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193.『戦隊学園』制作スタジオ
 ┗241-260

241 :最終話 1
2021/08/27(金) 02:03:48

戦-1グランプリ 残チーム
文学クラス レッド(赤き)戦隊エリートファイブ 10pts決勝進出
宇宙クラス UFO戦隊タキオンジャー 0pts
クラス混成 オチコボレンジャー 9pts



「教頭、どうだ。戦-1は。」
「オチコボレンジャーという無名の戦隊が星を伸ばしていますねぇ。勝つのはエリートファイブでしょうが・・・」
「下剋上とは面白いな。だがもっと面白いことが起こるだろう、破壊的な何かが。」
「しかしマスター、優勝した戦隊に学園の支配権を譲渡するなど、それこそ破壊的ではありませんか。」
「破壊とは創造へのプロセスだ。全ては、戦隊のベースアップために。」

[返信][編集]

242 :2
2021/08/27(金) 02:05:03

夕暮の戦隊学園、七海と楓は授業を終えて寮への道を歩いている。

「ちょっと近道してみようよ!」
「近道かどうかわからなくない?」
学園の敷地は広く、校舎から寮までの道のりでも通った事のないような抜け道が多々ある。
もしその道が意図せぬ場所に続いていたなら、それは近道というよりむしろ遠回りになるし、最悪迷子になりレスキュージャーを呼ぶことになるだろう。
だがその時の七海は気分もよく、例え回り道になったとしても少し冒険してみたいという心持だったので、楓の提案に乗ることにした。

「いいよ。もし迷ったら夕飯おごってね。」
「おけ!」

用具倉庫裏の狭い道を歩いていく。
「ねぇっ!やっぱここ行き止まりだよ!引き返したほうがいいよ。」
「大丈夫だって!ほらここに抜け道が・・・」
楓が指さすところ、フェンスが一部壊れて先に進めるようになっていた。
「よいしょ」
フェンスを跨ぐと広い道に出た。
「見たこと無い道だ・・・」

校舎でも体育館でもプールでもなく、七海たちの住むような質素な寮とも違う、ホテルのような荘厳な建物が在った。
「楓、ここ入っちゃまずい所だよ。嫌な予感がする、引き返そう。」
だが予感よりも遥かに早くその事態は起きた。
建物の自動ドアが開き、中から天堂茂とポンパドールの背の高い女子が出てきた。何か話している。
「まずいっ」
七海は楓の手を引いて隠れようとする。だがそんな間は無く、すぐに天堂茂の目が2人の姿を捉えた。

「ほほう、落ち零れが、此処に何の用だ?」
天堂茂はせせら笑った。
「落ち零れって言うなし!たしかにオチコボレンジャーだけど」楓がすぐに言い返す。
「此処がどんな場所かわかっているのか?各クラスの首席やエリートだけが使用を許された、VIP専用寮あかまつだ。お前ら落ち零れは立ち入りさえ許されていない筈だ」

「あ、そ。」
七海は返答する。
「落ち零れだけど9勝してるから。あと1勝であなたたちに並べる。最も、あなたたちはお金で勝ち星を買ったんでしょうけど。」

「調子乗んな、うざい。」
それに言い返したのは天堂茂でなくポンパドールの女子。
「圧倒的不利ってわかっているの?タキオンジャーに勝たない限りあんたたちの決勝進出は無い。もし万分の一の確率で勝てても、決勝では茂たちのエリートファイブが勝つに決まっているでしょう。醜い女って、哀れね。」

飛び掛かりそうな楓を抑えつつ七海は悪口の応報をする。
「天堂茂の飼い犬になって嬉しいの?ポンパドーデス。」
「ポンパドールです。何でその名前浸透してんの?本名で覚えてよ!茂、こんな奴らほっといて行こう。」
「まぁ待て。躾のなっていない野良犬共は此処で痛い目に遭わせる必要があるな。」

天堂茂は真っ赤な戦士、エリートワンに変身する。

[返信][編集]

243 :3
2021/08/27(金) 02:06:05

「お前ら落ち零れがこの敷地内に入るのは校則違反だ。従って、僕にはお前らを罰する権限がある。」
天堂茂は銃を七海と楓に向ける。
「ビビビーム!」
「ゴー!!」
爆炎の中からコボレホワイトとコボレブルーが姿を現す。
「チェンジ:ドギー!」
コボレブルーは犬の様に変化し天堂茂に掴み掛かった。
「がぅ!」
「躾のなっていない犬め!」
「きゃん!」
一蹴された。
「どいて!」
七海は地に転がる楓を跳び越え、天堂茂と対峙する。
「天変地異!」
地が空に、空が地となった。
「あなたみたいな大馬鹿は戦-1で戦う迄もない。今ここでボコして、尻の穴にこれを突っ込んでやる。」
七海はタクトを取り出す。
「スパイラルキララ!」
タクトをくるりと回すと周囲は真っ暗闇に変わり、星くずたちが渦を巻いて虚空に浮かぶ天堂茂を包んだ。
天堂茂は一瞬、困惑するも「僕が宇宙の中心だ」閃光が走り地平は元に戻る。七海は寮の壁にぶち当たる。
「ぐ・・・っ」

