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┗265.VigilanteーThe Masked Riderー(27-45/45)
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27 :げらっち
2022/04/30(土) 21:13:35
本スレに感想書いていいのかわからなかったので、ダメだったら消します。
『MÖBIUSーThe next HEROー』や『ハイスクール・ライダーズ』のリベンジ的作品。
前者とは題名が似ているし、後者とは人名が違うだけでプロットが酷似している。また、ライダーズの時と同じく戦隊学園の裏視点が描かれている。
「戦隊だらけの世界で肩身の狭いライダーが戦うプロット」は、戦隊小説が牛耳るゲラフィ小説界を風刺していて面白いw
天堂誠が一度だけ茂って書かれてる……
CGRの世界(2022)で茂は生まれたばかりなので、ルルが高校生だとするとパラドクスが生じる。ここはおいおい明かされていくのかねえ。
硬派でかっこいい。変身シーンや悪との戦いも見たいっす。
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28 :迅
2022/05/04(水) 11:27:09
「えー、ご存知の通り、ニッポンジャーが統治する現代社会では、戦隊至上主義が掲げられてるのは分かってる筈だ」
一方その頃、斗真たちは神谷教諭が受け持つ歴史の授業を受けていた。
クラスの中心人物が『自己紹介の続きをしたい』とのたまっていたが、神谷教諭は「それなら休み時間にやってろ」と軽く一蹴し、パソコンと黒板を使って授業を始めた。
今回の授業は一回目ということもあり、戦隊の発足と彼らが掲げた思想を学ぶ事になった。クラスメイトたちは真面目に聞いているが、斗真はいつもの如く、頬杖をついて窓の外を見つめる。
気が抜けてしまいそうなほど、空は青かった。
「この戦隊至上主義ってのは、『戦隊ならざる者戦士にあらず』と言う、天堂任三郎の理念を体現したものだな。俺は進路指導もやってる。どうせ、この中から戦隊志望者も出て来るだろうから、一応基礎は教えておいてやる」
神谷教諭は衝撃の事実をサラリと告げ、黒板に文字を書いていく。
普段から無表情だが、黒板に向かって文字を書く神谷教諭の姿は、いつも以上に無機的に見えた。
「そんで戦隊が発足し、他のヒーロー達の淘汰を始めた日を何と言うか分かる奴は?」
───『赤の日』だな。
クラスメイトが首を傾げる中、斗真は心の中で答える。
その日は忘れたくても忘れられない、斗真にとってある種のトラウマを刻み込んだ日なのだから。しかも、その日は彼の父・龍馬の誕生日と重なったのもタチが悪い。
斜め前を見てみると、ルルも訝しげな表情をしている。
彼女にとっても、何か因縁があるのだろうか?
「戦隊の発足以降、連中は『ずっと前から守ってました』アピールを欠かさないが、結局のところ、それは一つの洗脳教育だ。戦隊よりも前に、仮面ライダーがこの国を守っていたことは前に言ったな?」
神谷教諭は続ける。
仮面ライダーの始まりは今から約400年前、江戸幕府8代将軍・徳川吉宗公が設けた御庭番が起源とされている。
非番の日に、火付盗賊改方の目をすり抜けて行われる軽犯罪や暴行を未然に防ぐべく、揃いの面を被り自警活動を行ったのが始まり……と、祖父から教わった。
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29 :迅
2022/05/04(水) 14:36:55
「言っちまえば、戦隊は仮面ライダーのパク───リとまでは行かないが、まぁ似てはいるな」
神谷教諭は本心を言いかけるが、何処からか放たれたキツい視線に気付いたのか、そっとオブラートに包み込む。
