しんでいた。夢のようだとさえ思った。だが興奮と快感は、不満と諦念に場所を奪われた。現実には痛みと疲労、時間と死、疑念、そして意味が付きまとう。それは俺の求めていた物ではない。

 ゲームは現実とは非なる物、だからいいのだ。

 だが俺はゲームレンジャーを辞めない。
 理由は二つある。
 世界の平和のため?そんなものは掲げない。世界を守るのは俺の役目ではない。それは大人がすべきことだ。

 第一に、千博はGWCを快く思っていなかった。GWCが世界を侵略する悪者だからではない。世界のゲーム化、それは千博の夢を壊すことだったからだ。ゲームの力を濫用する、到底許せぬことだ。

 第二に、千博には4人の仲間が居た。
 翔・涼・信穏・怜奈。同じくゲーム好きの幼馴染みたちだ。5人はゲームによって出会い、育ち、つながった。千博は思う。他の4人も、それぞれに思うところがあって、ゲームレンジャーを辞めないのだろう。あのおちゃらけの涼だって不安を感じているはずだ。だが立派に戦っている。
 そうであれば俺はゲームレンジャーを辞めない。

「4人の友と、戦い続けるんだ。」

 その声は闇に消えていくはずだった。

「ご立派だな。」

 返答があった。だが千博はそれを心の声と解釈し、気にも留めなかった。

 ━━━━━━━━━━

 涼はゲームレンジャーのボケ担当、能力こそ劣れど、憎めないキャラで皆に愛されていた。
 彼は道端のベンチに座り、パトロールをさぼってゲームをしていた。
「ん?」
 夜の闇を撹拌するように、まばゆい光が辺りを照らした。ヘッドライトだ。
 車が、突っ込んでくる。
「わ、わああ!!!」
 涼は逃げようとするも足がもつれた。そして次の瞬間には、大きな鋼鉄の突撃を受け、空を飛んでいた。ドンと地面に叩き付けられ、そこで彼の残機は0になった。

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32 :げらっち
2022/07/18(月) 01:14:58

 0ー2


「見ろよ、これ。」
 目を覆いたくなるようなものだった。轢かれた猫をそのまま人間に置き換えたような有り様だ。蛙でもいいか。
「クソッ……酷いもんだぜ!!」
 暗がりの中、千博は相棒の翔と合流し、視線をかわした。いつも冷静な翔だが今は怒りをあらわにしている。
「どう思う、千博。」
「どうって、GWCの仕業に決まってるだろ。」
 地面には涼のゲーム機が落ちていた。画面は粉々に割れ、本体はひしゃげている。
「奴ら本性を出しやがった。絶対許さねえ、ぶっ潰す。このふざけたゲーム戦争もこれで終結だ。」
「平和的だな。ガンジーが生きていたらさぞ喜ぶことだろう。」
 翔は嗜虐的にニヤリと笑った。
「俺は怜奈と信穏を呼び出し、合流する。敵はまだこの近くに居るかもしれないし、知らせておく必要がある。翔、お前は学さんに連絡を入れてくれ。」
「任せろ。」
 翔は自宅に向かおうとした。翔の家はGWCの基地としても利用されている。だがその前に翔は涼に向けて、「仇は打つからな。」とボソリと言った。

 俺は涼の目を閉じさせ、路地に移動させた。

 そしてゲームチェンジャーに声を吹き込んだ。
「怜奈、信穏、緊急事態だ、ハードモードだ。」
「何?もうパトロール終えて、直帰しようってとこなんだけど……」
 ゲームチェンジャーの画面にさっぱりした顔つきの少女、怜奈が映る。ゲームレンジャーの紅一点。
「家に帰ってお風呂でのんびりしてる場合ではない。涼がやられた。」
「え?」
 画面越しに、怜奈は苦笑いした。ジョークとでも思っているようだ。
「やられたって……どういうこと?ねえ、涼。涼!」
 怜奈は涼に通信を入れようとしているのだろう。声を投げ掛け続ける。だが涼のチェンジャーは命と共に破壊された。返答は無く、怜奈の笑みは消えていった。
「無事……なんだよね?」
 俺は返事をしなかった。