「エライインパクト!!」

天堂茂は容赦なく炎を吹いた。七海は身動きも取れぬまま成す術もなく地獄の業火に焼かれた。
「ぎゃあああ!」
「七海ちゃん!」
楓が攻撃を仕掛けた。
「棘皮弾!」
黒い弾が飛んでくる。「ん?」天堂茂は思わずそれをキャッチしてしまう。それはトゲトゲのウニだった。「いだぁぁああああ!?」棘が天堂茂の両手に突き刺さる。投げ捨てるも棘が折れ、針先が手の中に残った。

「ウニの棘は返しがあるから簡単には抜けないんだよーだ!大丈夫七海ちゃん?」
「余裕・・・う、」
七海はがっくりと膝をついた。
「しっかり!」
一方の天堂茂はポンパドーデスにとげぬきで棘を抜いて貰った。
「くそっ、僕を傷つけやがって!父上に言ってお前の家系を潰してやるからな」

「うるさい、死ねぇ!」
楓は1人天堂茂の首を取りに走る。

「伊良部楓。お前は下劣で、品の無い女だ!お前のような女は将来キャバレンジャーにでもになるのだな!」

「・・・!」
楓は黙り込んでしまった。
キャバレンジャーとはいわゆる商売女の集団である。
七海は立ち上がった。
「汚らわしい。楓はそんなんじゃないから。落ち零れだってあなたより立派に生きてるよ。キャバレンジャーなんて軽蔑される存在になるとでも思ったの?撤回してよ。」
楓は押し黙っている。
「命令できる立場か?」
天堂茂は満身創痍の2人に銃口を向けた。

七海は楓にだけ聴こえるように小声で呟く。
「一斉に飛び掛かれば勝てる。合図するから」
だが楓は答えない。
「楓、聞いてる?」

「もういいよ。」

「え?」
楓は変身を解除して、さっさと歩いて帰ってしまった。
「楓?どうしたの待ってよ!」
七海は後を追いかける。

取り残された天堂茂は唖然とした。
「何だあいつらは。頭のおかしい奴らには付き合えないな。」

ポンパドーデスの腰に手を回し、日の落ちた道を歩く。
「それで用って何?茂。」
「お前は聡く、美しい。品の無い伊良部楓や小豆沢七海とは大違いだ。僕にはお前のような女がふさわしい。一流の者同士、王者同士が結ばれるのだ、どうだ?ポンパドーデス。」
「ポンパドールです。悪い気分じゃないけど。」
「では来たる決戦に向けロボの手配を御願いしたい。奴らをぺしゃんこにしてやりたいのだ。立ち直れないほどぺしゃんこにな。」

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244 :4
2021/08/27(金) 02:09:48

毎週水曜日は佐奈の部屋にオチコボレンジャーの面々が集まり、全員で夕飯を食べるのが恒例となっている。
何故女子寮の佐奈の部屋かというと、佐奈は無断で七海と楓の部屋の真下の部屋を借用しているからであり、もしバレたら停学ものだ。

だが今日は楓の姿が無かった。

「楓どないしたん?いつもはノリノリで来るのに。」
「具合悪いブヒかね?」
心配する男子勢。
佐奈は尋ねた。「七海さん、何か知ってるでしょ。親友同士なんだし。」

「知らない。」
事実、楓が急に口をきいてくれくなった理由が、七海にはわからなかった。
天堂茂に酷く馬鹿にされ不貞腐れているのだろうか。
「何だろうな・・・楓の青が、いつもより澱んでいたようには見えたけど。とにかく今日は来ないと思う。」

「ブヒ~!待ちきれないブヒ!」
4人の囲むテーブルにはタコレンジャーから注文した大盛りタコライスが並んでおり、これ以上待つのは毒だ。

「冷めちゃっても勿体ないし、私たちだけで食べよっか。いただきます。」
七海の詠唱に合わせて他の3人も「いただきます。」
豚之助は凄い勢いでタコライスを口の中に詰め込んだ。佐奈と公一ももぐもぐと食べている。
七海もそれを口に運ぶ。
だが味がわからない。味覚が失われたわけでは無い、美味しいのだろうがそう感じない。
「七海さん、クソまずそうに食べんね。」
「せやな、絶対楓のこと考えとるやん。」
「もろバレか。」
七海は箸を置き、天堂茂に喧嘩を吹っかけられたこと、その喧嘩を買って旗色が悪くなったこと、対峙中に急に楓の様子が変になったことを3人(豚之助は食事に夢中で聞いていなかったので実質2人)に話した。


「――将来キャバレンジャーになるって酷いけなしてた。あいつ下賤な貶め方するよね。ショックだったのかも」
公一と佐奈は顔を見合わせた。
「ねぇ、言いたないねんけど。楓を傷つけたのは七海、お前やな。」
「え?」
七海は理解に及ばない。
「私なんか悪いことした?」
「楓のねえちゃんはキャバレンジャーや。」

七海は目を白黒させた。
「理解が追いつかない・・・待って何でそんなこと知ってるの?私には一言も・・・」
「うちも聞いた。」と佐奈。「七海さんにだけ話さなかったのは、好きな人には知られたくなかったんじゃないかな。見栄を張ってたっていうか。あのこ意外とプライド高いから」
七海は愕然としていた。
「私は楓のことを何も知らなかったんだな。」

