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193.『戦隊学園』制作スタジオ
 ┗44-63

44 :第1話 1
2021/05/19(水) 20:04:24

「あの子は緑、あの子はピンク。あ、あの子はちょっと変わった紫かな。」

人のゆきかう商店街で、小学校低学年くらいだろうか。2人の女の子が歩いている。
「アルビノって、共感覚(物や文字などに色や匂いを感じること)持ってるん?」
髪も肌も、真っ白な女子が、ぽかんとして振り向く。
「え?何て?」
「別に――ねぇ七海ちん、私は何色にみえるの?」

七海と呼ばれた女子は澄んだ青色の目で相手をじっと見る、そして。

「芽衣は真っ黒。ていうか、黒すらない、何も無。ぽっかり空いた穴みたい。」

「あはっ何ソレ」
ムッとした表情で。
「七海ちんはそういうことばっかり言ってるから友達できないんじゃないの?きもちわる」
「ありがと。」
七海は別に気にしないよーという表情で1人歩いて行ってしまう。

[返信][編集]

45 :2
2021/05/21(金) 01:25:55

私は家に、帰着する。
「ただいま。」
水色の靴をぽーんと放る。何だろう。
「お父さーん、ただいまー?」
何かが無い。
「今日は、デニーズいく日だよねえ?早く行こうよ!」
何かが。
「お父さん?」

お父さんの暖かな黄色が、見えない。


「死んでるの?」


お父さんは廊下に突っ伏していた。胴体は有り得ない方向にねじ曲がって居た。
ぽたり、と血が落ちる。

ゾッとした、表情で。
「あなたが殺したの?」

私の部屋から、血に手を染めた、仮面の男が出て来た。
「アズサワ:ケイスケ死亡。アズサワ:ナナみ、お前を殺す。」


私は目を瞑った。

[返信][編集]

46 :3
2021/05/22(土) 00:56:56

違う。
光を奪われたんだ。

真っ暗闇に、ぽっと白い仮面が浮かんでいる。
パァン!と乾いた銃声が轟き、私は崩れ落ちる。
足を撃たれた。
「射殺か、刺殺か、扼殺か。死に方くらい、選ばしてあげるからね」
仮面は優しくささやきながら近寄って来た。
銀の刃がするりと下ろされ、私の肩に、喰いこんだ。
痛い。それよりも、恐怖。

「たすけて・・・おねがい・・・・・」


突然の出来事。


真っ暗でだだっ広い、何も無いこの場所に、眩しいくらいの光が飛び込んだ。
5色のマントに身を包んだ5人の戦士たちが、仮面と私を取り囲んでいた。

「レジェンドレッド!」
「レジェンドブルー!」
「レジェンドイエロー!」
「レジェンドグリーン!」
「レジェンドピンク!」

「5人そろって、レジェンドレンジャー!!!!!」

5人は歌舞伎のような大仰な立ち居振る舞いでキメポーズを取った。
その瞬間に私の中の恐怖、苦痛、混迷は消え、安堵、希望、そして決意が差し込んだ。

「レジェンドタイフーンだ!Pink!」
「Green!」
「Yellow!」
「Blue!」
「Red!」
5人の戦士が次々と光の弾ををパスし、徐々に威力を高めていく。まるで、バレーボールのように。
「Finish!!」
レッドが最後の一撃を打ち込んだ。
「なに!」
敵に直撃。仮面はぐにゃりと歪み、吹き飛ばされて――


私は廊下にうつ伏せに倒れていた。
顔を上げると奥で仮面の男がもがいている。青白い仮面は分厚い金具に挟まれひしゃげていた。

「レジェンドタイフーン・鼠捕りだ。連行しろ。」
赤い戦士がそう告げる。
「怪我は?」
彼は私の肩にそっと手を置いた。
でも、私のやるべきことはもう、わかっていて。
「死ね!!」
私は立ち上がると仮面の男に襲い掛かった。怒りの炎が具現化したのか、男を包み込み、壁を突き破って吹き飛ばした。
「やめろ!」戦士の1人が叫ぶ。
お構いなしで。
「逃げんな!」
仮面の男は空を飛んで逃げた。

その時の私は、もはや私ではなくなっていただろう。
全身の毛が逆立ち、白い身体は膨れ上がる。
手も足も太くなり、鋭い爪と、背からは大きな翼が生えた。服はびりびりに破ける。
ブチッという音で口は裂け、血飛沫が白い肌を汚す。
真っ赤な目を見開き私は飛んだ。

私はあいつを逃がしたくない一心で、宙を走り夕空を駆け上がった。
仮面の男は空中でくるりと振り向いた。
「任務遂行だよぅ」
真っ黒な腕が私の首を掴む。呼吸が遮断される。
「アズサワ:ナナみ、お前を殺す。」
「死ぬのはお前だ!」
こいつは、私のお父さんを殺した。そうであれば殺してやる。今殺さねば、二度とそのチャンスは無い。
やつの腕をへし折り、仮面に思い切り、噛みつく。

ゴキンというものすごい音、私は仮面の頭部を喰い千切った。
真っ黒い血が、噴きこぼれたコーラの様に飛散する。私は切断された頭をバキバキと噛み砕く。
残されたやつの胴体は、真っ暗な地面に、落ちてゆく。