「信穏も応答してくれ!」

 画面が切り替わり、信穏が映る。

 その顔は血にまみれていた。

「千博、襲撃を受けた!!闇討ちだ!今すぐ来てくれ!!」
「信穏!?現在地は!?」
「ぐああ!!!」
 画面が乱れ、血飛沫、そしてくすんだ包帯が一瞬映り、直後通信が途切れた。

「しおん……?」

 再び画面が切り替わり、怜奈の顔が映った。怜奈の顔はすっかり青ざめていた。
「千博、一体……」
「怜奈、急いで合流する必要がある。今どこに居る?迎えに行くからそこを動くな!通信はオンのままにしておけ!!」

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33 :げらっち
2022/07/18(月) 01:21:32

 0ー3


 千博は怜奈の居場所を聞くなりすぐにそこに向かった。そう遠くはない。チェンジャーの画面に映る不安げな怜奈の顔を見つつ、足早に移動する。瀬川公園。ここに居るはずだ。
「ハード中のハードだぜ……」
「きゃあっ!!」
 チェンジャーの中、そしてすぐ近くから同時に悲鳴が聞こえた。画面が暗転した。「怜奈!!どこだ!?」もしチェンジャーがスマートウォッチの役目を果たしていたなら、千博は自分の脈拍が150にまで上昇したのを目にしただろう。
「チ……ヒ……ロ……」
「怜奈!!!」
 近くの茂みの中に怜奈の姿はあった。怜奈は仰向けに倒れ、顔を真っ赤にして、目を潤ませていた。首には鉄の輪がガッチリとはめられていた。「怜奈!駄目だ!しっかりしろ!!」千博は少女に覆いかぶさり、悪辣なる輪を外そうとした。だが輪はどんどん縮んでおり、外すどころか指をかけることすらできなかった。怜奈の呼吸は完全に遮断され、ピクンと痙れんしたきり、動かなくなった。千博は怜奈の首をかきむしり、身体を揺り動かし、無駄だと知って、そして泣いた。

「怜奈……なんで……」

 俺は好きだった彼女を、そっと抱きしめた。

 涼も、信穏も、怜奈も、手厚く弔わねばなるまい。
 彼らの家族は、親は、一体どんな顔をするだろう?

「……ふぅ。」

 俺は立ち上がった。

「翔の元に行かないと。」

 千博はふらふらと翔の家に向かった。翔と機田学と共に、GWCに反撃する。
 慣れ親しんだ翔の家が見えてきた。
 凶悪な一瞬だった。その民家は、そこに宿っていた数多の思い出と共に破裂した。火炎が夜空に噴き上がった。爆風で千博は尻餅をついた。轟音が住宅街を疾走し、吞気な人々が家々から顔を出した。

「しょーーーーう!!!」

 俺は腹の底から叫んだ、そして背中に金属が突きつけられていることに気付いた。銃だ。
 俺は太い手に首を掴まれ、路地裏に引き込まれた。

「ゲームレンジャーはここでゲームオーバーだ。」

 しゃがれ声が後ろから死刑を宣告した。
 なるほどな。
 千博の心にあるのは奇妙な納得だった。最後に死ぬのは俺というわけだ。

「抵抗しないのか外来千博。最後だから教えてやろう。俺はGWCのウィユー。お前らを恨み、死を配っている者だ。お前が死ねばゲームレンジャーは全滅だ。邪魔者は無くなる。世界ゲーム化計画は、大成だ。ゲームクリアだ。」

 知ったことか。
 感情の容量が氾濫し、洪水をおこし、堤防は決壊し、心は冷たい水の中に沈み込んでしまった、
 さあ撃つがいい。4人の友と同じように、俺を殺すがいい。
 涼・信穏・怜奈・翔――彼らが生きていないなら、俺が生きている意味などどこに有ろう?戦い続ける意味などどこに有ろう?