[返信][編集]

245 :5
2021/08/27(金) 02:11:33

七海は梯子を登って自分の部屋に戻った。楓の分のタコライスを持って、ちゃんと温め直して。
8時前なのに、楓は二段ベッドの下段で布団にうずくまって寝ていた。
電気が点いていたことから察するに、楓は布団に入って寝たふりをしているのだろう。寝息も聞こえない。

中学生までの七海は気まずくなった相手とはそれきり絶縁になるほどの意地っ張りだった。
だが初めて親友にまでなれた楓とはそんな簡単に別れたくない。七海は優しく声をかけた。

「夕飯だよ。」

楓は枕に顔を埋めていて返答がない。

「狸寝入りってバレてるよ。このタコライスは豚之助にあげちゃうけどそれでもいい?」

またもや、無視。

「ねぇ無視すんなよ。」
「うっさい!」
楓は七海の腹を蹴った「あっ!」タコライスが床に散らばる。
「寝てんのに話しかけんな、あっち行け」
「このっ」カチンときた七海は楓の髪の毛に掴みかかる。
「暴力だ暴力!」
「どっちが先だよ?」
「ゴー!」

2人は変身して睨み合う。
楓はかまきりの鎌を持ち出し、七海はタクトを楓に向けた。
「私、謝りに来たんだけど。こんなことしたくないし、お互い様ってことで武器を下ろさない?」
「は。黙れ」
いつもの楓とは思えない凶暴な言葉づかいで。
「何でいつも命令口調なの?おかしいじゃん。あたしの身分が低いって知って、どう思ってるの?」
「そ、そんなの!」
七海はすっとんきょうな声を出す。
「別に何とも思ってないよ!私も孤児だし五分五分じゃん。」
「でもキャバレンジャーのことは馬鹿にしたよね。詰まりあたしの家族を馬鹿にしたってこと。もう信用しない。出てってよ!」

楓は鎌を振り上げる。
「マズルフラッシュ!」
七海のタクトが火を吹く。楓は「ぎゃあ」と言って鎌を取り落とした。

「このままだとあなたを大怪我させちゃいそうで、それは嫌だから。わかった。出ていく。じゃあこれきりで。左様なら。」
七海は部屋を後にした。

[返信][編集]

246 :6
2021/08/27(金) 02:12:57

「おじゃまします。」
「何や?こんな夜に妖怪か?」
「妖怪じゃないよ、私だよ。静かにして、バレるとあれだから」
「七海!!」
「静かにったら。」

公一はチェーンを外してドアを大きく開き、突然の訪問者を招き入れた。
「田無くんは帰省中なんだよね。」
「せやで。実家の農村戦隊イナゴレンジャーの手伝いに帰った。1人部屋快適や。」
廊下とこざっぱりした洗面所。ふすまの奥は寝室だろうか。
「あ、ちょい待って!」
公一はふすまをちょっとだけ開くと部屋の中に入り、パタンと閉めた。

「なおさなあかんもんがある!」

「直す?」
七海は何か修理する物があるのだろうかと勘ぐった。
「見せてよ。」
ふすまを開く。
「あっ!開けるな言うてるやろ。すぐなおし終わるから・・・」
公一は中からふすまをぴっちり閉めた。なおすとは片づけるの意。公一は自室を見られたくないらしい。

「終わった。もうええで」

七海は部屋に足を踏み入れた。
きっちり物が片付いており七海と楓の相部屋とは大違いだ。
「で、何で俺の部屋に来たん?」
「察して。」
「楓と喧嘩したんやな。お前の性格やから素直には謝れないやろうし。」
「あたりです」
七海が話す前に公一はその心を読んだかのようにするすると七海と楓の間に起こった出来事を当てて見せた。

「まぁそれはお前が悪いな。楓の家は貧乏で、ねえちゃんは楓の学費のために一所懸命働いとるんや。それも知らへんでキャバレンジャーは悪いって決めつけたお前が悪い。」

「だってさ、知らなかったんだもん。」
七海は口ごもる。
「とにかく今夜はここで寝かせて。あっ馬鹿した。枕とか服とか置いてきちゃった!取りに帰るのも気まずいしな。」
「あほやな。もう謝りに行ったらいいんとちゃう?」
「やだよ、公一が謝ってよ。」
「なんでやねん」

[返信][編集]

247 :7
2021/08/27(金) 02:14:03

何を思ったのか、七海と公一は1つの布団で入床した。
七海はkezuriを起動していた。

『怒ってる?』
『私が偏見を持っていたのも事実だけど、あなたを傷つけるつもりが無かったのも事実なの。もう一度友達になりたいんだけど、どうしたら許してくれるかな?』

ぽつりぽつりとつぶやいた言葉が文章となり楓のスマホに送信される。
それを聞いていたのか、隣の公一がもぞもぞと動く。
「起きてる?」
「起きてんで。」
「私ってさ、性格悪いと思う?」
辺鄙な質問に公一は「悪い」と即答した。
「でも嫌いじゃないんやで。確かに刺々してるけど人間らしい性格やし、周りに流されるよりいいと思う。」
「・・・ありがと。でも私は自分の性格嫌い。」
「そうなん?」

