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┗283.短編小説のコーナー(41-60/207)
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41 :迅
2022/09/20(火) 21:28:58
静まり返った暗闇に響く、一発の銃声。
反響した銃声は次第に暗闇へと飲み込まれ、廃墟は再び静寂に包まれる。程なくして、一人の男が片口を押さえながらフロア内に現れる。
まるで、自分を追う『何か』から逃げるように。
続いて銃声が響き、逃げ惑う獲物を追跡する猟犬の如く、男の背後から三発の弾丸が飛来する。
更にその後ろから現れたのは、負傷した男を奥へ奥へと追い詰めるようにズボンのポケットに手を突っ込んで歩く、コートを羽織った長身の青年。
目深に被ったフードによって見えないが、狐面に描かれた赤い模様が、廃墟に優しく差し込む月光を反射するように、妖しく鮮やかに輝いていた。
やがて逃げ場を失ったのか、それとも逃げる体力が無くなったのか、男は壁にもたれ掛かるように座り込む。
追いついた青年が男の眉間に添えたのは、冷たい銃口だった。
ゴリッと言う固い物を押し付ける鈍い音が鳴り、青年は手慣れた動作で撃鉄を起こす。
自分の最期を悟った男は、年不相応の涙を流して命乞いを始めた。
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42 :迅
2022/09/20(火) 21:29:47
「頼む…私を優勝させてくれ……。私は、息子を助けなきゃいけない。その為にも、金がいるんだ…だから…頼む……ッ!」
年齢不相応な嗚咽を漏らし、まるで大事なものを失くした子供のように啜り哭く男。
青年は肩をすくめると、そっと銃口を退かせる。
『助かった』と思ったのか、男の瞳に希望の光が灯り、反射的に感謝の念を伝えようと口を開いた。
「あ、ありが───」
刹那、三発の銃声が男の顔面を穿った。
「───ぱぇ?」
間の抜けた声を上げ、前のめりに倒れ込む男。
青年はさっきまで男だった肉塊を見下ろし、氷点下まで冷え切った口調で言う。「御涙頂戴の話をすれば、見逃して貰えると思ったか?」
と。
生憎、そのような優しさは持ち合わせていない。
今の彼には、他人を同情してやれる程の時間と、精神的余裕はないのだ。
男が完全に動かなくなったのを確認すると、青年はスマホを開く。すると『木端(こば) 貴大(たかひろ)』と言う名前に横線が入り、アイコンが消滅。同時に、画面一杯に表示される『Congratulation!!』の文字。
それは、この"ゲーム"の終了を意味していた。
『おめでとうございます、草薙様。今回のデザイアゲームの優勝者は、貴方様になります』
インカム越しに聞こえる女性の澄んだ声が、ゲームの終了と優勝者の名前を知らせる。
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43 :迅
2022/09/20(火) 21:30:36
青年が踵を返して歩き出すと、何処からともなく現れた黒服が貴大の遺体を担ぎ、その相方が壁や床に飛散した血痕を徹底的に拭き取り、床に散らばった空薬莢を手際よく回収して行く。
このゲームは見ての通り『デスゲーム』であり、その実態を他者に知られてはならない。
黒服たちが去る頃には、現場は何もなかったように元通りにされていた。
『今シーズンを生き残った方々には、ランクに応じて報酬を配布いたします。次回の開催は二週間後を予定しておりますので、暫しお待ち下さい
次回も、溢れんばかりの死と祝福を貴方に』
次回の告知と共に、アナウンスが終了する。
ゲームが開催される一ヶ月間、プレイヤーは常に死と隣り合わせの生活を送る事になるが、最後まで生き残った者には、相応の報酬が与えられる。
その中で最も重要かつ価値があるのが、『自分の願いを叶える』権利。願いの内容が現実的だろうと非現実的だろうと、その権利さえ手に入れて仕舞えば、叶える事が出来る。
全プレイヤーは、それを手に入れる事が目的と言っていい。
そして、先程死亡した木端貴大に『息子を助けたい』と言う願いがあったように、この青年にも叶えなければならない願いがある。
「俺は、アンタの死因を必ず解き明かしてみせる」
かつて、姉は謎の死を遂げた。
その手掛かりを掴み、死の真相に辿り着くための道筋が、この『デザイアゲーム』には存在する。
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44 :迅
