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363.映画総合スレッド
 ┗473

473 :げらっち
2025/03/12(水) 12:20:24

31 5時30分の目撃者
第4シーズン最終回であり、本当に面白いと思えた最後の話にも思える…
『第三の終章』、『権力の墓穴』、『自縛の紐』、『逆転の構図』と、化け物クラスの神回を立て続けに作ってきた脚本家ピーター・S・フィッシャーの旧シリーズ最後の担当回。もっといっぱい作ってくれても良かったんだぞ?
フィッシャーは初登板の第三の終章では、シリーズ化第1作『構想の死角』を意識した回を作ってくれたが、今回は本当の第1作である『殺人処方箋』を意識して作ったようだ。
精神科医という犯人、女性共犯者というのは殺人処方箋と全く同じ。第1作へのリスペクトとさらなる挑戦で、自分のコロンボシリーズを締めくくったのだろう。

催眠術という奇抜な「凶器」についてはかなり賛否両論がある。
まあそれを言ったら『意識の下の映像』、『愛情の計算』など、更に有り得ない要素は過去にもあったので、これくらいで驚いてはいけないのだが。

浮気がバレたので夫を殺し、更に警察から逃れるために浮気相手さえ殺してしまうというのは、本末転倒に思えなくもない…
のだが、そもそもマーク・コリアーはナディアを利用していただけであり、「唯一無二の愛情」は注いでいなかったようなので、問題ナシ(?)

ミステリとしての質は相変わらず高い。
自宅パーティーでの対決は『意識の下の映像』を思わせるようなきわどさだし、コロンボの目の前で電話をかけて見せる犯人の度胸も◎。
実直でせっかちなクレイマーが偽の証拠に喰い付いても、一切相手にしないコロンボという対比が面白いw

ラスト、「目の見えない目撃者」はもはや歴史的。
「目撃者が犯人を目撃していたのではなく、犯人が目撃者を目撃していた」というのは最上の決まり手だった。

しかし、音楽担当がバーナード・セイガルになってから、音楽的魅力が激減してしまったように思う。
前作と今作がミステリの質の高さに反し地味な扱いを受けているのは、音楽のせいもあるような気がしなくもなくもない。



ここまでのゲラ流コロンボ解説一覧
第1シーズン
  >>342,343(もっとちゃんと語りたかった)
第2シーズン
 10>>341
 11>>351
 12>>472
 13>>359
 14>>364
 15>>367
 16>>372
 17>>374,375
第3シーズン
 18>>380
 19>>389
 20>>396
 21>>400
 22>>419
 23>>423
 24>>430
 25>>439
第4シーズン
 26>>446,447
 27>>450
 28>>453
 29>>454
 30>>460
新シリーズベストセレクション
  >>458,459,471

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341 :げらっち
2024/10/02(水) 12:04:24

刑事コロンボ感想
またかよ、と思うだろうが何度も見たくなるし、何度見ても新しい感想が生まれるのだ。

10 黒のエチュード
第2シーズンの第1話。
第1シーズンの殺人的高評価を受け、新たな気持ちでコロンボシリーズの第1話を作ろう!という丁寧さが見えた作品。
ファンの間では地味な評価を受けているが、個人的には「コロンボらしさ」満載で見ていてニヤケが止まらなかった。何故この回人気低いんだろう?
ラストが少々地味なのと、最後の瞬間まで犯人が潔くなく虚勢を張っていて、きざったらしいからだろうか(反対に、途中がつまらなくてもラストがキマっていればファンの評価は高めになる傾向がある)。

コロンボが犯人に目を付ける瞬間から、しつこく付きまとう様子、コロンボを見下していた犯人をイラつかせていく様子が丁寧に描かれている。
屋敷での「対決」は面白さに反して、犯人を1つも問い詰めておらず、訪問の理由が本当に不明である(但しパット森田の面白さとコロンボ登場時の曲のカッコ良さにより見るに値するシーンとなっている。この曲は『溶ける糸』のラストでも使われていた名曲)。

音楽を扱った回だけに全体的に曲が素晴らしく、ベートーベン「田園」も忘れ難い。
コロンボの愛犬初登場。今回は後の作品以上に常にぐーたらしている。本当に猟犬なのだろうか。そして何気にデカい。かわいい。
ベートーベンと名付けられかける(が、没になる)。
鳥も登場しており、今回は動物づくしだった。鳥は死んじゃったけど…

ジャニスはコロンボに出た女優の中で一番美人だと思う。

342 :げらっち
2024/10/02(水) 14:23:06

第1シーズンは実は一番面白かったシーズンだと思う。

1 殺人処方箋
記念すべき最初のエピソード。
既に完璧レベルでコロンボのキャラができあがっているどころか、第1話にして「応用」にさえ近い。
色々なエピソードを見た後に改めてこの第1話を見ると、更に良さがわかるかもしれない。この話あってこそ後のコロンボシリーズが成立したのだとわかる。
コロンボも犯人も非常に攻撃的。
被害者が実は生きていたり、突然第三者の自白者が現れるなど、プロットもうねっていくように飽きさせない。

2 死者の身代金
今回の犯人は女性だが、後の同情を買うような女性犯人ではなく、男性犯人顔負けの(色んな意味で)強い女性である。特に殺人を遂行して鼻歌を歌っているシーンなどは、男性犯人ではなかなか見られないサイコパスさである。
今回の犯人は命など金に劣る物と考えており、その傲慢さと異常性に足を取られ、コロンボとの対決に負けることになる。
ラストの対決は、共犯者から攻め落とした前作と比べても1vs1の構図となっており、コロンボの名言や曲のマッチ度もあり大変すがすがしい。「人間にはいくら金を積まれても売り渡せない物があるってことを、あんた知らなかった」
曲の良さも相まって私が最も好きなエピソードの1つ。墓場のシーンが物悲しい…

3 構想の死角
前2話がパイロット版だったので、テレビドラマとしてシリーズ化してからの実質的第1話。
若きスピルバーグ監督が、前2話を完璧に理解した上で独自に噛み砕いてエンターテイメント化した傑作。部屋を荒らすシーンまでもが様になっている。やはりスピルバーグはスゴイし、シリーズでレギュラー化するジャック・キャシディの画面映えもスゴイ。
但し、「構想の死角」という題名の意味がいまだによくわからない…今回の殺人計画はシリーズ中で最も死角や隙が無く、その完璧さこそが命取りとなったので、この邦題のセンスは謎である。

4 指輪の爪あと
4話連続で神回が続いている。しかも毎回印象を変えてくるからスゴイ。
前作の優雅な犯人とは違い、今回はどちらかというと努力で地位を勝ち得たというような野心的なインテリが犯人。演じるロバート・カルプはその憎々しさが天下一品であり、ジャック・キャシディと共にレギュラー化する。
被害者遺族であるケニカット氏の存在感も大きく、コロンボvs犯人vs遺族というパワーバランスの優れた三つ巴の対決が見られる。
そして犯人がコロンボを自身の探偵社に引き込んで手を引かせようとするという、他作では見られない最高に面白いプロットが用意されている。第1シーズンからギアを上げ過ぎたせいで後のエピソードが見劣りするくらいだ…

ラスト、コロンボとケニカット氏が去っていくシーンは曲の良さもあってシリーズ中最高のラストの1つだと思う。泣ける…

343 :げらっち
2024/10/03(木) 12:15:30

指輪の爪あと補足
一カ所だけ、コロンボの推理が飛躍し過ぎている所がある。
それ以外は本当に完璧。

5 ホリスター将軍のコレクション
4連続神回が続いた後に、いきなり地味な回が来てしまった…
のだが、駄作というわけではなく、きちんと風格とコンセプトのある作品作りができており、ムードの良さだけならかなり上位に来るほど。
旧シリーズ最悪クラスの犯人(全体を見ると同じく軍人である新シリーズのブレイリー大佐の方が更に悪辣)と、コロンボの大人な対決が見所。
但し45口径を使っているのに弾が死体にとどまっているというのは無理がある。
浮かび上がってくる死体、怖い…
ラストが余り盛り上がらないこともあって、推理の面白さという点では高得点は付け難いかもしれない。
サイコパス料理人のバートは『死者の身代金』と今回の2回のみの登場だったが、キャラが濃いのでもっと出て欲しかったというのが本音です。

6 二枚のドガの絵
ファンから『別れのワイン』と共に絶大な支持を誇る作品。
確かに、歯切れの良いラストはシリーズトップクラスだが、実はラストに重きを置いているためか細部は結構粗が多かったりする。
それでも、何度見返しても楽しめる名作であることに変わりはない。対決のテンポが小気味よく、犯人の煽り語彙のセンスがグレイト。「うちに帰って寝るんだねえ」ww
コロンボ入門編に是非オススメしたい作品である。
細かい点だと、クライマックスでコロンボがプジョーに乗ってエドナ邸に来るシーンの曲が素晴らしい。

7 もう一つの鍵
前作とは打って変わって、ファンからの評価が低い作品。前後の作品でこうも評価が分かれるのは珍しい…
ワガママな令嬢という犯人像、彼女の反応がヒステリー女の典型となってしまいコロンボもガンガン攻めることができず、対決に魅力が無い点などが低評価の理由だろう。
恋人の証言に頼った決め手も不人気の理由とされるが、個人的には愛憎のドラマの決着として良い落とし所だったと思う。
犯人がコロンボの命を狙うラストはいまいち。衝動的な行動なのだろうが、余りにもクレバーではない。

