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┗253.バカセカ番外編スレ(1-20/102)

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1 :やっきー
2022/02/23(水) 21:42:58

ここはコラボ小説を扱うスレです。題名通りですね。
現在予定されているのは『BGR』と『バカヒーロー』です。掲載開始日は未定です。

以下のテンプレを使って、小説を書き始める前に簡単な説明をしていただきたいです。項目は足してもいいです。

テンプレ
【題名】
【登場作品】
【作者】
【あらすじ】

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2 :やっきー
2022/03/05(土) 20:28:51

【題名】バカヒーロー
【登場作品】『この馬鹿馬鹿しい世界にも……』
      露空のヒーロー小説
【作者】青組(露空&やっきー)
【あらすじ】日向と蘭は幼少期、霞月と奏芽は十五歳(既に特殊能力でヒーロー活動をしている)。
ある日、彼等は異空間(異次元)世界に送られてしまう。バカセカの世界でも霞月達の世界でもない、謎の時空の中、幼少の日向達を守るため霞月達は戦う。
日向達も「自分達は無力じゃない」と活躍。
この世界から脱出し、それぞれの元の世界に戻れるよう奮闘するが……

日向達と霞月達の世界のどちらでもない、新たな謎の世界が舞台。そこから脱出出来るように進んでいく。

──プロローグ──
 彼/彼女には価値がない。故に、天国にも地獄にも行くことを許されなかった。彼/彼女はどの世界線にも属さない時空の狭間で誰にも聞こえないSOSを発していた。そのセカイは、彼/彼女の思念により生まれた。
 世界とは、思念だ。思念とは、世界だ。人がいるから世界が生まれ、世界があるから人が生まれる。悠久の時を時空の狭間に揺られて過ごしたその魂《思念》は小さなセカイを作り出し、思念が強まるにつれ、セカイも大きくなっていった。そしてついに、SOSを『誰か』に届けることが出来た。
 それは声であり声ではない。SOS──信号は、彼等/彼女等の魂に受信された。彼等/彼女等の意思には関係なく、彼等/彼女等の魂は信号の発信元へと向かった。迷える魂を救うためか、あるいは他の世界を圧迫しかねない巨大なセカイ《不穏分子》を排除するためか。

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3 :露空
2022/03/07(月) 22:05:06

夕方。人の行き交う駅前。
「さぁて、こいつには」
僕は、手のひらから眩い光を放った。閃光弾のようなものだ。殺傷能力はもちろん低いけれど、足止めにはなる。
「霞月!ごめんね、今行く!」
遠くに見えたのは、いつからか僕と同じく奇っ怪な能力を授かって『しまった』奏芽だ。
「周りの人は安全な方に誘導してきた。帰宅ラッシュの前に終わらないとね」
犯人が軽い失神から目覚める。
「カッターナイフ?だめだよ、そんなの振り回して。預かるから」
奏芽は指先で自在に水を操り、反抗する犯人から凶器であるカッターをもぎ取った。「お前は警察行きだ。これ以上暴れるなら雷で痺れさせるけど」
初めの頃、と言っても一か月ほど前。
変な能力を持ってしまった僕と、何故か同じ境遇だったクラスメイトの奏芽。
彼女の誘いで一緒にヒーロー……として今みたいに犯人の取り押さえなんかをしている。あくまで、傷もあまり付けない程度に。
僕の性格もあるだろうけど、本当に能力の事は悩んでいた。バレたらどんな事になる?仮に人前でこれをやってしまったら?うじうじ考えていても意味は無いとわかっていたけれど。
奏芽はそんな素振りを見せなかった。
人の為に使える力を持ち、どこか嬉しそうでもあった。できることを増やして成長させて、なんだかんだで順調な毎日だとも思えるようになっていた。

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4 :やっきー
2022/03/08(火) 23:19:10

《蘭視点》

 太陽が昇りきってしばらく経った、昼前でもなく朝とも言い難いこの時間。おれはいつものようにこの東家の外へ出る準備をしていた。とは言っても持ち物は特にない。大体の物は【アイテム・ボックス】に収納してあるから、わざわざ身につけて持ち運ぶ必要がないのだ。

「兄様、おはようございます」

 部屋の扉をノックする音と共に、彗星(さとせ)の声が聞こえた。
「今日も昼食を持っていかれますか?」
 実の兄に対するものとしては声音も口調もやや堅い。ある意味仕方ないとはいえ、緊張なんてしなくていいと言っているんだけどな。それでも、「入っていい」という許可なしに扉を開けるようになっただけ良いのかな。
 開いた扉から彗星がひょこっと顔を覗かせる。ふわふわとした、しかしくせ毛とは形容できないさらさらの金髪。少し怯えるように、こちらを伺い見る橙色の瞳。おれよりも僅かに小さな──同年代と比べても栄養が足りていないように思う体。体を壊すほどではないにしろ、もっと食べた方がいいな。

「お弁当をお持ちしました。どうぞ」
「ありがとう」
 おれが笑顔で受け取ると、彗星はようやく緊張が緩んだのだろう、微笑んだ。

「じゃ、行ってくる」
「はい。行ってらっしゃいませ」

 正妻とその子であるおれたち兄弟には、味方は少ない。少ないだけで、いないわけではない。この弁当を作ってくれた誰かもその一人だ。おれたちの味方をしているせいで肩身の狭い思いをしているのに。
 それ以前に、毎日毎食を作ってくれていること自体に感謝しないといけないな。

 家から正門を使って出ると、母屋で過ごしている奴らと顔を合わせる可能性がある。それは面倒臭いので、おれはいつも裏庭を通って裏口から出るようにしている。それでもたまに会いたくない奴に会うことはあるけど、向こうを使うよりはマシだ。名前の通り、おれたちが過ごす『離れ』と母屋は距離がある。わざわざあいつらがこちらへ来ることはあまりない。

 幸い今日も人はあまりいない。遠目に人影は見えるが、それだけだ。この大陸ファーストは危険も少なくそもそもおれたちは蔑ろにされているので見張りもほとんどいない。いても『見張り』というのは名目で、実際は『監視』に近いしな。

 手入れだけはきちんとされている裏庭の、石畳の上を歩く。今日もせっせと働く老いた庭師を横目に、おれは外へと急いだ。

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5 :やっきー
2022/03/08(火) 23:19:32

 おれはこの生を受けてから、大陸ファーストの外へ出たことがない。大陸ファーストの外へ、海へ近づいたことすらない。海は嫌いだ。
『あいつ』は何度も外へ行ってるらしいけどな。

 おれたちの集合場所はいつも決まっている。大人が行くとすれば近く、子供が行くとすれば遠い、そんな位置にある低い山だ。ほうきで飛んで行けば、おれなら二十分もあれば辿り着ける。本気を出せばまだ速度は出るが、そんなに急ぐ必要も無い。
 のんびりと目的地に到着し、『あいつ』の姿を探す。いつも『あいつ』の方が先に着いているので、きっと既にいるはずだ。