2022/09/20(火) 21:31:10
目的を果たす為なら、敵対する者は誰であろうと潰す。知り合いだろうが、見ず知らずの人間だろうが関係ない。
死因の解明と復讐。
それだけが、今の彼を突き動かす原動力だ。
「(手掛かりは着実に集まって来てる…あと少し、あと少しで……姉さんの死の真相に辿り着ける)」
デザイアゲームの華々しい優勝を飾った青年・草薙新(クサナギ アラタ)はフードと仮面を外し、自身の武器であるリボルバー拳銃をコートの内ポケットに隠す。
プレイヤーは、例えゲーム中に死んでも遺族への報せは行かないし、保険が降りる事もない。
当然、当人はそれを理解した上で参加している。
『自身の命』と言う替えの効かないチップを使った、ハイリスクハイリターンのギャンブル。
負ければ全てを失うが、生き残りさえすれば巨万の富を得る事だって難しくない。
それ故に、参加券を得た者は参加を辞退しない。
何故なら、人は『自分なら出来る』と言う根拠のない自尊心が理性を打ち負かし、目先に広がる結果に目が眩み、現実を直視出来なくなるから。
「この世界で生き抜くには、もっと意地汚くならないとな」
この世界で生き抜くには、人を騙す狡猾(かしこ)さが居る。それがない人間は、ただ狩られるだけだ。
新はポケットに手を入れ、廃墟を後にする。
ビルの隙間から差し込む陽光は、まるで優勝者の凱旋を祝福するファンファーレのように、廃墟から出て来る新の姿を照らしていた。
デザイアゲーム・ルール
本ゲームは、各地方の政令指定都市にて開催される。プレイヤーは、参加エリア及びそのエリアに隣接する都市を活動圏とする事。
また、開催されているエリア周辺からの離脱や他エリアとの交信を禁止する。
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45 :げらっち
2022/09/20(火) 21:42:39
感想の辛さを選んでください
☛激甘
甘口
ピリ辛
中辛
辛口
激辛
爆発
メガボンバー辛さマシマシMAXピカピカ辛い
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46 :迅
2022/09/20(火) 21:55:47
>>45
お任せデラックスで
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47 :げらっち
2022/09/21(水) 00:18:13
とりあえず中辛くらいで…
流石迅、そつなくまとまってると思う。
だが長い目で見るとこれは「起」の部分でしか無く、これだけで評価するのは難しい。
設定は面白い。本編でこれをどれだけ活かせるかが重要だろう。
主人公(だよね?)の新、そして出てくるであろう他の人物たちが、このゲームを通して命を懸け、人生を狂わせ、希望を見出し、物語を紡ぎ出していくのだろう。
その「ミソ」の部分を読まない限りは、評価を下せない。
迅は冒頭部分や序盤のみの掲載が多く、私は最後まで読んだ作品が少ないので(黒怒などは一段落するところまで読めているが)、できれば完結されている作品を読んでみたいものだ。
さて、このデスゲームは仮面ライダーギーツから着想を得ているということだが、ライアーゲームやインシテミル、カイジ、逃走中/戦闘中、スプラトゥーンなどを想起させる面もある。
サバイバル物は人気が高く書く人が多いだけに、それらの作品群とどのように差別化を図り、オリジナル要素を入れていけるかが、カギになるだろう。
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48 :迅
2022/09/21(水) 06:35:16
<<47
着想を得たと言うか、着想自体は別の作品から得た感じでギーツとは似ちゃったなーって感じ
これに関しては第一話と言うかプロローグだから、まぁ細かい話は書かずザックリ書いた方がストーリーや主人公のキャラが掴めるかなって
第一話に関してはストーリー案が二つあるんだけど、それをどっちにするか迷ってんだよね。しかももう片方はまだ構築中だし
第一話のストーリー次第で展開を変える予定だから、それも出来上がったら載せとくわ
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49 :げらっち
2022/09/21(水) 15:11:18
おk。上がってたら感想書く。
片方の案を第一話にして、他方を第二話に持ってきては?