「まぁこれでも大分丸くなったなって思う。中学の時は口より先に、手が出てた。友達なんて1人もいなくて、誰も私をいじめさえしなかった。私の陰口ばっかり叩いてる女子が居たの。そいつすっごくいじめられてんのに他のインキャとつるんで、わざと私に聞こえるように白いとかきもいとかって言った。酷いでしょ?でさ、私。通学路ですれ違いざまに傘でそいつぶん殴った。本当にカッとなって、何発も叩いて、血がドバドバ出た。すぐに捕まって補導された。そりゃ、手を出した私はいかれてるよ。でも相手にも非はあった。いじめが蔓延しているクラスを作り上げたクラスの全員、そして先生も同様に悪いと思う。私は加害者にされたけど、すっごく傷ついたの。すごく・・・」

七海は自分が涙を流しているのに気付いた。
鼻水をすする。
楽しいことで上書きしていた辛い過去が、辛い今と重なって浮き彫りとなる。親友を失ってしまうのはつらい。

「こんな話してごめんね。思い出って大嫌い。」

「思い出が嫌いなんは、昔の自分が嫌いなんちゃうかな。」
公一は冷静にそう答えた。
「思い出は変えられなくても、今は変えられるやろ?」
「・・・。」
公一は七海をぎゅっと抱きしめた。

[返信][編集]

248 :8
2021/08/27(金) 02:15:20

「こん!」
「あたし伊良部楓!よろ!」
「わかるよ!あてるよ小豆沢七海!すっごく目立ってたからねぇー!」
七海は楓と初めて会った時の夢を見た。
喪失感と共に目を覚ます。
「・・・?」
まだ暗い。
朝が来たわけではないようだ。
意識はある。だが金縛りにあったように体が動かない。
七海は何とか目をこじ開けた。目の前に楓の顔があった。
「!」
その名前を呼ぼうとするも口が開かない。

「全部聞こえてたから。」

楓は鼻を近づけた。七海の鼻先と楓の鼻先が触れあい、息がかかる。
七海から見えるのは楓の目元だけだった。七海は身動きも取れぬまま目を見開き、楓の言葉を耳にする。

「公一くんと話してたこと、全部kezuriで文章として送信されてた。その後のことも、色々と・・・。泣いてたね。やっぱりあたし、七海ちゃんともう一度友達になりたい。朝になったら謝りに来て。そしたら許すから。」

楓はふっと去って行った。
「・・・ふがっ!」
直後七海の金縛りは解け、身動きが取れるようになった。
既に楓の気配は無い。
「公一?」
公一は隣でぐぅぐぅと寝息を立てて寝ていた。

先程の出来事が夢なのか現実なのか、七海にはわからなかった。

[返信][編集]

249 :9
2021/08/27(金) 02:16:44

早朝、七海は公一と共に自分の寮に向かった。
公一について来て貰ったのは、ひとりじゃ少々気まずいからである。

楓に一言「ごめんね」と言えば、万事解決だ。
全て元通り。
その筈だった。

「七海、なんかおかしい。殺気に満ちている。いつもはこんなことあらへんで。」

物々しい空気だった。
人だかりができていた。そしてそこにある筈のものが無かった。


「嘘。」


女子寮・南棟はぽっかりと消えていた。

跡地には黄色い規制線が張られ、周りを取り囲む生徒たちは不安、焦燥、恐怖、虚無に満ちた顔をしている。
「楓、佐奈!」
人混みをかき分け、その場所に近付こうとする。だが怒号を上げる生徒に突き飛ばされ倒れた。
「痛!」
視界が逆様になった。
すると灰色の空に、銀色のUFOがキラリと光るのが見えた。
「あれは・・・」
「七海さん、ひっくり返ってる場合じゃないよ。」
起き上がると佐奈の姿があった。
「佐奈ぁ!無事だったんだ!!」
七海は佐奈を抱きしめた。
「うちは夜半からラボに行ってたから無事だった。」

「佐奈、どうなってるんや。女子寮が消えたのは一体・・・」公一が尋ねる。
佐奈はかなりの早口で言った。
「わかると思うけど、すっごくヤバい状況。タキオンジャーが女子寮を消し去った。宣戦布告の音声を解読できたのは多分うちくらいだけど奴等がUFOで吸い込んだのは建物だけじゃない、戦-1の勝ち星もなの。つまりオチコボレンジャーの持つ9ptsが奪われた。奴等は学校を乗っ取るつもり。何か質問ある?」

わからないことだらけだ。
だがたった1つだけ。七海は最も気になっていたことだけを訊いた。

「楓はどこ?」

「わからない。」

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250 :10
2021/08/27(金) 02:19:46

「どうなってんだよッ!」
「うるさいですねぇ。」
「みんなはどこ?」
「現在確認中ですね。私からはお答えできませんねぇ。」
寮の“跡地”のすぐ近くで、質問攻めにあっている禿げ頭は、使えないことで有名な教頭の世川英秋(せがわ ひであき)ではないか。

「世川や。あいつが何か知ってるかもしれへん!」
「信用に足る人物では無いけど。」
七海は彼に詰め寄った。

「教頭先生、タキオンジャーの狙いは学園の制圧です!戦-1の即時中止を!」

世川は壁にもたれかかりながら話す。
「話が飛躍しているねぇ。進言する時はまず手を挙げなさい。話の割り込みは禁物です。戦-1は続行です。学園の1大イベントを、たかが一部の生徒の行方不明だけで、中止にはできませんからねえ。」