 だが、どうせ最後なら。
 俺を死にやる者の顔を拝ませてもらおうか。

 俺はぐるんと振り向くと、相手の銃口をむんずと掴んだ。包帯に全身を包んだ不気味な敵の姿があった。1フレーム後に銃が火を噴いた。千博は心臓を撃ち抜かれた。


 GWC首領・イッチスは、スイッチをパチンと切り替えた。それで世界はゲーム化した。お終い。

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34 :露空
2022/08/04(木) 19:48:42

ゲラフィの刃
これは、日本一謎めいた鬼退治。

キャラ >>>223.78

鬼滅の刃本編はこんなに支離滅裂で有象無象で無味無臭で言語道断な話じゃないです。
ゲラフィの皆もすごく良い奴です。
まぁ「ゲラフィ民が鬼滅キャラにコスプレしたらこんな風になるんだなーへぇー」みたいな感じでさらっと読んでくれたら幸いです。

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35 :露空
2022/08/04(木) 20:29:43

一話

どうしてこんな事になったんだ―——絶対死なせない。私が必ず守ってやるのだ。
大怪我を負ったふろ禰をおぶって、雪の降る道無き道を駆けていた。

炭を背負い子に入れ、町に売りに行く用意をしている時。
「炭げらっち、顔が真っ黒ですよ。拭きますからこっちへ」
その優しい声に甘え、雪華のもとに寄った。
「雪が降って危ないですから行かなくてもいいんですよ?」
「大丈夫だ。正月になったら皆にたくさん食べさせてやりたいのだ」
ありがとう、と言われると、家の裏から弟妹達がやってきた。
「炭げらっち兄ちゃん、町に行くの?」
「私も行きたい!」
「だめよ、あなた達は炭げらっちみたいに速く歩けないでしょう?それに、今日は荷車を引いていかないから乗せてもらって休んだりできないんです」
たしなめても駄々をこねる弟達と見送ってくれる雪華に行ってきますと告げ、町に歩きだしていった。
「お兄ちゃん!」
家から少し離れたところをふろ禰がゆっくり歩いていた。六太を寝かしつけてたんだ、と静かに言う。
「お父さんが死んじゃって寂しいんだと思う。だから甘えん坊なのかな」
行ってらっしゃいと見送られ、手を振る。
生活は楽じゃないが、幸せだ。
でも。
幸せが壊れる時はいつも、血の匂いがする。

炭も全部売れ、頼まれた手伝いも終わらせて帰路に着くと、三檸檬に呼び止められた。
「今から帰るの?泊めるからやめなよ」
「私は鼻が効くから大丈夫なのだ」
「いいからこっち来て。鬼、出るよ」
根負けして三檸檬宅の中に入ると、かなり柑橘類の匂いがした。出された料理も檸檬という柑橘が使われたハイカラなものだった。「明日早起きして帰ればいい」と敷いてくれた布団もやはり柑橘の匂いがした。
寝る前に話をした。
「鬼は何をするのだ?」
「人を襲い、喰べる」
「鬼は家の中にまで入ってくるのか?」
「うん」
「皆、鬼に喰われてしまう……」
「そうならないように、『鬼狩り様』が鬼を斬ってくれるんだ」
朝。檸檬屋敷を後にして我が家に向かっていく。雪は今のところ止んでいるが、またすぐに降りそうだ。
幸せが壊れる時は、いつも…………
「っ!血の匂い……!」
慌てて家に近づくと、私は信じられない光景を見た。

[返信][編集]

36 :げらっち
2022/08/07(日) 15:26:31

>YO!メンズスターの過去編である「CGR0」の冒頭のみ掲載だYO!


嵐のような人生だったに違いない。


《CGR0》


涼しい季節、のどかなショッピングモールが、突如、ドンと爆発した。
炎に包まれる商店、逃げ惑う人々、悲鳴を上げる非常ベル。起き上がる黒煙、泣き叫ぶ子供たち、立ち込める死の香り。

テロではない、戦争でもない。

これは「荒らし」だ。

2013年。
人類は、魔法の発現により大きな分岐点に立っていた。
世界各地に魔力の片鱗を持った「魔族」が生まれ、彼らは激しい差別を受けていた。科学と文学と宗教に「魔法」が加わり、それらはかつて保っていた絶妙なバランスを失い、全てが仕切り直しになった。哲学は未明のものとなった。
不条理な立場に置かされた者は、「世界を荒らす者」と成り、破壊の限りを尽くした。これは欲得主義ではなく、純粋な破壊衝動によるものだった。破壊自体が目的だった。世界を壊し、荒らすことが、虐げられた彼らの使命となった。