「お前には死に方も選ばせない。今ここで死ね」

「雷(ライ)!」
私は真下に稲妻を叩きつけた。
「もっぱつ!」
2度の雷鳴がやつを木っ端微塵に消し去った。

直後私は雨となった。生暖かい雨となり地面に落ちた。私の体も心もドロドロに溶け、もう何も、考えられない。


「MARCH消滅。これでは奴からの情報を聞き出せない。無論、奴が如何なる拷問でも口を割るとは思えないが。ところで保護対象は損傷が激しい。どうされますかマスター。」
「お前に任す。」
「はい。」

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47 :4
2021/05/22(土) 00:57:38

「私は、カイブツ・・・わかってた・・・」
「違う。」
赤い光が、私に話し掛けた。
「君はその力を、正しいことに使える。戦隊になってくれ。」
「戦隊――?」

「僕はレジェンドレッド、戦隊学園1年所属だ。君は学園からの援助を受け、中学を卒業し、我が戦隊学園に入る。覚えていてくれ。」


『戦隊学園』


西暦2041年――
日の丸戦隊ニッポンジャー、医療戦隊キュウメイジャー、火消し戦隊ショウボウジャー・・・日本では様々な組織が『戦隊』として活動していた。

マスターレンジャー・千野武大(せんの むたい)の創設した戦隊候補生の養成学校こそが『戦隊学園』である。
10のクラスが毎年多くの戦隊を輩出している。


――憧れの存在に近付きたい。何か目標を立て、それを達成したい。単に強くなりたい。志望動機は何でもいい。君たちはこの学び舎で、志を共にする掛け替えの無いチームと出会うだろう――
戦隊学園校長 千野武大

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48 :5
2021/05/22(土) 00:58:37

期待と不安と緊張と、それにちょっぴり浮かれ気分の入学式。

校長の祝辞が終わると、私は列の先頭から1人はなれ、カツカツと壇上への階段を上がる。
マイクの前に立ちホールを見渡すと、全学年全クラスの1000は超えるであろう生徒たちが私を見上げていた。
それも、奇異の目で。
もちろんそんなのは慣れている。私を見れば誰もが振り向くし、私の容貌を一般的だと思う人はいない。

私はゴホンと1つ咳払いをしたのち。

「こん!聞こえますかー!!」

元気いっぱいにそう叫んだので放送機器がキーンとすごい音を出した。

「はい。見ての通りのアルビノ(albino)です。生まれ持ったこの身体のせいで、辛い思いもいっぱいしました。
 戦隊、それは私の憧れです。幼いころに戦隊に助けられた経験のある私は、迷わずこの学園を志望しました。
 私は戦隊ユニットを組み、プロの戦隊になれるよう励みます。そして卒業するころには、色とりどりになっていたいんです。私の話は以上です。」

「新入生代表、小豆沢七海。」

出席番号1番はいつもこういう役回りだ。

[返信][編集]

49 :6
2021/05/22(土) 23:13:32

入学式は終わり。
私は長い列の最後尾について、長い渡り廊下を歩いていく。青い空の下に校庭が見渡せた。
広い。
今も正にカラフルな衣装に身を包んだ上級生たちが、ボールを打ち合ったり、走ったりと自主練習をしている。
さらにその後方にはうっそうとした森が見えている。
パァン!と1つ銃声があり、列は立ち止まって一斉に森を見た。
「ショットマンだ、気にするな」と上級生の声。
列は再び動き出す。廊下はフォークのように5本の道に分かれており、それぞれに上級生が立って声を上げていた。

「文学/生物クラスのオリエンテーションはこちらでーす!」

私は指示通りに廊下を歩き、校舎へと入って行った。
階段を上がり、教室に入る。

綺麗な木の机が並び、そこに座る生徒達もまた綺麗な制服を着ていた。
自分の席を探すのは簡単だ。一番前の、一番端の席。

|あずさわ ななみ|
| 小豆沢 七海 |

自分の名前が書かれた紙が置いてある。
あたりだ。
私は椅子に腰かける。慣れない制服はやや着心地が悪かった。
先生の姿はまだ無く、皆落ち着きなくもぞもぞしたり、初めて出会う級友と挨拶したりしていた。

ふと後ろから肩を叩かれる。
「こん!」
カチューシャを付けたショートカットの女の子が話しかけてきた。私は彼女から透き通った海の色を感じる。
「あたし伊良部楓(いらぶ かえで)!よろ!」
「はじめまして!私は・・・」
「わかるよ!あてるよ小豆沢七海!すっごく目立ってたからねぇー!」
「そう?」
彼女はやはり珍しく思ったのだろう、私の顔をまじまじと見る。
「あ、変な意味でじゃないよ!何ていうんだっけ、」
「アルビノです。」
「あるびのー」
彼女はいるかのストラップの付いたスマホを取り出して調べた。
「シキソケツボウショウ?」
「それかなー。私はそう呼んだことはないけど。」
「あっ知ってるかも!ウーパールーパーとか、ジャパニーズホワイトとか、高級ペットとおんなじなんだ!すご!あたし障害差別とか全然ないから安心してー!」