「人命を何だと思ってるの?20年前、ウィルスが蔓延する中オリンピックを強行して、多くの人が死んだ。私の友達がいなくなって、無事かもわからない・・・」

「そう言われてもね。校長は、戦-1の完結を望んでおられる!私の一存では決められないのですよねぇ。」

「クソッタレ。」
「七海さん、たーいへん!」
佐奈が走ってきた。
「何?」
「kezuriで豚之助から連絡があった。ロボットが校舎を破壊してるみたい。」
「えぇ!?」
「こっちだよ!」
七海・佐奈・公一はコボレボードに乗り校舎を目指す。
流石に3人も乗るとぎゅうぎゅう詰めで、乗り物はのろのろと進んでゆく。
広い敷地内でも迷うことはなかった。立ち昇る黒煙を目指して進めばいい。

ウーウーというサイレンの音。
「ブヒ~!七海ちゃん!」
校庭脇で大きく手を振る豚之助の姿があった。
七海はコボレボードを乗り捨て状況を視認する。校庭に居たのは青と白のネオンが特徴的な巨大ロボ。
「あんなのメカ之助になっていちころでしょ。」
「ち、違うブヒ!あいつは味方ブヒ~!」
「え。」
ドォンという鈍い音。
そのロボは何者かの砲撃を受け倒れた。
直後にプロペラの付いた緑色のロボと猫の形をしたロボが飛び上がるも、これも得体のしれない者の攻撃を受け沈む。

校舎の影から真っ赤なロボが現れた。
他のロボとは比べ物にならないほど、でかい。
しかし何ともかっこう悪い。
つぎはぎだらけのボディ、ギシギシと軋む金属音、キャタピラで走行している。動きながら今にも崩れそうだ。
だがその破壊力・火力はぴか一だった。腹部の砲門が火を吹くと、校舎の残された鉄骨は忽ち吹き飛んだ。

破片が降り注ぐ。
「ブヒ~!」
「あれがタキオンジャーのロボ?」
「見てみる。」
佐奈は小型のオペラグラスのようなものを取り出しロボに向けた。
「胴体にはエリートキングって書かれてるね。」
「エリートファイブのロボ?あのガラクタの何処がキングなんだか。操縦者は天堂茂?」

佐奈は頭部にグラスを向ける。どうやらそれで操縦者を透視できるらしい。
佐奈はグラスを下ろした。
かなり追い込まれたというような顔をして。
「操縦者は、誰だった?」
「楓。」

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251 :11
2021/08/27(金) 02:21:43

ギュルギュルと回転しながら、銀の円盤が飛んで来た。
そこから人が降り立った。こちらに歩いてくる。

「誰か来る!」
「公一、佐奈、豚之助。あなたたちはあのロボを止めて。私はタキオンジャーを倒すから。」
「七海!1人でやるのは無茶や!」
「大丈夫、相手も1人だから――」

3人は走って行った。

七海は汗をダラダラと流していた。
蒸し暑い早朝の空気がそうさせたのではない。
これまでに無いカラーを感じていたからだ。
楓は青、公一は緑、佐奈はピンク、豚之助は黄色、天堂茂は赤。
人が持つカラーは1人1色、そう思っていた。
だが。
現在感じるカラーは1つではない。2つでもない。複数という概念が当てはまるかも疑わしい。
たしかに歩いて来る人影は1つだ。
だがそこからは無限のグラデーションが感じられる。虹色に輝き絶えず変化しているようだ。情報量が多すぎる。目がチカチカして倒れそう。

ピポパポという機械音。
「やぁ。ビッグ・タキオンだ。僕は1人でぜんぶの色なんだ。君にはどう見えているだろう。」
その戦士は一般的な視覚情報からは白と判別できた。

「小豆沢七海。君は出色だ。戦-1の手合わせを願いたい。」

七海はその存在感に圧倒されていたが、ようやっと口を開いた。
「楓を助けて。助けてくれるなら戦-1の星でも何でもあげる。決勝で天堂茂を倒して優勝すればいい。学園はあなたの物。だから楓を助けて。」
「天堂茂?あああのクズは僕が殺したよ。楓ちゃんは自分の意志でああしてるって、気付かなかったのかい?」
「そんな筈は無い!」
「エライインパクト!!」
ビッグ・タキオンは天堂茂の技を使用した。七海は仰向けに吹き飛ばされる。

「どうしたんだい小豆沢七海。変身しろよ。」

「変身!」

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252 :12
2021/08/27(金) 02:24:04

「キララ!」
「キララ!」
キララ同士のぶつかり合い。星くずが散る。
「天変地異!」
七海は異空間に敵を引きずり込む。
「ホワイトホォル!」
「ブラックプリズン!」ガンガンと黒い鉄格子が築かれ、七海はあっという間に身動きを封じられる。
「その程度か。」