 おそらく三分もかかっていない内に、『あいつ』を見つけた。『あいつ』はいつものように膝を抱えて座っていた。仮面のせいで前は見えていないはずなのに、まるでどこか遠くを見ているように、顔を上げて静止している。
 おれはほうきに乗ったまま近づいて、声を掛けた。

「日向!」

 日向は驚く様子もなく、こちらに顔を向けた。それを確認し、地上へ降りる。
「待たせたか?」
 答えの分かりきった質問を投げかけながら、日向の隣へ腰を下ろした。
「ううん」
 短い否定の言葉は仮面のせいでくぐもっている。それでもはっきりと聞こえる、女性にしては、子供にしては低めの、聞いていて心地の良い声。

 日向の顔は全体をのっぺりとした真っ白な飾り気のない仮面に覆われているため、容姿の特徴として目立つものは大陸ファーストの人間である象徴の金髪くらいだ。でも、その金髪だけでも十分日向が『美しい』のだとわかる、いや、理解せざるを得ない、と言った方が正しい。おれも含め日向を除く全員の金髪はただの金髪でしかなくそれだけだが、日向の金髪は太陽の光を受けて金粉を振りまくかのようにキラキラと光る。日向の家庭環境を考えて手入れはしていないだろう。生まれ落ちたその瞬間からの『質』が違うのだ。

 纏う雰囲気も、他の奴らとは違う。子供らしくない、とでも言おうか。それはおれもよく言われる言葉ではあるが、日向と比べてしまえばおれは随分と子供だ。……まあ、実際に子供なんだけどな。

 大人びている、それが日向に似合う言葉の一つだ。

 こうやってほぼ毎日人目のつかないところで会っていることに、何も意味なんてものは無い。おれたちは二人ともすることは無いし家に居たいとも思わないので、ただここで時間を潰しているだけだ。日向といると落ち着くし安心する。きっとこの時間が、おれにとっての『幸せ』なのかな。

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6 :露空
2022/03/15(火) 17:23:30

霞月   >>>223.40
光・炎・雷など、明るく光をもたらすものを操る。
奏芽   >>>223.41
闇・水など、暗く闇をもたらすものを操る。回復、治癒の能力がある。


僕と奏芽がただの学生からヒーローになるのは、いつも放課後。
制服からパーカーとジーンズに着替え、顔がバレないようにマスクをつける。
「霞月、準備できた?じゃあ今日も行こうか」
毎日事件や事故が起こるわけではない。もしそうだったら軽く日本は終わっている。重そうな荷物を運ぶご老人を手伝ったり、迷子を親のところに送り届けたりするのが日々の仕事。そこで能力を使う。

歩いていると、奏芽が急に薄暗い路地裏を指さす。自転車がやっと通れる程度の幅だ。
「どうした、何かあるか?」       
「見て、あれ……」
「っ……!」
塀全体が蠢いているようだった。
光や見え方の問題ではない。本当に、風で揺れる水面のようになっている。
「霞月も見えるでしょ……?」
奏芽が塀にそっと触れた。
その瞬間、経験した事の無いような圧を感じた。かろうじて立っている事はできたけれど、人に乗られているみたいだ。それと共に、強烈な光が浴びせられる。
「何が起こってるんだ!?」
奏芽を追いかけるため、同じ事をした。
手のひらを塀に付ける。
眩い光が放たれ、僕は『ここではない世界』に旅に出た。

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7 :やっきー
2022/03/17(木) 18:06:59

日向 >>>223.26
全属性の魔法を操り、主に黒魔法を使う。
蘭  >>>223.27
光・火属性の魔法を操る。武器は弓。

《日向視点》

「おれと二人でいるときくらい、それ外したらどうだ?」
 蘭は草に埋もれるように寝そべりながら私に言う。仮面を付けていても、周囲で起こっていることは大抵わかる。『それ』というのは、私が付けている仮面のことだ。何がそんなに気になるのかは分からないけれど、毎日飽きずに言ってくる。
「だめ」
 私の言葉を聞いて、蘭はため息をついた。
「別に、いいと思うんだけどなぁ」
「蘭が良くても、私がだめ」
「いや、おれがいいとかじゃなくて、客観的に見て。おれと日向以外誰もいないんだからさ。要は日向の目が他人に見られなきゃいいんだろ?」
「うん」
 私が仮面を付けている理由としては、蘭の言う通りだ。だけど、私は母や祖母から「絶対に仮面を外すな」と言われている。誰にも見られていなければ外していいとは、一度も言われたことはない。

 私の白眼は、この世界に存在するほとんどの『誰か』に疎まれる。それはカゾクも例外ではない。そのことについて私は特に何とも思っていない。それにカゾクは大事にすべきだと思う。だから私は私の意思で仮面を付けている。

「頑固だな」
「ほぼ毎日同じことを言う蘭も、人のこと言えない」
「おれは、日向の顔が見たいからだよ」

 その言葉を聞いた直後、『心臓の辺り』が、ドク、と脈打った。

「?」

 心臓ではない、と思う。でも、じゃあ、何が? 体の中の『何か』が動いた感覚がした。

「蘭」
「ん?」
「なにか感じた?」
「なにかって?」
 蘭は何も無かったらしい。
「何も無いなら、いい」
「なんだよそれ。てか話逸らしただろ! まあ、いいけどさ」
 話を逸らしたつもりは無いのだけれど。でも、蘭がいいと言うのなら、それでいいか。
 この程度の体の異変なら、放っておいても大丈夫だろう。

 ドクッ

「!」

 また。今度はもっと、確かな異変だ。
 心臓じゃない。これは、『魂』。魂が、何処かに向かって引っ張られているような、そんな感覚。一本の糸を引いたり緩めたり、あまり強い力ではないけれど、不快だ。
「ら……」
 ここまでの異変は無視出来ない。きっと、何かある。そう思って蘭の名前を呼ぼうとした時、私は、最悪なことに気がついた。

 蘭が居ない。

「蘭?!」

 私は叫んだ。
 返事はない。気配はない。でも、居なくなる前兆もなかった。何が起こった? 誰が起こした? この状態に、誰がした? 何がした? 何が、何が、何が!

 ドクドクと激しく血液が体内を循環する。今度は心臓の拍動だ。焦りと不安と怒りとがぐちゃぐちゃになる。思考がグチャグチャになる。考えがまとまらない、定まらない。
 息が出来ない。

 頭が痛い。

『……けて』

 その声を聞いたのを最後に、私の意識は奪われた。

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8 :露空
2022/03/21(月) 19:03:07

[奏芽目線]

暫くつきまとっていた頭痛も収まった。
ここはどこだろう。
圧迫感のあるおよそ二メートル弱の壁で迷路のような道が形成されている。
遠くには四角錐の建物も見えた。
そのほとんどが目の滲みるような白色だ。でも、古そうなくすんだ色の廃墟もある。「霞月ー!どこ?霞月!」
私の叫び声は反響して虚しく消えていく。
「……め、……なめ、奏芽!大丈夫か!」
今はその声を懐かしく思えた。
「霞月!?どこ?ねぇ!」
「奏芽か!今からそっちに行く!」
声のする方に、私も走った。
「霞月もこっちに来たの?」
「まぁな。奏芽を独りにはさせられないし」
「怪我は?ここは何なんだろう?」
「かすり傷の一つも無い。今の僕にはここがどこかもわからないな。でも、どうにかなるんじゃないか?」
「……そうかもね」
「持ち物は?」
「んー、ハンカチ、ティッシュ、コーラ味の飴が五個でしょ、あと七百円。スマホは家に置いてきたまま」
「はぁ……僕も千円札しか無いけど」
二人で呆れたような顔をした。
「私達、一応自分とお互いを守れるくらいの力はあるし、大丈夫だよね。それにしてもここ、ファンタジーみたいな世界だね」後ろから不気味な音が聞こえていた。