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50 :迅
2022/09/21(水) 20:28:35
「すんません、天丼一つ」
カウンターの前に立ち、食券を提出して注文する。昼下がりの学食は、いつにも増して賑やかだった。
もちろん、教室で弁当を食べる者もいる。
しかし、人は群れで行動する生き物。
『陽の者』を自称する者たちは、大人数で食べる事で、マウントを取れると思っているのだろう。
その証拠に、大きなテーブル派手な髪色の者たちが使っており、眼鏡をかけた冴えない彼らは、個人用の席に座って淑やかに昼食を頂いている。
───別に、彼が知った事ではないのだが。
「はいよ、天丼お待ち」
「ども」
新はカウンターを離れ、720円もする天丼が乗ったお盆を手に座れそうな席を探す。
何処もかしこも、見渡す限りの席が陽キャを自称するグループやオタクグループによって占拠されていたが、柱近くの個人席に座る。
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51 :迅
2022/09/21(水) 20:29:08
「いただきます」
席についた新は、お盆を置いて両手を合わせ、割り箸を割って艶やかに輝く白米をかき込む。
するとどうだ、目の前には桃源郷が広がるではないか。
海老天は衣で嵩増しされておらず、肉厚で弾力のあるプリッとした歯応えが、サクサクに仕上げられた衣と口の中でセッションを奏でる。
甘辛いタレは海老の旨味を吸収し、白米が持つ独特な甘みをさらに際立たせる。
地味に嬉しいのが、この付け合わせの沢庵だ。
爽やかな味わいとシャキシャキの食感が、重い物を食べた後の箸休めに丁度いい。
……などとまぁ、ノリノリで一人脳内食レポをかました後に味噌汁を口に運ぶ。
テーブルを挟むように椅子が二つあるが、まさか合席しようなんて者は居ないだろう。
……多分。
「邪魔するぞ」
居た。
それも、すごく聞き慣れた声だった。
此方の許可も取らず、声の主は反対側に置かれた椅子に座る。昼食は既に食べ終えていたのか、手ぶらだった。
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52 :迅
2022/09/21(水) 20:29:55
「まさか、お前が自分から来るなんてな。幸貞」
だが、新は驚いた様子もなく椀を置く。
幸貞と呼ばれた青年は、小さく鼻で笑った。
「俺がお前に接触する理由なんて、一つだけだろ」
「……デザイアゲームか?」
「御明察」と、足を組みながら告げる幸貞。
彼は東京エリアが誇る"デザイアゲーム"屈指の上位ランカーであり、新の中学校以来の友人。同時に、一位の座を巡ってシノギを削る好敵手だ。
東京エリアの全プレイヤーがざわついても可笑しくない状況だが、新は目もくれず食事を再開。
今は、開催期間外だからだ。
一方、黙々と食べる新を他所に、幸貞は攻撃的な笑みを浮かべながらスマホの画面を見せて来る。
「デザイアゲームの開始告知だ、開始は今日の放課後からだ」
「おいおい、敵に有用な情報をくれて良いのか?」
「関係ねェ、俺がお前に勝つだけだ」
「今の言葉、そっくりそのまま返すぜ」
幸貞と談笑を交わす事一分。
徐に席を立つと、親指で食堂の外を指差す。
『続きは向こうで』
と言う事だろうか。
あと十分くらいで予鈴が鳴ってしまうが、逆を返せば、あと十分も時間があると言う事だ。
それに、重要な話である可能性も否めない。
「何か欲しい物は?」
「俺たち二人が持ってる情報の等価交換だ」
「乗った」
新も席を立ち、幸貞の後ろをついて行く。
デザイアゲームでは、期間中各プレイヤーにのみ情報が配布される時がある。その情報が有益か無益か、嘘か真かは不定だが、『自分の知らない情報』というのは、それだけで価値が跳ね上がる。