「ハッ!」
気付くと七海は校庭のド真ん中に立って居るではないか。快晴である。何故だろう、先程までの曇天は何処へ。
「ツーストライク!」
バスン!と硬球がミットに直撃。
此処はバッターボックス。
後が無い。打たなくちゃ。
マウンドに立って居るのは真っ赤に染まったビッグ・タキオン。
球が放たれた。
「いだぁ!」
「デドボール!」
球は七海の腹部に直撃した。

また場面が変わった。次は校舎の廊下だ。
窓の外は暗く、夜だと判った。向こうから歩いて来るのは茶色く変わったビッグ・タキオン。
「逮捕する!」
「!」
七海の両腕は手錠で拘束されていた。その重さに七海は膝をつく。
ビッグ・タキオンは鞭で七海の身体を滅多打ちにする。
「痛い!」
ビシバシという強烈な音、朦朧とする意識の中で七海は思った。
「これはソウサクブラウンの技!さっきのは、レッドピッチャーの技だし・・・!」
「そう。僕は全てのカラーの、全ての戦士の技をコピーできるんだ。」


またもや空間が変移した。
次は夕時であった。
見たことのある情景。

「あの子は緑、あの子はピンク。あ、あの子はちょっと変わった紫かな。」

人のゆきかう商店街で、小学校低学年くらいだろうか。2人の女の子が歩いている。
「アルビノって、共感覚持ってるん?」
「え?何て?」
「別に――ねぇ七海ちん、私は何色にみえるの?」

「ちぃさいころの私だ。」
七海は自分が幽霊になって走馬灯でも見ているのかと思った。若しくは悪い夢か。
「ねぇ、七海ちん。」

ちぃさいメイが、こちらを凝視した。

「私は何色に見えるの?真っ黒なんて、言わないでねぇ!」
メイは突如巨大化した。そしてあの邪悪なミルキィメイへと豹変した。幼い七海は平然と歩いて行ってしまう。
「ザッピング!」
七海は空間を歪ませ抵抗する。
「来るな!寄るな!」
壊れたテレビ画面の様にミルキィメイの顔も歪む。
「久しぶりだねぇ!はいこんにちはぁ~!!こっちの次元の芽衣ちゃんは元気だよぉ!いっぺん、死んでみ?」
ミルキィメイは太い腕を伸ばし七海の腹を鷲掴みにする。体の内側から破壊されるような激痛、抉られる、ような――
「嘘だ!芽衣は死んだ!ミルキィメイは自分のことを芽衣とは言わない。お前もあいつの生み出した幻影だ。私のトラウマを抉るな!」
「ペラペラと喋るんだねぇ。ギロチン・ショック」
ミルキィメイは禁断の魔法を発動した。通行人の首が次々と刎ねられ、向こうに居た幼い七海の首も飛んだ。
「ブレイクアップ!」
七海は虹色に光り輝く。
「コボレーザー!」
虹が芽衣を霧散させた。同時に空間が元に戻る。ビッグ・タキオンの姿は無い。振り向くとメカ之助とエリートキングが戦って居る。七海は走った。

[返信][編集]

253 :13
2021/08/27(金) 02:27:05

「メカ之助、私を持ち上げて!私が中に入って、楓を助けるから!」
「了解ブヒ~!」
メカ之助は七海をその大きな手のひらですくい上げ、エリートキングの頭部に伸ばした。
直後エリートキングがミサイルを射出し七海は吹き飛んだ。「七海ちゃん!」メカ之助は倒れる。七海は宙を舞ったが、エリートキングの肩から突き出ているパイプに掴まり堪えた。「負けるか!」よじ登り、接続部からロボの内部に入る。

巨大なロボだけあり、内部にはメンテナンス用の通路が在った。七海は鉄骨の上を落ちないように移動する。
ドォンと爆音が何度も聞こえ、その度に足場が大きく揺れた。メカ之助が優勢になっていることを七海は祈った。
また、突貫工事で作られたであろうこのロボは動くたびに内部の金属がぶつかり合い、嫌な音を出していた。
「上を目指さなきゃ。」
七海はじゃらじゃらとチェーンをかき分け、カンカンと鉄の梯子を登る。
機械油の酷い匂いだ。
上層部に辿り着く。

「・・・うっ!?」

そこには女の死体があった。見た顔だ。
「ポンパドーデス。」
金属板の上に仰向けに乗りかかり、だらんと腕を垂らしている。白目をむき、その胴体は血まみれだった。
メンテナンス中にロボが突然動き出したのか、金属に挟まれて体を引き千切られて死んだのだろう。
「さよなら。」
七海は死体を置いてさらに上へとよじ登る。

そういえば、ビッグ・タキオンは天堂茂を殺したと言っていた。
本当だろうか。
天堂茂のことは大嫌いだ。だが未知の力によって殺されたのは、何処か納得がいかない。
死ぬ前にあいつの顔面をぶん殴って、歯を2・3本へし折ってやりたかったというのが七海の率直な気持であった。

ようやくコクピットと思われる場所に辿り着いた。
七海は扉をこじ開け中に入る。
「楓!」
だが、そこに楓の姿は無かった。
ただ誰も居ない座席があり、操作レバーが自動的に動いて居た。ディスプレイには目の前で奮戦するメカ之助の姿が映っている。