その分岐点は、三叉路かもしれないし、四つも五つも道があるかもしれなかった。そのうちの一つを選び取るのは、重大な役目だった。

その重大な責務を引き受ける者が居た。

「あーあ、また派手にやってるねえ。白昼堂々、荒らすとは。」
自転車でショッピングモールに駆け付けたのは、15歳の影原少年。カゲハラというその苗字からゲラッチと呼ばれていた。
「あいつらに昼と夜の区別があるとも思えない。大したことないだろ?見かけ倒しだし、抑俺たちにかなうわけがない。」
ゲラッチの相棒であるレナック。手足が細長い、痩身の男。煙草を咥えている。未成年なので火はついていないが。

「そりゃあ、もちろん。何しろ我らは、チート級……」

「キュハハハハ!!!」

爆炎の中から、低い声の高笑いが聞こえた。黒煙のカーテンをシャッと開けて、小柄な男が現れた。ピエロのような風貌だ。
「久しぶりだなカシス、いや、カリナのほうか?」とレナック。
「はっずれぇ~♪俺カシス。盤盤盤盤俺派カシス。」
ゲラッチはそのピエロと向き合い、眼鏡を押し上げた。
「やあカシス。君をSaxophone獄に送ったのは間違いだったね。」
Saxophone獄といえば、数々の荒らしを収監する地獄の堅牢だ。
「盤盤盤盤そりゃそうだ。あそこのごはんは美味しくない。だから、2秒で脱獄した。」
「やはりな。お前に裁きは生ぬるい。私が直々に、お前を世界からアク禁にしてやろう。」
「やれるもんならね。」とカシス。「カリナちゃ~ん♪」

「キュハハハハ!!!」

ピエロの鳴き声に呼応するように、もう一体のピエロが現れた。見た目はそっくりだが、こちらは声が高く、目元に涙があしらわれていない。クラウンだ。
そのクラウンは、手に、老人の生首を掴んでいた。

「それは誰だい?カリナちゃん。」とカシス。
「ん~とね、んとね、んとね、殺したい気分だったのぉぉ~~!!!ばっちいばっちい~~!!!」
カリナは生首をブンと投げ飛ばした。それは床に打ち付けられ、スイカのようにドチャッと割れた。

直後、レナックを除く3人の居る場所が、魔法陣で取り囲まれた。しかしこの魔法陣、四角い。

「エンカウントか。」とレナック。「ターン制のバトル、HPが表示され、尽きた者は、魔法陣に引き込まれ、この世界からBANされる。」
「知ってることをわざわざ解説してくれてどうも。」とゲラッチ。

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37 :げらっち
2022/08/07(日) 15:28:52

RPG風バトルは、カシス&カリナの優勢であった。
それもそうだ。魔法陣内は彼らのホーム、正々堂々やる気などさらさらなかったのだから。

「盤盤盤盤俺野攻撃。盤盤盤盤俺野攻撃。」
「コンビネェショォン、アタァ~~ック!!!」
2人の一方的な暴力がゲラッチを襲った。ゲラッチは自ターンになるまで動けず、防御すらできず、ただ目を瞑って耐えている。
「ぐっ……!」だがゲラッチも気丈である。「効かないぞ、その程度かい?」
「うるさいのぉ~~!!」
カリナの激烈なキックが命中、ゲラッチは血を吐いた。
「ゲラッチ、HPが減っているぞ。このままだと不味い。俺を召喚しろ。」と、魔法陣の外に居るレナック。外部からの干渉はできない。
空中に表示されるHPは、カシス&カリナが9999、ゲラッチが164と、窮地であった。
「なあに、私のターンになりさえすれば、一発逆転さ。何しろ私はチートky……」
ここでゲラッチのターンに切り替わる。

「ショウタイムだ!」

「どうかな」とカシス。
魔法陣からジャランと鎖が伸び、ゲラッチの体を拘束した。ゲラッチが歯を喰いしばるや否や、肥大化したカシスの腕が、ゲラッチの腹部に強烈な殴打を浴びせた。
「ぐは!!」
「ターンなんて無視!!ずっと俺たちのターンだよぉ~♪」