私はその言い方に違和感を覚えた。

「私は、ペットじゃないよ。」
彼女の顔が曇る。
「あ、ごめん!そういうイミじゃなくて・・・」

「わかってるよ。それと、これは遺伝子疾患であって、障害とは違う。」

私は小指で瞼をちょんと触って。
「目が悪い、これは障害。」

「へ、へぇ・・・。」
彼女は今度は私の目をじっと見る。私の青い目が、外人さんみたいで綺麗だと、そう思っているのだろう。
「下の毛も白いの?」
「いやだあ!もう!」
しかし彼女は悪い人ではない、そう思った。
「よろしくね。」

[返信][編集]

50 :7
2021/05/22(土) 23:16:13

「あたし、動物好きでさ、生物クラスなんだ!試験で馬に乗ったりしたんだよ!」
楓は嬉々として話している。
「七海は?」

「私は文学クラス。」
「文学かぁ・・・何やるんだろ?」
「戦隊の兵法について学ぶ最もオーソドックスなクラス。私、これといって得意分野ないからさぁ。」
すると突然、私の机がガタッという音と共にズレた。
見ると男子生徒が足を引っかけていた。眼鏡をかけ、ニヤニヤと笑っている。

「今、わざと蹴ったよね。」

「戦隊の祖と呼ばれているのは何だったか?」
男子生徒は私を無視し質問を飛ばした。

戦隊の祖。私にはわからない。

「ゴリンジャーだよ!」
楓が答えた。
「お前には聞いていない。」
ちっと舌打ちをして、
「では、戦隊で最初に巨大兵器を運用したのは何だったか?」

わからない。

楓を見ると、口をパクパクさせて答えを教えてくれようとしていた。
でも、知ったかぶりをする気もなくて。

「知らない。それを勉強するために、ここに来たから。」

「おかしいな。文学クラスは本来、エリートの集まる場所のはずだが。」
男子生徒は冷ややかに笑う。
「僕のことも知らないだろうな。天堂茂(てんどう しげる)、父はニッポンジャーの隊長だ。まあこの学年で一番だ。お前は何故文学クラスに入れたのか不思議なくらいだが、退学するまではよろしくな。」

天堂茂は手を差し出した。
嫌なやつでも一応挨拶くらいはする。私は手を取ろうとするが。

「おっといけない触ってしまった、白いのがうつる」

彼は指が触れるなりサッと手を引っ込めた。
そして自分の席に戻って行った。

私はちょっと嫌な気持ちになる。

「なにあいつ!!うっざ!」
楓は天堂茂の背中に向けて中指を立てていた。

「そろそろ先生が来るみたいだぞ!席に着け!」

[返信][編集]

51 :8
2021/05/23(日) 00:00:05

教室に現れたのは先生ではなかった。
「挨拶はどうした!オラよォ!!」
グラサンを掛けた巨漢の上級生が入室した。それが先生でなく生徒だとわかるのは、その学ランからである。
生徒たちはビビりながらも挨拶する。
「よ、」「よろしくお願いします!」「よろしくお願いします。」
巨漢はフン、と鼻を鳴らす。さらにそれに続いて、長身痩躯の上級生も入って来た。こちらもグラサンを掛けている。
痩せ型の方が言う。
「あんまビビらせてやんなよ赤鵬。おいお前ら、夜は新歓だからな~、ノミニケーションで、仲良くやろうや。」

「まだ16なんだけどな。あ、私以外は15かも」

「あん?」
巨漢が私を睨む。
「なんか言ったか。」
つい口を滑らせてしまったわけでは無い。変だと思ったことは言う、私の主義だ。
「先生はまだですか?」

「話すり替えんじゃねーよ!俺が思うに、お前は俺たちの挨拶が、気に入らなかったみてぇだが。式でしゃしゃってたやつだよな?白髪の小娘が。」

後ろの席で、楓がガタンと立ち上がった。
「七海ちゃんはアルビノって障が・・・遺伝子疾患なんです!そんな言い方は無いと思います!」

「いいよ。私は実際、白髪だし。身体的特徴を挙げただけじゃ煽りとしても成立してないんだけどなあ。」
巨漢の顔は、みるみるうちに紅潮していく。
「私もあなたの外見的特徴を挙げます。デブ。」

巨漢は私の机に両腕をバンと振り降ろしたので危うく机が真っ二つに折れるところだった。

「ほほう、この赤鵬の正体が、格闘クラス3年首席、ヨコヅナレッドだと知らないようだな。」
ふんふんと犬のように鼻を鳴らし、教室を見渡して。
「よく見りゃあ例年にも増して望み薄そうな奴らばかりじゃねーか。俺は校長と違って綺麗事は言わねぇ。戦隊を甘く見るな。戦隊は即ち戦闘部隊だ!ここをそこらの高校と同じと思ってるんなら、帰れ!青春してぇ奴らはお隣の聖キュア学院にでも行くこった。3年間で待ち受けるのは訓練と、修練と、鍛錬だ!今は500居る同級生が2年に上がる頃には半分が落伍しているだろう。3年も然りだ。俺はオメーらが退学しようが逃亡しようが屁とも思わねえ。ついてこれる奴だけついてくりゃいい。ここはそういう所だ。」