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9 :やっきー
2022/03/23(水) 19:14:12

《蘭視点》

 なんだ、ここ。

 目が覚めて初めて思ったことがそれだった。
 視界一面、白、白、白。光の三原色を全て混ぜ込んだ色がぼんやりとした意識を殴りつける。
 軽い頭痛を感じながら、周囲を見る。おれは道らしき場所で横たわっていた。横には、今朝持ってきた弁当がある。場所こそ変われど、おれの体と弁当との位置関係はさっきまでの、山の中でいたときとなんの変化もない。

「そのまんま飛ばされた、ってことか」

 自分でも驚くくらいすぐに状況を把握した。弁当はとりあえずそこに置いたままにして、立ち上がる。

 まず視界に映るのは、白い壁と白い地面──いや、床と言った方が自然か。壁は子供の体からすれば高く思えるけれど、実際の高さは大したことは無いだろう。床の幅はおれが大の字で寝そべってもかなり余るくらいで、広くはないが決して狭くもない。道は前にも後ろにも直線に続いている。ずっと真っ直ぐに伸びているのか、どこかで曲がっているのかはよくわからない。というか、壁も床も色合いが全く同じで、ぱっと見ただけでは区別をつけにくい。なんともよく分からない空間だ。

 そこまで観察した後、おれはあることを思い出した。

「日向!」

 そうだ。やっと意識がはっきりした。おれはさっきまで日向と一緒にいたんだ。おれがここにいるということは、日向もここにいる可能性が高い。

 改めて周囲を確認する。いない。「日向」と呼びかけたことに対する返事もない。

 試しに壁に触れてみる。壁が何で作られているのかはわからない。そこそこ頑丈に見えるが石造りというわけではなさそうだ。感触はサラサラしているし、なにより凹凸がない。特別な加工が施されているのならともかく。

「跳べば、登れるか?」

 不慣れな場所では、魔法は使わないでおくことが基本だ。魔法を使うことで見えない敵に自分の居場所を知らせることになる恐れもあるし、魔法が上手く使えない可能性もある。例えるなら、何も持たずに海に放り出されるようなものだな。
 誰に聞かせる訳でもない自分の説明に満足しつつ、壁を見上げる。途中に掴めるような突起はないから、一回で登りきる必要がある。

 数歩下がり、助走をつけて、おれは思い切り跳び上がった。

 うん、思った通り、見た目ほど高くはない。これくらいなら充分届くな。
 そう思い右手を伸ばしたが、何故か最上部に手が届かなかった。

「んっ?」

 一瞬めまいがして、急いで壁に手を当てる。そして摩擦を利用して、無理やり体を上げて、余っていたもう片方の手で最上部に手をかける。今度は、ついた。

「なんだ、いまの。
 いや、今はそれどころじゃない。日向、どこだ?」

 疑問を振り払うように頭を二、三回揺らし、前を見る。

 目の前に広がっていたのは、巨大な迷路だった。どこまで続いているのだろうか、スタートもゴールも見えない巨大な迷路。おれが今いるような白い道がほとんどだが、所々に目立たない建築物も見える。そして何故か目を引く、これといって特徴のない、遠くにある三角錐の建物。霞んで見えるほど距離があるのに、まるで建物そのものが、自分を見つけてと訴えているような、そんな気さえ起こる。異色の存在感を放つ建物だ。

 壁を登っても、日向の姿は見えなかった。ここで名前を呼んだら、もしかしたら返事があるかもしれない。

 大声を出すために息を肺に送り込もうとしたそのとき、体に異変が起こった。

 ドクッ

 心臓が突然、激しく拍動した。大きく跳んだだけじゃ、こうはならない。それが原因じゃない。
 次に、息が出来なくなった。そして、体、特に頭や首が急速に熱を帯びる。明らかにおかしい。何が起こったんだ?

 困惑していると、さっき手が届かなかったときに感じたようなめまいがおれを襲った。ただでさえ壁の上という不安定な場所で体勢を維持出来なくなり、おれは後ろ向きに倒れ壁から落ち、頭を強く打ち付けた。

「痛……」

 しばらく打った後頭部をなでていたが、ずっとこうしているわけにもいかない。おれは置いておいた弁当を持って、まずは日向を探すために歩みを進めた。

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10 :露空
2022/03/29(火) 18:33:34

「奏芽、危ない!」
咄嗟に叫び、奏芽を抱き寄せる。
「何だお前っ……」
僕らの後ろには、背景と同化しそうなくらい真っ白な体の化け物がいた。
この色はアイボリーというのかもしれない。
攻撃力だけで言ったら僕の方が強い。
「まずは炎」
利き手の手のひらに集中し、使う能力の名前を言う。すると、真っ赤に燃焼する炎が発生する。
振りかぶって野球のボールを投げるように手を振ると、炎の塊となり飛んでいく。
敵がジュワッという焼ける音がした。
次に、奏芽がふわりと手のひらを舞わせる。
彼女の能力の一つ、闇を作っている。
力と時間をかける事でより大きく壊れにくくなる物だ。
壊れるとは、一定量の光を吸収し闇が闇でなくなる事。壊れにくくするには長い時間集中して力を込めなければならない。
「よし、完成した!」
闇の大きさは敵の頭がすっぽりと入るくらい。それがあるところは全ての光が無いため、とても暗く、黒く見える。
闇を使う時は僕の光の能力は使えない。炎と雷だけで戦っていた。
闇が放たれる。見事命中し敵の頭は闇の中だ。
「霞月!ごめん、止め刺して……」
闇を使うと目眩がするそうで、暫く動けない。
僕はぎゅっと目を瞑って、心臓部に雷で止めを刺した。
敵が倒れる。
次の瞬間、敵が負った傷は綺麗に消え、体が透けて見えなくなる。奏芽もその様子を見ていた。
「今の何……?」
「わからない。でも、あれはまともな生き物じゃない。攻撃した時の反応からして、痛覚もほとんど無いかもしれない。つまり、この世界も僕らの世界とはだいぶ違うって事だと思う……」
奏芽も言った自分も顔から血の気が引くのを感じた。

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11 :やっきー
2022/04/01(金) 23:12:31

《日向視点》

 何、ここ。

 何処、と自分に問う前に、まずそう思った。
 空間に違和感があった。目が見えないことは関係ない。私は目が見えなくとも不自由しない──元の世界に居る限りは。
 何処、という疑問ははじめから無い。私がいま居る場所が異世界であることは意識が戻ったその時からわかっていた。ただ、どうしても『何』という疑問は残ったままだ。