斗真はその視線を追ってみると、彼の目線の先には、黒髪ロングのお嬢様然とした女子生徒が座っていた。その周りを囲むに座っているのは、彼女の親衛隊か何かだろう。
そこで彼は察する。
───あの女は、アイツと、天堂誠同じ類の人間だ。
関わらないに越した事はないだろう。自ら進んで藪を突かなければ、蛇が出る事も鬼が出る事もないのだから。
どうやら彼方もこっちの視線に気づいたようで、刃物のような鋭い視線を向けて来る。目が合う寸前に目を逸らしたが、仮に逸らさなかったらどうなっていたのか気にならない訳でもない。
あの雰囲気を見るに、彼女も戦隊関係者なのだろう。
そうでなければ、余程熱狂的……いや、狂信的なファンでもない限り、戦隊に対する悪言に怒りを覚える理由がない。
それを察したのは神谷教諭も同じようで、上手く話題を切り替えた。
「現代社会では、国防を始めに医療や建築、司法関係など、様々な分野を戦隊が取り仕切っている。前に言った『戦隊至上主義』の賜物だ。同時に、これは戦隊以外のヒーローの存在の全てを否定する思想であり───」
神谷教諭は今までと変わらない無感情な声色で言う。
だが、その判断は正解だ。戦隊関係者がいる場所で、変な事を言ったらどうなるか分かったものじゃない。
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30 :迅
2022/05/05(木) 12:31:37
戦隊の情報共有率は無駄に高い。
かつて、ちょっとした一言が原因で戦隊総出で袋叩きにされた政治家を見た事がある。『戦隊至上主義』に一般人の人権など、あってないような物だ。
「さて、今日の授業はここまでだ。明日小テストをやる。各自、しっかり復習しておくように」
───ちゃんと宣言したぞ?
と言い残し、神谷教諭はパソコン片手に教室を出て行く。
斗真もいつも通り教室の外に目を向けると、こちらに向かって来る三つの足音を聞き取る。
その足音は、斗真の席の隣で止まった。
「……」
斗真は知らないフリをしたまま、窓の外を眺め続ける。
背後からタンタンと爪先で床を叩く音が聞こえるが、それもスルー。相手は、粗方予想出来ているからだ。
しかし、相手は一向に去ろうとしない。
耐久力の勝負なら負けるつもりはないが、クラスメイトの視線が集中するのは望ましくない。斗真は、ゆっくりと来訪者の方に身体を向けた。
相手は大猿のような巨漢と、細身の少年。
───そして、先程神谷教諭に鋭い視線を送っていた、黒髪の少女。
「……えーと、なんすか?」
ワザとらしさを隠さない第一声。
巨漢が掴み掛かろうとするが、それを制する黒髪の少女。
猛る巨漢を下がらせると、彼女は小さく微笑んだ。
「こうして話すのは、初めてですわね。私、虎洸メアリと言う者ですわ」
───以後、お見知り置きを
と、礼儀正しく挨拶する少女。護衛達は一言も発さないまま、手を後ろに組んでメアリの後ろに待機している。
斗真も柔かに挨拶を返すが、内心は穏やかではなかった。
「(思ったより、大物に話しかけられちまったな……)」
『虎洸』と言えば、武闘派戦隊の頂点と呼ばれる『神拳戦隊ゴウレンジャー』のリーダーを受け継いでいる家系だ。
となれば、目の前の彼女は勿論、背後に控えている二人も相当な手練れの可能性が高い。味方になってくれるなら頼もしいが、敵として対峙した場合は、厄介極まりない相手だ。
「お会い出来て光栄ですわ。緋月さま」
しかし、彼女は柔和な笑みを浮かべたまま、優しい声色で近づき、彼の耳元で思いもよらぬ言葉を囁いた。
「(貴方……仮面ライダーの息子、ですわよね?)」
「ッ!」
思わず目を見開き、メアリを睨み付ける斗真。
対する彼女は、してやったりと言いたげな表情を浮かべた。
「此処でお話になるのもどうかと思いますし、少し歩きませんこと?」
斗真は、彼女の指示に従う他無かった。
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31 :迅
2022/05/05(木) 20:21:17