「まずは1人、しごきに堪えられずに脱落だ。待った無し!」
巨漢は瞬時に赤の戦士に変身を決めた。黒い廻しが目立っている。
「東ィ~ヨコヅナレッド。」
数歩後退すると低く屈み、立ち合いの姿勢を取る。
「ハッキヨイ!」
関取のぶつかり合いはダンプトラックの激突のようなものだと、本か何かで読んだことがある。
私は逃れようとするが、机の脚にもつれてずっこけた。
「七海ちゃん!」
楓が私の前に立ち塞がった。
「用もないのに席を立つんじゃねえ!」
もろに喰らって。
「きゃあ!」
楓は大きく吹き飛ばされ、後ろの机にぶつかり倒れた。ガタン!という大きな音。


「ぶつかり稽古だ有難く思え」

次の瞬間。
巨漢は苦痛に顔を歪めていた。

私は左手で太い首を掴み、その図体を軽々と宙に持ち上げていた。
「ぐぅ・・・!」
巨漢は口をパクパクさせ声を振り絞る。
「・・・は・・な・・・せ・・・!ぐ・・・る・・じ・・・・・」
私はパッと手を離す。巨漢は床に崩れ落ちる。
「よせ!上級生に手を出すと、退学になるぞ!」
何か喚いている。だが私の心には響かない。
「友達に傷をつけるのが、正義の味方のやること?」
私は両手を前に突き出した。破裂音と共に炎が噴き出し、巨漢は甲高い悲鳴を上げながら黒板に激突した。メキメキとすごい音を立て黒板が落下し、巨漢は下敷きになった。

呆然とするクラスメイト達をよそに、私は早歩きで楓の元に寄る。


「・・・痛くない?」


「大丈夫。ありがと!」
私の手につかまって、楓は立ち上がった。

[返信][編集]

52 :9
2021/05/23(日) 00:02:29

「おい何してくれてんだ小娘~!退学だ!退学だぞ!」
巨漢の味方だった痩せ型の生徒が喚き散らす。
すると教室の外から声がした。

「なんだ今のは!」

廊下に居たのは、精悍な顔立ち、逞しい体つきの若い男性教師だった。
燕尾服のようなものを着ている。

「ほうほう、そこで伸びているのは赤鵬くん。」
大の字に倒れぴくりとも動かない巨漢。痩せ型は真っ青になって、口を開けたまま黙っている。
先生は教室に入ると指揮棒のようなものを振り上げた。
「初日から新入生いじめとは感心しないね。」
「あ・・・その・・・」
「しばらく休学だ。Parade Rest!」
呪文のように軽やかな英語、先生は指揮棒をひゅんと上げる。痩せ型はぴしっと気をつけの姿勢のまま固まり、棒のようにバタンと倒れた。

「すまない。こういう連中ばかりではないんだここは。ただ新入生が来ると、ちょっとちょっかいを出したくなるんだよ。」

先生は私に声を掛けた。怒るわけでも、心配するわけでもなく。
「見事な能力だ。」
そして今度はクラス全体にこう言った。

「文学クラス担任・志布羅一郎(しふ らいちろう)だ。戦隊学園へようこそ!本日は文学/生物クラスの合同オリエンテーションを担当する。」

いささか唐突だった。
先生は教室を横断すると、窓側にある扉をバンと開けた。教室に風が吹き込む。
外には上へ続く螺旋の階段があった。
先生は生徒たちも来るようにと腕を振る。

「戦隊になるならまずは変身だ。ついて来い!教室では窮屈だ!」

「面白そ!いこう七海ちゃん!」
「うん!」
私は楓と共に先生に続く。
2つのクラスの100人近い生徒たちが先生について、ぞろぞろと階段を登り始めた。


楓が先生に話しかける。
「先生、ここでは好きに戦隊ユニットを組んでいいんですよね?」

「そうだ。変身さえ覚えてしまえば、あとは自由に好きな人とチームを組んでいい。3人でも、5人でも、2人でもいい。」

楓は意味ありげに私の方をちらりと見た。

「志布先生、お初にお目にかかります!」
1人の男子生徒が急ぎ足で階段を駆け上がった。
「天堂茂です、名前くらいはご存じでしょうが。先生、変身よりも先に、自己紹介や基礎テストなどはしないのでしょうか?」

「何あいつ!先生の前ではあの態度!」と、楓。

「これだけの人数が一斉に自己紹介して覚えられると思うかい?私は実践を通して生徒の名前と顔、能力を覚えるようにしている。それよりもまずは、君たちが私を知るのが先だ。私は1人だけ目立とうとするやつが嫌いだ。戦隊は個人競技ではないからね。」

天堂茂は黙りこくった。

[返信][編集]

53 :10
2021/05/23(日) 00:04:41

階段の先は屋上だった。
広い校庭、色とりどりの校舎、旅館のような学生寮、その眺望はまるでテーマパークの様だった。
「広いだろう。ここが全て学園の敷地だ。」
「先生、あれは何ですか?」
生徒の1人が遠くに見える天文台のようなものを指さして問うた。
「あれは西の砲台だ。この学園に侵入しようとする敵を迎撃する要塞の1つで、砲撃を主とする戦隊の練習用にも使われる。戦隊学園は敵も多いんでね。」