だが個人的には好きな作品の1つ。
犯行計画が他の作品には無いパターンだし、コロンボの見つける手がかりも悪くないし、何より曲が素晴らしいのだ。
レスリー・ニールセンが良い味を出していた気がする。犯人よりむしろコロンボとこっちの対決の方が見応えあるかも。

8 死の方程式
異色回。まず、大抵の回が都会が舞台なのに対し、今回は工場+山岳地帯の限られた空間を舞台にしており、印象に残るシーンばかり。
カメラワークなど演出も冴えていたと思う(屋上にワープする演出は印象に残る反面、意味不明だが)。
ジャズ調の曲が良いし、陽気かつ邪悪という新しい犯人像も良い。犯人役のロディ・マクドウォールは『ポセイドンアドベンチャー』のエイカーズ役(公開年もピッタリ同じ)も光ったが、若そうに見えて実は44歳であり驚く。
邪魔な人間の排除の仕方が強引でやや気になるが、そこは会社のドロドロを表していると考えれば納得がいく。
ロープウェイのラストもたいへん印象に残る。
ちなみに私が最初にちゃんと見たコロンボがこの回だった…これも入門編として悪くないかも。

9 パイルD-3の壁
第1シーズン最終回にして、コロンボを演じるピーター・フォークが監督を務めた唯一の回。
殺意が生まれる瞬間の描写や、他の回では見られないような奔走するコロンボの描写はフォークの才能とコロンボ愛を感じる。
ラストも、いきなり事件解決するのではなく、タイヤがパンクするサスペンス(無くても成り立つ)をアクセントとして挟んだのはなかなか効いていたと思う。

「死体なき殺人」というのは第1シーズンラストを飾るにふさわしい大命題である一方、この犯行はそもそもコロンボレベルの名刑事が登場しない限り計画自体が成り立たないという「コロンボありきの殺人計画」になっているという若干の穴がある(まあこれはフォークの落ち度というより脚本の落ち度に思えるが)。
ゴールディは良い味出していたが、事件解決のシーンに居ないのが残念…最後は男と男の対決(犯人曰く水と油)にしたかったのかもしれないけど。

351 :げらっち
2024/10/09(水) 12:01:12

最早コロンボスレになりつつあるが…


11 悪の温室
コロンボが坂を転げ落ちるシーン(3度は見返しちゃう)、凝ったプロット、ウィルソン刑事の面白さ、曲の豪華さ、と密度の濃さを感じる回。
コロンボファンは『別れのワイン』や『忘れられたスター』のような感動回ばかり持て囃さずに、今回や黒のエチュードのようなしっかりしたミステリができている回を評価すべきではないだろうか。

フレデリック・ウィルソン刑事(今回はフレディと呼ばれているが、後の回ではウィルソンと呼ばれている)はコロンボとの対比が最高に面白いのでもっと出してほしかった。没になった脚本や小説版ではもっと出ているらしい。
ウィルソンが調子に乗っちゃう中でコロンボが1人淡々と独自の捜査を続ける終盤などは、他の回では一切見られない面白さだ。
一方で犯人役のレイ・ミランドは『指輪の爪あと』の時と比べ見劣りしていた。いつもの犯人のような寛大さやプロフェッショナルさに欠け(一応蘭のエキスパートではあるが)、初登場時からカリカリしており威厳が劣った。
まあプロット的に温室が必要不可欠だったので、蘭の愛好家という設定は必然的だったようにも思うが、他に何か犯人の風格を表す設定やシーンがあっても良かったように思う。
浮気をバラしちゃう悪意のコロンボ…

ラストは緻密なフラグもあり素晴らしいが、犯人の表情が微妙なので少々物足りない!?

359 :げらっち
2024/10/23(水) 10:05:58

13 ロンドンの傘
イギリス出張編。コロンボがアメリカを離れたのは今作と『歌声の消えた海』(船上)、『闘牛士の栄光』(メキシコ)のみ。
この作品でしか見られないイギリスの空気感と、前3作の更に上を行くような緻密かつ捻ったミステリでかなりの人気を誇る。

男女共犯との純粋対決は旧シリーズでは唯一であり(殺人処方箋は共犯だがパワーバランスに偏りがあり過ぎる)、コロンボが管轄外で通常の捜査ができないこともあり、対決模様は独特。
普段の対決はチェスのようだと評されることが多いらしいが、今回の対決はレースと評されているのも納得できる。屋敷前で車がすれ違うシーンなどまさにそれ。
(ちなみに通常の対決はチェスであって将棋ではない。将棋は大軍を動かす物だ)

舞台俳優である犯人2人はキャラが濃く、芝居じみた演技が上手すぎる。
ニコラス・フレイムは旧シリーズの犯人としてはかなりのサイコパスだと思う。ラストは本物の狂気だし(『死の方程式」のロジャーはまだ正気を保っている)。
サイコパス対抗馬は『第三の終章』のエディ・ケーンだろうか。

ラスト、気が狂ったシーンでリリアンの台詞が意図的に1つカットされていた。恐らく放送禁止用語を言ったと思われる(ただし白痴というワードは修正されていない)。

レースであるから直接対決の機会は少なくなってしまっているが、楽屋でコロンボが2人の犯人と交互に対決していく名シーンは唯一無二。
あの2人コロンボのせいでパーティーに行き損ねたのだろうか…

脇役陣も非常に豪華。
執事タナーはかなりしたたか。仕事への熱意が強すぎる。にこやかにフレイムたちの部屋に入り込んでくるシーンは恐怖しか感じない。
サイコパスのフレイムにさえ恐れられるタナー…ラスボスこの人じゃね?

ダーク刑事部長も大変魅力的。
あんなにコロンボを舐め切っていたのに、ラストの「やったな?」で全てひっくり返ったと思う。
あの「やったな?」に感服、尊敬、親交、多少のからかいの全てが込められていたと思う。その点吹き替え声優もお見事。
新シリーズの数少ない名作『だまされたコロンボ』で、ダーク部長との仲が健在ということがわかったのも良かった。

決め手となる罠がセコい、という若干の指摘があるようだが、私はむしろ最上の決め手と思った。あれだからこそ真面目人間のダーク部長がコロンボを敬服するようになるのだ。
そもそもコロンボとはセコいものだ。

イギリス観光シーンは楽しい物ではあるが推理に関係なく、少々の間延びを感じると思っていたが、改めて見返すと気にならなかった。
そして何より印象に残るのが曲の素晴らしさだ!

追伸・カミさんは一緒に来ていたようなのだがずっとどこに居たんだろう?

364 :げらっち
2024/10/30(水) 11:36:33

>>363
私が見ても似たような批判的感想になったと思う。

そのような内容で一定数のファンが付き、商売としては成り立っているというのだから笑えるね。
これなむ推し文化だ。


ここからは内容に重きを置いたテレビ映画、コロンボの感想

14 偶像のレクイエム
大抵の推理作品は視聴者に頭をひねらせる謎解きや、犯人のバックグラウンドに凝っていて、「ラストで犯人を懲らしめる快感」が得られないことが多い。
だが刑事コロンボは魅力的な犯人との対決と「ラストで犯人を懲らしめる快感」に重きを置いているので、見終わった時スカッとする。

…しかし今作は、シリーズで初めて視聴者に対する「大きな隠し事」が取り入れられたため、ミステリ的には上質だが、コロンボ的な対決の快感は得にくい話になってしまっている。
コロンボシリーズは隠し事が一切存在しないからこそ視聴者は安心して見ていられるのだが。

犯人は女優であり、シリーズで唯一前後の話で犯人の職業が被ってしまっている。
前作『ロンドンの傘」のリリアンは強気で魅力的だったが、今回のノーラはやや弱く、後発の『忘れられたスター』のグレースと比べても存在感が薄いと言わざるを得ない。
それでも彼女のファンであるコロンボとの掛け合いなど、魅力的なシーンはあるのだが。
どちらかというとメル・ファーラーとの対決やケヴィン・マッカーシーの貫禄が魅力的だった。

現在と過去の殺人が交錯するストーリーはわかりにくく、一度見ただけで理解するのは難しい。自分は繰り返し見てこの作品の良さがわかったが、そうでない視聴者には良さがわかりにくく、それがこの作品の低評価の理由になっていると思える。コロンボは繰り返し見てこそ楽しめる作品が多いということを知ってホシイ…
今作の2つの大きな要素をまんま分岐させたのが『忘れられたスター』と『黄金のバックル』と言える。

それと音楽が素晴らしい。
シリーズ45作の中でこの話のみ何故かEDに音楽のクレジットが存在しないが、恐らく『悪の温室』のオリヴァー・ネルソンの楽曲をベタ移植したと思われる。素晴らしい一方でしっとりしたラストでの壮大な曲など、ミスマッチと思える箇所が見られた。

邦題はやや気取り過ぎなような…

367 :げらっち
2024/11/08(金) 10:18:53

15 溶ける糸
『別れのワイン』『二枚のドガの絵』『忘れられたスター』に次ぐ永遠の四番手であり、四天王の一角。というほど人気が高い(5位以降はばらけがち)。
『二枚のドガの絵』のハイ・アヴァバック監督が再登板し、今回はドガ以上に「ラストの快感」にこだわって作られたのがわかる。
ラスト10秒での大逆転、音楽、キレのいいEDへの突入はシリーズでも最も印象に残る物の1つ。