 とにかく違和感があった。空気の流れや臭い、魔法的な『何か』も感じる。いや、これは魔法なのだろうか。そうだとも違うとも断言出来ない。自信が持てない。

 やめよう。思考に時間を浪費するのは無駄でしかない。まずすべきことがある。

「蘭」

 呟いた。返事は無い。当然だ、周囲に蘭の気配がないのだから。私が蘭の気配を感じ取られないなんてことは、あってはならないことだ。でも、蘭もここに、このセカイにいるはずだ。そうでなければ蘭が居なくなったことに私が気づけなかった説明が出来ない。本来そんなことはありえない。
 とにかく、蘭を探そう。焦らなくていい。きっと見つかる。探しに行かなきゃ、早く。

 焦りと苛立ちを抑えるために深い深呼吸をしたあと、私は仮面を外した。知らない場所なら、念の為視覚情報も得られた方が良い。
 視界に飛び込んで来た真っ白な景色に思わず目を細めた。空を見上げても、太陽やそれらしい光源はない。眩しいのは単に色のせいというだけか。
 いくら行動に苦労しないとはいえ、仮面をつけていると息苦しさなんかは当然ある。私は微量の開放感に少しだけ苛立ちがおさまるのを感じた。

 それから。

「……何」

 言葉が通じるとは思えないけど、一応目の前の化け物に問いかけてみる。
『白』で埋め尽くされた空間に溶け込むように、あくまで自然にそれは居た。妙に角張った巨体。一見してわかる特徴はそれくらい。顔らしい場所に目や口のパーツらしいものはあるけど、ただの模様にも見える。毛むくじゃらというわけではなく、そもそも体毛が確認出来ない。体の構造が私の知っている種族のどれとも一致しない。生物でないなら、話は変わってくるけれど。

 白い化け物は呻き声一つ上げずに、私に襲いかかって来た。

 太い腕を重そうに持ち上げ、私に向かって振り下ろす。見た目通りの遅い動き。あまり警戒する必要は無さそうだ。

 余裕をもって攻撃を避ける。バコンッ! と大きな音をたて、白い化け物の腕が白い壁に衝突した。途端に壁はガラガラと崩れ、広範囲に渡って瓦礫と化した。思っていたより、脆いんだな。
 私のそばにある壁にも亀裂が走り、ボロボロと形を変えていく。すると何故か目眩がした。くら、と視界が歪むと同時に、頭痛もする。

 不快。

 壁に手をつこうとすると、その壁が無くなっている。足でどうにか体勢を維持し、白い化け物を睨んだ。
 どうして急に目眩や頭痛がしたのかは知らないけど、さっき白い化け物が壁を壊したことが引き金なのは間違いないはず。状況から判断して、結論はそれに至る。

 なら、不快の原因は、あいつだ。

 取り除かなきゃ、『不快』の理由を。
 面倒臭いのは、嫌いなんだ。

「早く、蘭を、探さなきゃ」

 目の前の、あれは、邪魔だ。

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12 :やっきー
2022/05/05(木) 18:58:48

[奏芽目線]

力を使った影響で起こっていた目眩も、暫く休むと落ち着いた。
「大丈夫か?」
そう、心配そうに尋ねる霞月に、私は笑って返した。
「うん、もう平気。そろそろ進もっか」
可能なら、出来るだけ早くここから出たい。そのために前進は必須だ。体調が回復したのは本当だし、それなら進んだ方がいいに決まっている。
霞月はちょっとだけ眉間にしわを寄せた。心配してくれてるのかな。
霞月が頷くのを確認して、休むために座っていた体を立たせる。

「どこに向かう?」
自分で聞いておいてなんだとも思うけど、わたしはあの四角錐の建物を目指すべきだと思う。どうしてかはわからないけど。そんな気がする。
霞月も同じことを思ったらしく、遠くにそびえる四角錐の建物を指した。
「僕は、あそこが気になる。奏芽がいいなら、とりあえずあそこを目指したい」
異論はない。私は真剣な面持ちで首を縦に振った。
「うん。私もそう思ってた。じゃあ、行こう」

霞月の顔に、不安の二文字が浮かんだ。……そしてきっと、私の顔にも。私は霞月に笑いかけた。自分に言い聞かせることも目的の一つに、励ましの言葉を送る。
「きっと大丈夫だよ。これまでだって二人で色んなことを何とかしてきたんだから、今回だってどうにかなるはず。きっと、大丈夫。きっと、帰れる」
そう言う私の体が微かに震えていたことを、恐らく霞月は、気づいていた。
「わかってる。行こう」
だけど霞月は気付かないふりをしてくれた。霞月なりの優しさだ。私が震えていることを見られたくないと思っていること察して、わざと私の前に立ち、歩き出す。

目的地は定まった。だけど、予測不可能な迷路が私達の邪魔をして、思ったように進めない。それでも何とか足を進め、ようやくここに来たはじめの地点よりの四角錐の建物に近づいた、と思える場所に辿り着いた。そこには、壁が一部剥がれ落ちた、あるいは崩れた白か灰かわからない色の廃墟があった。

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13 :やっきー
2022/05/13(金) 22:20:31

《蘭視点》

 一体おれはどこを歩いているんだろう。遠くに見える建物を目印にしてるけど、全然役に立たない。迷路だから仕方ないと理解していても、どうしてもイライラしてしまう。

「ったく。日向を探さなきゃだってのに」

 日向に危機が訪れることはない。それはわかってる。でも、合流するに越したことはない。
 何か手がかりはないかと空を見上げてみる。のろしでも上がってるとわかりやすいんだけどな。無いか。そもそも日向は燃やせるようなものを持ってないな。あ、おれもだ。魔法は使えるかわかんねーし。試してみるか? もしそれが原因で行動不能になるといけない。まずは日向を探してからだな。
 それが出来ないから魔法を使おうとしてるんだって!!


 ……なにか、聞こえた。遠く、でも辿り着けないほど距離が空いているわけでもない。 なんの音だ? 破壊音?
 わからない。音が鳴ったということは、そこに動くものがあるということだ。それが生物なのか無生物なのかはさておき。

 おれはその音源が日向であることを期待して、そこを目指すことにした。実際に辿り着けるかはわからないけど。
 なにか目印になるものはないかと、いまから向かおうと思っている方角を改めて見る。奥の方に、細長い、塔のようなものが見えた。ちょうどいい。あれを使おう。
 そう考えて足を進める。それにしても、本当なにもないところだな。遠くに建物が複数見えはするけど、近くにあるものなんて白い壁くらいだ。いままで進んで来た道の途中にもなにもなかった。どうしてだろうか。

 ドオォンッ
 
 音が、鳴った。遠くから? 違う。すぐ近くだ。音とともに振動が体に伝わるほど、近く。視界に音源らしきものは見当たらない。
 おれは後ろを見た。いた。なんだ、こいつ。

 本物の灰色よりは白に近い色、いわゆるねずみ色の体。おれの五倍くらいの大きさの、構造は人間とよく似た骨格に皮だけが張り付いている。手足の指はナメクジのような形で、にゅるにゅると常に動いている。頭はない。首の骨はある。頭だけが、ない。

 恐怖を感じるくらい、そいつからは何も感じられなかった。殺気も敵意も戦意も何も。そんなことってあるのか? さっきの近い場所からの音の正体は間違いなくこいつだろう。だったらこいつは動けるはず。なのに動く気配すらない。触手はうねうねしているけど。
 ――バケモノだ。直感で、そう感じた。

 ヒュッ

 耳元で、風を切る音がした。目の前から、バケモノが消えた。
 え、と思う前に、背後から大量の触手に絡め取られた。
 いつの間に後ろに?! まさかさっきの風は、こいつの移動によるものか? どんだけ速いんだよ!!
 だんだん体を締め付ける力が強くなる。粘液に覆われているのにこんなに強い摩擦力が生じるなんて。って、現実逃避してる場合じゃない!