敵――

「しかし残念だな、さっきまではあんなに晴れていたのに。」

曇天だ。

「私は曇りの方が好きだな。」
「え?」
小声で呟いたが楓に聞かれてしまう。
「七海ちゃん、暑いの嫌いなの?」
「まぁね。」

「では早速実践を始めよう!」
先生はパンと手を叩き、生徒たちの視線を集める。
「ガクセイ証、交付!」
指揮棒をピッと上げる。
すると突然私の目の前に白いカードが現れた。私は宙に浮かぶそれをキャッチする。
そのカードには戦隊学園の紋章(赤・青・黄・緑・ピンクの輪が交じり合う)と、私の名前が印字されていた。
そして、顔写真も。

真っ白い髪に青い目、ツンとした表情の、私。
「やっぱり私だね。」

「うわ!うつり悪!これ面接の時撮ったやつ?」と楓。
全生徒がこのガクセイ証を手にしたようだ。

「それは君たちが戦隊学園の生徒であるという証であり、同時に――変身アイテムである。」

「変身アイテム?」
生徒たちはザワついた。
先生はにっこり笑って。
「難しいことではない。ガクセイ証の裏にある小型マイクに、“変身”と唱える。すると校長室からカラーが送られ、君たちは戦士に変身する。それだけだ。」

「でも先生。一体どんな戦士になるんですか?」と天堂茂。

先生は生徒たちの顔を順に見ながら話す。
「色は君たち1人1人の潜在能力によって決まる。基本5色に加えオレンジ・藍・紫・黒等が確認されている。最初は皆同じようなシンプルな外見だろう。技を磨いていくことによって装備が進化し、世界でただ1人の戦士と成れる。」

私はツンツンと脇腹を小突かれる。
「ね!どういうイミか分かった?」
楓が耳打ちしてきた。
「楓って頭悪い?」
「ざけんなっ」

私には大体、理解できた。

「生まれたその瞬間に割り当てられた“色”ってことかなー。私には見えているけど。」

もうちょっとでキスできそうなくらいに顔を近づけて。
「楓は青、それも濃いめの。」

「ネタバラシやめてよっ!」

「では、一斉に変身してみよう。」
先生が言った。

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54 :11
2021/05/23(日) 00:07:18

屋上に並ぶ100人近い生徒達。私は皆の色を感じ取ることができた。
「あの子は緑、あの子はピンク。」
でも、1人だけ、どうしても。
「あの子はちょっと変わった紫かな。」
どうしてもわからない、色がある――


「私は、何色なんだろ。」


自分で自分の色は認識できない。
あでやかな赤か、豊かな青か、張り詰めた黄色か、迷いの無い緑か、それとも――


「七海ちゃん!」
「いてっ」
私は楓にギュッと頬をつねられて我に返った。
「自分のワールドから帰ってきて!これからみんなで変身するみたいだよ!」

「トゥッティ!」
先生が指揮棒を上げた。
「ワン、トゥ、スリッ、フォッ!」
四拍子そして。

「変身!!!!!」

全員が一斉に詠唱した。
私は一呼吸遅れてガクセイ証の裏面に声を吹き込む。
「変身!」


冷水の中に頭から突っ込んでいくような感覚。
頭のてっぺんから踵まで、今まで感じたことのないような力に包まれ、研ぎ澄まされる。
私の体はスーツ、いや、オーラのようなもので覆われていた。

身体は今まで通り動かせる。
顔の部分はマスクに覆われているものの、視界はいつもと変わらなかった。

「俺赤だ!うっし!」
「黄色だ!びみょーかよ!!」
「あっピンク~かわいい!」
皆それぞれに変身の成功を讃えあう。全員が各色のマスクとスーツ、グラブとブーツに包まれており、もはや誰が誰だかわからない。

私の目の前には濃いめの青に包まれた小柄な戦士が立っていた。
「やほ!見てあたし本当に青だ!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねているが、私を見るなり。
「七海ちゃんは・・・あ!」

「おい見ろよ!」
赤い戦士がこちらを指さして笑っていた。
「なんだありゃ!変身に失敗したのか?」
天堂茂の声だった。
周りにいた男子生徒たちもぎゃははと笑う。


私は真っ白い戦士になっていた。

[返信][編集]

55 :12
2021/05/23(日) 00:10:25

「白の変身は、ごく稀にしか確認されていない・・・」
先生はまじまじと私の姿を見ていた。


「やっぱり私は、白なんだ。」
戦隊への変身、それは真っ白い私を色づけしてくれるもの、そう願っていた。

「私は、真っ白のまま・・・」

「めちゃ可愛いじゃん!ずっる!」
「え?」
「でもあたしの色もいいっしょ?」
青の戦士が私の両肩にポンと手を置いた。
「ねぇ見て。ここにはいろんな色の人がいるけど、同じ色の人は1人も居ないよ。同じ赤でも濃いのも薄いのもあるし、無限のグラデがある。白もその1つだよ!虹は七色だけじゃないと思う。」