一方で個人的には少々物足りなさも感じる。理由は

・脇役の層の薄さ
他の作品でよく見られる「犯人でも被害者でもない味のある脇役」が不在だったように思う。特に第2シーズンはここまで脇役が充実していたから特に。

・犯人が冷静すぎる
これは今作の最大のミソでもあるのだが…
いつもは犯人が段々と追い詰められていく、焦っていく演技が見物なのだが、今回の犯人メイフィールドは事態が刻々と動いていく中、表情1つ変えない。自分には少々物足りなく感じた。もっと追い込まれた顔が見たい!
しかしこれは「一流心臓外科医という、冷静さを必要とされる職業」として必然的あり、かつ犯人の大きな個性でもある。
コロンボが目を付けるのも、「殺人の知らせを聞いて平然と時計を直していた」という冷静すぎる行動からだし、決め手も「犯人が取り乱すはずがない」というものなのだ。

そしてそんな人間離れした犯人に対し、コロンボはシリーズ中でも唯一激怒するのだ!(『自縛の紐』、『殺人処方箋』、『死者の身代金』でもまあまあ怒っていた気もするが)
これはハイデマンの命が懸かっている一刻の猶予も無い状況だったからだし、犯人に再手術させる(ハイデマンの命を助ける&犯人にボロを出させる)狙いもあったと思う。
この「怒る」シーンは中々の名場面。

犯人のキャラについては『スタートレック』のミスタースポックのパロディとされる。宇宙人だからあんなに冷静なのだ。
スタートレックを見ておけばもっと楽しめるようになるかも…

ハリーはどうなったのかしら。シリーズ唯一の生死不明者。
まあ麻薬で錯乱している状態なら、生きていたとしても証言は信憑性が無いし、メイフィールドにとっては生死は関係無かったんだろうけど。

372 :げらっち
2024/11/14(木) 15:36:54

16 絶たれた音
前作同様脇役の層の薄さを感じるものの、犯人と被害者の独特の対立構図により飽きさせない。
ローレンス・ハーヴェイ演じるエメット・クレイトンは病的なまでに神経質でプライドが高いというキャラが唯一無二(そもそも聴覚障害者という設定が他にない)、チェスに関しては天才的だがそれに関しても被害者に遠く及ばない、という構図が面白い。
トムリンは全被害者の中でも特に憎めなく、落ち度がない紳士だが、執拗に命を狙われて可哀想だった…

今回の殺人動機は「金銭」「地位」「保身」「復讐」のいずれでもなく「恐怖」という独特の物だが(保身にも近いが)、2人の演技が上手すぎて納得するのだった。
ローレンス・ハーヴェイはこの作品が放送された年にガンで亡くなってしまっている。あの顔色の悪さは演技ではなかったのだ。

レストランでのチェス対決など見どころが多く、犯人・被害者・コロンボのパワーバランスが最も良い作品の1つだったと思う。
ラスト間近の、チェスプレイ中の対決シーンもかなりの名シーン。
コロンボが自分の頭を小突いて「ここが違うんだよ!」と示すのは、コロンボにしてはかなり露骨だったと思う(今回コロンボは犯人に出し抜かれて目の前で被害者を殺されてしまっており、前作の時ほどではないが内心怒っていたと思われる。コロンボの目の前で人が死ぬのは旧シーズン唯一)。
チェスの王座を巡った殺人が起き、それを解決したコロンボは、チェスの王者よりも更に知能が高い存在、というわけだ。

ラスト、犯人が言い返せなくなった瞬間も、コロンボは勝ち誇ることなくむしろしょんぼりとした表情をしている。
旧シーズンではこういう、「勝利しておきながら殊勝なコロンボ」をよく目にすることができ(『野望の果て』、『第三の終章』等)、新シリーズのニマニマコロンボとはまさに対極と言える。コロンボは別に犯人を打ち負かしたくてやっているのではなく、単に絡まった糸をほどきたいだけなのだ。

今作は原作者であるレヴィンソン&リンクが久々に筆を執っており、これは発展を遂げてきたシリーズの原点回帰&新たな挑戦状のつもりだったのだろう。
最初の殺人が未遂に終わりドギマギする犯人、時間差での死、というのは倒叙ミステリならではの緊迫感は、第1作『殺人処方箋』を更にパワーアップさせた物だった。
前作『溶ける糸』に対抗して作られた、というのもなるほど納得。
個人的には今作の方が好み。人気は溶ける糸の方が高いけどネ。

犬が可愛い。ベンソン医師の所に居たはずなのに何故突然現場に入ってきたのか?そして階段を駆け上がるアクションシーンも。

この時代(70年代)から「神技(かみわざ)」という言葉があったことに少し驚いた。
すごいことを「神」と形容するのは最近になってからだと思っていたのに。

374 :げらっち
2024/11/20(水) 11:50:58

17 二つの顔
このエピソードに関しては解説したいことが沢山ある。
誰も読んでないだろうから、自分のメモとして詳しく書かせてもらう。

まず、コロンボで初めて「犯人当て」要素を盛り込んだエピソードだという事。
時系列通り初めに視聴者に犯行を見せておく「倒叙形式」だが、実はその犯人は双子であり、そのどちらが犯人か、というミステリになっている。
視聴者と違い犯行を「目撃」していないはずのコロンボが、2人目のマーティン・ランドーが現れた瞬間に首をひねるシーンなどはかなりメタ的。

着地点としては、「実は2人は共犯だった」という更に意外な所に行きつく。
その要素に拘り過ぎて、肝心の「ミステリ的面白さ」「1vs1の対決の面白さ」の両面が損なわれてしまった気がして、それが低評価の理由だと思う(単に暗いのと、ラストが冴えないのもあるだろうが)。

しかし丁寧に見返すと、ミステリ的にはかなり緻密に作られているのがわかる。脚本家のボチコ先生の腕は確かであーる。
例の警報装置は「外部から侵入しようとすると鳴るが、中から外に出る分には反応しない」のだとしたら何の矛盾も無い。
但しこの点については描写が不十分であり、どちらかというとバトラー監督に非があると思える。

わかりにくい「犯行の手順」についてまとめると…
①デクスターの振りをしたノーマンが屋敷を出るのを、ペックさんに目撃させる。
 但しこれはデクスター本人が屋敷を出て、ノーマンが潜んでいても成り立つ。ていうかその方が確実(もしノーマンがデクスターに化けていた場合、例え一卵性双生児でも古くからの付き合いであるペックさんには見抜かれる恐れがある為)。

②屋敷に残留した双子の片割れが、警報装置をOFFにし、もう片方も屋敷に侵入。

③片方が窓からペックさんの様子を見る。
 足跡が偏平足だったため、関係者のうち偏平足だった「双子のどちらか」が犯人と絞り込まれてしまう。足跡を残してしまうというのは、他の犯人では見られないような迂闊さである。
 もし双子の片方の単独犯だったなら、もう片方に罪を着せる狙いが出てくるが、共犯だったらそもそも足跡を残さずに犯人を絞り込ませない方が賢明だろう。
 警察を「双子のどちらが犯人か」で迷わせてかく乱させる狙いがあった…のだとしても、ドラマを面白くするためとはいえ展開的には無理が感じられる。

④ノーマンorデクスター、風呂で叔父を感電死させる。ブレーカーの所で待機していたもう片方がすぐに電気を復旧する。
 わざわざ手の掛かる犯行にしたのは、心臓発作で死んだと見せかける為。まあタオルが湿っていたという理由でコロンボにすぐバレるのだが。
 更にコロンボは、TVの復旧の速さから犯行は2人がかりで行っていたことも看破する。

⑤ノーマン&デクスター、叔父の死を運動中の心臓発作に偽装。

⑥ノーマン&デクスター、警報装置をONにし、屋敷から去る。
 中から外に出る際には警報が鳴らないとすれば、矛盾は無い。

…となっており、「双子にしかできない犯行である必然性」「2人でしかできない犯行である必然性」があり、かなりよくできているのだとわかる。
コロンボは、デクスターの「リサとハサウェイ弁護士が共犯なのではないか?」という話を聞いて初めて共犯を疑い、「電話は1度しかしていない」という証言に反し通話回数が20回以上あったという「嘘」を決め手としている。納得はいくのだが、単なる通話回数ではまだ言い逃れできそうな上、ラストとして地味すぎる、という問題はある…

375 :げらっち
2024/11/20(水) 11:51:13

それに、全体的な暗さも低評価の理由だと思う。
コロンボには暗い雰囲気の話がちょいちょい出てくる。
『死者の身代金』、『もう一つの鍵』、『悪の温室』、『偶像のレクイエム』、今作、『第三の終章』、『ビデオテープの証言』、『黄金のバックル』などだ。
それらは『偶像のレクイエム』と『第三の終章』以外、1つの大きな屋敷を舞台としており、「屋敷物」と言われたりする。この作品群は何故か評価が低い傾向にある。私にとっては好きな作品ばかりなのだが…