何せ、相手から有益な情報を引き出せれば、実力者ならそれだけで有利になれるからだ。
一説によると、提供される情報は上位ランカーであればある程、信憑性と有益性が増すと言う。
根も歯もない噂話に過ぎないが、もしこの噂話が本当なら、上位二位を独占しているこの二人の持つ情報は、ダイヤモンド以上の価値がある。
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53 :迅
2022/09/21(水) 20:30:07
「ここなら……多分、誰もいないな。立ち話もなんだし、あそこに座って話しでもしようや」
学食のある総合棟から少し離れた中庭に行くと、幸貞はベンチに座り隣を軽く叩く。
新が隣に座ると、彼は早速本題に切り込んで来た。
「早速だが、今日開催されるデザイアゲームじゃ、高難易度イベントな始まるらしい」
「高難易度イベント?」
「あぁ、何でもクランじゃないと、まともに攻略する事すら出来ないそうだ」
「そりゃあ、とんだクソゲーだな」
クランとは、デザイアゲームで認可されている最大最低人数共に無制限のチーム機能を言う。
メンバーには専用のコミュニティが用意され、報酬の山分けも出来るなど、実力の低い一般プレイヤーにとっては夢のようなシステムと言える。
しかし、その一方で新や幸貞のように、単独で上位をキープ出来る実力者からは敬遠されている。
理由は単純で、単独で上位を維持出来るなら、態々群れる必要が無いだけの話だ。
当然、連続優勝記録保持者である新からしても、間接的とは言え幸貞の口から『クラン』と言う単語が出て来るのは、実に意外だった。
「俺が話せるのはここまでだ。次はお前が吐け」
「吐けって……映画かなんかかよ……」
「スパイ映画みたいで雰囲気出るだろ?」
「出ねェよ」
「まぁ、それでも情報は聞き出すけどな」
「はぁ…しょうがねぇな……」
新は言の葉を紡ぐ。
"デザイアゲーム"の根幹を揺るがしかねない、重大な情報を。
全てを語る頃には、幸貞が訝しげな表情を浮かべていた。
「それは…マジで言ってんのか?」
「俺が言ってるからマジだが、この情報が本当かどうかは分からん」
「そうか……」
幸貞は顎に手を当て、熟考する仕草をとる。
「仮にそれが本当なら、お前はどうするんだ?」
「姉さんの死因をGMに直接聞き出す」
「お前らしいな」
「あぁ…そして、必ず姉さんを殺した相手を俺が───」
新が言葉を遮るように、予鈴が鳴る。
スマホのロック画面にある時計を見ると、タイムリミットはあと五分まで迫っていた。
「続きは、放課後だな。首洗って待ってろよ?チャンピオン様」
「……お前こそ、背中から刺されないようにするんだな」
立ち上がった二人は、教室に向かって歩き出した。
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54 :迅
2022/09/21(水) 20:33:13
取り敢えずストーリー案その1
主人公とライバルが昼飯中に会って談笑混じりにデザゲの話をする感じ
基本的にはこれを第壱話(ノベリズム版では第二話)にする予定だけど、サイトで読むメリットはサクッと読める事だから、あまり多くの情報が盛り込めないんだよね
もう一つは連続優勝者の新と、運の良さで生き残った下位ランカーを主軸に回すつもり
とにかく、そっちも完成したら上げてみるわ
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55 :げらっち
2022/09/21(水) 20:58:15
唐突の飯テロおお!!
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56 :迅
2022/09/21(水) 21:02:58
飯テロisジャスティス
実はカツ丼バージョンやうどんバージョンもあったけど、何やかんやで天丼になった(実は新の好物が関係していたり?)