全く根本的な解決にならない言葉だった。
「楓・・・」
それでも、私を気遣ってくれる人がここに居る。その気持ちが嬉しかった。


「楓。一緒に戦隊ユニット組もう。」


でも現実って物は残酷で。

[返信][編集]

56 :13
2021/05/23(日) 00:12:21

「先生!」
生徒の1人が叫んだ。
私は振り向いた。遠くに見える西の砲台がギラリと光りその0.1秒後にボガァンと言う空をつんざく発射音。
「まずい伏せろ!!」
「七海ちゃん!」
私は楓に突き倒され、額を思いきりコンクリートの屋上に打ち付けた。
次の瞬間は鼓膜が破れそうになった。
鉄の塊が裂けるような恐ろしい爆音、瓦礫が私の上に降り注ぐ。もし変身していなければ私の命はなかっただろう。
焦げ臭い。
「大丈夫か!」
先生の声。
私は上体を起こし、何が起きたかを、目の当たりにした。

「・・・嘘。」

私の居る屋上はその一部が吹き飛び、真っ黒く煤けていた。
煙が立ち上る中仰向けに倒れて居るのは、服がズタズタに破け、頭が真っ赤に血で染まった、楓だった。


「死んでるの?」


私はペタペタと屋上を這いつくばり、たった今死んだばかりの親友の顔を見た。
目は何処か不可思議な方向を向いており焦点が合わない。

「しっかりしろ!」
先生が私の腰に手を回し抱え起こした。
見ると生徒たちは階段を降りて屋上から退避していくところだった。
「おい邪魔だぞどけ!」
変身を解いた天堂茂が他の生徒を押しのけて逃げようとする姿が見える。

直後二発目の発射音が轟いた。この砲撃が一度で終わる筈はない。

先生は駆け出すと屋上から身を乗り出し、指揮棒を振り上げてこう叫んだ。
「変身!」


教師・志布羅一郎は真っ赤な衣装に包まれた。金色のバイザーが眩しい。


赤の戦士は指揮棒でくるんと円を描く。
「パーフェクトサークル!」
砲弾は円の中心に突っ込んだ。バキンというガラスが割れるような音と共に弾ははじき飛ばされ校庭に着弾、地鳴りと巨大な土煙を起こした。

私は強烈な赤い光を感じた。
「この光、覚えてる・・・」

「先生はレジェンドレッドだったんですね!?」
天堂茂だ。
逃げ遅れた彼は今や先生の背中の後ろが最も安全な場所だと判断して近寄ってきたようだ。

「レジェンドレッド・・・」

ぽかんとする私に天堂茂が怒鳴った。
「馬鹿か!レジェンドレッドはレジェンドレンジャー(LEGEND RANGER)のエース、つまり8年前校長によって選出されただな、伝説の赤い戦士なんだよ!」

だが私が唖然としていたのはそう言う理由ではない。


「あの時私を助けてくれたのは、先生だったんですね・・・!」


レジェンドレッドは静かにうなずいた。
「そうだ。僕は1年生の頃、レジェンドレッドに任命された。教師になった今も、当時の4人と共に校長から受けた特命の任務にあたっている。」


「そして小豆沢七海。今日から君が6人目だ――」

[返信][編集]

57 :14
2021/05/23(日) 00:14:59

『緊急事態、緊急事態。西の砲台が敵により占拠され、死傷者が確認されている。覚悟のある戦隊ユニットは敵の掃討作戦に参加せよ。非戦闘員は直ちにシェルターに退避せよ。繰り返す――』

「おかしいですよ!」
やはりそうだろう、天堂茂が喰いついた。
「戦隊の歴史も知らないようなそんな馬鹿よりも、この天堂茂を!父は天堂任三郎、中学の時は戦隊塾でトップの成績だったんですよ!しふら先生!」

「志布羅一郎だ。歴史なんてどうでもいいし成績なんて飾りだろう。」

天堂茂の顔は私よりも白くなった。
「小豆沢!お前なんかがレジェンドレンジャーに入るなら、僕は父を通して校長に抗議するからな!絶対に入らせないぞ!」

「それはこちらが決めることだ。」

私はまごついた。
「でも、何で私が・・・」

「僕が何故君をこの学園にスカウトしたと思う?ずっとこの時を待っていたからだ。」


こんな状況なのに、どうしてだろう。私はちょっとドキッとしてしまった。


天堂茂はぺぇッと、私の靴に唾を吐きかけた。
白いブーツが、ねっとりと汚れた。

「汚い、何するの!」
「お前にはこれがお似合いだ」

志布羅一郎は低く、小さな声で言った。
「拭けよ。」
くるんと指揮棒を動かすと、天堂茂の体は意思に反して動き出す。

「ち、ちくしょう!」
天堂茂は跪き、自分で自分の唾を拭く羽目になった。しかも、自分の服で。


「哀れな男だ、ほっておけ。小豆沢七海はレジェンドレンジャーの追加戦士として決まりだ。では早速実践だ!」

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58 :15
2021/05/23(日) 00:18:02