今回は暗いという以上に殺伐とさえしている。
ペックさん、リサというコロンボを毛嫌いしている女性が2人もおり(ペックさんに関してはコロンボに「殺してやる!」とまで言っている)、ハサウェイ弁護士もギラギラしていてコワい。
死体が自転車を漕いでいるシーン、リサが転落死しているシーンはコロンボ史上最も怖いシーンの1つかもしれない。
関係者6人中2人死亡、3人逮捕というのも他に例が無い。
リサに関しては双子に殺されたのか、自殺したのか、事故死したのかさえ不明。
殺されたとも見られるが、何故かコロンボに追及されていないし、自殺説の理由としては
・クリフォードを心から愛していたため後追い自殺
・警察に第一の容疑者と疑われていると聞いてヒスを起こした(その場合間接的ではあるがコロンボが死に追いやったことになってしまう)
などがあるだろう。
後はベランダでストレッチをしていて勝手に落ちたか(?)(小説版では事故死扱いらしい)

演技面だが、マーティン・ランドーの演じ分けはとにかく見事。
双子のキャラが分かりにくいという意見もあるようだが、私はそうは思えなかった。
『ロンドンの傘』の時のように、2人との交互の対決、のような物があったらもっと良かったかもしれない。それだとわかりにくいか。
料理のシーンは面白いものの、あの長さで本筋と全く関係が無いというのは旧シリーズでは珍しい(新シリーズはそんなシーンばっかりだったが)。あのシーンはオールアドリブなんだそう。料理中にも対決していたらもっと面白かったかもしれない。
「殺人的!」というコロンボのセリフは殺人的名言。

380 :げらっち
2024/11/27(水) 11:23:54

18 毒のある花
第3シーズン開幕回。
第3シーズンは『野望の果て』『権力の墓穴』のようなリアルかつ骨太な回と、
今作、『意識の下の映像(潜在意識操作)』、『第三の終章(リアル殺し屋、未知の爆薬)』、『愛情の計算(ついにロボット登場)』のようなファンタジー要素を含む回が混在するという、不思議なシーズンになった。

今回は「しわが消えるクリーム」というオーパーツの登場に難はあったものの、基本は押さえられた佳作になったと思う。
犯人を疑うきっかけ、手掛かり、そして犯人を現場に結び付ける決め手、というコロンボらしい詰め寄り方が丁寧に描かれている。

例の雑誌に指紋が残らなかったのは謎だが…
犯人が指紋を拭きとる描写があるので、後で雑誌の指紋も拭った可能性はある(雑誌を持ち去る方が遥かにいいし、あの重要な証拠を置き忘れてしまうというのは前作の足跡に続いて迂闊であるが)。

対決面も、女性犯人物にしては珍しくコロンボがねちっこく攻めており見所がある。
(犯人がヒスばかり起こす『もう一つの鍵』、『秒読みの殺人』、犯人をいたわり過ぎてしまう『偶像のレクイエム』、『忘れられたスター』など女性犯人物は対決色が薄いものが多い)

クリームを巡って2人も殺した犯人が、捕まるのを恐れて証拠であるクリームを抹消してしまう(しかも捕まる)というのは、本末転倒で皮肉なドラマとして面白いと思う。
但し検査に回した微量のクリームが残っていたとしたら、マーチソンがそれを分析・量産し独り勝ちする場合も考えられるが…

役者面もかなり豪華。
強烈なマーティン・シーン、出番は少ないが貫禄のあるヴィンセント・プライス。
そしてフレッド・ドレイパー、ブルース・カービィ、ジョン・フィネガンという、コロンボシリーズ5大脇役陣のうち3人がそろった回である(後2人はヴィト・スコッティ、ヴァル・アヴェリー)。

この豪華メンバーによる、『死の方程式』以来の大会社のドロドロが描かれている。
脚本的には方程式より今作の方が緊密だと思うが、方程式は陽気かつ残酷な雰囲気で人気が高いのに比べ、今作の人気は微妙…

ちょっと惜しいのが、ラストのセリフは余計だったと思う。
犯人とコロンボの目線のかわし方が秀逸だっただけに、何も言わずに去った方が余韻があって良かったと思う。

それと、ほとんどの回の吹き替えが上手く聞きやすいのに、今回の犯人の吹き替えは非常に聞きづらかったと思う。

何故か評価されることは少ないが、これはまあまあ良い出来だったと思う。
真のコロンボファンを目指すには、こういう作品の良さがわかるようにならなければならない…ということがよくわかった。

389 :げらっち
2024/12/03(火) 22:02:05

19 別れのワイン
コロンボファンから絶大な人気を誇るエピソード。
ピーター・フォークも、コロンボの原作者レヴィンソン&リンクも、青山剛昌もこのエピソードが最も好きらしいという、愛されたエピソードである。

個人的にはこのエピソードだけが突出して人気が高い理由はそこまでよくわからないのだが、それでも名作だということはわかる。

恐らく人気の大きな理由は、ワインを題材にした上品なエピソードだということと、コロンボ初の「感動のラスト」が拝めるエピソードだということだろう。
特に後者は、今後何作か作られる感動編の第一作となったこともおさえておきたい。

細かい評価点も沢山ある。
何より今回は、全登場人物の会話のセンスがいつになくハイレベルである。
ユーモアにも富んでいるし、エイドリアンの少し切ない人生観の表れたセリフも、何度も聞きたくなる物ばかり。
日本語版はエイドリアンの吹き替えも大変良かったと思う。

手がかりも、天気という1つのキーワードからいくつも紡ぎ出しているのが素晴らしい(雨、風、暑熱)。
殺人直後の高揚で手が震え、デカンターに移す作業ができなかったというのも地味に冴えた手がかりだと思う。

愛したワインに足元をすくわれるドラマは皮肉だが、1つどうしても納得できない点がある。
ワインが命より大事な犯人が、ワイン庫に大嫌いな弟を閉じ込めて殺す、というのがどーしても納得できん。
弟が暴れてワインが全滅したかもしれないし、何より死ぬほどワインを愛していながら、ワイン庫を殺人の舞台&道具にしようというのがどうにも理解不能。
私なら最も大切な物と最も嫌いな物を同じ空間に置くなど、絶対しないが。
結局その行為に足元をすくわれるし。

何はともあれ、切ないラストは見物。
ワインを愛しすぎて人生を狂わせ、そのワインにも見放された男は、最後にコロンボのワインを味わい、そのボトルを抱き連行される。
ワインは貴族のお飾りでもなければ殺人の道具でも海に投げ捨てる物でもなく、ただ飲んで味わうものだということを思い出すのだ。

ちなみに今回は、コロンボ準レギュラーのヴィト・スコッティ初登場回でもある。
あれがコロンボと示し合わせた演技とは到底見えないのだが…

そして警察署に居るコロンボが描かれるのも、今回が初。

396 :げらっち
2024/12/11(水) 11:36:26

20 野望の果て
私が最も好きなエピソードの1つ。
犯人をじりじり追い詰めていく、焦らせていくというコロンボらしい戦法が丁寧に濃密に描かれている。
犯人像がやや人間臭すぎる、間抜けすぎるという指摘も存在する。確かに最後の自滅があほすぎる(コロンボでなくとも気付けるだろう)という問題点はあるが、でもジャッキー・クーパーは大好き。

それから90分尺あるあるとして、尺伸ばしシーンが見受けられるのも若干の問題点。
歯医者、採寸(これは唯一ミステリに関係しているが)、車の点検の3シーンは露骨な尺伸ばしに思える。
そもそもヴィト・スコッティが出るシーンはどれも尺伸ばしの可能性がある…(彼は5回登場しているがいずれも90分尺)

まあ今作が名作であることに変わりはないのだが。
選挙中の対決という構図が素晴らしいし、3度に渡る犯人との対決はどれも魅力的。

『悪の温室』のグローバー刑事が何故かバーノン刑事という別の名で出ているが、ほとんど同じ役回りを与えられており、実質的に同じ役と言える。
この2作は監督も同じで、本質がかなり似通っている。
悪の温室は誘拐事件の捜査、今作はヘイワードの護衛というもう1つの任務と同時並行でコロンボの殺人捜査が行われている、という点が似ているのだ。
そしてその2つの事件の橋渡しをするのがグローバー/バーノン刑事となっている(悪の温室はウィルソンも居たが、彼の再登場はかなり先までお預け…)。
この2作では他の刑事たちが間違った真相に喰い付く中で、コロンボがただ1人真相に迫って行き真犯人を逮捕する、という流れが同じになっている。

ラスト、コロンボが犯人に対し「はい」を5回繰り返した後で「いいえ」の一言で状況をひっくり返してしまうという演出もかなりお見事。
「いいえ」と言われた直後から犯人は一言も発しておらず、完全に言い返せなくなっているのだ!!
そしてラストのラスト、もう何も反論できずパチッと目を瞑る犯人、(途中はネチネチ言っていたのに)最後はダメ押しをせずきれいに切り上げるコロンボ、という対決の切れ味が素晴らしかった。