院丁第二高校は、特殊災害避難所にも指定されており、あの夢の国と同等以上の敷地面積を誇る。故にコンビニなどもあり、その気になればここで暮らす事も可能だ。
その広大な敷地を移動する時間を配慮してか、ここの休み時間は少し多めに設けられている。(無論、その分授業時間も長めだが)
中でも、中庭は人気の休憩スポットだ。
「ん〜♪やっぱり、マスターの作るお弁当は美味しいですわ♪」
そう言って幸せそうにサンドイッチを食べるのは、先程知り合った正真正銘のお嬢様・虎洸メアリ。
「はい、あーん♪」
出逢って数分、何故か斗真は彼女に懐かれていた。
困惑の中、斗真の脳内に一つの言葉が過ぎる。
「(一体、どうしてこうなった……)」
事の始まりは、数分前に遡る───
「よう、虎洸」
「こんにちは、倉敷さま。今日も良いお日柄ですわね」
「メアリちゃーん!おっはー!」
「あらあら、こんにちは、桐崎さま」
隣を歩くのは、道行く人から挨拶を送られ、気を悪くしないどころか、柔和な笑みで丁寧に返すお嬢様。
精巧な笑顔を貼り付け、それを相手に悟られる事なく利用する。
良くも悪くも、筋金入りなのは確かだ。
そして、彼女ほどの有名人となれば、その所作の一つ一つや近くにいる人間一人ですら、噂話のネタになる。
「(虎洸さんの隣にいるのって誰?)」
「(護衛じゃね?)」
「(でもよ、護衛って確か、あのゴリラみてーな奴と、ヒョロヒョロな奴だったよな?)」
「(もしかして彼氏とか!?)」
「(ンな訳ねーって)」
彼女の後ろで、思い思いの事を言い合う生徒達。
普段なら聞くに堪えない戯言として聞き逃していただろうが、今は違う。何故なら───
「な、なぁ。どこまで行く気なんだ?」
隣を歩く少年・緋月斗真は、そっとメアリに問いかける。
彼は今、メアリと手を繋ぎ(正確には『繋がれて』が正しい表現だが)中庭に向かっている最中なのだ。
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32 :げらっち
2022/05/05(木) 20:55:58
江戸時代までに歴史がさかのぼるというのが本格的で面白い。
お嬢様などクラスメイトが増えてきてこれから楽しそうだ。
内容は良いのだが誤字が少々ッ
剥き的→無機的?
「投稿者パス」は校閲に活用してくれよな
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33 :迅
2022/05/05(木) 21:02:27
>>32
投稿者パス設定し忘れた場合ってどうすりゃ良い?
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34 :げらっち
2022/05/05(木) 21:15:27
えーと……
諦めてください(笑)
次からは設定するようにして
個々のレスで設定できるからね
誤字はこちらで直しとけばいい?
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35 :迅
2022/05/05(木) 21:37:02
ん、頼んます
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36 :迅
2022/05/06(金) 11:10:34
見ず知らずの他人ならどうでも良い。
だが、話題の中心になる事を極端に嫌う斗真にとって、この状況は恐ろしい程に好ましくない。
「(しかも、この女は『何故か』俺が仮面ライダーの息子だって事も知ってやがる……!)」
チームワークが重要視され、高い情報共有率を持つ戦隊とは違い、あくまでも個人活動である仮面ライダーの情報は、そう簡単に漏出する物ではない。
にも関わらずだ。
仮面ライダーどころか、むしろ敵対関係にある戦隊の娘である彼女はどう言う訳か知っている。
冗談と言えばそこまでだが、全く笑える冗談じゃない。
「さ、着きましたわ」
───どうぞお掛けになって?