巨大な砲門の下に死体が転がっている。

「射撃集団ショットマン。学園の警固にはあまりにもやわな連中だった。」

迷彩に身を包んだ獣のような大男が、ギシギシと錆びた鉄の階段を上がっていく。
西の砲台は迷彩服の集団に占拠されていた。

「将軍、B校舎は半壊しました。」
「砲撃の手を緩めるな。次は中央校舎(セントラル)だ。」
将軍と呼ばれた男は目をギラつかせる。
「戦隊学園は我がイヤー軍に占拠され、テロルの拠点となるのだ!!」

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59 :16
2021/05/23(日) 00:19:04

「敵を倒すのは、昨年の戦隊対抗運動会で1位を極めた、臨界戦隊ゲンカイジャーなり!」
「違う!海魚戦隊ヒラメイジャーだ!」
「便乗戦隊リュウコウジャー・・・」

昇降口の前では戦隊達が取っ組み合いの喧嘩をしていた。まるでカラフルな混ぜご飯の様だ。
「こんなこと、してる場合じゃないのに。」
私は1つ溜息をつく。
「手柄欲しさの烏合の衆だ。就職に有利になるからね。」

「道を開けてもらおうか。」

志布羅一郎はまるで進路には何も無いかのようにスタスタと歩いた。
すると人波は見えない力に弾かれたふうに道を開けて行った。私は、海を切り開いて渡る伝説の話を思い出した。

「あれは・・・」
「レジェンドレッドのお出ましだ!」

志布羅一郎は異能を駆使することなく、存在感のみで生徒たちを後退させていた。
私はその背中にくっついていく。

「あの白いのは誰だ?」
「白の変身なんて見たこと無い・・・入学式のへんな子じゃない?」

「へんな子ね、どうも。」

校庭ではあちらこちらから煙が上がっていた。
他の校舎から青・黄・緑・ピンクの4人の戦士が現れ、私たちに合流する。
「羅一郎、それは例の娘か?」
「そうだ。」
青い戦士は私のつま先から頭まで目線を移動させたのち、
「小豆沢七海、あのちいさな子供がついに変身を覚えたか。だが即戦力になるとは思えない。大丈夫なのか。」

「もちろん。」

志布羅一郎は4人の戦士たちの顔を見回し、次に私の方を向いた。
「紹介は、事後だ。」
4人は背格好からして全員志布羅一郎と同じく大人のようだ。
「よろしくお願いします。」
私はぺこりと頭を下げた。

「戦士としての名は、ホワイトだ。では名乗るぞ。」
「名乗り・・・この状況でですか?」
緊迫した状況下、いったい誰のために名乗ると言うのか。

「名乗りは戦隊の力、チームワークを高める儀式のようなものだ。これがなくちゃあ始まらないんだよ。」

私たち6人は横一列に並び、目の前の校庭、その先の森にそびえたつ砲台を睨んだ。
「あれが目標だ。学園を脅かす敵を殲滅する。」
その瞬間、砲台が炎を吹いた。

「レジェンドレッド!」
「レジェンドブルー!」
「レジェンドイエロー!」
「レジェンドグリーン!」
「レジェンドピンク!」

「レジェンドホワイト!」

「学園守護隊、レジェンドレンジャー!!!!!!」

私たちの後ろで爆炎が起きた。

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60 :17
2021/05/23(日) 00:21:30

「Forward March!」
レッドの号令の下、6人の戦士が校庭を行進する。

ぽつり、と水滴が頭のてっぺんに落ちた。
「雨?」
空は灰色に濁り、ぽたぽたと雨粒を垂らし始めた。
「雨は初めてだ!雨女かいあんたは?」グリーンがきゃらきゃらと笑った。

すると突然目の前の森から、迷彩服と覆面の兵隊がワッと出た。
レッドは立ち止まると指揮棒でチームに指示を出す。
「Horns Up!」
私以外の4人の戦士はそれぞれ楽器のような武器を構えた。
「Blue!」
ブルーはトランペットのような武器を構えていた。
口元にマウスピースを当て、パァンと大音量を噴き出す。
「ぎゃあ!」
爆音を受けた兵隊は全身を挫滅する。
「Yellow!」
イエローはバスドラムだ。
鼓を打つと低い地響きのような音がして、森の木々がボキボキと倒れ砲台までの道を作った。

雨天のマーチングである。

またもや兵隊がうじゃうじゃと湧き出す。
「次は君だ、White!」
「え。」

指揮棒は私に向けられていた。
雨はざぁざぁと振っている。私は動けない。

「僕は君のことを知っている。君が幼いころ、君の姿、そして能力を1度見ている。遠慮はいらない。存分に君の力を発揮しろ。敵を倒すことだけを考えろ。」


私は無残に殺された楓の姿を思い出した。

私は左手を敵に向ける。
「マズルフラッシュ!」
手から火柱が走り、兵隊は真っ黒になり転げた。

「あ、あれは何だ」ブルーはトランペットを取り落とした。
「今やつの体が・・・いや、まさかそんなはずは・・・」

私は木々の間を駆ける。
「砲台に近付かせるな!」
「ザッピング!」
次に私は体から放電した。雷撃が空間を捻じ曲げ、無数の兵隊は悲鳴を上げながらバラバラになった。これは故障したVHSの画面を見ている様だった。