エリートキングは口から火炎を放射した。
「ああ!」
「ブヒャ~~!!」
猛火はメカ之助を焼き払い、校庭を火の海にした。

「止まれ!止まれ!」
七海はレバーをガチャガチャと動かす。だが止まらない。
「止まらない・・・誰が動かしているの?」
七海は上を見た。光の螺旋が上空のUFOにまで続いているではないか。

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254 :14
2021/08/27(金) 02:28:54

UFOの内部は唯真っ白な空間だった。

「ピカリポットへようこそ。やはり、出色だね小豆沢七海。シャドウミルキィを倒すとは。」
白い空間に溶け込んで。白いビッグ・タキオンの姿がある。
「あんな子供騙しで私の技量を測らないで。楓をどこにやったの?」

「楓ちゃんはね、ドロドロにとろけて、お星さまになったよ!」

「ふざけんな!」
「ふざけてなんか居ないよ。彼女は君と絶交し、闇に落ちたんだから。」
「絶交なんてしてない!ブレイクアップ!」
七海は虹色の戦士となる。
「シャドウミルキィを倒した七色の姿だね。僕は虹で、君も虹。さぁてどっちが勝つのかな?」
「私は、オーロラ。」

七海は総てのカラーを混合させ一筋の光に変える。
「ルフ・ロ・ローク!消え失せろ!!」

「お前が消え去れ」
ビッグ・タキオンは光を吸収する。
「君に足りない色がある。黒だ。黒き虹!」
白い半紙に墨が落ちたように。ボタボタと、ビッグ・タキオンの周りが黒く染み渡ってゆく。

ビッグ・タキオンは真っ黒になっていた。
七海は目を押さえた。
「やだあああああ!!!!」
目にべっとりと黒い絵の具が塗りたくられたように、七海は視界を塞がれた。志布羅一郎の遺した最期の光が消えた。

「君の総てをいただこう。過去も、未来も――」

「あああ・・・あ・・・」七海の色が、光が、命が吸い取られてゆく。
七海は死を予期した。

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255 :15
2021/08/27(金) 02:30:16

真っ白い空間でしくしくと泣いて居る男が居た。

「何、泣いてるの。情けないな。」
「僕は死んだんだ。殺された。こんなに悲しいことがあるものか。泣かずになんていられない。」
「でもあなた、生きてるよ。」
「え。」
天堂茂は泣き止んだ。
「私が殺してあげたいくらいだけどね。」
「小豆沢七海!」

天堂茂は七海を睨めつけた。
「ここはどこだ!」
「さあ?入って来たけど出口は無いし。」
「不明瞭な返答をするな。エリートファイブはビッグ・タキオンに悉く殺された。この僕もだ!うわ、何をする!」
七海は天堂茂の顔面を思いきりぶん殴った。

「い、いきなり殴るとはどういう用件だ!ち、血が出たぞ!血が!!」
「歯は折れなかったか、残念。痛いなら、生きてるよ。血が出たんなら生きてるよ。どっちかに決めてよ。私と一緒に此処から出るか。永遠にこの真っ白な世界に、生きもせず死にもせずに、ずっと居るか。私はどっちでもいいんだけど。」

天堂茂は口をパクパクとしている。
「こんなことは有り得ない、こんなことは・・・」

「有り得ないけど起きてるんだよ。」

七海はぴしゃりと言い放った。

「じゃ、私行くから。」
七海は踵を返して行こうとした。だが背後から「待て!」天堂茂が声をかけた。

「一緒に行きたい。」

「じゃあ、握手。」

七海は白い手を差し出した。
天堂茂は唇を噛みしめる。
そして恐る恐る、手を出し、握った。

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256 :16
2021/08/27(金) 02:31:47

メカ之助は校庭に突っ伏して居た。
戦車の様に、ギュルギュルとキャタピラを軋ませてエリートキングが忍び寄る。
「い、痛いブヒ~!!」
右腕が轢き潰された。
「耐えてメカ之助!七海さんが楓を助けるまでの辛抱だから!」

「絵空事をね。」
機械で加工したような声が響き渡る。
エリートキングの頭部に、ピカリポットから降り立ったビッグ・タキオンが仁王立ちして居た。

「小豆沢七海は死んだ、もう戻らないよ。君たちオチコボレンジャーのまけ。」

「そんなはずあらへん!」
ひしゃげたコクピットの中で公一は叫んだ。
「七海は最高に頭のおかしい奴や。そんな奴が、死ぬもんか!!」

「好きに喚け。君たちはもう戦えない。」

エリートキングが更に進むと、メカ之助の上腕がキャタピラに完全に巻き込まれ、豚は悲痛な叫びをあげる。

「戦-1は僕の勝ち。これで10pts、決勝に待ち構えるエリートファイブももう居ない。僕はこの学園を、そして戦隊カラーの概念をいただくというわけさ。」

ビッグ・タキオンはロボの頭部から、戦争により壊滅状態にある学園の敷地を鳥瞰した。
「いい眺めじゃないか。」
だが、遠くから。
「何だ。」
何かが此方に向かっている。
「エリートキング、撃破しろ!」
赤いロボは火球を放つ。ボゥッと、火球は遠方の森に落ち、延焼する。
何かが。
何かが猛スピードで此方に向かっているのだ。

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257 :17
2021/08/27(金) 02:33:01