400 :げらっち
2024/12/17(火) 22:30:41

21 意識の下の映像
序盤はこれでもかというくらいにテンポが良い。
まず犯人と被害者の関係だが、良い意味で「いつも通り過ぎ」、詳しい説明は省くという大胆な省略がされている(「殉教者は死なねばならんよ」「じゃあ殺すか?」に全てが込められている)。
コロンボシリーズの犯人は何のためらいもなく殺人を犯す者がほとんどだが、今回は特に犯行がスムーズ。殺しも3回目ともなると慣れた物なのだろうか。
コロンボが犯人に近付く描写もかなりラフ。これはロバート・カルプが3回目の登場=コロンボと犯人は既に知れた関係、というメタ的な省略にも見えてしまう。

以上のように前半はスマートだが、後半になるにつれ知的対決が加熱し、前作と同じかそれ以上に「しつこい」コロンボ戦法を楽しむことができる。
シリーズ中でも一番くらいに犯人と一緒に居た時間が長かった気がする。
対決回数は驚異の7回!スーパー、車中、ゴルフ場、と場所を変え対決していくのは飽きさせない。そもそもスーパーのような庶民的な施設が出ること自体がシリーズでは珍しい気がする(大体上流階級社会が舞台なので)。

また、今作は今までの作品の多くからコロンボらしい要素を凝縮している。そのためか「いかにもコロンボ」というような内容になっている。


【過去作要素の例】
犯人が被害者に対し不法行為を働き、それを告発されそうになったから殺すという動機→『指輪の爪あと』
犯人が大きな会社のボス→『指輪の爪あと』
被害者の妻が反抗計画に利用される→『アリバイのダイヤル』
犯人に近しい女性(バブコック嬢、タニア)が居るが、犯人によって遠くに追いやられている→『アリバイのダイヤル』
第三者が犯人に目星を付け、金を要求し、口封じのために殺される→『構想の死角』
犯人が凶器を大胆にも陳列している→『ホリスター将軍のコレクション』
犯人を犯人と仮定した、スレスレの話法→『黒のエチュード』
犯人の冷静さが手がかりとなる→『溶ける糸』
最終的にはたった1つの物的証拠が決め手となる→『溶ける糸』


そもそも犯人が、コロンボの犯人像のパイオニアであるロバート・カルプなのだからコロンボらしくなるのは当然と言える(『魔術師の幻想』といい、ロバートやジャックの3度目の出演はサービスシーン旺盛な回になっている)。
犯人の名前も「バート・ケプル」と、役者の名前をもじったものになっている。
終盤、コロンボが一度だけ「ケルプ」と呼んじゃっているが、視聴者サービスなのかただのミスなのかは不明(原語版ではちゃんとケプルとなっているので、恐らく日本語版のただのミス)。

後半の、コロンボが犯人の手を、犯人がコロンボの腹の内を互いに読んでいく応報がかなり面白い。これはコロンボとカルプという、「知れた仲」だからこそできたことだろう。
コロンボはケプルが犯人だと知っており、ケプルもコロンボが自身を犯人だと見抜いていると知っていながら、決定的証拠が無いために互いにギリギリまで手札を晒して攻防していくのだ。それを踏まえると車中やゴルフ場でのセリフのやり取りは、ニヤケが止まらなくなるくらいに面白いだろう。

一方で、今回の主軸となる「サブリミナルによる潜在意識操作」は同じシーズンの『毒のある花』や『愛情の計算』と並び少々SFチック。アイデアは面白いが、無理があると言わざるを得ない。
犯人は口径変換装置(そんなんあるの?)を処分した方が良かっただろうし、コロンボも、あそこまで隠し場所の目星が付いているなら家宅捜索の令状を取った方が早いし、そもそもサブリミナルで水を飲ませるならともかく、凶器を取りに行かせるなどという効果が出るとは思えないのだ。
今作は対決こそが醍醐味であり、ラストはオマケのように思える。

実は今作の脚本家は「コロンボシリーズの大ファン」だったそうで、だからこそシリーズの諸作に敬意を払った今作が生まれたのだろう。
今作は「上質な二次創作」にさえ近い。
コロンボ初心者が見ても満足でき、コロンボ玄人が見ると更に唸ってしまうという、佳作中の佳作と見ることができる。

419 :げらっち
2024/12/25(水) 11:47:17

22 第三の終章
ジャック・キャシディ2度目の登場。胡散臭さUP。
彼は、「見栄えは良いが実は才能が無い、虚栄心に満ちた犯人」を演じさせたら右に出る者は居ない!

今回は名脚本家ピーター・S・フィッシャー初参加ということで、シリーズ化第1作『構想の死角』を強く意識していると思われた。

以下、2作の共通点。
・言わずもがな、ジャックが犯人
・犯人の職業が小説関連だが、犯人は売り込むだけで執筆能力は無く、相棒に全てを書かせている
・その相棒が手を切ろうとしたため、保険金をかけて殺す
・被害者の小説を利用しての犯行(今回はエディの爆弾)
・シャンパンを使っての第二の犯行
・犯人の文才の無さが手掛かりとなる
・被害者が残した文章が犯行を暴く決め手となる
・題名の意味がよくわからない

なお、物悲し気な音楽も、構想の死角を意識しているように思えた。犯人が被害者を脅すシーンでは、構想の死角でリリーがケンを脅した時と同じ曲が使われていた。
ビリー(・ω・)ゴールデンバーグが担当した回の音楽はどれも素晴らしい。

このように、今作は構想の死角を意識し、更にパワーアップさせたような内容に思えた。
それなのに何故か今作は構想の死角の足下にも及ばないくらい、ファンからの人気が低い…何故じゃ!!

今作のミステリーとしての質は高く、犯行計画はシリーズ中でも最も複雑かつ緻密。だがその複雑さ故に評価を頂けていない気がする。
今作は最終盤になるまで犯行計画の全貌が見えず、私も初めて見た時は「??」と思ったが、何度も見返していくうちにかなり面白い作品だと思ったので、是非繰り返して見るべきである。別れのワインの人気を1割でもいいから分けて欲しい…

ちなみに今回は、被害者にリアルミステリー作家を起用するというお遊び要素があったが、役者じゃないだけあって演技の下手さ・存在感の無さが目立ってしまった。やはりプロの役者はスゴイ。

それから演出面は妙に尖っていたと思う。
特に冒頭の爆弾演習シーンでの、爆発するたび画面が一時停止する派手なオープニング、犯行が行われる直前の、画面を3分割しての進行などである。
画面分割に関しては、リアルタイムに事が起きているのを表現したかったのだろうが、同時に3つの画面を把握するのが難しく、余計に分かりにくくなってしまった気がする。ていうかこんな表現他で見たこと無いよ…

どうでもいいが、「クレイマー」という名の別の人物が出ている。

423 :げらっち
2025/01/08(水) 11:41:35

23 愛情の計算
ロボット・犬・スペルバーグ少年と、子供向けか?と思えるような要素がそろっている作品。
特にロボットの存在はSFじみており(コロンボのボイスレコーダー導入もそれに寄せたのか?)、この話だけは認めない、というファン層も居るほど。
確かにロボットによるアリバイ工作は、当時からしたら奇抜で受け入れにくかっただろうし、今見返すとローテクという、なんとも中途半端で説得力の無い物になってしまった。

他にもミステリとしての弱さがある。
葉巻で犯人を、パイプで犯行現場を特定するという、二種の煙草に拘った推理は、面白くなくはないが安直に思える。

そしてなんといっても犯行のよくわからなさが問題。
まず、リスクを犯してまで車で轢き殺す意味がわからん。殺害方法は他にいくらでもあったろうに…
その後部屋に矛盾した痕跡を残していくのは、わかりにくいものの、一応捜査をかく乱する目的があったらしい(コンピューターで考案された殺害計画、という設定らしいが、肝心の部分が描かれていない)。
そして、わざわざロスの車を使っておきながら、車の傷を身を挺して隠すというのが謎。ロスに罪を擦り付けたいのか、研究所外の人間の犯行に見せかけたいのかがワカラナイ。

一番の問題点はラストが余りにも強引すぎる点かもしれないが、私はこの点は受け入れられた。
今回の犯人は、シリーズ45作の中でも数少ない「愛情を知っている犯人」だった。だからこそ、この犯人のみに通じる手段として、あのような手を用いたのだ。
例えば、『殺人処方箋』のレイ・フレミングが相手ならこのようなにわか芝居を打ったところで絶対に自白はしなかっただろう。
だから今回のみの特例として、あの手段は合理的な解決法だったと思える。

そもそも子供が居る犯人は他にほとんど居ないが、これより前には『死者の身代金』があった(養子だが)。
この時は愛情0(というかマイナス値)というのが対称的で興味深い。

430 :げらっち
2025/01/15(水) 11:43:16

>>424
実写だとしたら「ゼルダに引き続き」なのでは!?