と、メアリは中庭のベンチに座るよう促し、その愛らしい仕草に、不覚にも心臓がドキッとなるのを感じる。
斗真はなるべく上品に腰掛けようと心掛けるが、メアリはさも当然の如く上品に座って見せる。優雅さを感じさせながら、付け入る隙を見せない所作だった。
「さ、お昼にしましょうか」
彼女が指を鳴らすと、護衛二人がまるで分かっていたかのように、籠とティーセットを用意する。
こう言うのは、ドラマや小説の中だけではなかったのか。
「しっかし、お前も大変だな」
小鳥の囀りが心地よい昼下がり。
ベンチに座った斗真は、重い出したように言う。メアリは彼の言いたい事を察したのか、小さく微笑んだ。
「そんな事はございませんわ。相手が怪人以外であれば、誰であろうと分け隔てなく接する。それが、淑女としての礼儀でしてよ?」
「それが、仮面ライダーの息子だとしてもか?」
「勿論ですわ」
───それに、同業者と話すより、大分楽ですもの。
と、彼女は続ける。
その横顔は、まるで何かを嘆くような表情だった。
「……何か、悩みあるなら聞くぞ?」
「……私───」
刹那、中庭に響き渡る悲鳴と爆発音。
その轟音は、良い感じな雰囲気をぶち壊すには十分だった。
「今のは……!?」
斗真が立ち上がると同時に、袖を引っ張られる。目線の先には、小さく頷くメアリ。
彼女も、腹は決まっているらしい。
彼女は凛とした目を斗真に向け、力強い声で言う。
「行きましょう」
「言われなくてもッ」
悲鳴の出所は、おそらく校舎内。
メアリは護衛二人に素早く指示を出し、避難誘導と現場の偵察を任せる。
そして二人は、黒煙立ち昇る校舎に向かって走り出した。
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37 :迅
2022/05/06(金) 19:04:32
悲鳴と黒煙が上がってから数分後、斗真達は校舎へと入る。
校舎内は、怯える生徒達で溢れかえっていた。
「おい!早く逃げろよ!」
「みんな!指示に従って避難するんだ!」
「馬鹿野郎!そんな事言ってる場合か───ッ」
「先生はどこ行ったんだ!?」
「いいから、早く逃げるぞ!」
廊下に響き渡る、男女問わない様々な絶叫と悲鳴。
逃げ惑う生徒達の流れに逆らい、斗真とメアリの二人は現場に向かって廊下を走っていた。
「貴方、さっきロッカールームに行ってましたよね!あれは一体、どう言う意味ですの!?」
「ちょっとした野暮用だ!」
メアリからの言及を、斗真は軽く受け流す。
あそこに向かった理由はただ一つ。
彼の目的の物は、ロッカールームにあったからだ。
「……」
斗真は銀色の縁が光るアタッシュケースに目を向ける。
それは、戦隊が使用する持ち運び易いようにコンパクト化されたそれとは異なる、無骨ながらもシャープなデザインをした仮面ライダーが使う『変身アイテム』。
彼の持つアタッシュケースに、それが入っているのだ。
「兎に角!詳しい話は、現場に行きゃあ分かる!」
人の間を縫うように廊下を駆け抜け、とおまわりにはなるが、成るべく人通りの少ない場所を通っていく。
斗真の健脚を使えば、人混みを通るよりも時短になるからだ。
そして、教室の近くに差し掛かった瞬間───
「ぐあぁぁぁあぁあ!」
「ひぃぃぃぃっ!」
聞き覚えのある二つの悲鳴が、廊下に響き渡った。
「今の悲鳴は……!」
「村木さん!」
メアリは自身の部下の名を叫び、先を走っていた斗真が悲鳴の出所であるB組の扉を勢いに任せて蹴破り、突入する。
そして、教室の中に広がる光景は───────
「アハッ☆やっと来たァ♪」
まさしく、地獄絵図だった。
Episode3・見てて下さい、俺の『変身』(結)
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38 :迅
2022/05/07(土) 11:42:56
「遅いよぉ〜、待ちくたびれちゃったじゃん☆」
血に染まる教室、周囲に散乱した机や椅子。一昔前までは二次元の世界でしか見る事はなかったが、今となっては、もはや当たり前となった惨状。
視界の端に映るのは、教室の隅っこで縮こまって怯える少年と、脇腹を負傷したのか、左手で患部を抑える少年。
相手はパワードスーツらしき物を纏ってこそいるが、声と体付きから、ギリギリ女性と判断出来る。
だが、この惨状を引き起こしたのは、紛れもなく彼女だ。
「アンタ、一体何もんだ」
メアリは自然な動作で要救護者二名の側まで移動し、斗真は教卓に座って足をぶらぶらさせる女に問いかける。
しかし、彼女からの返答は言葉ではなく、冷たい視線だった。
「君ぃ、聞いて何に成るの?だって、君はもう死ぬんだよ?」
刹那、女の姿が霞の如く掻き消える。
まずい。
そう思った瞬間、凄まじい衝撃が斗真の側頭部に襲いかかった。
「ぐぅぅおッ!!?」
何だ?何を食らった!?