「生ぬるい。全てだ、全て壊せ!」
エリートキングは頭部を回転させ全方位にレーザーを撃ちまくる。校舎が、寮が、残された建物が木っ端微塵に消し飛ぶ。
だが手応えが無い。

「ハッ!」

ビッグ・タキオンは足下を見た。虫けらのように小さな2つの人影が走ってきた。

公一は叫んだ。
「七海や!」
七海と天堂茂だ。

「学園は僕の物だ。お前のようなきもちのわるい異星人に滅ぼされてたまるか、エライインパクト!」
ドンッという音。
業火がエリートキングを包む。
「行け七海!」
「どうも!」
七海は天堂茂を踏み台に大きく飛び上がる。

空中で七海の白い身体は膨れ上がる。
手も足も太くなり、鋭い爪と、背からは大きな翼が生えた。空中を走り七海はビッグ・タキオンの居場所まで駆け上がった。
「小豆沢七海ぃ!もう一度死ぬか」
「お前が死ね!!」

バキッという音、理解するよりも早くその意識は消失していただろう。
七海はビッグ・タキオンの首を噛み千切った。頭部が青い血を散らしてしゅるしゅると落ちてゆく。
「コボレーザー!!」
ボォンと爆音。七海は頭部を狙い撃ち、完全に破壊した。
「第二波!」
七海は次いで上空にも光を放った。一直線の光が天まで届き、ピカリポットを突き刺した。
円盤は回転し、悲鳴のような恐ろしい音を立ててバラバラになった。


荒廃した戦隊学園の上空に虹がかかった。
そして空襲でも受けたかのように焼けただれた跡地に、消える前のそのままの位置に、女子寮・南棟はガンと戻った。


「これでOK。」
突如。
火まみれのエリートキングが腕を伸ばし、七海の首根を掴んだ。
「な!」
ビッグ・タキオンは死んだはずだ。七海は目下を見ると天堂茂の卑しい笑みが「小豆沢七海!忘れたのか。僕たちは敵同士だろう?」

「どこまでも卑怯!」
七海は鉤爪でエリートキングの指を引き裂く。
エリートキングは火の粉を散らし集中砲火。七海は滑空し弾幕をかわすと胸部にドンッと重い一撃を喰らわした。
巨体のロボはよろめく。
「怯むな、」
「もういっちょ!」
七海は旋回しもう一度体当たりする。胸部がベコッと大きく凹んだ。
エリートキングは雄叫びを上げる。
七海は何度も何度も体をぶつける。ロボの装甲と七海の怪物と化した鱗が剥がれ落ち、両者傷だらけになる。
遂にエリートキングは限界を迎え、ゆっくりと、倒れて行った。
「エリートキング!」
大きな質量を持ったロボが倒れ、地が揺れた。エリートファイブはその体を校庭に打ち付け、動かなくなった。
七海は翼をつぼめ急降下し天堂茂に急襲。

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258 :18
2021/08/27(金) 02:35:39

「残るはあんたと私だけ!」
七海は天堂茂に掴みかかった。
「面白い!!」
天堂茂は七海に銃を向ける。七海の翼が取れヒトの姿に戻った。七海は平手の一撃で天堂茂を武装解除した。
「エライインパクト!」
「スパイラルフレア!」
2つの炎が至近距離でぶつかり両者は吹き飛ぶ。
天堂茂の変身が解除された。
七海は走り寄りタクトを天堂茂の眉間に突き付けるも天堂茂はタクトの先っちょを掴み遠くに投げ捨てる。
「オチコボレンジャーはタキオンジャーを倒し10pts。これは戦-1の決勝だ!どちらが強いか決めてやろうではないか、いかがか!」
「言われるまでもなく!」
七海は天堂茂に飛び掛かる。


全てが壊れた戦隊学園。虹の下の校庭で、2人は武器も持たず、変身さえせずに、まるで獣の喧嘩のように、ただ体同士をぶつけて争っているのである。

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259 :19
2021/08/27(金) 02:36:23

「決着がつかないな、小豆沢七海。」
「うん。私たちは互角。」

2人ともハァハァと息を荒げ、汗にまみれている。髪は乱れ、服はボロボロだ。
体力も限界に近い。どちらか一方が倒れれば、残る一方も倒れ、この勝負は引き分けに終わるに違いない。

七海は提案した。
「次の一撃で終わりにしよう。」

「いいだろう。」

両者、睨み合う。


「じゃーんけーんぽん!!」


七海はパー、天堂茂はグーであった。
「やった!私の勝ち!」
「ぢぐじょおおおおおおお!!!」
天堂茂は地をのたうち回って悔しがった。七海はそんな彼を置き去りに寮の自分の部屋へと走る。

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260 :20
2021/08/27(金) 02:38:53

戦隊学園は焼け野原と化したが、アブダクションされていた女子寮・南棟だけは無傷であった。
七海は階段を駆け上がる。
3Fの、廊下の突き当りの部屋。
自室だ。
七海はドアノブに手を掛ける。鍵は掛かっていないようだ。ドアノブを捻り、開けようとすると中から開いた。

中から顔を出した楓と目が合った。
「七海ちゃん!!」
2人は抱き合った。
「ごめんね。」
「こっちこそごめん!これからも、よろしくね!」


おしまい!

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