「やっぱりそうだ、違いない。あれはどういうことだ羅一郎。」
「驚くべきことだ。だが、馬鹿げたことではない。あれが小豆沢七海の能力だ。」
「過大評価ではなかったか。」


その時の私は、赤に、青に、黄色に、次々に色を変化させていた。
色が変わると技の形状も変わる。つまり私は、総ての属性の力を自在にすることができたのである。


「Ready Halt!待て七海!」
後ろから声がする。だが私は無視し、感情のままに水溜りを踏みつけ走った。

私は西の砲台に到着した。
「ショットマンとは比べ物になりません!」
「では我が直接相手になろう。」
大ボスが、錆びた階段を降りて来る。

「イヤー軍・将軍プリエールである。」

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61 :18
2021/05/23(日) 00:25:34

「マズルフラッシュ!」
私はプリエールに容赦なく炎を浴びせる。
「フンッ!」敵は日本刀で火をぶった斬った。
「な・・・!」
「我に切れない物は無い。そのカラーごと断ち斬ってやる!」

私は胴を、真一文字に斬り付けられた。
重い腹パンを喰らったような鈍痛が走る。カラーが私の命を保護したが、同時にそのカラーは力を消失した。


私は変身を解かれ、ぐじゅぐじゅの泥に膝をついた。

私の姿を見るなり敵は動きを止めた。
「げ!」
目を見開き、歯をギリリと鳴らした。
「白子か!!斬っては祟られる!あああ!!」
敵は一歩、二歩と交代する。

「うるさああああああああああい!!」
私は敵の胸ぐらに掴みかかっていた。
「白って言うな!!!!」


あの時のように。

私の白い身体は膨れ上がる。
ブチッという音で口は裂け、血飛沫が白い肌を汚す。
真っ赤な目は見開き――

「ひゃああ!悪魔めしねい!」
プリエールは日本刀を振り降ろした。


死んだ、そう思った。


レジェンドレッド――志布羅一郎が指揮棒で敵の日本刀を受け留めていた。
膨れ上がった私はその背中の後ろで、フー、フーと息を荒げていた。

「七海。おちついて。君の能力は素晴らしい。だが戦隊はチーム戦だ。1人で突っ走ってばかりでは駄目だよ。」

彼は指揮棒を敵に突き刺すように動かす。
プリエールは空中をもがきながら飛んでいき、砲台に激突した。

志布羅一郎は振り向いて、私に向かってこう言った。


「白は素敵な色だ。何色にでも塗れる。今は白でも、君の好きな色に染めればいい。卒業するころには君は、掛け替えの無い仲間たちに囲まれ、色とりどりになっているだろう。」


「先生・・・。」

私は元の姿に戻っていた。

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62 :19
2021/05/23(日) 00:29:11

「将軍!」
砲台に埋まり込み、身動きの取れないプリエール。部下の兵隊たちが群がって助け出そうとしている。

「ではとどめを刺そう。レジェンドタイフーンだ!」
志布羅一郎は指揮棒を回転させると、光の弾をを作り出した。
「砲台ごと消し飛ぶがいいのか?」とブルー。
「仕方がないだろう。もしもの時はそうしろと、校長からの通達も受けている。」
「よし。」

「Pink!」
「Green!」
「Yellow!」
「Blue!」
「Red!」
5人の戦士が次々と光の弾ををパスし、徐々に威力を高めていく。まるで、バレーボールのように。

「最後は君だ、White!」

弾はこちらに飛んできた。
「任せて下さい。」
私は変身を決めると、大きくジャンプした。

「Finish!!」

キックが決まり、弾は一直線に敵に向かって飛んだ。
「まずい!」将軍を置いて散り散りになる兵隊。
「待てコラ!うわ~来るな来るな来るなあああああ!!!!!」

弾は回転しながら、虹色に輝いて見えた。

「なんだ!虹が見える・・・虹が・・・きれい・・・うわあああああああああ!!!!!」

虹の弾はプリエールの顔面と砲台を貫通した。

砲台はスパッと折れ、直後木っ端微塵に吹き飛んだ。
轟音とともに砲門が落下し、兵隊たちを押し潰した。


「レジェンドタイフーン・虹です。」


「Horns Down。」
志布羅一郎は指揮棒を下ろした。

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63 :20
2021/05/23(日) 00:30:53

「ありがとう七海。君がとどめを刺したんだ。これからも学園を守護する者、レジェンドレンジャーとしてよろしく頼む。」
志布羅一郎は空を指さした。
「御覧、もう雨は止んでいるよ。雨が止むとほら」


私は変身を解き、空を仰いだ。
青い空に大きな虹がかかっていた。


「綺麗。でも。」
ちらちらと視界が白み、私は俯いた。
「私には虹が見えないの。」



真っ暗な世界で。
「死んだ?プリエール。ついにこの時が来たカモね!」
色とりどりの衣装に身を包んだ女が。
「じゃあ次は、アタシがアンタを真っ黒に染めてあげるからねぇ!!」
笑っていた。
「・・・待っててね、七海ちん」

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