24 白鳥の歌
『別れのワイン』に次ぐ感動作第2弾。しかし人気投票ではワインより低いどころか、上位にすら入れないことも多い。どういうことだ。

個人的には、ワインと同じかそれ以上に上質な作品だと思っている。
ワインは「ワインを愛しているはずの犯人が、ワイン庫を犯行に使い、それで足が付く」という唯一にして最大の問題点があったが、今回は「ギターを愛する犯人が、犯行時にギターを守ろうとしたがために目を付けられる」という正反対の内容になっていた。もしかしたらワインでの欠点を補完しようとしたのかもしれない。

本業が歌手であり俳優ではないジョニー・キャッシュの演技は中々見事。
性悪にしか見えないアイダ・ルピノの演技にサポートされているとはいえ、絶妙に同情できる犯人を演じきったと思う。
特に、コロンボに魔法瓶というワードを出された途端に表情が曇る演技は、上手過ぎて見ていてニヤけてしまう程。

ジョニーの名演もあり、今回の犯人トミーは、全作でも最も怒らせたくない犯人像となった(他の犯人は憎たらしいのでガンガン怒らせてほしい)。
また、賛否両論あるワイルドすぎる犯行も、このワイルド犯人だからこそできたものだと思う。
異色の犯行ながらもコロンボの詰め寄り方は実にコロンボらしく、かつ丁寧だったと思う。

メアリー・アン、19歳の犠牲者は全被害者の中でも最も若い…だろうか。

また、コメディリリーフの脇役が妙に多かったりする。
軍人と仕立て屋は特に面白かった。
ソレル・ブーク演じるJJストリンガーは出番が少ないものの存在感があった(『殺しの序曲』ではもう少し出番があります)。
一方、ヴィト・スコッティの出るシーンは長く、ミステリと関係無さ過ぎて尺稼ぎに感じた…

ともかく今作は傑作の1つだと思う。何で人気低いの~?

439 :げらっち
2025/01/22(水) 09:45:44

25 権力の墓穴
「コロンボの上司であるロサンゼルス警察次長が犯人」、「コソ泥と協力して犯人を追い詰める」という、アツい展開の第3シーズン最終回。
ぶっちゃけコロンボシリーズ全体を見てもここが最大の山場だと思っている。

このラスボス風犯人、コロンボの直属の上司であるから、最初からコロンボが敏腕であるのをわかっている、という設定も見事。
傲慢な俺様タイプであるが終始せわしなく、どこかビクついているという演技が本当に絶妙だった。

ミステリ面も冴えに冴えており、共犯者を隷属させての本番の殺人、という大胆なひねりは他に例が無く面白かった(この共犯者の演技も絶品。職は何なのか…)。

手掛かりの数も『野望の果て』の時以上に豊富。
ラスト、権力が墓穴を掘ってしまうコロンボの華麗な罠も素晴らしかった。

当然っちゃ当然だが、少々複雑なプロットを、役者陣も完全に理解して演技しているというのが見事としか言いようがない。
ガウンのくだりでコードウェルを白と見抜いた時や、次長に目を付ける瞬間のピーター・フォーク(と小池朝雄)の演技ときたら、何度も見返したくなるほどだ。

個人的に第3シーズンは最も冴えていた時期だと思っていて、『毒のある花』、『愛情の計算』を除く6作は特にセリフ1つ1つを吟味したようにキレッキレだった。
第1・2シーズンで磨き上げたコロンボという凶器で、犯人たちに切り込んで行くようだった。

問題点と言う程でもないがツッコミをいくつか。
あの極悪思想でよく警察の次長にまでなれたね!?
あの一瞬でよく犯罪計画を思いついたね!?
奥さん死ぬの早すぎ!!
プールに投げ込む時現行犯逮捕されたらどうするつもりだったの!?

最も気になるのは3番目だろう。『ロンドンの傘』と今作は、2大「被害者あっさり死に過ぎ」回だろう。
それでも、殺人描写が妙に生々しい新シリーズとかよりは全然いいのだが。

あとは、次長が宝石を仕込んで部屋を出る際は施錠しなかったのに、また訪れた時は鍵が掛かっていたことくらいだろうか。

いつも端役でしかないヴァル・アヴェリー、ジョン・フィネガンが最も活躍する回というのも楽しい。
2人が刑事とコソ泥として旧知の仲なのも、2人の役者が第1シーズンからの馴染みの顔触れというメタ表現に思えなくもない。
リアルでも仲の良いらしいフォークとフィネガンの「名刑事のやり取り」も輝いていた。

コロンボ2大音楽家ビリー・ゴールデンバーグとディック・デ・ベネディクティスのWクレジットも気合いの入りようが違うなと思った。
(ギル・メレも捨て難い。パトリック・ウィリアムズは音楽は素晴らしいがコロンボらしくないような…)
ビリー(・ω・)ゴールデンバーグはこれが最後の担当回になってしまう。残念。

446 :げらっち
2025/02/06(木) 11:16:58

26 自縛の紐
第4シーズン開幕回。
第4シーズンはミステリの質がハイレベルな回がそろっており、著しく評価の低い回が1話も無いように思う。

今回は久々のオーソドックスな対決回となっており、傑作の1つと言える。
唯一の「肉体派」で憎らしさの光る犯人との対決ムードは、独特で飽きさせない。
被害者のキャラもオーソドックスながら上手く立っており、犯人vs被害者(と遺族)vsコロンボの構図が、お手本と言えるほど上手くできていたと思う。

犯人と被害者の格闘シーンというのも珍しい。肉体派の犯人だからこそできたことだろう。
また、被害者が簡単には殺されず、一時的ではあるが反転攻勢に出たというのも極めて珍しい。
コーヒーをぶっかけることで一矢報い(熱そう!)、コロンボに手掛かりを遺した。このようにタダでは死ななかった犠牲者といえば、他には、ダイイングメッセージが本格的に採用された『死者のメッセージ』のエドモンドくらいである。
コーヒーメーカーを持った状態の被害者を強引に襲ってしまう犯人は、結構脳筋である。
そういえば今回は被害者夫婦がそろって犯人に飲み物をぶっかけている。

今回は珍しくコロンボが犯人に対し素で怒っている。
『溶ける糸』、『殺人処方箋』、『死者の身代金』での怒りは犯人をハメるためだったのに対し、今回は怒りのシーンが無くとも成り立つには成り立つ。
だが夫人と犯人のレストランでの対決があったからこそ、犯人に対し怒るコロンボに感情移入できた。

ミステリ面も冴えている。
今回の2つのメイントリックは靴と電話によるものだが、コロンボが靴から砂を出す描写や家族と電話する描写で、さりげなく伏線を貼っているのが素晴らしかった。

気になる点は2つのみ。
まずはルイス・レイシーを探すシーンが、あまりにも長い尺稼ぎシーンだということ。
全カットしても問題無いし、本当に時間調整だったのだろう。

もう1つは肝心な点。
ラストの「決まり手」が論理的過ぎて、いまいちスッキリしないのだ…
対決色がかなり濃い作品だけに、これは致命的。
この論理がややこしく、「成立する」「成立しない」とファン間でも意見が分かれる。
ラストがもう少し明瞭だったなら、これは名作中の名作になれたかもしれない。

447 :げらっち
2025/02/06(木) 11:25:46

自縛の紐のラストの論理。

まず靴紐から、ジーン氏は誰かに殺されたものと証明。では誰が殺したか。
第三者(誰?)が最後にジーン氏を見た時は背広だったが、マイロはジーン氏が運動着に着替えたことを知っていた。マイロ=犯人。という論理。
だがもし電話が本物だったならこの論理は成立しない。
しかし、電話はアリバイ工作だったと既に証明されているので、成り立つには成り立つ。
難しいしスッキリしない…

450 :げらっち
2025/02/12(水) 09:33:40

27 逆転の構図
第4シーズンの中でも特にミステリの質が高く、シリーズ全体を見ても『権力の墓穴』と共にベストを争う1作と言えそう。
今回の殺人計画は大胆かつ緻密で隙が無く鮮やか。
多くの話でクリアできていない硝煙反応の問題(『構想の死角』など、硝煙反応調べれば一発で割れる)も見事にクリアできている。

複雑な計画をクールに難無くこなしていく犯人像も良かった。
特に殺人前の夢のくだりは、被害者の演技もあいまって独特の説得力。
犯行により足を負傷し杖を突く犯人の姿も、妙なかっこよさがあった。

それに対しかなりの手数で攻めるコロンボも輝く。
今回は特に、「こんな所が手掛かりになるのか!」という小さな発見からの攻撃が多かったと思う。6回の対決シーンで、同じ手掛かりの使い回しが見られない。
また、警察署で同僚と共に頭を悩ますコロンボが見られるのも、この事件ならではだった。「だからムショが満員大入りなんでさあ」大好きw

90分尺では珍しく、冗長な尺稼ぎシーンが一切無いのも魅力だった(例のシスターの爆笑シーン、最終盤の車のシーンはやや長いが、ミステリ的に意味を成している)。
全体的に緊密で、バランスが取れた一作と言える。

その上斬新さと共に「いつものコロンボらしい要素」を散りばめる余裕すら感じられる。
具体的には、いつも通りの動機、わざわざ時計を確認する犯人、コロンボの身内の話、犬の話、「もう1つだけ」などである。
プロフェッショナル性で墓穴を掘ってしまう犯人、というのもコロンボならではで大変面白かった。

ラストは少々強引でショボーンとしてしまう感はあるも、手掛かりを積み立ててきたこれまでの流れがあるのでOK。随所にカメラのフラグを立てていたのが上手いと思う。
権利の説明をされながら連行される犯人、というのは刑事ドラマとしてあるある過ぎるが、今回のみの特例としては悪くなかったかも。いつも以上に殊勝なコロンボの姿も旧シリーズらしくて良い(新シリーズはニマニマ、チャンチャンって感じの終わりが多かったので)。

また、今回はゲストスターが7人もクレジットされているという異例の多さである。出番が少なく、特に重要でない役もクレジットされている。
超大物俳優(スペシャルゲストスター)が居ないから、中堅俳優の数で攻めたということなのだろうか。
旧シリーズでは唯一?何の動機も無いのに殺されてしまったダッシュラー可哀想…ダッシュラー良い人そうだよね!?