考えが追いつかないまま吹き飛ばされ、受け身を取る事もままならず、斗真は机を吹き飛ばしながら背後の壁に激突する。
激突の瞬間で口の中を切ったのだろう。
口の中にサビ臭い鉄の匂いが広がる。
「緋月さま!大丈夫ですの!?」
既にグロッキー状態の彼を気遣うように、駆け寄って来たメアリが肩を貸す。
対するパワードスーツの女は、まるで空間を飛び越えて来たかのような軽やかな動きで着地する。透明化か、単なる高速移動か。
しかし、戦隊はまだか?
そろそろ通報を受けてこちらに来ても良い筈だ。
「おい、お嬢。あの女相当ヤベーぞ……!」
斗真は口元の血を拭い、揺れる頭を左手で抑える。
強烈な一撃をモロに食らったせいで、未だに意識が漠然としない。
肝心のアタッシュケースは、蹴りを喰らった時に手放してしまった。
「おぉ〜、あれ食らって生きてるんだぁ。君、すごいね!」
「そりゃあ、どーも……!」
口だけの賛辞に、斗真は強がって見せる。
しかし、参った。
強がってみたは良いものの、全く勝機が見えない。
万事休す。
斗真たちは逃れられない死を覚悟した瞬間、校舎の外からけたたましく鳴るサイレンの音が聞こえて来た。
「「「「「!!」」」」」
全員の視線が外に釘付けにさせられる。
そして、サイレンは校門前で停止し、校庭から聴こえて来るは、マシンガンやカラビナを擦らせながらこちらに向かって来る複数の足音。
どうやら、対怪人犯罪の専門家・機動戦隊サイレンジャーが到着したらしい。
『犯人に告ぐ!破壊活動を辞め、直ちに投降せよ!投降を拒否した場合、実力行使に移らせて貰う!繰り返す!破壊活動を辞め、直ちに投降せよ!』
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39 :迅
2022/05/07(土) 13:29:38
メガホン片手に、こちらに向けて警察官が叫ぶ。
窓が全開だった事と、刑事の声が大きかった事が幸いし、その警告は二階にあるこの教室までスムーズに届いた。
足音はすぐそこまで迫っている。
フラッシュバンが投げ入れられる事を考慮して、直ぐにでもパワードスーツ女以外の三人を抱えて逃げ出すのが、今出来る最善策だろう。
脳の揺れも治って来た。
後は、タイミングを見計らうだけだ。
だが───
「ん〜、もしかして君たち、助かったと思ってる?」
その考えは、相手の一言によって打ち消された。
「どう言う事だ?」
「だからぁ〜、君たちはこれで助かったと思ってる?って聞いてるの〜」
女はフルフェイスヘルメットの奥から、間伸びしつつも透き通った声で、斗真の問いかけに答える。
今思えば、この女は余裕綽々とした態度でいる。
警察が来ているにも関わらず。
身構える斗真を尻目に、女は続けた。
「私の実力ならぁ、君たちを殺す事なんて造作も無いんだよねぇ。それにぃ、ケーサツの人たちが来てもぉ、逃げ切るまでに2〜30人くらいは殺せるかなぁ」
ヘルメットで表情こそ分からないが、その下ではニマニマと不敵な笑みを浮かべているのが裕に想像できる。
それくらい、目の前の怪人は余裕に満ち溢れていた。
「お前!僕にこんな事をして、タダで済むと思うなよ!?僕は天堂任三郎の息子だぞ!今から、ニッポンジャーを呼んでやる!覚悟しろよ!お前はもう死ぬんだ!」
そんな中、教室の隅で縮こまっていた少年・天堂誠が喚き出す。
さっきまでビビり散らしてた癖に、なぜ強気になれるのか。
だが、パワードスーツ女はその脅しに屈する事なく、それどころか、まるで誠を小馬鹿にするように首を傾げ、クスクスと小さく笑っていた。
「君、馬鹿だねぇ」
───君のパパが来るまで、待ってると思う?