 もう、魔法を使うしかないのか? 気にしていられる状況じゃないよな。
 そう自分に言い聞かせ、おれは体内で魔力を練り上げた。練り上げたと言ってもそれにかかる時間はほぼ一瞬。火魔法を、まずは弱い魔力で放つ。体の周りに火を出現させるだけの初歩的な魔法だ。
 結果、バケモノはびくともしなかった。でも、『発動は可能だった』。おれの体にも異変は起こっていない。この場所では魔法が使いにくいのかもしれない。使いにくいだけなら、魔法発動に使う魔力を増やせばいいだけだ。

 体を締め付けられているせいで、肺の中にはほとんど酸素は残っていない。息苦しい。骨もさっきからミシミシと嫌な音が鳴っている。
 恐れる必要はない。こんなやつ、恐れるに値しない。なぜなら、おれは。

「なにがしたいのか知らねえけどな、おれを倒したいなら、そんなんじゃ足りねえよ」

 はあっ、と大きく鋭い息を吐く。ため息なのか嘲笑なのか、おれ自身にもよくわからなかった。
 体内から、熱い何かが噴き上がった。心臓から皮膚へ、皮膚から外気へ。熱い何かは、空気を、触手を、そして燃えた触手の灰すらも燃やし尽くす。
 触手から解放されたおれは、素早くバケモノから距離を取った。バケモノは触手から体に炎が広がり、頭がないから表情があるわけじゃないけど、なんとなく焦っているように見えた。

「おい」

 呼びかけるが、反応はない。聞こえていないのだろうか。どうでもいい。

「じゃあな」

 炎で作りあげた弓を引き、矢を放つ。ドッ、と重い音。バケモノの皮膚は裂け、灰色の骨が露出する。バケモノの体が、ゆっくりと傾いた。静かに、倒れた。

 ふう、と改めて息を吐く。
「うわっ、弁当潰れた! てか体痛えな。骨折れたか?」
 そんな独り言を呟いていると、唐突に、ぞわりと嫌な気を感じた。

 倒れたバケモノの向こうに、また違った姿のバケモノが立っていた。

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14 :露空
2022/06/11(土) 18:58:58

[霞月目線]

「でっか……」
それが最初に思ったことだった。
同じことを感じたのか奏芽も頷いている。
「何でできてるんだろう……」
石でも金属でもない。
けれど、迷路の壁と似ている。
「ここは入れるの?」
奏芽が問う。
「まだわからない。けど、」
そこまで言って急に話を切ってしまった。何故なら、真っ直ぐ前の遠くに一つ小さな影が見えたから。
「奏芽、あれ見える?」
少しの興奮が混ざった声だと、話していて自分でわかった。
「うん。さっきの化け物じゃないよね?に、人間かな?」
人間が僕達の他にここにいるのか?
でも、この「セカイ」に僕と奏芽が来たのだからおかしくはない。
「行ってみよう。きっと悪い人じゃない。あの人達の力になれるし、困ったら力になってくれる。きっと」
奏芽は「きっと」とよく言う。
希望を持つことが大事ってことなんだろう。

次の瞬間、影のところにさらに大きな影が一つ増えた。刹那でそれが何かを悟る。
「『バケモノ』だ……!行かなきゃ!」
「うん。このセカイでのヒーロー任務一回目だ」
今ならうざったい迷路もかいくぐれる気がする。目的地を見据え、駆け出していった。

注:13話の少し前の時間軸です

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15 :やっきー
2022/06/20(月) 01:36:58

《日向視点》

 化け物が跳んで行った先で、人の気配がした。徐々にこのセカイにも慣れてきたらしい。感じた気配は、蘭のものによく似ていた。
 偶然ではないだろう。あいつは意図的に蘭のところへ行ったに違いない。四つも八つもある方角の中で、たまたま蘭のいる方へ直線に進んだというのは考えにくい。
「ふざけるな」
 低い唸り声が自分の喉から出てきた。そして私は思い切り跳躍した。高い壁も越えて、果てまで続く迷路を見渡す。灰との区別を無くしたような、最も光を反射するはずの一面の白色は、不思議と眩しいとは感じなかった。どうでもいい。私は蘭がいるであろう方向を見た。相変わらず複雑に入り組んだ迷路。問題ない。この程度なら、覚えられる。
 私の体の上昇は、急に止まった。と言っても空中に停止したわけではない。非現実的なまでの頭上からの圧力に、私の体は押しつぶされ、落下する。

 ドゴォンッ!!

 激しい音と砂埃にまみれ、私は床に叩きつけられた。頭から突っ込んだらしく、猛烈な痛みが上から下へと駆け巡る。けれどそれは私の運動を妨害しない。私はゆっくり立ち上がった。
 私は死なない。丈夫を通り越したこの体を忌み嫌う大人がどれほどいたことか。ああ、違うな。大人だけじゃない。私もこの体が嫌いだ。死にたくても死ねない。彼らの恐れるこの白眼も、何度抉られ再生したことか。無駄なことだと知りながら、それでも消え去りたいと思うほど、世界に疎まれる白眼を消し去りたかったんだろう。

 後頭部を撫でると痛み共に、ぬちゃ、と嫌な音がした。手の平からは真っ赤な液体が滴っている。ちょっと悩んで、蘭が見るとうるさいから、一応魔法で治しておく。そして先程確認した迷路を思い出しながら、蘭の元まで駆け出した。

 ○○○

 私は化け物の後頭部を蹴った。助走もしたけど、この体格差だ。ダメージは期待できない。実際、ビクともしなかった。まあ、いい。化け物の意識を蘭から背けさせる方が重要だ。
「ひなたっ?!」
 蘭の驚いた声が聞こえた。姿は見えない。でも私が蘭の声を聞き間違えることはありえない。

 化け物は私を見た。私がさっきまで見ていた化け物の面影を残しながら変わり果てたその姿に顔をしかめつつ、観察する。
 化け物は相変わらず巨大だ。しかし体色に変化があった。背景に同化しそうなほどに白に染まっていた体は、いまは黒が混じって灰色になっている。白と黒の中間よりは白く、ねずみ色よりは黒い。毛むくじゃらの体は肉が削ぎ落とされ、手足は粘液に覆われた触手に変わっていた。首だけ骨がむき出しで、その上にミイラを連想させる、醜くしぼんだしわくちゃの顔が乗っている。その顔は眼球が外れ、歯が抜かれ、鼻が削がれた、私たちとは似ても似つかぬ容貌だった。
 突然化け物の触手が伸びてきた。一秒足らずで私の目の前に到達したそれを横に飛び退いてかわすと、横から別の触手が襲いかかってきた。