453 :げらっち
2025/02/19(水) 13:00:35

28 祝砲の挽歌
パトリック・マクグーハン初登場回。彼のカルト的人気により、この回もかなりの人気を誇る。
マクグーハンは今後監督としてもシリーズに参加し、新シリーズも含めるとかなりの作品数を手掛ける。
が、それらの作品は雰囲気重視でミステリ的に甘く、あまり好きじゃない。マクグーハンがシリーズのテイストを少し変えてしまったようにさえ思う。

…個人的な好みを抜きにして、今作の完成度は、やはり高い。第4シーズンはシリーズ全体のピークだったと言いきって良さそう。
士官学校にコロンボが泊まり込むという独特の舞台設定は「閉じ込められている感」もあり印象に残る他、ミステリとしての質もちゃんと高い。
ごく序盤から見え隠れしていた「りんご酒」が、ラスト、犯人を犯行時刻と犯行現場に結びつけてしまうという鮮やかさは見事中の見事。この上質さの1割でもいいから新シリーズに分けてあげたい物である。

そして一番のミソとも言えるマクグーハン演じるラムフォード大佐。
信念を持った男という犯人像は比類がなく、やはり上手いし光っていた。
コロンボと互いに認め合う「白い薔薇」のくだりは、初めて見た時から魅力を感じていた。このシーン以後コロンボが大佐を犯人と確信して動き出すので、この「男の会話」は水面下での自白とも取れそう。

一方で、納得いかない点も幾つか。
大佐が、厳しいながらも生徒を宝とする校長という立場にありながら、生徒に罪をなすり付けようとした点は容認しがたかった。
スケープゴートであるスプリンガー候補生が、落第生なので、灸をすえるつもりだった…と解釈できないこともないが、無理がある。
それに大佐はスプリンガーに罪をなすり付けておきながら庇ったりと、行動に一貫性が無いように思えた。同じく閉鎖空間が舞台の『愛情の計算』でも、所長はロスに罪をなすり付けつつ庇うという同様の矛盾行動をしていたが…?

更には、スプリンガーをはじめ、真面目人間に思えたモーガンや大多数の生徒が裏でりんご酒密造をしていたり、ルーミス大尉も嫌々従っているように見えたりと、大佐の人望が薄い様な描写が目立ったのもマイナス点だ。
これではラムフォード大佐という戦争オタクの頑固老人の独りよがりの犯罪になってしまう。
きちんと生徒たちに尊敬されている描写があってこそ、大佐が学校を守るために犯行に及んだ、という説得力が生まれたと思う。
大佐を心から尊敬しているらしき人物が1人も見当たらなかったのは辛かった。
そう考えると生徒陣の演技は全体的に下手っピである。ランニングが終わって「うぇーい」と走り去って行く描写は一体何なのか…
ラストも、大佐が尊敬されていないせいで、生徒たちがコロンボに従い容易に大佐に不利な発言をしてしまったのだと思う。
せめて尉官クラスのルーミス大尉が大佐に尊敬の目を向けていたら、印象が違ったかもしれない。

クレイマー刑事初登場。今後は何故か3話に1回のペースで登場し順レギュラーになる。クレイマー刑事のキャラは未だによくわからん…
モーガン役とは、「親子の共演」だった。あまり似てねえ。

454 :げらっち
2025/02/26(水) 11:26:41

引き続きコロンボ

29 歌声の消えた海
船上が舞台という、冒険色の濃いスペシャル仕立てのエピソード。
独特な舞台(かつ、それが成功している)の作品が2作連続している。
しかも権力の墓穴~今作と、5作も続けて怪物級の人気エピソードが続いているというのは驚異的な事だ(え?白鳥の歌はダメなのかって?)。

今回は特に、お遊び要素と本格ミステリが見事に融和した最上の例に思える。
劇場版コナンのような舞台設定ながら、全てがミステリに結びついている。

いつもはチェスのように(?)犯人のホームとコロンボのホームを行ったり来たりして攻防戦を繰り広げていくが、今回は船の上という、犯人にもコロンボにもアウェイな状況。
ホームを持たない唯一の犯人を見事に演じるのがロバート・ヴォーン。歴代犯人の中でもなかなかの風格である。一目見ただけでマスターキーの複製を作れる技術といい、枕越しに銃を撃つ慣れた手つきといい、ただ物じゃなさそうだ…
ちなみに今回の犯人は殺人以外に二度も発砲していたりする。しかも片手で。慣れてるね?

枕の羽毛から犯人に目を付けるというのは、少々安直にも思えたが、それでも、目を付けて以降制約のある状況下で次から次に手がかりを見つけていくコロンボの姿は心強い。
また、今回は見つけた疑念をすぐに犯人に話すのではなく、船長やドクター、スケープゴートのロイドに話し、彼らを味方につけていく、という構図も独特で良かった。
ラストの罠に乗ってしまうのは、通常ならかなり危険な行為にも思えるが、限定された空間であるからやむを得なかったという説得力はある…(そう考えると、限定された空間でもないのにあんなあほなことをしてしまったジャッキーもといネルソン・ヘイワードは何なのか…)

『ロンドンの傘』のダーク部長、今度はパーサー役で登場。ちなみに『タイタニック』でも船に乗っていた…
役回りはロンドンの時と似ており、真面目人間で、間違った真相に喰いつく。そして今回も、ラストで茶目っ気のあるコロンボを見直すのだった。

ロイドと船長の声が滅茶苦茶あっていたと思う。

458 :げらっち
2025/03/04(火) 00:00:19

新・刑事コロンボ
ゲラ流ベスト12

ファンから黒歴史扱いされている『新』だが、丁寧に見て行けば、見る価値がある作品も一部だが存在することがわかるだろう。
まあ、イレギュラーすぎる『幻の娼婦』、『かみさんよ、安らかに』、『死者のギャンブル』、『殺意のナイトクラブ』や
もはやどうやったって楽しんで見るのは不可能レベルの『影なき殺人者』、『初夜に消えた花嫁』、『死を呼ぶジグソー』などのトンデモない作品もあるのだが。

とりあえず、何回かにわけて12個は紹介したい。


46 汚れた超能力
新シリーズ開幕作なので一見の価値はあるが、内容は悲惨。
無駄にスケールの大きな事件の割に器の小さい犯人、無駄に残虐な殺害法、冴えない手掛かり、冗長な謎解き、『美食の報酬』『攻撃命令』と同じく犯人にコロンボの命を狙わせるという無理のあるラスト。
特に、超能力のトリックを長々と実演して解き明かす芝居がかったシーンは、見るのを止めたくなる程の冗長さで、旧シリーズ第7シーズンに引き続き製作総指揮の座についたシモンズ氏の悪い癖が顕著に出てしまったと思う。
それと大きな問題点として、これもシモンズあるあるなのだが、復讐劇に凝り過ぎて、「CIAに入りたいという犯人の目的」と「復讐の殺人」という要素がチグハグだったと思う。
単純に、犯人の超能力の欺瞞を見抜き、CIA入りを邪魔しようとした人物を殺す、というようなほうがドラマがスッキリし、逮捕=CIA入りも破綻、というのが結びついたように思える。
犯人に霊的捜査を要求する、というのは新シリーズ第1話にして奇抜過ぎではないだろうか。
但しおしゃれな雰囲気は悪くないし、新シリーズ後半の諸作品と比べればまだ上質に作られているのはわかる。

47 狂ったシナリオ
新シリーズだと思って侮って掛かると痛い目を見るぞ…
犯行からコロンボ登場、手掛かり足掛かりを集めていく流れは本当に完璧クラス。
但し、大問題のラストと、コロンボが汽車の模型に乗せて証拠を提出するシーンが大きなマイナス点になっている…こんなのコロンボじゃない。
特にラストは、いくら「演技」がキーワードの事件だったからといって、あんなやり方はコロンボらしさのカケラも無いだろう。
また、『もう1つの鍵』や『秒読みの殺人』と同じく犯人とコロンボのパワーバランスが悪く、コロンボが犯人をいたぶっているように見えてしまうのもコロンボらしからぬ点。高慢な犯人との攻防が醍醐味なのに。
犯人を蹴落すことに快感を覚えるコロンボの姿は、旧シリーズ前半からかけ離れている…
それでもシモンズのこだわりが良い方向に行った例だと思うし、新シリーズの中では上位の出来に思える。

48 幻の娼婦
は飛ばしまして…

459 :げらっち
2025/03/04(火) 00:01:54

49 迷子の兵隊
これもシモンズ編特有のリッチな雰囲気が味わえる佳作。
パジェット将軍の貫禄と、シリーズ最悪クラスの犯人の憎さが光る。
「武器を密輸し戦争に加担し、私腹を肥やす」というのは、旧シリーズのラスボスであるジョー・デブリン(武器密輸)と、序盤の強敵であるホリスター将軍(権力乱用、私腹を肥やす)を合わせたような悪辣さではないだろうか。
ベッドシーンはあるにはあるが、これくらいならまだ何とか我慢できる範囲内だろう。
また、シモンズ編全般に言えることだが、謎解きが分かりやす過ぎる&簡単に、というかお粗末に証拠を集められ過ぎている。今回は特にそれが目立った。具体的には、グラスと歯ブラシで瞬時に逢引き相手を見抜く、コロンボの力ではなく検死で他殺と判明する、そして秘密ファイルの入手法が一番ひど過ぎる。あれはギャグなのか?