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57 :げらっち
2022/09/21(水) 21:58:41
たしか白牙にも飯テロがあったな…
おなかすいた。
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58 :迅
2022/09/22(木) 19:32:02
「今日のニュース見た?」
「見た見た、渋谷で変死体だっけ?」
「なんか、最近こう言う事件多いよな」
「戦争でも始まるんじゃねぇの?」
「それはダリィわ」
デザイアゲームの終了から、一週間。
前回のゲームでは、500人中13人と言う非常に少ない勝者達が、優勝者にのみ与えられる景品を除く各々の活躍に見合った報酬を手に入れた。歴代と比較しても多いとされる、数多の屍を踏み越えて。
今回の結果は、東京エリアで活動するプレイヤーたちに大きな衝撃を走らせた。
途中乱入が入ったとは言え、500人いたプレイヤーの9割近くがたった一ヶ月で死亡したのだ。
その衝撃は、非常に大きい物だろう。
だが、世界は何も変わる事なく回り続けており、亡くなった者の遺族は今も帰りを待ち続けている。
そして今回のゲームを生き残った者は、死んだ者の分まで生きなければならない。教室の隅っこで小説を読む青年・草薙新もまた、その一人だった。
「…」
ここ数回、東京エリアで行われたデザイアゲームの優勝者である彼は、その技術から『魔弾の射手』と言う異名で敬われ、畏怖されるようになった。
もちろん、自分で名乗った訳ではない。
彼を神聖視する一部の拗らせたプレイヤーがそう名付けたら、瞬く間に広がっただけだ。
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59 :迅
2022/09/22(木) 19:32:53
しかし、この手のゲームの上位ランカーは、何か痛々しい渾名を付けられる規則でもあるのだろうか?
確か二位の人も、変な名前を付けられてた筈だ。
正直な話、デザイアゲームに参加して街中を探索する度に『魔弾の射手』と羨望の眼差しで呼ばれるのは、ぶっちゃけ屈辱以外の何物でもない。
それに、この学校にもデザイアゲームのプレイヤーは新を除いても数名居る。
上位ランカーの悪友が一人と、大して実力もないくせに運だけはある下位ランカーが一人。
後一人は……この学校の生徒ではあるのだが、来ていない。
兎に角、全員経緯は違えど、ゲームを生き残った猛者たちだ。
「ね、ねぇ。少し良いかな?」
その時、新に声をかけて来る者が1人。
どこか気弱そうな雰囲気で、顔立ちは悪くないがどことなく冴えない感じの青年だった。
「草薙新くん……だよね?」
「そうだけど、何?」
「は、話すのは入学式以来だね!僕は小金井颯太!覚えてる?」
そう言うと、爽やかな笑顔を浮かべる青年。
しかし、小金井……颯太?
……まずいな、全くと言って良いほど覚えてない。記憶の目を凝らせば、入学初日に話しかけて来た奴がいた気もするが、全く印象に残ってない。
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60 :迅
2022/09/22(木) 19:33:20
何とかして追い返したい所だが、颯太と名乗る青年は人懐っこい笑みで話しかけて来る。
何故そこまでして話したいのか、全く分からない。
新はため息をつき、小説に目線を戻す。
「それで?何か話があるなら、さっさと話して帰ってくれないかな。暇じゃないんだけど」
小説に眼を向けたまま、突き放すような口調で言う。
この言い方をすれば、大体顔や虐め目当てで絡んで来た連中は、何も言わずに去って行くのだが───
「あはは……そうだね。実は僕、この前君に助けられたお礼を言いたかったんだ」
「ッ!」
次の一言で、新は前言を撤回した。
お礼を言いたかった?
全くと言って良い程、接点がないと言うのに?
いや待て、確かゲームの中盤で他のプレイヤーに襲われていた奴を助けた気がするが、まさか……
「あれお前だったのか?」
「あはは……お恥ずかしながら」
頬を掻きながら、苦笑いを浮かべる青年。
対する新は、余りの情報量に呆気に取られていた。
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