 この小さい体では、これを避けることは難しい。そう判断して、私はこの攻撃を一度受けることにして、顔の前で腕を交差させた。しかし、痛みが私を直撃することはなかった。その代わりに、激しいオレンジの光が視界に侵入する。
 突如現れた炎の球は、化け物の体の中央部分に当たる。化け物はぐらりと体を傾け、倒れた拍子に粘液がびちゃりと飛び散った。

「大丈夫ですか?!」
 駆け寄ってくる、男の声。見ると、後ろにもう一人、女がいた。さっきまでいなかったはず。いつの間に?
 男女は別れて、女が蘭の元へ行った。男が私のところへ来たけれど、そんなものは無視する。

 ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな蘭に近づくな誰だ誰だお前は誰だ近づくな近づくな私たちに――
「ちかづくな」
 ほぼ無意識に出た音に、女の肩はびくりと震える。
「大丈夫だよ。私たちは怪しくない。……なんて言っても、信用出来ないかもしれないけど」
 子供である私を安心させるためか、女は微笑む。いらないいらないそんなのいらない。
「蘭に近づくなッ!!」
 私は怒鳴った。当然だ。得体の知れない奴が、蘭に何をするかわからない。油断出来ないわけではない。こんな奴、敵ではない。ただ、蘭に近づく行為そのものに嫌悪感を生じる。
 化け物はむくりと体を起こした。怒りを表すように、「ギーー」とおそらく鳴き声を上げて、触手をしならせ、またも懲りずに襲い来る。
 面倒くさい。手の平を開いて、化け物に向けた。紙をぐしゃぐしゃに丸めるように手を閉じる。化け物の体は段々縮まりながら、一部が異常に膨れ上がり、そして破裂した。

 この魔法は使うつもりもなかったし、使えるとも思ってなかった。どうして使えたのか、その疑問は投げ捨てて、痛む右腕を抑えながら、私は男女を睨んだ。

「あなた達は、だれ」

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16 :げらっち
2022/07/30(土) 01:11:30

━━━無知な神がおりました。


「アナタ様は宇宙のバグを消去し、この“世界”を再起動した。それは神の仕事だ。」

「その通りですよ!私がこの“世界”の神になったんですぅ!」

神界にて。
大きなぶたの「元」神様は、机を見下ろしていた。いつも世界を執筆している机だ。そこに乗っていたのは、小さな少女だった。いや、小さいというのは相対的な評価であり、一方的な概念だ。彼女は人間の子女としては平均的な大きさだったし、わたしがでかすぎるだけだ。そしてその少女は見かけ以上の力を持っている。

周りには多くの天使と悪魔が漂っている。もはや背景のようになっていたが、天使の1人が「冒涜だ!」と叫んだ。
たしかに冒涜だ。神への不敬であり、世界への背信だ。いや、そんなことはどうでもいい。わたしはむしろハッキリとものを言うやつは好きだ。
ぶたは語る。
「そうだとして、猫野瑠々。この役目が務まるのかい?この世界を綴っていくには我慢強くなくてはならないよ。途中で投げ出すようなそういう人は神にはなれない。」
そうだとも。世界はわたしがペンで白紙の上に生み出していく。〆切厳守、打ち切りなどもってのほかだ。
だが猫野瑠々はあざとく笑った。

「あなたがこれまで通りその仕事を続けてください!私は普通の人間として、普通に学校生活を送ります。世界をずっとROMってるほど暇じゃないのですし。」

そう言うと少女はくるりと背を向けた。
「はっ!」と一声、何も無い場所に両手を突き出すと、軽々と空間をこじ開けた。そして踵を返すこともせず、人間の住む場所に戻って行った。

「神様、何をもたもたしてゐるのです!」
先程ルルを冒涜だと糾弾した天使、プラスチックエンゼルがピポパポと叫んだ。わたしがプラスチックで作ったからそういう名前だ。手抜き作なので性別は無い。
「やつは神の名を剥奪し、しかも神様を利用し続ける気ですよ!ゐって私が始末しましょう!」
「始末する必要はないよ。」とぶた。「でもインデックスを作る必要があるね。任せるよ。わっしょいわっしょい。」
あれは手抜きだがそれなりに有能だ。少なくとも昼と夜の姉妹と違って状況判断能力に長けているから、無闇に破壊行為に及ぶことは無いだろう。
プラスチックエンゼルは「お任せあれゑ」と言って、空気の間隙を追い駆けて行った。
ぶたは、そろそろおなかがすいてきた。


はてさて世界とは何であろうか。
神の綴った小説だろうか。起承転結は作者の気まぐれに委ねられているのか?
広くて狭い箱庭だろうか。大きな存在が世界を奔放にし、そこで行われる小さな諍いや営みを観察して、健気なものだとほくそ笑んでいるのか?
それとも意味など無いのか?
木が地中に根を伸ばすように、生命が手当たり次第に膨満したものを世界と定義したのか?

ルルにはわからなかった。
そんなくだらぬ哲学を松葉杖にせねば生きられぬ老人とは違い、彼女は若く、活気に満ちていた。今ここにある世界を楽しんで生きていた。

だがそれは、千年生きた仙人にも導き出せぬ答だった。
何故なら全てが正解であり、全てが不正解だったからだ。◯であり同時に×であるということは、必ずしも矛盾しない。少なくとも四次元を超えた世界では。

世界はひとつではなかった。

CGRが世界の中心と思い込み、ルルが神のライセンスを得た世界、それとは別に、ここに世界があった。

それをセカイと名付けよう。

CGRの世界からしたら、常識の通じぬ場所であるに違いない。一度迷い込んだら、出られぬ樹海に違いない。
ルルはそこに迷い込もうとしていた。先に迷い込んだ者たちを追って。

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17 :げらっち
2022/07/30(土) 01:17:29

中2の夏といえば、セミの声さえも賑やかな合唱に聞こえるそんな年頃。
ルルは汗だくになって学校に向かっていた。

「地獄ですぅ!」

プラスチックエンゼルはそれを尾行していた。
隠密行動は得意分野であった。何故ならプラスチックエンゼルは誰の印象にも残らない、そんな見た目をしていたからだ。軽装で標的の50mほど後を付けていく。
「しかし、あつゐですね。人間界の夏がこんなにも過酷だと知っておけばこんな役割は御免だったのに。神様が丹精込めて作った世界を我が物顔で征し、自然を破壊し地球を温暖化させる人間は、まったく、をろかしい。」