50 殺意のキャンバス
旧シリーズ後半から10作(多っ)続いた、シモンズ編の最終作。
シモンズの趣味がこれでもかというほど塗り込まれている。
独特すぎる動機解明に重きを置きすぎて、ミステリ的な完成度はあと一歩というところだが、「こだわって作ってる感」はあり、上質で魅力がある。
特に天才画家という犯人像は斬新で魅力的だった。
これほど豪快な犯行(誰が見ているかもしれない、白昼の海の凶行!)は、同じくワイルドな芸術家であるトミー・ブラウン以来か。
女性たちの描写は良く言えば個性的、悪く言えば口汚く品性に欠けた。恐らくはこれも製作者の趣味だろうが。
ヴィト・スコッティの久々の登場や、華々しい画作りなど、評価できる点はいっぱいある。
悪夢のシーンは前衛的過ぎて…しかも英語のジョークなので、日本人視聴者にはわかりにくかっただろう。

冒頭の犬のシーンは本筋と何の関係も無くない!?と思われがちだが、
実はこのやり取りは「飼い犬に手を噛まれる=嫉妬=バーシーニ家で起きたことの暗示」という意外にも重要な意味があった。
冒頭でコロンボが言及した「愛」が、そのまま今作のテーマになっているとも言える。
また、中盤の犬が海を眺めるシーンは、シモンズ編第1作『死者のメッセージ』とまんま同じ構図であり、シモンズ編の締めくくりとして意図的に入れられたとも考えられる。

シモンズ10作品のうち9作品(性的な『幻の娼婦』だけはやはり認めたくない…)は、本来のコロンボらしさからは離れているもののどれも独特な魅力はあった。
ありがとう、シモンズ。きみが居た頃はまだ良かった。新シリーズ後半の酷さと言ったら…!

460 :げらっち
2025/03/05(水) 12:23:48

30 ビデオテープの証言
他の「神回」に比べ地味な扱いを受けがちだが、今作も第4シーズンの例に漏れずミステリとしての完成度がかなり高い。
『黒のエチュード』と共に、最もオーソドックスでコロンボらしいエピソードにも思える。実際、黒のエチュードとの類似点はかなり多い。

具体的には
・「これで最後」とコロンボがねだって、犯人に映像を見せる「ラスト」。
・映像の中に「犯人を犯行現場に結びつける物」を見出すという「決まり手」。
・犯人に良いようにされていた妻が、犯人の退路を断つという「反撃」。
などである。また、妻に対しきざったらしい犯人像も似ていた。

ビデオに証拠が写っていた、というのはミステリとしてどうなのかというファンからの意見もあるが、
そこら辺の防犯カメラの映像の中に証拠があった、とかならつまらないだろうが、
実際は「犯人がアリバイ工作に利用したビデオ」を、逆にコロンボが利用して証拠を見つけ出しており、これはフェアプレー中のフェアプレーである。
招待状の描き方もさりげなくて上手い。

ニア「決まり手」となったピエロ人形のくだりも上質。
これは冴えない話であれば「決まり手」に匹敵する物だったと思う。新シリーズの「決まり手」として寄贈してあげたいくらいである。

そして何より、今回はオスカー・ウェルナー演じるハロルド・ヴァンウィックという犯人像が異質で印象に残った(吹き替え版の声も良い)。
義母が死ぬ瞬間の映像を得意げに見せるシーンや、妻に対し愛を偽るシーンなどはなかなかの物。
一方で、「電気道楽の屋敷」というのは面白いが範囲が狭く、犯人が屋敷以外の場所に登場しないという演出も異例だった。
普段は様々に場所を変えて対決を繰り広げていく(『意識の下の映像』が好例)が、今回は5度の対決中3度が「屋敷の玄関からコロンボが入る」という流れになっており、少々単調ではあった。
前2作は士官学校、船の上という広い舞台だったのに対し、今回はそう広くもない屋敷のみが舞台という、非常に範囲の狭いお話である。
このせいで地味な扱いを受けているのかもしれない。

画廊のシーンは間がメチャクチャ面白いけど。

コロンボが銃を撃ったのはこれが初めて?
へっぴり腰だし、安全装置の解除法さえ知らないとは…

ラストまで夫人を利用しようとし、何も言わずに去っていく犯人は、同じく女性を偽の愛で騙していた『ホリスター将軍のコレクション』、『黒のエチュード』を上回る冷血さだった。
夫人が涙を落としコロンボが俯くラストカットは、原語版は上質中の上質なのだが、日本語版だと何故かここに夫人の喘ぎ声が追加されてしまっている…絶対無かった方が良かったと思う。ラストだけは原語版で見て下さい。

471 :げらっち
2025/03/08(土) 20:36:17

新・刑事コロンボ
ゲラ流ベスト12


65 奇妙な助っ人
マフィアが犯人を脅すラストは、『愛情の計算』以上に強引。この点で、かなりの低評価を受けているのは知っている。
だが全体的に見ると意外にもよくできており、自分としてはこれもアリだと思った。
緻密かつ大胆な犯行は、新シリーズでは他に例を見ない、旧シリーズに匹敵する物。『逆転の構図』と『黄金のバックル』のハイブリッドにも思える。
コロンボの付きまといを嫌がりつつもコロンボに泣き付いてしまう犯人、というひねりの展開も、ちょっと変わった対決模様と見ることができる。
そして何より、犯人のキャラが憎めない。あの犯人あってこそのマフィアのくだりだったのだろう。
マフィアの親玉であるフォテーリのオーラもすさまじい。
例えグルだったとしても、カーチェイスやマフィアに暴行されるコロンボなんかは、ちょっと無理があるんだがね…(ちなみに前作『死を呼ぶジグソー』と今作で、2作連続コロンボが暴行を受けるという珍事が起きました♨もう何が何やら)
クレイマー刑事、何故名前変わった?

67 復讐を抱いて眠れ
新シリーズ後半戦、駄作中の駄作が続く中、よくここまで持ち直せたと思う。
マクグーハン物の集大成であり、ある意味コロンボ全体のラストとしてもふさわしい作品。
葬儀屋という新たな犯人像、死体なき殺人(第1シーズン最終回の命題もこれだった)、夜の対決、しっとりしつつ毒を含むラストなど、コロンボ最終回と考えれば非常に良い落としどころだったと思える。
葬儀にプライドを持っている犯人が遺体のすり替えを行うことや、骨壺にアレが入っていて気付かない、というのは無理があるように思うが…目を瞑ろう。
また、「自由に動かせる時計でのアリバイトリック」は、同じくマクグーハン物の「仮面の男」と同じずさんさである。まあこの際大目に見よう!

ミステリ的弱さこそあれ、「2人でお茶を」というしっとりした曲、「あなたのお葬式ですから」という毒舌、旧シリーズから4度に渡り対決してきたマクグーハンとコロンボが顔を合わせ、ニヤリとするラストカットは、絶品だった。

472 :げらっち
2025/03/12(水) 09:01:09

12 アリバイのダイヤル
アリバイ崩しに重きを置いた回。
黒のエチュード、悪の温室と共に地味な扱いを受けがちなの何でだろ~?(自分は3作とも緻密な名作だと思っている)

脚本家は『ホリスター将軍のコレクション』と同じだが、かつてと比べ大幅に進歩し、奥の深いミステリを見せてくれたと思う。
演出も冴えており、他の回では見られない印象に残るシーンばかり。スポーツを扱った回はこれが唯一だし。
ビジネス的やり手が最高に似合うロバート・カルプの憎たらしい演技は、これぞコロンボの犯人という見本のような物。
ラルフと対決するコロンボは、いつもの犯人に対する低姿勢な厚かましさとは真逆の、鋭い名刑事風。いつもの姿勢は犯人を油断させるための演技だったということもわかる。

但しやや登場人物が多く、1度見ただけではわかりにくいのが難点か。何度か見るとより面白く感じてくるかも。
ラストはきちんとまとまっている一方、アリバイ崩しをしたのみで決定的証拠にはならず、まだ言い逃れする余地がある(例えば、その時時計が壊れていた等)…という指摘は無粋か。

わからないことって色々ありますよねえ というモブのセリフがストロング。

363 :黒帽子
2024/10/30(水) 11:06:41

>>321

note.com
これについての詳しい情報をもっと書いてた人を発見

要するに、返信先の人が書いた小説の内容をさらに水で薄めたような内容だったってことです

424 :コウタ
2025/01/09(木) 12:17:53

【朗報(?)】マリオに続き

『マインクラフト』

実写映画化決定!!

321 :しゅんトロン
2024/09/07(土) 11:59:52

映画 ラブライブ !虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会完結編 感想

内容のネタバレになるので詳しくは言えないけど、ほぼ観光ゴリ押しだったのと
アニガサキの例に漏れずファンサービス
多かったよ。

でもライブシーンは、プリティーシリーズみたいな感じで楽しめた。