ドゴォンと打撃音、鎖が破壊され、ゲラッチは崩れ落ちた。

HPが0になった。

「終わりだな。」
キャラキャラと笑うカシスとカリナ。

レナックは、くるりと背を向けた。「お前らがな。」

「ああ。」
ゲラッチは立ち上がった。
「終わりだよ。」

カシスとカリナは、ぽかんとしていた。
「は?……君のHPは0でしょ?」

ゲラッチの眼がギラリと光った。

「チート級ゲラッチワールド!!!!」

魔法陣が裏返り、真っ赤に染まった。炎が噴出し、ピエロとクラウンは業火に焼かれた。
「ギィヤァァァアアアア~~!!!!!!!!」

「馬鹿めが!!貴様らの虚を突くべく、HP表示に細工をしておいたのだ!!チートにはチートを!私のHPは∞、つまり貴様らはエンカウントした時点で、負けが決まっていたのだ!!!苦しんで、死ぬがいい!!!」

カリナはのたうち回り、カシスは跪いて、ゲラッチにすり寄った。
「助けてくれ……助けてくれ……」
「ほう、命乞いをするか。私は冷酷な男ではない。私に忠誠を誓い、メリルイ部の一員になるなら助けてやろう。私が世界を一統する手助けをするというのなら、生かしてやろう!!」

カシスは灼熱の地面に頭を擦り付け、呻いた。
「わかったー!!なんでもする!!たすけて!!!」

だがゲラッチは、
「やだね。」

ニヤリと、満面の笑みを浮かべた。
「私は冷酷な男だ。特に、荒らしに対してはな。荒らしに一片の情けもかけるか。地獄に落ちろ。」

「ひどいよーっ!!!」
カシスとカリナのHPが0になった。2人の亡骸は、炎と共に、魔法陣に吸い込まれていった。死体と魂さえも、この世界から抹消され、アク禁となった。

魔法陣は消え、ゲラッチはくるりと振り向き、その場を出た。
「仕事が終わった。」
「おい!俺の活躍が無かっただろ。」とレナック。

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38 :げらっち
2022/08/07(日) 15:31:03

真っ白い廊下を、2人の男が並んで歩いている。
1人はゲラッチ、そしてもう1人は、ネクタイをきっちり締めた、大柄な男性。
彼は真理雄。つまり荒らしをこよなく嫌う真理の英雄であり、つまりお偉いさんだ。

「お手柄だねゲラッチ君。あのカシス&カリナを永久アク禁にするとは。こちらとしても手間が省けたよ。」
「なあに、容易いよ。個人的な因縁の相手でもあったからね。それに、サクソフォーンには任せておけない。」
2人は歩きながら、握手を交わした。

廊下を抜けると、大きな円卓のある部屋に行きついた。
真理雄が椅子に掛け、ゲラッチがその対角線上に座った。
円卓の中央には、ワッフルが山のように積まれている。

「だが知っての通り、この真理類連邦には、まだ荒らしがゴロゴロいる。メテオ、ブレイザ、チャーミン、7ティーンなどだ。」
「7ティーンは悪い奴じゃない。」と、ワッフルをほおばりながらゲラッチ。「荒らし認定するのはまだ早い。あいつは追い詰められ、自暴自棄になっている。魔族の親類というだけで迫害を受けたのだから当然だ。懐柔し、仲間にできる。」
「レナックのようにか?」
真理雄は書類を綴りながら言う。
「私からしてみれば、あいつも荒らしの1人だ。何故君がいつまでも膝元に置いているか、理解できないというのが本心だよ。」
「では私も言うが、君も一部の荒らしと結託しているんじゃないかい?この連邦の均衡を保つために、毒をもって毒を制すという建前で。」とゲラッチ。
真理雄は書類から顔を上げずに、ニヤリと笑って言った。
「君こそ、改心した荒らしや魔族を引き込んで、謀反を起こそうという魂胆が見えてるぞ。メリルイ部長さん。」

ゲラッチは残るワッフルの欠片を呑み込んだ。少し大きかったようで、次の言葉を出すまでにタイムロスが生じた。
「ああ嫌だね。我らは保身ではなく、未来のために戦っているはずだ。そうだろう?魔法はやがて、至極一般的な物になるだろう。それを見越し、改革の準備がある。それだけだ。」