神の代数は、歴代アメリカ大統領の数よりは少なかったか。
ルルが神に就任したのは去年(2022年)の秋頃、同時に尾行を開始したため、プラスチックは既に1年近くルル監視の任に就いていることになる。
わかったことは、ルルは平々凡々な少女だということだった。顔は見立てでは中の下。プラスチックは作り物の顔なので中の中だが。
背は平均か少し大きい程度、痩せ型、髪は黒のボブで、肩を超えるとすぐに近所の美容院に行きカットしてもらう。その間は婦人向け雑誌を読むか寝ている。髪を切ると友人に「髪切った!?」と誰が見てもわかるようなことをわざわざ確認される。プラスチックは髪が伸びないので、そんな文化を不思議に思っていた。

CGRのタレとりんごが受験期間のため、CGRはほぼ活動休止中だった。
大きな敵も居なくなったので、怪人が出ても、ルルかキーが単独行動で敵を潰しに行くことが多かった。
ルルは親族が居ないので、CGRの基地でもあるキーの屋敷に住んでいた。プラスチックは同じ津板山にある、今は廃墟の「そららんのドールハウス」を拠点にし、ルルの生活を首尾よく追っていた。プラスチックが透視能力でキーの屋敷を見ると、ルルはBL本を読み耽っていることもあった。世俗的だ。


アレが神とは思えない。


兵派亜中等学校に到着した頃には、ルルの制服は汗でぐっしょりだった。すぐにシャワーを浴びて着替えたいがそうもいかない。
ルルは2-3教室に入った。扉を開けると冷房の吐息が吹きこぼれた。救われた。空調が調整されているということは、約束の相手はもう来ている。
「何してんの、遅刻じゃあああああ!!」
級友の須良弥吏(すらみり)が、ルルにチョップを喰らわした。ちょっとポチャッとしていて、髪をセンター分けにしている。
「めんご!暑くてミイラ化してたんですぅ!」
ルルはエアコンの真下に来ると風の当たる位置を探り当て、はたはたとシャツを浮かせ、冷風を流し込み、少しでも体をクールダウンさせようと無駄な努力をした。
弥吏が何か飲料の缶を出し、ルルの頬に押し当てた。本来なら冷たさで飛び退くのがベストリアクションなのだろうが、ルルの顔は灼熱だったため、その嫌がらせさえ爽快だった。
「ハハッ。るるち、これ飲む?」
ルルはその缶のラベルを読んだ。
「おしるるドリンク?」
「おしるるじゃなくて、おしるこドリンクじゃあああ!!冷たくておいしいぜぇぇぇ!!」

ルルは風変わりなおしるこドリンクを飲むと、机をつなげて、弥吏と共に夏休みの宿題を始めた。
弥吏の家は親が厳しく友人が入れない上、ルルが弥吏をキーの屋敷に呼ぶのも不自然なので、学校で勉強会をすることにしていたのだ。

プラスチックエンゼルは新校舎に潜んで、建物越しに2人を透視した。怪しい動きが無いかを見張る。逐一記録するほどの無いことと思いつつも、プラスチックは会話の内容を上司に報告した。
「神様、聞こゑますか。こちらプラスチック――」

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18 :げらっち
2022/07/30(土) 01:20:53

勉強は、はかどらなかった。
弥吏はおしるこドリンクと同じ会社が開発したと思われるおしるこキャンディを机に広げていた。
袋買いするのはよほどの物好きだろうという、ゲテモノだった。

「るるち、知ってるー?」弥吏はノートに顔を落としたまま言った。
知ってる?と問われても、何のことかわからないので、知ってるとも知らないとも答えようがない。
「多分知らないと思う。」とルル。
「この学校で、前に自殺した生徒がいるらしーよ!保健の先生の情報。」
「ふぅん……」
ルルもノートに目を向けたまま曖昧な返答をした。
CGRでは様々な体験をした。戦争や殺戮もあった。不可思議なことも多々あった。自殺などありふれたことだ。
「と、いうわけで私はトイレ行って来る!戻るまでにQ4を解いていてくれたまえよ。」
「話に関連性が無いですぅ!」

弥吏は大声で笑いながら廊下を歩いて行った。
じきにその声も聞こえなくなり、静寂が訪れた。聞こえるのはエアコンが風を吐き出す音だけだ。それはまるで呼吸音のようだった。


弥吏は、なかなか戻らなかった。


10分が経過し、20分が経過した。Q4はとっくに解き終わっていた。
濡れたシャツもすっかり乾ききった頃、ルルは異変を感じた。遅すぎる。
もしかすると、あの妙なおしるこドリンクでお腹をこわしたのかもしれない。ゴキブリに驚いて転倒し、頭を打って動けないのかもしれない。
ルルは近くのトイレに行ってみることにした。

「み~いん?」

女子トイレに人は居なかった。全ての個室を開けて確かめた。
まさか男子トイレに行ってしまったということはあるまい。
「他の階かな……?」
ルルは念のため、校舎中の女子トイレを探した。ルルが弥吏を呼ぶ声が虚しく響いた。学校を一周し、大抵のトイレは見終わった。流石に体育館やプール、新校舎のトイレに行ったとは思えない。
「まさか入れ違い?」
ルルは教室に戻った。
ルルが出た時と全く同じ状態だった。エアコンはつけっぱなしだった。ルルのノートも弥吏のノートもそのままだ。荷物を置いて帰ってしまうとは考えにくい。時計の針だけがさっきと違っている。弥吏が居なくなって、もう50分近かった。ルルはLINEで弥吏に「今どこ?」とメッセージを送った。無料通話をかけたがつながらなかった。


ルルは、ゾッとした。


何か視線のようなものを感じ、身動きが取れなくなった。1人きりであることが急に心細く感じられた。ルルはわあと叫んで教室を飛び出した。エアコンの効いていない廊下のあたたかさが、ルルを少しだけホッとさせた。

これは神隠しではなかろうか。
オカルト好きのルルは、失踪事件の特集番組を見たこともあった。
神が気まぐれに、少女を隠してしまったとしか思えなかった。

いや、神は自分自身だ。

今までも、不可思議なことは多々あった。
魔法だってオカルトだ。
何者かが魔法をもってして、いたづらしているんだ。
世界で最も魔力の高い私が翻弄されるなどあってはならないことだ。

ルルはスマホだけを手に、廊下を歩いた。魔力を行使すれば級友を見つけられるはずだ。

それにしても、何故誰も居ないんだろう?
いつもは校庭で運動部が活動しているのに。生徒も先生も、1人も居ない。セミの鳴き声だけが遠くに聞こえている。





廊下の向こうが、ゆらいでいた。
ルルは、暑さで目がぼやけているのかと思った。だが違う、もっと奇怪なものだ。
しかし魔力は感じなかった。敵意も、殺気も、そこにはなかった。あるのはただの、ゆらぎなのだ。

ルルの耳元に、何かの声が囁いた。言葉が直接耳に注がれ、ワープロで脳に文字が打ち出されたようなクリアな伝達となった。


『きて。』


ルルは、ぐいと強い力で、何かに服を引っ張られた。次の瞬間ルルはそこから消えた。

「何だ!?」
プラスチックエンゼルは動揺した。遠目にルルが消えるのを確認した。先程も弥吏という少女を見失ったところだが、追跡対象まで見逃すことになるとは。プラスチックは背中から簡素な羽を生やし、床の上を滑るようにして飛び、別館から本館に行くと、ルルが消えた場所に急いだ。そしてゆらぎを見て取ると、すぐさまそこに突っ込んだ。