パワードスーツ女の姿がまた消える。
誠は状況が理解出来ていないのか、「おい、勝手に動くんじゃねぇ!」だのと喚き続けている。
メアリは護衛の介抱に手一杯だ。このままでは、誠は死ぬ。
正直死んでくれた方が嬉しいが、それが原因でこの学校の信頼が落ちては、少し面倒な事になる。しかも、今殺されようとしているのは、ニッポンジャー司令の息子だ。
下手したら、この場に居合わせている斗真たちにも火の粉が飛んで来るかもしれない。
それだけは、絶対にごめんだ。
「んにゃろぉぉぉぉぉお!」
斗真は反射的に飛び出し、誠の眼前まで迫ったパワードスーツ女の身体にタックルをする。
硬質な装甲が生身とでは強度は全く違うが、彼女自身の体重はそれほどでもなかったのか、彼のタックルによって簡単に軌道を逸らし、掃除用具入れに激突する。
よし、力自体はこっちが上だ。
「この───ッ!」
「させるか!」
振り解こうとするパワードスーツ女の関節を絞り上げ、斗真は極技の状態に持ち込む。いくらパワードスーツの補助があっても、関節を固定されてはどうしようもない筈だ。
だが、この拘束もいつまで保つかは本人にも分からない。
故に、斗真はメアリに向かって叫んだ。
「お嬢!二人を連れて逃げろ!」
「で、でも緋月さまはどうするんですの!?」
「俺が逃げるまでの時間を稼ぐ!」
「でしたら私も───」
「邪魔だ!さっさと行けッ!」
「ッ!」
───死なないで下さいまし!
メアリは二人に肩を貸し、教室から出て行く。
同時に、パワードスーツ女は極技を無理矢理振り解くと、強化された脚力で斗真を蹴り飛ばす。
しかし、彼とて馬鹿ではない。
彼は蹴り飛ばされたと同時に前転して距離を取り、落ちていたアタッシュケースを手繰り寄せる。
そのまま鍵を開け、中に収められたベルトを取り出した。
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40 :迅
2022/05/07(土) 15:34:01
パワードスーツ女は立ち上がり、怒気を隠さない声で言う。
「友達逃して英雄気取りかな?」
「別に、そんな間柄でもねェよ」
「ふーん。じゃあ、犬死って感じかな?」
「そりゃあー、少し違うな」
「は?」
「お前を倒すのに、邪魔が居ない方が楽なだけだ」
────お前をぶっ倒すのに、全力が出せるからな。
そう言って、斗真は右手に持ったベルトを腰に巻き付ける。
そして、流れるような動作で右ポケットから小型のディスクを取り出し、両掌で押し込むようにバックル中央のスロットに装填。
右腕を左肩の方に構え、左手を腰骨の辺りに添える。
変身準備の完了を確認したベルトから、軽快なBGMと共に電子音声によるアナウンスが流れ始める。
『Stend by……Stend by……』
「変───身ッ!!」
『Up Date!』
教室内に吹き荒れる疾風。
遍く全てを平等に吹き飛ばす疾風は、やがて彼の下に収束して行き、黒を基調としたアンダースーツと、白を基調としたアーマーを形成して行く。
風によって形作られたヘルメットの複眼部分は、夜空を照らす月光のように淡く輝いた。
『Get To the Speed!Aiming for the Future!』
仮面ライダーブラスト。
戦隊が現れる前、この国を守り続けて来た疾風の戦士。
風が止み、変身を終えた斗真は叫ぶ。
「さぁ、白黒付けようぜッ」
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41 :迅
2022/05/07(土) 22:11:25
「驚いたなぁ〜。君、仮面ライダーだったんだぁ」
変身完了を見届けたパワードスーツ女は、物珍しい物を見たような口調で言う。
「ま、そうだよねぇ。だって君、チームプレーは苦手って感じするもん」
「余計なお世話だ」
彼女の軽口をあしらい、斗真は構える。
ファイトスタイルはもちろん、彼の得意分野であるボクシングだ。彼の鋭い踏み込みは、空気力学に基づいて設計されたスーツにより、より加速する!