「未来とは、随分と不確定的だな。誰の未来だ?」と真理雄。

「世界の未来だとも。」とゲラッチ。

「はは、言ってくれるね。だがもし君が世界を荒らすと言うのなら、私は君を荒らしと捉え、それ相応の処分をする。覚えておいてくれ。」
真理雄は背中から生えている太い腕をチラつかせた。彼が処罰した「荒らし」の「魔族」から頂戴した、魔法の腕だ。

「ひゃ~、怖い怖い。」ゲラッチは両手を振った。
「せいぜい怖がっておけ。そうそう、ワッフルを食べたね?」
「ああ、こんなにあるんだから、良いだろ?」
真理雄はゲラッチの顔を見て、笑った。
「毒入りだよ。君なら食べるとわかっていた。君は今すぐに、7ティーンを討伐したくなるだろう。でなければ解毒剤は手に入らないのだからな。」
ゲラッチは諦めたように笑う。「やれやれ。」

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39 :迅
2022/09/19(月) 11:42:41

スプラの話してたら、色々思いついたんで書いてみる

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40 :迅
2022/09/20(火) 21:26:13

ノベリズムで投稿予定の小説の第壱話
まずは読んで貰って、感想貰わにゃ始まらねェってんで載せるから読んで感想くれ
設定を練りに練ってたら、仮面ライダーギーツと似た感じになったのは内緒

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8 :げらっち
2022/06/29(水) 01:21:43

━━━この仕事に、やさしさはいらない。


 プロローグ


 逢う魔が時。城は今にも攻め落とされそうだった。
 王城九代目当主、王城四郎今直(おうじょうしろういますぐ)は、天守にて、忠臣の報告を受けていた。
「殿、これで終りで御座います。敵ながら見事な山彦の術に、してやられましたなぁ。」
 忍者隊の頭でもある吉良(きら)という部下は、まるで他人事のようにニヤリと笑った。
 主殿も確実に包囲を狭められていた。火矢が射られる、ドカドカという不気味な音。
「終り?我には終りという言葉は存在しない。」
 今直は黄金の小刀を手にし、畳の上に胡坐をかいた。
「王城に伝わる家宝、“転生ちゃん”じゃ。これでハラキリした者は、五百年後に再び生を受けるという。二千二十二年になったら、おぬしの子孫が転生したわしを見つけ出し、再び仕えるのじゃ。」
「いいでしょう。」と吉良。「では殿、王城四郎今直様、お別れの時ですな。」
 今直は自身の腹に短刀を突き刺した。直後、介錯を受け、彼は絶命した。


 500年後。


 俺は、吉良生間(きらせいかん)。
 たまに自分の年齢をド忘れするアホがいるけど、俺は違う。俺の年齢は簡単に覚えられる。
 今は2022年。
 俺は22歳の新社会人。
 どうだ、覚えやすいだろう。

 俺が今日から務めるのは、ここ。寛風園(かんふうえん)という知的障害者入所施設だ。
 関東郊外にあって、40余名の障害を持った人たちが暮らしている。

 俺は事務所で挨拶をした後、居住スペースに通された。
 そこに住むのは重度の知的障害がある人たち、暴れることもあるからだろう、重い鉄扉は厳重に施錠されている。先輩職員がその扉を内側から開けてくれた。
 さて第一印象が大事だ。
 俺は入室と同時に、その場に居る全員に届くような大きな声を出した。
「今日から支援員として勤めさせていただきます、吉良と申し――」
 だが次の瞬間、俺の頭は真っ白になり、言葉が霧散してしまった。視覚と聴覚と嗅覚が同時に刺激され情報過多になった。

 想像以上だった。いや、俺は元々何を想像していたのだろう。そんなことも忘れてしまった。
 異形の人々が奇声を上げて歩き回り、ソファや床で捻じれ合い、棚の上で寝そべっていた。壁に頭を打ち付ける者もいれば、素っ裸の者もいた。
 外の世界とはまるで違う。俺は何か間違った場所に来てしまった。決して来てはいけないところに。一度来たら、後戻りできないところに。

 そしておぞましい悪臭が鼻を貫いた。ここはトイレだったのだろうか。違う筈だが。
 目の前の床に排泄物が落ちていた。犬の糞ではない、ヒトのウンチ。

 俺は退職を意識した。