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19 :げらっち
2022/07/30(土) 01:24:36

ついに暑さで目がやられたか。そう思った。
一面がホワイトアウトした。
ルルは何度か目をしばたき、ゆっくりと周りを見回した。

真っ白の、何も無い空間。

いや、そうではない。空間は確かに広がっている。豪雪地帯で風景が銀世界になるように、全てのものが白く塗られていて、境界線が酷く曖昧なのだ。
だがよく見れば、床があり、壁があり、天井があった。消火栓があり、窓があり、真っ白い校庭があった。風景はいつまでも白く、濃淡も無いため、遠近感が掴みづらかった。どこまでも無音で、あのセミの声が懐かしかった。
ルルはスマホを見た。圏外と表示され、Wi-Fiが使えない。

ルルに異変が起きたのではない。世界が変わったのだ。
ルルが移動したのではない。セカイが動き、ルルを迎えに来たのだ。巧妙にルルの世界に溶け込み、不要なものを退けて、ルルだけをからめとったのだ。


そしてここがセカイになったのだ。


「見たことのない魔法ですね。」
ルルは少し驚いたが、キャスストーンにこびりついた邪悪や、世界のバグを倒してきた実績を思い出す。
私の魔力なら対応できないわけがない。
ルルは白い廊下を歩いた。色素は抜け落ちているが、元居た学校と同じ間取りのようだ。質感も変わらないように思える。ルルは2-3教室に入った。そこに弥吏が居る、そんな気がした。どうせ弥吏をさらった悪党もそこに居るのだろう。ブッ倒して友達を救い出し、元の世界に戻る。見え透いたオチだ。

だが白い教室には、誰も居なかった。ルルと弥吏のノートも無くなっており、白い机が整然と並んでいる。

ルルはちょっと困惑した。
敵を倒すことでエンディングを見られないなら、このゲームのタスクとは何であろう。
だがそこに敵は潜んでいた。ルルはあっと声を上げた。真っ白いエアコンがぬるぬると動き出した。下部から人体模型の様な半透明の体が生えてきて、音も無く床に着地した。人型の二本の足が生えているが手は存在せず、エアコン本体が頭部になっている。頭でっかちだ。
「わお、ダサい怪人さんですぅ!これは倒しちゃっていい系ですよね?」
ルルはスマホ――キズナフォンをタップした。

「コミュニティアプリ起動!!」

Wi-Fiが使えなくとも、変身アイテムとしては機能する。
ルルは魔力で全身をコーティングし、赤い戦士に成った。青いリボンとマントがお洒落だ。

「炎の勇者!!ガールズレッド!!」

そこに割って入る者が居た。
「どうなってゐる、猫野瑠々!」
「え?」
教室の後ろの扉をガラと開け、誰かが闖入した。ルルの知り合いではない。シンプルな顔つきだ。
「概括する。ぼくはプラスチックエンゼル、神様の部下の1人だ。おまゑを観察するのがぼくの役割だ。神の道を踏み外さないかどうかをな。」
プラスチックとは変な名だ、とルルは思った。プラスチックは机の合間を縫ってルルに近寄る。
「これはゐったい何の魔法だ?」
ふぅん、こいつ、これは私がやったと思ってるんだ。ルルは肩をすぼめた。
「さあ?私が問いたいぐらいですよ。」
「ちっ、まあゐゐさ。おまゑを連れ帰ることさえできればな。上の指示を仰ごう。神様、聞こゑますか。こちらプラスチック。神様――」
廉価版の天使はこめかみに指をあてて交信を続けたが、応答はなかった。
「をかしい。この通話が通じなゐわけはないんだが。通じなゐとすれば、ぼくが死んでゐる場合か、世界からはみ出してしまった場合だが……」

やがてプラスチックは、エアコンの化け物の存在に気付き、ひゑっと声を上げた。
白い背景に同化している上に動かず、なおかつ気配も無いため気付かなくても致し方ないが、神の部下としてはどうなのか。
プラスチックはルルをドンと押しのけた。
「どけ!!こいつは世界を外れた存在に違いなゐ、不穏分子きゑろ!!!」
プラスチックの腕がブレードに変形した。エアコンに勝負を挑む。

『おまえは、よんでない。』

ドッ、と噴出音。
「をあ!!!」
涼しげなエアコンが業火を噴いた。熱風がプラスチックエンゼルの体を貫いた。傍にいたルルも火炎に晒され、尻餅をついた。直撃を受けた天使はというと、机をなぎ倒し、黒板に打ち付けられた。そして、道端に落ちているセミのようにバラバラになった。
「神の部下が形無しですね!私が相手ですよ!!」
ルルはすかさず立ち上がると最上級の炎魔法で応射、「チート級スパイラルフレア!!!」炎と炎が押し相撲、教室は炎で一杯になり、空間が吹き飛んだ。ルルもエアコンもくるくると宙を回りながら、校庭へと落ちてゆく。
プラスチックエンゼルはというとこれに巻き込まれ完全に消滅した。最期の意識は、ルルがやはり神の名にふさわしい強さを持っているのだという、納得だった。

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20 :げらっち
2022/07/30(土) 01:30:00

ルルは校庭に着地したが、直後めまいがして、変身が解けた。
「あれ……?」
キョトンとしたのも束の間、白い地面にグシャッと押し潰された。
「うぎゃ!!!」
おかしい。
いったい何であろう、重力とも引力とも魔法とも違う。
ルルの周りに散らばっていた白い瓦礫は、音も無く飛んで行き、破壊された壁にまとわりついた。校舎は傷ひとつなく修復された。

謎の圧力により地面になすりつけられているルル。
エアコンが寡黙にすり寄ってきた。あれだけの火力で焼かれても、白い頭部と半透明の胴体は生まれたてのようにまっさらだ。確かにルルには、敵を焦がす時のいつもの手応えが感じられなかった。

魔法が、通じない。

それもそうだ。ここはルルの属する世界とは違うのだから。
別のセカイに来た途端、元の世界の法則は文字化けし、判読できなくなる。どんなに強い魔力でさえ通用しなくなる。

変身を解かれ、身動きもできないルルを、エアコンは炙ろうとした、だが、

「TAスパイラルスノウ!!!」

何処からか真っ白い螺旋が飛んだ。エアコンは炎風で迎え撃つ。ルルの真上で炎と氷がぶつかり合い、ドンと振動が走った。なんという氷点下、炎はパキパキと凍り付き、粉砕されていった。白い氷片がルルに降り注ぐ。氷雪がエアコンにぐるんと巻き付いた。
「終われ!!!」
ガチン、とエアコンは大きな氷の結晶に包まれ、弾け飛んだ。

「だ……れ?」
ルルは強力な磁石にくっつくマグネットのように地面にへばりついていたが、徐々に圧力が弱まるのを感じ、立ち上がった。

向こうから、真っ白い世界に溶け込んでしまうような、真っ白い少女が歩いて来た。


「ルル、久しぶり。こんなに早く再会するとは思わなかったよ。」

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