「フッ!」
気合一閃。
斗真は一瞬で両者の間合いを詰め、右ストレートを繰り出す。
前腕に装備された噴出機構によって、彼のパンチは逆巻く突風を纏いながらパワードスーツ女の顔面を捉えるが、クリーンヒットする瞬間に避けられ、渾身の一撃は彼女のヘルメットの中心から僅かにズレた側頭部を掠め取った。
だが、それでも威嚇としては十分だろう。
その一撃を脅威に感じたのか、パワードスーツ女は堪らず後退し、そっと拳が掠った部分に触れる。
すると、触れた部分はひび割れ、土壁のようにパラパラと崩れ落ちた。
破損部から覗くは、雪のような白い肌。
「分かったろ、アンタじゃ俺には勝てない」
「……ッ」
斗真の一言に、パワードスーツ女が小さく舌打ちをする。
そして、彼の言葉を後押しするように、サイレンジャーの面々が教室内に押し寄せて来た。
「シナプス、貴様には逮捕命令が出ている。武装を解除し、今すぐ投降しろ」
アサルトライフルを構え、無機質な声で警告するサイレンジャーのリーダー・サイレンレッド。
シナプスと呼ばれた女は、小首を傾げて笑って見せた。
弧を描いた口から、白い歯が覗く。
「相変わらず真面目だねぇ、暸君はそんなに私が許せないかなぁ?」
「その名で呼ぶな。俺はサイレンレッド、阿笠暸太郎だ」
「名前なんて関係ないよぉ。私は私、君は君。どれだけ表情を隠しても、その中身まで隠す事は出来ないんだよぉ?」
「貴様……ッ」
銃を握るサイレンレッドこと暸太郎の手に力が篭る。
赤いスーツから滲み出る怒気は、今にも襲い掛かりそうな程、抜き身の刃物のように鋭角化していた。
[
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42 :迅
2022/05/14(土) 18:26:08
しかし、シナプスは余裕の態度を崩さない。
それどころか、こちらを嘲笑うかのようにケタケタと小さく肩を震わせていた。
「何が可笑しいッ」
銃口を向けたまま、暸太郎はシナプスに問う。
対する彼女は、白い犬歯を剥き出して不敵に笑った。
「アハッ☆やっぱり君は真面目だねぇ」
そう言うと、三度消えるシナプスの姿。
次の瞬間、サイレンジャーの後ろに控えていた機動隊員の身体から鮮血が飛び散った。
バケツの中身をぶち撒けたように、赤い染みが壁一面広がる。
気づいた時には、一人、また一人と、シナプスの餌食となって行く。圧倒的な実力差による、情け容赦ない蹂躙。それに真っ先に反応出来たのは、斗真と暸太郎の二人だった。
「くッ!」
「おっと!」
暸太郎は拳打を両腕を交差させて受け止め、斗真はブレイクダンスを舞いながら避ける。
シナプスが攻撃を取りやめた瞬間、二人は攻勢に回った。
「戦隊さん!アンタは援護を頼む!」
「分かった!総員、発砲用意!」
ジャキッ。
「撃てェ!」
ダダダダダダダッ!!!
暸太郎の指示により、構えられたアサルトライフルの銃口から、鉄のカーテンが広げられる。
その中心を走るは、風を纏う斗真。
シナプスの懐に潜り込む数秒の間で、彼は必殺の一撃のプロセスを終えていた。
「さっきは随分と、長ったらしく話してたなァ〜〜〜」
準備が終われば、あとは叩き込むだけだ!
「まずッ───」
「吹っ飛びやがれ!」
逆巻く突風を纏った拳は、彼女をガードした両腕ごと吹き飛ばし、竜巻となってそのまま教室の天井を貫通し、屋上まで大きな風穴を打ち開けた。
***
「しかし、凄い事になったな……」
「あはは……」
夕刻。
天井にぽっかりと開いた大穴を見上げながら、暸太郎が言うと、張本人である斗真は苦笑いを浮かべる。
あの時は、正直此処までなるとは思っていなかった。
だって初めて変身したし?
あんなパワー出せるとは思わなかったし?
だが、そんな言い訳が通用する程、暸太郎とは親しくない。
「君のおかげで死傷者が出なかったから良かったが、国の許可を受けていない個人での自警活動は、本来ならば補導……下手すれば逮捕にまで発展するんだぞ?」
暸太郎は手帳に書き込みながら、厳しめの口調で言う。
それは斗真も知っている事だ。
現に、仮面ライダーが戦隊から嫌われていた理由は、『個人での自警活動を行っていたから』だと言う。人知れず怪人が倒される事で、戦隊のアピールにならないからだ。
そこまでして自己PRがしたいのかとも思うが
[
返信][
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43 :迅
2022/05/15(日) 09:01:38
斗真は仮面越しにヘラッと笑って見せた。
「じゃあどうします?俺も捕まえる?」
「……いや、見逃そう。今回の件は、『熱心な一般人の協力によって事なきを得た』と、上には伝えておく」
「おっと、そこまで『は』融通効かせてくれるんですね」
「オシャレなブレスレットを両腕に嵌めてやろうか?」
「笑えねー冗談だな……」
流石にこれ以上は冗談では済まないと判断したのか、暸太郎の脅しに対し、斗真は大人しく引き下がる。
対する暸太郎は、案外物分かりの良い男だった。
「兎に角、今回は君の事は伏せておく。だが、今後似たような事が見受けられた場合は、覚悟しておけ」
「はいはい」
にっくき戦隊の警告を軽く聞き流し、斗真は踵を返して教室を後にする。そして、昇降口を出ると、中央のスロットからディスクを取り出して変身を解除。
黒いアンダースーツと白いアーマーは、そよ風となって彼の身体から放たれて行った。
「ふぅ」
一息つくと、彼は異変が無いか確認を始める。
手の開閉、跳躍、ちょっとした外敵刺激。
……よし、感覚はいつもと同じだ。どうやら、変身している間だけ、身体能力がブーストされるらしい。
スーツに内蔵された機能だろうか?
いや、それは追々父に聞いていくしかない。
ベルトをケースにしまい、斗真が帰路に着こうとすると、彼の前にあの黒いスーツの女が現れた。
「よッ」
「お前は……!」
女───シナプスは挨拶を飛ばし、斗真は身構える。
その態度が不満を買ったのか、彼女はため息をついた。
「全く、酷いなぁ。その反応。今は敵同士じゃあないじゃん」
───ま、良いか。
と、シナプスは塀から飛び降り、一瞬で斗真の懐に潜り込む。
殺られる。
だが、すれ違う様に彼の隣を歩くシナプスは、本能的な死を感じた斗真の耳元に、囁く様に告げた。
「君、もう変身しない方がいいよ?」
「は……?」
斗真は振り向く。
しかし、彼女の姿は霞の様に消えていた。
変身しない方がいい?どう言う意味だ?
一抹の不安を覚えながら、斗真の奇妙な一日は終わりを告げた。
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44 :迅
2022/05/16(月) 21:04:27
別人になるのは難しいが、別名を名乗るのは簡単だ。
別の人間に成るには、顔や性別を変えなければならない。だが、それに対し、別の名前を名乗りたいなら、ただ自身の名前を少しだけ変えるだけで済む。
なんだったら、その名を自称しても良い。
しかし、仮に前者を成し遂げた人物がいたら、どう思う?
かつてCGRのエース・猫野瑠々であった少女は、今は猫野瑠々ではない。
今の彼女は、何者でもない。
ただの『ルル』なのだ。
Vigilante・─The・Masked・Rider─Other・Ruru
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45 :げらっち
2022/10/25(火) 15:31:45
戦隊学園が開校したぞー
ハイスクールライダーズは授業再開しないの?
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